ESRI−経済政策フォ−ラム:日本21世紀ビジョンシリーズ
「人の国際化」(概要)
経済社会総合研究所
平成16年11月18日
本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照ください。また、議論の詳細については議事録をご参照いただければ幸いです
なお、現在、経済財政諮問会議において2030年の日本の経済社会の姿を見据えた「日本21世紀ビジョン」を検討しており、本フォーラムは同ビジョンの策定作業の一環として開催されたものです。
| (開催日時) |
平成16年11月1日(月)15時30分〜18時00分 |
| (パネリスト) |
井口 泰 |
関西学院大学経済学部教授(基調講演) |
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伊藤 隆敏 |
東京大学大学院経済学研究科教授(グローバル化WG主査) |
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梶田 孝道 |
一橋大学社会学部教授 |
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倉橋 靖俊 |
豊田市国際交流協会事務局長 |
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立花 宏 |
日本経済団体連合会専務理事 |
| (コーディネーター) |
井口 泰 |
関西学院大学経済学部教授 |
冒頭、井口 泰氏の基調講演をいただき(ホームページ掲載の基調講演資料をご参照下さい)、その後、パネルディスカッションを行った(パネルディスカッションの後半は、パネリスト以外の参加者の方々からの質問、ご意見にパネリストが回答しつつ議論を行った)。
- 外国人労働者問題は、どういう人をどれだけ入れるという受入国としての問題だけでなく、東アジアの経済統合、少子化との関連、地域の問題についても議論する必要がある。
- 東アジアにおける大半を占める不熟練労働者の移動に関し、効果的な地域全体の取組みがいまだになく、域内の人材の開発・還流の促進に日本が積極的にイニシアティブを発揮する必要がある。
- 国内の実態を見ると、日系人労働者は増加し、永住者も年間4万人ずつ増え、「いわゆる単純労働」にも現実には開放しており、外国人労働者は永住者を含めると90万近くにのぼっている。滞在の長期化も進み、日系人はもちろん専門技術労働者にも見られる。留学生は1割5分か2割程度しか就職に結びついていない。日系人労働者については、低賃金、社会保険未加入、子供の不就学の問題などが出てきている。
- 不法就労、地域の定住化に伴う問題は、避けて通れない問題であり、外国人就労管理システムが必要。使用者に在留資格の確認義務を課し、外国人の雇用データベースをつくり、外国人登録システムとリンクし、社会保険未加入への対応、何か問題が生じたときの対応ができるようにする。
- 留学生や就学生の不法残留が問題となっているが、日本人の言い分だけでなく、これらへの対策が十分かどうかも考えるべきであり、問題視すればするほど留学生の反発は広がり、犯罪と結びつけるだけで議論することは、日本が留学生をどう思っているかという対外的なアナウンスもなく問題である。
- 技能実習については、農業、漁業も含めかなりの分野で認められているが、制度を改革し、失踪のインセンティブを減らすとともに、基準を満たす実習生の再来日や合法就労について検討する必要がある。
- 少子化対策と外国人労働者対策は、代替的なものではなく補完的に考えるべき。大量に受け入れていくことではなく、質のいい人材を必要なところに的確に受け入れていくことが重要。このためには基本的に受け入れない「単純労働者」の範囲を限定し、技能・技術とあわせ言語能力も判断基準として、人材の受入れを行う必要がある。また、この際、コミュニティの問題を議論することは不可欠。
- 受入れ制度については、先進国の「ベストプラクティス」を生かして行くことが必要。
