本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照下さい。なお、議論の正確な内容については、議事録(PDF-format, 103KB)を参照頂ければ幸いです。
| (開催日時) | 平成13年12月3日(月) 14時00分〜17時00分 | ||
| (パネリスト) | 伊藤 隆敏 | 一橋大学経済研究所教授 | (基調講演) |
| 野口 悠紀雄 | 青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授 |
(基調講演) | |
| 深尾 光洋 | 慶應義塾大学商学部教授 | ||
| 若月 三喜雄 | 株式会社日本総合研究所特別顧問 | ||
| (モデレータ) | 浜田宏一 | 経済社会総合研究所所長 | |
冒頭、伊藤隆敏教授、野口悠紀雄教授より基調講演をそれぞれ頂き、その後パネルディスカッションを行った(パネルディスカッションの後半は、パネリスト以外の参加者の方々からの質問、ご意見にパネリストが回答しつつ議論を行った)。
1.基調講演(伊藤隆敏 一橋大学教授)
3.パネルディスカッション
(1) コメント(2) ディスカッション
- (深尾光洋 慶応義塾大学教授)
- * インフレターゲティングの採用に賛成。不動産を含め、実物資産の買いオペに賛成。
* 実物資産の買取りの前例としては、通貨価値が金でバックアップされていたときに、デフレ時に金の購入、インフレ時に金の売却を進めたことがある。
* 現在の日銀の消費者物価を目安とした金融政策の目標の立て方は、時間を明示していないことに問題がある。いつまでに達成ということがないし、1年でも達成できれば良いということになっている。
* 要素価格の均等化は、技術水準が同一であることが理論的な前提となる。現在の中国の技術水準は日本の40分の1で、この点は異なっている。中国がWTOに加盟したが、自由貿易経済体制の下では、日本が衰退するところもあれば、伸びるところもあるということになる。
* デフレの関係で重要なのは、財政破綻のリスクが高いと言うことだ。名目GDPの伸びがマイナスの下では、法人税収が伸びない。大きなGDPギャップがデフレを加速させ、銀行・生保が破綻し、その処理費用もあって、財政はもたない。これによる資本逃避が円安をもたらし、物価上昇、金利上昇により、政府債務の利払い費は増大することになる。政府・日銀は銀行券をするか、デフォルトにするか選択を迫られることになる。
* インフレターゲティング実現のためには実物資産の購入を検討すべきだが、インフレ率が上昇しないときは、預金や現金といった政府保証資産の課税(保証料の徴収)を提案する。例えば、銀行券を毎年色を変えて印刷して手数料を徴収する。- (若月三喜雄 日本総合研究所特別顧問)
- * 需給ギャップがかなり大きくなっており、環境変化を受け、経済の高度化、高付加価値化を図っていくことが重要だ。
* 現在の物価下落は、個人消費を支えている面もある。
* インフレターゲティングの採用については、問題は手段である。採用しても手段がなければ、中央銀行のCredibilityを失うことにしかならない。
* 国債買い切りの増加は、ある程度は可能だろうが、財政規律を失わせ金利上昇をもたらすという問題がある。
* CP、社債の買い切りは、個別企業を応援するという問題がある。
* 土地や株は、損失が大きくなる可能性も高く、問題がある。
* 投資信託も、背後には特定の企業があり、ニュートラルと言えるかどうか疑問だ。
* 外債購入については、海外も含めた当局間の合意が必要だ。円安による近隣窮乏化は大きな問題になる。controlled depreciationは可能かもしれない。たとえば150円が目標と当局が発言するだけで円安になるだろう。
* 財政政策面では、ある程度の財政出動は検討して良いのではないか。思い切った拡張財政を主張する論者もいるが、30兆円という数字に拘る必要はないと思う。
* 深尾氏の預金や現金の保有に税金をかけるというアイデアは、混乱なく実行できるとは考えられず、民衆の混乱は大きなものになるであろう。- (浜田 内閣府経済社会総合研究所所長)
- * 最近の財務省は為替相場への介入について、余り発言せず穏やかにやっている。外債の購入をどの機関が行うかは別として、金融政策に関しても財務省の協力も不可欠である。
* 野口氏の議論には、一般物価と相対価格の混乱がある。
* インフレは構造問題を解決しないというが、デフレスパイラルを防ぐための一時凌ぎにはなる。
(3) オーディエンスとの質疑
- (伊藤)
- * 名目賃金や価格が半分になるのと、為替が半分に減価するのとでは、実質為替レートという意味で同じであるが、それだったら円レートが下がった方が良い。円レートが下がる場合は、物価下落のように倒産は起きず、海外的な問題が残るだけだ。
* 構造改革のためには、金融検査を充実すれば、追い貸しを整理することができるだろう。- (野口)
- * 中国の技術水準が日本の40分の1というが、中国が日本と同じタイプの発展を始めているというのは、生産関数が同じという意味だ。
* 賃金にものすごい格差があれば、生産関数が同じであっても、資本労働比率は異なってくる。生産物貿易で実際に起きているわけではないが、要素価格均等化のメカニズムは働き始めている。
* デフレが構造改革を進めるとは言っていない。インフレは産業構造変化に必要な事態の変化を分かりにくくし、本質的な問題解決につながらないということだ。- (深尾)
- * 教科書では、技術水準が同じというのは、生産関数が同じということだ。同じ技術水準でも、資本労働比率は異なり、日本では名目賃金が下がったとしても、企業の収益は上がるはずだ。
* 政府保証資産への課税による混乱は、デノミと同程度のものと考えている。
* 日銀の投資信託の購入対象は、日経225インデクスには反対で、TOPIXインデックスが良いと思っている。- (若月)
