経済分析-政策研究の視点シリーズ 第19号
経済動向指標の再検討

2001年3月
  • 美添 泰人 (青山学院大学経済学部教授)
  • 大平 純彦 (静岡県立大学経営情報学部助教授)
  • 塩路 悦朗 (横浜国立大学院経済学部助教授)
  • 勝浦 正樹 (名城大学経済学部教授)
  • 元山 斉  (一橋大学大学院経済学研究科博士課程)
  • 高瀬 浩二 (早稲田大学大学院経済学研究科博士課程)
  • 大西 俊郎 (総合研究大学院大学数物科学研究科博士課程)
  • 沢田 章  (中央大学大学院理工学研究科博士前期課程)
  • 青木 周平(注)(東京大学大学院経済学研究科修士課程)
  • 北岡 智哉(注)(野村證券金融研究所)
  • (注)プロジェクト参加当時の所属:東京大学教養学部
  • 芦沢 理恵 (元経済企画庁調査局景気統計調査課)
  • 前島 秀人 (内閣府経済社会総合研究所総務部)

(要約)

1990年代に入り日本経済の景気変動のパターンが大きく変動する中で、適切な経済運営を行うために、景気判断に用いられる各種の経済統計のあり方が議論されている。わが国では多くの景気指標の中で、DI(景気動向指数)、QE(四半期別GDP速報)、日銀短観の3つが御三家とも呼ばれ重視されてきた。このうちQEについては、内閣府経済社会総合研究所(旧経済企画庁経済研究所)のGDP速報値検討委員会において改善策の検討がなされ、また日銀短観についても調査対象の見直しなどが行われている。  本研究では、客観的な経済変動と対応がつけられる新たな経済変動指標の開発を主要な目的とし、DIに密接に関連する景気指数について検討している。景気指標を再検討しようという動きはわが国だけのものではない。アメリカではハーバード景気指標を第1世代、NBERによるDIとCIを第2世代とすると、1970年代以降の時系列分析の発展等を踏まえて、第3世代の新たな景気指標が提唱されている。

DI、CI等の景気指標は、各種の経済指標を総合化することによって作成されている。したがって景気指標を検討する際には、その課題を次の2つに分けて考えることが適当であろう。第1は、各種の経済指標が与えられた時に、それから景気指標をどのように指数化するかという課題であり、第2は景気指標を構成する個別指標をどのように選択するかという課題である。

本報告はプロジェクトの中間報告であるので、与えられた課題の中で研究が進展した部分について取りまとめている。報告書の中での分析は、景気動向指数で採用されている系列のうち「一致指数」を利用した実験を行ったもので、その他の主要経済変数を対象とした分析は今後の課題としている。これまでの具体的な研究の内容は、以下のとおりである。


最近の手法の検討

従来の方法の有効性ないし問題点の確認と並んで、比較的最近、景気指標として提案されてきている景気の転換点モデル、動学的因子モデル等の時系列モデルを応用した手法に関する研究について、理論的にできるだけ厳密な整理を行った。これらについては、2章の2.1節で概観するとともに、代表的なものについて、2章において正確な解説を作成している。


頑健な手法の導入

DIは景気変動の方向を示すだけで、変動の大きさや成長率の大小について直接には示さないと理解されているが、その整理は一面的である。一方、CIは景気変動の変化量を把握するとされるが、データに外れ値が含まれる場合、指標そのものが不安定になるという性質をもつ。

本研究では、頑健性の統計学(robust statistics)と探索的データ解析法(EDA)の簡単な応用によって、DIおよびCIの中間に位置付けられる新たな指標を作成している。この指標については、適当にパラメータを設定すれば、安定的かつ変動の比較的滑らかな指標,すなわち量的変化を捉え、かつ外れ値の影響が少ない指標を得ることができる。形式的には簡単な手法であるが、経済データを扱う場合には有効なものと思われる。この実験の内容は1.1節で解説され、1.2節で実験の結果がまとめられている。また、4章で理論の概要を記述している。

本研究のもう1つの課題として、「適当な目的変数が与えられたとき、その変数の予測を可能とする、速報性のある月次指標を作成」することを挙げている。そのための予備的実験として、今回は景気動向指数の一致指数を目的変数とした変数選択の実験を行い、景気の転換点予測における各モデルの信頼性を数値化した。


景気循環論の概観

マクロ経済学の観点から、経済動向指標が何をどのように把握すべきであるかを考えるための視点を求めるため、3章で近年における実物的景気循環理論の展開を概観している。


補論

補論として、ロバスト統計学の概説、主要な関連文献の紹介、主要データのグラフ、作成したプログラムリストを掲載している。


全文の構成

  1. 要旨別ウィンドウで開きます。(PDF形式 344 KB)
  2. 1ページ
    研究の目的
  3. 7ページ
    1.伝統的な指標の拡張
    1. 7ページ
      1.1 伝統的な指標と頑健性
    2. 14ページ
      1.2 頑健な指標の試算
    3. 33ページ
      1.3 指標選択の実験別ウィンドウで開きます。 (PDF形式 255 KB)
  4. 95ページ
    1. 95ページ
      2.1 最近の景気指標の概観
    2. 105ページ
      2.2 Neft ,ci モデル:景気の転換点予測
    3. 111ページ
      2.3 Dynamic Factor Model
    4. 124ページ
      2.4 Regime Switching Model
  5. 139ページ
    3.マクロ経済学の視点による景気循環論の概観
    1. 139ページ
      3.1 イントロダクション
    2. 141ページ
      3.2 基本的モデル
    3. 148ページ
      3.3 労働市場と実物的景気循環理論
    4. 154ページ
      3.4 投資需要ショックの導入
    5. 157ページ
      3.5 貨幣の入った「実物的」景気循環理論
    6. 160ページ
      3.6 名目的硬直性の入ったモデル
    7. 163ページ
      3.7 結語
  6. 165ページ
    4.補論別ウィンドウで開きます。(PDF形式 239 KB)
    1. 165ページ
      4.1 ロバスト統計学概説
    2. 178ページ
      4.2 指標の試算で利用した系列
    3. 187ページ
      4.3 プログラムリスト
  7. 195ページ
    ワークショップにおける質疑応答およびコメント
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)