(主観的幸福感)
一般に言われる幸福度研究は、主観的幸福感と呼ばれる人々の主観的な生活の評価や幸福感を中心に研究する複合領域の分野で、哲学に始まり、医学、公衆衛生、心理学、社会学、経済学など分野の研究者が取り組んでいるものです。幸福度研究の代表的学会誌であるThe Journal of Happiness Studiesは、刊行の目的として以下のように書いています。
The Journal of Happiness Studiesは、査読済みの科学論文集であり、主観的幸福に専念するものである。本誌は生活の認知的評価(生活満足度のように)と感情的生活の喜び(ムードの水準など)をカバーする。生活全般の評価への寄与のほかに、本誌は生活の領域(例えば仕事の満足度)と生活の側面(観察された人生の意味など)への寄与も受け付ける。
実際、主観的幸福感を用いた分析により、様々なことが分かってきています。例えば、幸福度を利用した実証分析結果には、以下のようなものがあります。
このような成果もあり、主観的幸福感を正確に測定することが、重要であると考えられるようになりました。
(主観的幸福感と幸福)
しかし、「幸福」は、上記のような「主観的幸福感」にとどまるものではありません。古代ギリシャの哲学者アリストテレスによれば、幸福とは、人生における最高の善であり、それ自体が追求されるものです。幸福感とは必ずしも一致していません。アリストテレス自身、快楽と幸福は違うと言っています。このような立場からは幸福感のみを測るのではなく、概念としての幸福を支えるものから測定すべきということになります。様々な客観的指標を活用して測定する方法の研究も、当研究所における幸福度研究の重要なテーマです。
(実際の測定作業とのかかわり)
内閣府の幸福度指標試案や、OECDを含む、主要国で行われている測定作業では、主観的幸福感と客観的指標を組み合わせて用いています。
OECDの幸福度測定作業の成果文書であるHow’s Lifeに、測定作業の主要な目標として次の三つをあげています。
内閣府の幸福度指標試案では、幸福度指標作成の意義を以下のように述べています。
「幸福度指標」作成の意味があるとすれば、それは「幸せ」に光をあてることによって、これまで政策などにおいて焦点化されてこなかった「個々人がどういう気持ちで暮らしているのか」に着目することにある。より具体的には、①日本における幸福度の原因・要因を探り、国、社会、地域が人々の幸福度を支えるにあたり良い点、悪い点、改善した点、悪化した点は何かを明らかにすること、②自分の幸せだけでなく、社会全体の幸せを深めていくためには、国、社会、地域が何処を目指そうとしているか、実際に目指していくのかを議論し、考えを深めることが不可欠であり、その手がかりを提供すること、の2点にあると考えられる。
内閣府の前身の組織の一つである経済企画庁の国民生活局では、これまでも様々な社会指標を作成してきました。これまでの取り組みを比較した図表はリンクの通りです。幸福度指標試案は、近年の幸福度研究の成果を活用し、主観的幸福感を中心に幸福度の測定領域などを設定している点等で特徴があります。また、様々な指標を統合して作成する単一の指標で幸福度を作成することを行わない方針を提示しています。
平成24年度には、幸福度指標試案で取り上げられた項目、指標案ごとに、実際のデータを用いてさらに検討を進める予定にしています。主観的幸福感に関するデータは、生活の質に関する調査を通じて収集し、その他の客観的データについては、当研究所で別途収集する予定にしています。研究の成果については、当研究所のホームページに随時掲載する予定です。
また、国際的な議論にも積極的に参加してまいります。当研究所ではOECD等と共催で23年12月に幸福度に関するアジア太平洋コンファレンスを開催しました。平成24年10月にインド開催される統計、知識、及び政策に関する第4回OECD世界フォーラムにも参画します。