ESRI Discussion Paper No.317
著名人の自殺に関する報道が自殺者数に与える影響:警察庁の自殺統計を用いた分析

2015年2月
上田路子
シラキュース大学 リサーチ・アシスタント・プロフェッサー、
内閣府経済社会総合研究所 客員研究員

要旨

芸能人などの著名人の自殺に関する報道の後に自殺者数が増加する現象は「ウェルテル効果」と呼ばれ、各国でその存在が確認されている。しかし、データの制約もあり、日本における「ウェルテル効果」については研究が進んでいないのが現状である。特に、どのような属性を持つ人が自殺報道の影響を受けやすいのかについては明らかになっていない。本研究は、自殺者数の日別データを用い、著名人の自殺に関する報道がなされた直後に自殺者数がどのように変化するかについて他の要因の影響を排除した上で推定する。なかでも報道後に自殺した人の属性ごと(男女別、年齢階級別、未遂歴別、自殺の原因・動機別、職業別)に分析をすることによって日本における「ウェルテル効果」の特徴を明らかにする。分析に用いた自殺者数のデータは2009年から2013年の警察庁の自殺統計原票データを内閣府自殺対策推進室が特別集計したものである。

自殺者の年齢グループ別に分析を行った結果、海外における研究では若者が自殺報道を受けて模倣行為に走ると言われてきたが、本研究ではむしろ中高年の自殺者数のほうが報道後に増加するという結果が得られた。また、職業別分析によって、自営業者、被雇用者、そして無職者(なかでも年金・雇用保険等生活者)の自殺者数が自殺報道後に増加する傾向にあることが明らかになった。さらに、著名人のタイプ(職業グループ)別に分析を行ったところ、政治家と芸能人の自殺に関する報道の影響が大きく、また影響を受ける傾向の強いグループも著名人のタイプによってかなり異なることが明らかになった。例えば、政治家の自殺が報じられた後には「被雇用者・勤め人」や60代の自殺者数が増える一方、芸能人の自殺報道の後には、40代、50代の主婦や年金・雇用保険等生活者の自殺者数が増加する傾向が確認された。

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全文の構成

  1. 1ページ
    要旨
  2. 2ページ
    Abstract
  3. 3ページ
    1.はじめに
  4. 3ページ
    2 先行研究
  5. 6ページ
    3. データとモデル
    1. 6ページ
      3.1 著名人の自殺のデータ
    2. 7ページ
      3.2 自殺者数のデータ
      1. 7ページ
        表1:記述統計
    3. 8ページ
      3.3 モデル
  6. 9ページ
    4.結果
    1. 9ページ
      4.1 全著名人を分析に含めた結果
      1. 10ページ
        表2:著名人の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(全年齢、年齢階級別)
      2. 11ページ
        表3:著名人の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(職業別 )
      3. 12ページ
        表4:著名人の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(過去の自殺未遂歴別 )
      4. 13ページ
        表5:著名人の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(原因・動機別 )
    2. 13ページ
      4.2 著名人の職業グループ別推定
      1. 14ページ
        表6:著名人の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(著名人のタイプ別)
      2. 15ページ
        表7−1:政治家の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(自殺者の年齢階級別 )
      3. 15ページ
        表7−2:政治家の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(自殺者の職業別 )
      4. 16ページ
        表8−1:芸能人の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(自殺者の年齢階級別 )
      5. 16ページ
        表8−2:芸能人の自殺に関する報道後10 日間の自殺者数の変化(自殺者の職業別 )
  7. 17ページ
    5. まとめ
  8. 19ページ
    参考文献
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)