ESRI Discussion Paper Series No.303
労働市場における学歴ミスマッチ―その賃金への影響―

2013年10月
  • 平尾 智隆愛媛大学教育・学生支援機構講師

要旨

本研究の目的は,「就業構造基本調査」の個票データを用い,学歴ミスマッチ(教育過剰と教育過少)が賃金に与える影響を統計的に検証することにある。具体的には,同じ学歴を獲得したにもかかわらず,より低い学歴しか求められない職業に就いた者(教育過剰者)とその学歴に見合った職業に就いた者(教育適当者)の賃金を比較する。また,より高い学歴が求められる職業に就いた者(教育過少者)の賃金を教育適当者のそれと比較する。さらに,学歴ミスマッチ年数の収益を計測することで,賃金に対してどれほどのロスが生じているのかを検証する。

近年,日本では労働需要の減退と労働供給の高学歴化が進行してきたわけであるが,このことは学歴に見合った職業や仕事に就けない者が数多く生まれていることを疑わせる。諸外国の先行研究では,概して教育過剰者の賃金・所得や仕事満足は,教育適当者に比べて低いことが実証されてきた。本研究は,日本のデータを用い,客観的計測法(objective measure)で教育過剰を捉え,その賃金への影響を分析した初の研究である。その意味で,本研究は先駆的な貢献を果たす。

分析の結果,(1)教育過剰者は教育適当者に比べて賃金が低いこと,(2)教育過少者の賃金は教育適当者のそれと比べて高いこと,(3)学歴ミスマッチの賃金に与える影響は,若年層よりも中高年層において,また男性よりも女性において大きいこと,(4)学歴ミスマッチ年数の収益は,教育適当年数の収益よりも小さいことが明らかになった。高学歴社会では高学歴者がその学歴に見合った仕事に就けないという労働市場でのミスマッチが高確率で発生しうる。本研究の分析結果は,効率的な経済成長のためには,社会的・企業的・個人的なロスとなる学歴ミスマッチを回避する手立てを考えることの必要性を提起している。

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全文の構成

  1. 要旨
  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 2ページ
    2.定義と分析仮説
  4. 4ページ
    3.データ
  5. 4ページ
    4.学歴ミスマッチの発生状況
    1. 4ページ
      (1)学歴ミスマッチの計測方法
    2. 5ページ
      (2)学歴ミスマッチの状況
  6. 6ページ
    5.実証分析
    1. 6ページ
      (1)使用する変数と推定方法
    2. 7ページ
      (2)分析の結果
  7. 8ページ
    6.おわりに
    1. 9ページ
      (付記)
  8. 13ページ
    引用文献
  9. 15ページ
    図表
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