研究会報告書等 No.22
経済教育に関する研究調査報告書

平成18年8月

1. 調査研究の趣旨

「官から民へ」「国から地方へ」と経済社会システムの改革が進められるなど、個人をとりまく金融・経済環境が近年大きく変化しており、個人が様々な局面で自己決定を迫られる場が拡大している。そのような中、合理的な意思決定を行う個人を育成するための経済教育の重要性が高まっている。

経済教育の普及は、経済的な見方や考え方を前提に実際の経済社会に対する理解を促進させることであり、個人レベルの意思決定にとどまらず、年金問題に代表される社会保障改革など公共政策レベルでの意思決定においても、市民として自ら考え、参画することにもつながるものである。

昨年度に取りまとめられた「経済教育に関する研究会中間報告書」において、経済教育の目的、課題が整理されたが、本書ではこれらを踏まえ、(a)経済教育のプログラム整備、(b)新たな教材案、(c)経済教育の実施体制の整備のあり方と具体的な方向性を明らかにした。

なお、本研究調査は、内閣府経済社会総合研究所が財団法人日本経済教育センターに委託して実施したものである。

2. 調査研究報告書のポイント

(1) 経済教育プログラムの整備に向けて ~第3章

中間報告で掲げられた経済教育の3つの目標((a)合理的な意思決定を行う個人を育成する、(b)経済社会に対する関心を高め理解を深める、(c)政策的課題に対して自ら考え意見が述べられるようにする)は成人になって社会経験を経た後でも達成することが困難であり、小学校、中学校、高校という学校教育だけでなく、学校外や成人まで含んだ幅広い市民に経済教育の機会が与えられることが望ましい。

生徒および市民の発達段階に応じた内容と教育方法をとり、経済教育を効率的に実施するため、小中高および成人の各段階における経済教育の内容を段階的プログラムの一例として体系的に整理した。(表1)別ウィンドウで開きます。(PDF形式 95 KB)

当プログラムは、日本社会が直面する課題を表頭に挙げ、それらの解決に貢献できるように、年齢を追って、少しずつ範囲が広がりレベルが上がるように構成されており、学習指導要領との親和性も意識したものとなっている。

(2) 教育現場の実態と課題 ~第4章

(イ) 学校へのアンケート調査結果の概要

  • 中学で半数以上、高校で約7割の教員から、経済教育を進めるうえで困難を感じるとの回答を得た。その理由として、生徒の興味・理解度、授業時間数、効果的指導法や教材不足、教員の知識不足などが挙げられている。(問2)
  • 授業形式についても、板書と講義だけでなく、自己学習やグループ学習のためにシミュレーションや体験型学習を取り入れた授業への期待は大きい。実際、体験型学習を導入している学校においては、生徒の学習意欲を高める効果などの有効性を評価。だが、体験型授業の実施のためには、まとまった時間が必要であるなどの課題もある。(問6)
  • 使いやすく効果的な体験型教材はまだ少なく、教員の側でもそれを使いこなすには、能力や準備時間が不足しており、教員研修の機会や外部講師の活用も必要である。(問7問10)

(ロ) 実践事例の紹介と評価

経済教育、金融教育、消費者教育、投資教育、教育現場における実践等、研究会委員の体験も踏まえた事例を紹介するとともに、課題を分析。これらの事例からも、(a)体験型学習が有効であること、(b)体験型学習と併せた振り返り学習により概念的理解を深めることが重要であること、(c)経済教育には教材の質的・量的不足とその教授法に関する教員への支援不足が課題であることが明らかとなった。

(3) 新たな教材例 ~第5章

昨年度の中間報告で作成した牛丼屋経営のシミュレーションゲームをもとに、以下の点を拡充した教材案を作成した。これにより、基本的概念だけなら昨年度教材を、多くの話題と結びつけるなら本年度教材をと、教育現場の事情に合わせ選択ができるようになった。

  • 意思決定の選択肢や、その後ゲームの中で起きる様々なリスクの種類を増やすことで、機会費用などの基本的な経済概念に加え、環境問題、企業の社会的責任等の幅広い問題をカバーできるようにした。
  • 当初の意思決定に応じてリスクから被る利益・不利益が変化するように設定し、合理的意思決定の重要性をより強く感じられる構成とした。
  • シミュレーションゲーム後に振り返り授業を行い、概念学習や普段の教科教育との関連を学習できるようにした。

(4) 経済教育の実施体制の整備に向けて ~第6章

(イ) 経済教育の定義と課題設定の必要性

経済教育に関連する教育は、「経済教育」「金融教育」「投資教育」「消費者教育」等、各機関によって呼称が異なるまま、それぞれの機関がある一定の概念を想定しながら活動を行っている。これらの経済教育の担い手が、経済教育の定義と課題設定を共有したうえで連携し、大きなムーブメントとして経済教育の浸透を図っていくことが望まれる。

(ロ) 経済教育の対象と「場」

経済教育は理念ではなく実践であり、経済教育を実施するための現実的な「場」を設定する必要がある。学校内の教育にとどまらず、政府や企業が提供する様々なイベントやタウンミーティングを含め、多様な教育の「場」を提供できることが望ましい。

(ハ) 経済教育のための3つの普及・啓発方策

今後、経済教育を推進するためには、以下のような3つの方策が必要と考えられる。

  • 1)クリアリングハウス機能
    • 経済教育関連の各団体のサイトのリンク集(ポータルサイト機能)
    • 教材の提供(有償、無償のものを含む)
    • ニューズレターの発行
  • 2)研究開発
    • 経済教育専門家の人材バンク
    • 教材づくり
    • 経済リテラシーテストの開発
  • 3)実践
    • 経済教育イベントの開催
    • 出前授業の実施
    • 教員研修の実施
    • 経済リテラシーテストの実施
    • 子どもモニターの運営

(ニ) 経済教育の担い手

経済教育は、冒頭に述べたように、日本の経済社会が直面する問題解決のために全国民に対して求められている。また、教養として知っておきたい経済問題のレベル、経済社会システムの中で豊かに暮らすレベル、国の経済政策を正しく選択しそれに適応して行動するレベル、それぞれに経済教育の機会があれば望ましい。これら幅広い領域をカバーするためには、官と民とが協力し、経済教育を充実させていくことが必要である。

(ホ) 経済教育における今後の課題-「実践」の強化へ

前年度・今年度の研究会の成果を受けて、今後より広汎にかつ継続的に、経済教育を「実践」していくことが求められている。そのために、以下の4点が有効である。

  • 1) 経済教育の指針となるべき授業内容や授業方法の確立を目指し、重点的に取り組む学校において、経済教育の授業実践を推進する。また、経済教育の潜在的なニーズを顕在化させていくため、広報・啓発を推進する。
  • 2) 経済教育教材・資料の開発・整備・普及を促進する。
  • 3) 経済教育ネットワークの構築を進める。この際、官民協力したネットワークの構築が求められる。
  • 4) 教員研修の機会や、情報発信と情報交換のしくみを整える。

全文ダウンロード

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