幸福度研究について

Q1.幸福度研究とは何か?

(主観的幸福感)

一般に言われる幸福度研究は、主観的幸福感と呼ばれる人々の主観的な生活の評価や幸福感を中心に研究する複合領域の分野で、哲学に始まり、医学、公衆衛生、心理学、社会学、経済学など分野の研究者が取り組んでいるものです。幸福度研究の代表的学会誌であるThe Journal of Happiness Studiesは、刊行の目的として以下のように書いています。

The Journal of Happiness Studiesは、査読済みの科学論文集であり、主観的幸福に専念するものである。本誌は生活の認知的評価(生活満足度のように)と感情的生活の喜び(ムードの水準など)をカバーする。生活全般の評価への寄与のほかに、本誌は生活の領域(例えば仕事の満足度)と生活の側面(観察された人生の意味など)への寄与も受け付ける。

実際、主観的幸福感を用いた分析により、様々なことが分かってきています。例えば、幸福度を利用した実証分析結果には、以下のようなものがあります。

  1. 所得の上昇が人々の幸福度を改善するには限界がある。
  2. 失業が個人にもたらす負の影響は、所得の減少以上に、非常に大きい。
  3. 正規雇用、非正規雇用の違いがもたらす影響は、国ごとに異なる。賃金を考慮しない場合には、非正規雇用がわが国でも男性、女性別では幸福度を有意に引き下げるわけではない。
  4. 年齢別にみると欧米では40代が一番低い。日本では年齢とともに幸福度が低下するとする研究もある。結婚や配偶者の存在は幸福度を引き上げる。
  5. 労働者にとって、雇用主による経営への信頼は、生活全般の幸福度に大きく影響する。
  6. 政治体制への信頼感やソーシャル・キャピタルの質が幸福度に大きく影響
  7. 東アジアでは社会的な調和から幸福感を得る一方、欧米では個人的な達成感から幸福感を得る傾向にある。

このような成果もあり、主観的幸福感を正確に測定することが、重要であると考えられるようになりました。

(主観的幸福感と幸福)

しかし、「幸福」は、上記のような「主観的幸福感」にとどまるものではありません。古代ギリシャの哲学者アリストテレスによれば、幸福とは、人生における最高の善であり、それ自体が追求されるものです。幸福感とは必ずしも一致していません。アリストテレス自身、快楽と幸福は違うと言っています。このような立場からは幸福感のみを測るのではなく、概念としての幸福を支えるものから測定すべきということになります。様々な客観的指標を活用して測定する方法の研究も、当研究所における幸福度研究の重要なテーマです。

(実際の測定作業とのかかわり)

内閣府の幸福度指標試案や、OECDを含む、主要国で行われている測定作業では、主観的幸福感と客観的指標を組み合わせて用いています。

Q2.幸福を測ってどうするのか?

OECDの幸福度測定作業の成果文書であるHow’s Lifeに、測定作業の主要な目標として次の三つをあげています。

  1. 社会がどのような目標に向かうべきかという議論に市民を巻き込む
  2. 人々の生活が良い方向に向かっているのかどうか、より正確に描き出す様々な指標を見つけ出す
  3. 幸福度・社会進歩測定指標がどのように公共政策に情報提供するのかを検討する。幸福をもたらす要因を理解し、幸福を改善するために必要な一連の政策を見つけ出す

内閣府の幸福度指標試案では、幸福度指標作成の意義を以下のように述べています。

「幸福度指標」作成の意味があるとすれば、それは「幸せ」に光をあてることによって、これまで政策などにおいて焦点化されてこなかった「個々人がどういう気持ちで暮らしているのか」に着目することにある。より具体的には、1.日本における幸福度の原因・要因を探り、国、社会、地域が人々の幸福度を支えるにあたり良い点、悪い点、改善した点、悪化した点は何かを明らかにすること、2.自分の幸せだけでなく、社会全体の幸せを深めていくためには、国、社会、地域が何処を目指そうとしているか、実際に目指していくのかを議論し、考えを深めることが不可欠であり、その手がかりを提供すること、の2点にあると考えられる。

Q3.過去の指標化の作業とはどこが違うのか?

内閣府の前身の組織の一つである経済企画庁の国民生活局では、これまでも様々な社会指標を作成してきました。これまでの取り組みを比較した図表はリンク(PDF形式 703 KB)別ウィンドウで開きます。の通りです。幸福度指標試案は、近年の幸福度研究の成果を活用し、主観的幸福感を中心に幸福度の測定領域などを設定している点等で特徴があります。また、様々な指標を統合して作成する単一の指標で幸福度を作成することを行わない方針を提示しています。

Q4.研究をどう進めていくのか?

平成25年度まで実施した「生活の質に関する調査」等の一連の調査により収集した詳細なデータを活用し、社会指標研究の一環として、同研究を推進することとしています。OECDなど国際機関における取組や地方自治体における取組とも連携しつつ研究を進める予定です。

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