- * 現在の量的緩和の状況では、最初から不胎化か非不胎化かという点は議論にならず、金利目標の時代とは異なる。
* 現在のデフレの要因は、需給ギャップが主因だが、相対物価要因も働いていると思う。
- (オーディエンス)
- 野口先生から、企業は中国にできないことをすべきという発言があったが、企業はどのように対応したら良いのか、他の先生からも教えてほしい。
- (オーディエンス)
- 中国の自由化で実質所得が上がらないというが、開放経済の下で日本も便益を得ると考えるのが普通と思う。そうならないとすれば、マーケットが寡占的ということではないか。80年代のアメリカの経験に学ぶという意味では、規制改革と税制改革が重要だが、日本は税制改革が抜けていると思う。デフレと不良債権問題はワンセットであり、同じに対応することが重要と思う。
- (オーディエンス)
- 構造改革は、何ゆえ達成すべきか。物価安定との両立をどう考えるか。
- (オーディエンス)
- 野口先生からは説明があったが、物価下落の原因を、他の先生からも聞きたい。
- (オーディエンス)
- 野口先生は、物価下落の原因をアジアの発展に日本が負けたためとしているが、それならば実質賃金の低下や貿易黒字の減少が、対アジアで起きていなければおかしいが、実際はそのようなことは起きていないのではないか。90年代のアメリカのような産業構造の変化が起きるかどうかがポイントとしているが、アメリカ経済はその間0.3ポイント位しか成長率があがっていない。0.3%程度生産性が上がれば、日本経済は良くなるということか。相続税の引上げを主張されているが、個人の成功を尊ぶアメリカの経験に学ぶという主張と矛盾しないか。
- (伊藤)
- 物価下落の要因だが、既にデフレスパイラルに入っていると見ている。最初は需要不足が要因だったが、価格が下落して実質債務負担が高まり、さらに需要が減退するようになっている。構造改革の関係で民間ができることというのは、もうかる産業へシフトしていくことだ。貿易により実質所得が低下するのはおかしいというのは、その通りだ。日本の産業構造が変わる必要があり、阻害する要因を取り除くことが重要だ。デフレ問題と不良債権問題をパッケージとして取組むべきというのは同感だ。
- (野口)
- 貿易の自由化に便益があるが、そうなっていないのは日本経済は市場の変化に対応していないからだ。80年代のアメリカ経済からの教訓として重要なのは、産業構造が変わったということだ。どの産業がリードするかは、アメリカでもそうであったように、日本でも事前には分からない。90年代のアジア経済の発展の影響については、アジアNIESは経済規模が小さく、中国の追いつきはまだ最近で、いずれもまだ大きな影響を与えていない。90年代を通してアメリカの生産性は0.3%程度しか上昇していないというが、アメリカの変化もごく最近のことだ。相続税の引上げについては、財政再建と景気拡大の両立する政策として提示したまでであり、それ以外の面からは別の問題があるであろう。
- (深尾)
- 不良債権問題とデフレ問題に同時的な対応を図れという意見に賛成だ。但し、それが日銀による不良債権の買取りということだと反対だ。日銀が買取るのは、市場性があり逆の取引(売却)が可能なものに限るべきだ。構造改革と物価安定の両立をどうするかということだが、物価安定は構造改革の前提になるべきものだ。
- (若月)
- 中国の脅威は短期的には影響があるかもしれないが、長期的には楽観的に見ている。アメリカからの教訓としては、戦略的に情報化と金融分野に取組んだということだ。為替の関係では、93年にクリントンが大統領に就任したときに為替政策に取組んだ。それにより、アメリカの産業の体質が強化された一方、通貨高に陥った国がデフレになっている。
- (オーディエンス)
- 相対価格変化も現在のデフレに影響を与えていると思う。安い輸入品が一時的ではなく持続的に入ってくるなら、構造調整圧力となり、デフレ的な影響を与えるのではないか。パッケージという言葉があいまいに使われているように思う。伊藤先生はリストを示しただけであり、深尾先生は金融緩和を言っているだけだ。
- (オーディエンス)
- 製造業に40年従事しているが、今の価格は40年前と比べ3分の1になっているが、利益が上がっている。サービス業や官業は、労務費生産性を上げる努力をもっとすべきだ。
- (オーディエンス)
- 30年代のアメリカで、100%準備預金制度が議論になっている。これにより預金の信用不安もなくなり、信用創造も問題なくなる。金融機関は国債を担保に貸出を行うことになる。現在準備預金は20%という上限が、法律で定められているが、1回法改正すれば実施に問題がないと思うがどうか。
- (深尾)
- 中国との関係での構造調整がデフレ圧力になっているということだが、中国元が円ペッグならその効果は強いが、ドルリンクであり、アメリカは金融緩和でその影響を緩和している。それから中国は輸出とともに輸入を増やしており、他国に対してデフレ要因のみになっているわけではない。パッケージとして金融緩和だけ指摘したのは基調講演でないためだ。デフレを止めるとともに、金融機関のリスク管理の強化、利ざやの確保、リストラ等が重要と考えている。100%準備制度については、メキシコが通貨危機の時に、金融機関を中銀と合併させるという類似の政策を取っている。問題点としては、全ての銀行が政府系金融機関となり、社会主義経済のようになるということだろう。
- (伊藤)
- 構造変化は起きていないから問題だ。政策パッケージについては、やるだけのことを全てやらねばならないということだ。100%準備については、銀行不安が極めて大きくなれば考えられるが、現在はそこまでいっていない。製造業のみ努力してきたというのは、その通りだと思う。
- (オーディエンス)
- パッケージというためには、優先順位とかタイムスケジュールが必要ではないか。
- (伊藤)
- 優先順位は全て一緒、タイムスケジュールはできるだけ早急にということだ。