社会指標のデータ収集に必要なアンケート調査の実施手法について
(講演会概要)

非貨幣的な尺度によって豊かさを多面的に測り、指標化する試みは、我が国においては、1970年代以降、経済審議会、国民生活審議会等での検討に基づいて進められました。例えば、経済審議会は1973年にNNW(Net National Welfare、国民純福祉)を公表し、国民生活審議会は1974年にSI(Social Indicators、社会指標)を、1986年にNSI(New Social Indicators、国民生活指標)を公表しました。また、同審議会は1992年にPLI(People's Life Indicators、新国民生活指標)の試算を公表しました。

これらの試みでは、生活領域の設定、指標の選択と統合化、量的調査を基にした時系列・地域別の比較及び個人の生活を取り巻く構造的な変化の把握など、多面的なアプローチがとられ、社会の多様な豊かさを把握するうえで多くの知見が得られました。諸外国や国際機関でも同様の取組が行われており、これらの取組で得られた知見は、例えばOECDの社会指標の測定手法に関するWorking Paperで公表されております。

26年度の調査研究においては、こうした指標化に不可欠な個別指標データを収集する方法のうち、アンケート調査による収集方法について検討しました。従来のアンケート調査では、無作為に対象者を選び出し、調査員が対象者を訪問し調査票を配布しそれに記入してもらう方法(訪問留置法)等がとられてきました。しかし、従来のアンケート調査における回収率が低下していることを背景に、近年インターネット利用者の増大も伴い、手軽で安価に実施できるインターネット調査は社会調査の強力なツールの一つとしてマーケット調査等に広く利用されています。一方、インターネット調査にも課題があり、例えばWEBの登録モニターを利用する手法では、母集団から対象者を無作為に抽出する手法に比べ調査結果に「偏り」が生ずるため、得られた結果の解釈に注意が必要であるとの指摘もあります。

本研究では、外部有識者による講演会を開催し、インターネット調査の特性や、より「偏り」の少ない調査結果を得るための調査手法について、検討を行いました(各回の講演の概要とスライドについては下段リンクをご参照ください)。

一連の講演会で指摘された主な点は以下のとおりです。

  1. 1 望ましい調査方法は、調査の目的と制約(社会の構造変化や調査手法の特性等)に 応じて決まる。
  2. 2 回答者の属性について、代表性の高い調査(就業構造基本調査や国勢調査)を基準とした場合、訪問留置調査もWEBモニター調査も「偏り」がある。特に、住居形態、配偶者の有無といった属性は訪問という調査手法の影響を受けやすい。意識に関する質問について、訪問留置調査とWEBモニター調査を比較すると違いがある。こうした質問は調査方法の影響を受けやすく、読み取りに一層の注意が必要である。
  3. 3 WEBモニター調査で得られたデータを補正することは、傾向スコアを用いた逆数による重み付け(Inverse Probability Weighting)によりある程度可能であるが、補正によって得られる効果は条件によってはかなり限定的である。

以上から、インターネット調査の実施は調査期間や調査費用面での誘因は大きいものの、依然として困難な課題があることが分かります。しかしながら、従来型調査も代表性の低下が指摘されるようになっており、引き続き調査目的等に応じた望ましい調査手法の検討が必要と言えます。

<各回の講演概要・講演スライドへのリンク>

26年7月3日講演: 松本正生 埼玉大学社会調査研究センターセンター長/同大学経済学部教授

26年9月4日講演: 萩原牧子 株式会社リクルートホールディングス・リクルートワークス研究所 研究員

26年9月18日講演: 三輪哲 東北大学大学院教育学研究科 准教授

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