研究会報告書等 No.3
ITが経済社会に及ぼす影響についてのエコノミストアンケート調査結果報告

2002年1月
  • 須田 和博(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)
  • 今川 拓郎(同客員研究員、大阪大学大学院国際公共政策研究科助教授)
  • 宮原 勝一(同客員研究員、青山学院大学経済学部助教授)
  • 指宿 一郎(同研究官)

要旨

ITが経済社会に及ぼす影響は、この分野が比較的新しい分野であるうえに、その領域もマクロ経済、企業活動、家庭や地域社会など広範囲にわたり、ITがこれら領域において影響を与える経路も多岐にわたることなどから、その影響の程度や内容については、しばしばエコノミストの間でも議論が分かれている。

そこで、今回、ITが経済社会に与える影響について、16の論点を整理し、エコノミストの見解をアンケート形式で集め、その結果を集計整理することによって、今後の研究活動の参考にすることとした。

  1. ITは生産性の向上に貢献。しかし、その効果の発揮には時間がかかる。
    本調査を実施した昨年8月には、米国ナスダックの総合指数平均もピーク時から3分の1程度まで下落しており 、米国経済の繁栄を「ネットバブル」とする見方が増え始め、我が国の新聞紙上でも「IT不況」という言葉が使われ始めていた。しかし、このような景気動向にも関わらず、ITが生産性の向上に貢献していることについては、全体的に肯定的であった。特に、これまで実証が難しいとされてきた「非IT関連産業」の生産性に関しても多数はITの導入の効果を肯定的に見ている。しかし、その効果の発揮には時間がかかるとする見方が多かった。
  2. ITは労働需要を増大させる。しかし、それは前提条件や時間軸の取り方いかんによる。
    ITは労働需要に対して新規産業の創出などによるプラスの影響と企業効率化などによるマイナスの影響が指摘されているが、どちらの影響が大きくでるかは経済的にも社会的にも重要な論点となる。回答は、プラスの影響が大きいと見る見方が多数であったが、無条件にプラスの影響が大きいとする回答は必ずしも多くなく、労働市場の流動化等の前提条件や時間軸の取り方いかんによるとするのが全体的傾向であった。
  3. ITが経済成長に貢献するためには、「各種規制の緩和」、「教育制度の充実」、「知的所有権制度」、「労働市場の流動化」が特に重要である。
    ITが経済成長に貢献するために整備されるべき経済環境、経済関連制度については、全体で10項目を示し、その重要性を尋ねているが、「非常に重要」と答えた回答が多かったのは、上から順に、「各種規制の緩和」、「教育制度の充実」、「知的所有権制度」、「労働市場の流動化」となっている。
  4. ITは、どちらかというと東京や都市部への集中化を促進する。
    一極集中が進む我が国にとっては、ITが地域間の集中と分散に対して及ぼす影響が大きな意味を有している。情報通信は交通代替手段となり得ること、インターネットは分散型ネットワークであることなどから、ITは分散を進めると考えられやすい。しかし、調査結果では分散化が進むとする回答は少数で、東京や都市部への集中化が進むとみる回答とどちらとも言えないとする回答がそれぞれ全体の半数近くを占めていた。しかし、これらの回答の多くは、このような集中化の傾向は好ましいものではないとみている。
  5. 「社会的枠組みも含んだ社会資本」の整備が非常に重要である。
    社会資本の考え方も時代とともに変わりつつあるが、ITが経済社会の発展に寄与するための社会資本について、3つの考え方を示しその重要性を尋ねた。「非常に重要」と答えた回答が最も多かったのは、「ITを生かすための諸制度など社会的枠組みも含んだ社会資本」であった。ITの進歩が人と社会の関係を一変させる のであれば、社会資本概念もこれまでのものと違ったものとなっていくのが自然であるが、その方向についての一つの示唆と言えよう。ただし、そうした社会資本の整備を政府の役割と考えるかどうかは別の問題との意見が多かった。

全文の構成(全3ファイル)

  1. 表紙別ウィンドウで開きます。(PDF形式 414 KB)
  2. はじめに
  3. 1ページ
    第一章 『ITと経済』
  4. 16ページ
  5. 24ページ
  6. 34ページ
    脚注
  7. 35ページ
    資料1 回答者リスト
  8. 37ページ
    資料2 集計結果
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