- 結論として以下が重要。東アジアの将来に展望を持ちながら、外国人労働者受入れ問題を考える必要がある。入国管理制度を緩和すれば人材が入ってくるという単純な問題ではなく、いい人材が出来るだけ集まるような制度を作る必要がある。人口・労働力人口減少を移民や外国人労働者で量的にただ補うことをすべきではなく、東アジアの域内でいろいろな人材開発・還流を行い、その一部の人たちに日本に定住してもらう仕組みが好ましい。外国人登録制度とリンクした外国人就労管理システムの導入、外国人研修・技能実習制度の改革など国内制度の改革が不可欠。
- これら戦略が「経済統合」とともに効果を発揮すれば、21世紀半ばに至る時期において、日本の東アジアにおける経済力は維持できる可能性がある。
2.パネルディスカッション:
(立花)
- 中国の強みの本質は、膨大な人口を背景とした労働力の均一性にある。これからの日本は新たな技術、独創的なアイデアが求められ、「多様性の持つダイナミズム」をこれからの国の発展の戦略の基盤にし、国民一人一人の付加価値、創造力を高めていくべき。
- そのプロセスに外国人が持つ力を生かすために総合的な受入れ施策を提案、実効する時期に来たのではないか。
- 外国人の受入れについては、具体的に、この4月に日本経団連が提言を出しているが、人口減少の埋合せではなく、次の3つの基本原則に沿って進めることが必要(1)質と量の両面で十分にコントロールされた秩序ある受入れ(2)外国人の人権と尊厳が擁護された受入れ(3)受入れ側、送り出し側双方にとってメリットある受入れ
(倉橋)
- 定住化が進んでいる日系人の問題を解決しないと外国人労働者問題は前に進まない。
- 豊田市は、1990年の入管法の改正以来、日系人が急増。改正以前は100人未満だったブラジル人が、今では6,500人。15年間で6,000人以上も増加。
- ごみ出しのルールを守らない、深夜の騒音、違法駐車の問題等日常生活における摩擦が常に絶えず地域住民の負担になっている。しかし、生活上の摩擦は、生活習慣とか文化の違いに起因するものがほとんどで、理解して貰えばかなり解消する。特に言葉の問題が一番大きな原因。
- 日系人は、正規の在住者でありながら、少なくとも5割以上が健康保険に未加入と推測されている。そのため医者も外国人の診療を敬遠し人道的な問題を抱えている。原因として、年金と健康保険がセットという制度上の問題、また、事業主が負担分を払いたくないために加入させない、日系人の方も手取り額が多い方がいいと加入しない、というようなケースもかなりある。
- 子供の教育の問題は重要。言葉が分からず授業についていけない、いじめなどによって学校を辞めてしまうといった子供が多々いる。親が子供の教育を真剣に考えていないというのも原因。十分な支援体制が必要。
- 29日の集住都市会議において、「豊田宣言」がまとめられた。
(梶田)
- 日系人の問題は、多くの自治体がサポートし、様々な苦労をしている。また正当な労働者として扱われていないという問題もある。このことを脇に置いて議論をしても始まらない。日系人の議論は外国人一般の議論にも十分通用する。
- 入管政策のみならず、社会的、文化的なすぐれた統合政策を行っていかないと世界で勝てない。日本には統合政策がなく、そのつけが自治体に回ってきた。
- 子供から成人期は非常に重要な時期。子供にとって、自分あるいはキャリアを形成する重要な時期に、どこで過ごすかは重要な意味を持つ。能力を持った人たちが日本にいて、自分のキャリアデザインを描いていくということができるような状況が必要。
- 少子高齢化は、高齢者の定義を変えることが1つのアイデア。出生率は、1.9のフランスを先例として研究が必要。人口問題を移民で解決することは不可能。移民もホスト社会の出生率に同化し、収斂する。
(伊藤)
- 基本的な視点として以下が重要。(1)外国人労働者の受入れは、適切な管理により、日本国民、外国人、送出国の全てにとって利益のあるものとなる(2)外国人労働者の受入れを拒否しても、様々なルートで、外国人は来日して職を得る。その結果、日本にとって好ましくない人材や不法滞在者が増加して、お互いに不幸(3)受け入れるかどうかの議論ではなく、どのような形で受け入れるかの議論が必要
- 様々な職種の外国人が入ってくることによって、ビジネスが生まれ、日本企業も国内に留まることもある。受入れを拒むと産業や人材の「空洞化」が生じ、日本という国境の中の経済が衰退する可能性がある。
- 基本的な考え方として、本当に働きたい外国人、需要があれば、就労ビザを与えるべき。一方で、犯罪と関連して、留学・就学生の犯罪率が急上昇しており、これらのアルバイトは基本的に認めるべきではなく、また、日本語の勉強は本国で行うことで構わない。また、事業主に在留資格の確認などの管理義務を課すべき。こうした面を厳しくすることにより、本当に働きたい外国人の受入れに対する社会の反発を和らげることができる。
- 具体的に、どのようにして良質の望まれる外国人を受け入れるかについて以下が重要。(1)在留資格の大幅な拡大(2)介護士など、日本語を話し、日本の国家資格をとった外国人には人数制限せず、就労を認めるべき(3)日本語が必要な分野については、日本語学校を補助し、日本語を勉強できる機会を多く与える
- 看護師、介護士は激務で供給が十分とは言えない。また、日本語が話せて、本当にケアが出来れば、外国人でも問題はないであろう。
- 送出国の人材流失による懸念については、日本での収入を本国に送金すること、本国への技術移転を考えると、途上国にとってメリットになると思う。
- 単純労働は認めるか否かについては、資格の大幅な拡大、制度の整備により対応するべきで、全くスキルのない人を無制限に認めることは反対。
−伊藤氏の見解について−
(倉橋)
- 単純労働については、何らかの歯どめは必要だが、それなりに必要という思い。
(立花)
- 就労管理と入国管理をリンクし、情報を共有していくことを考えていく時期に来ている。
(井口)
- 東アジアで人の移動についてのビジョン・戦術を示すこと、少子高齢化に対して日本のベストプラクティスを求めること、就労と居住の管理についてのデータベースとなる新しいシステムを導入すること、この3点の問題が解けるようなビジョンを持つ必要がある。
- 東アジア域内での留学生の移動について、人材育成を強化する必要があると考えている。
- 厳しいコスト制約の中で、外国人の介護ヘルパーや看護師を入れることは簡単ではなく、緻密に議論する必要がある。低賃金のヘルパーや准看護婦の使い捨てになってはならない。日本人の労働条件にも跳ね返ってくる。また、そこには優秀な人材も入らない。
- 外国人労働力を考えるに当たっては、コミュニティーの議論は不可欠で、市町村に誰がどこに住んで、社会保険の適用を受けるかをチェックするような、外国人登録や就労管理をリンクしたシステムを作る必要がある。
(伊藤)
- 単純労働についてある程度枠をはめて認めるというのは賛成。入国管理、就労管理の一体化もそのとおり。
- ヘルパーについてはすごく人材が不足し、需要が大きい。来る人がいればいくら来ても構わないのではないか。
3.フロアー・オープンディスカッション:
(フロアー1)
(立花)
- 日本経団連の「外国人受け入れ問題に関する提言」に具体的に示している。
(井口)
- 欧州でもいろいろあり、ベストプラクティスを研究するべき。
(フロアー2)
- 介護について、既に国内にいる外国人と、FTA交渉等の突破口として海外から受け入れることとどちらが得策か。
(伊藤)
- 資格を取れば、全く平等にどんどん受け入れるということでいいのでは。
(井口)
- 基本的には同じ考え。ただ、資格があってもヘルパーのように不安定になるような仕事については、悪条件に縛り付けないような工夫が必要。
(フロアー3)
- 外国からの良質な人材の確保という話があったが、そういう人たちがいなくなった送出国は一体どうなるのか。
(井口)
- 非常に総合的な動きが発生するので特定の分野だけで頭脳流出ということは余り心配しなくてもいいという議論が多い。フィリピンは、ある程度送り出す力がある。20、30年後中国、韓国で少子化が進む時の影響が心配。