研究会報告書等 No.44
経済学的視点を導入した災害政策体系のあり方に関する研究報告

平成21年6月

目次

  1. 1ページ
    総括  災害政策体系のあり方に関する研究
  2. 佐藤主光
  3. 15ページ
    第1章 災害政策体系の整理と提言~被災者支援を中心に~
  4. 佐藤主光
  5. 43ページ
    第2章 自治体の減災努力促進に向けた災害支援制度改革のあり方
  6. 浅野憲周
  7. 67ページ
    第3章 防災政策による災害被害の軽減効果:都道府県別データを用いたパネル分析
  8. 外谷英樹
  9. 91ページ
    第4章 防災政策が個人の自助努力に与える影響
  10. 佐藤主光
  11. 115ページ
    第5章 地震保険の実務的な課題
  12. 吉田彰
  13. 137ページ
    第6章 災害関連施策における財源措置と地方の役割
  14. 宮崎毅

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第1章 災害政策体系の整理と提言~被災者支援を中心に~

  • 一橋大学政策大学院・経済学研究科
  • 佐藤主光

本章では、被災者支援を中心に我が国の災害政策体系の現状と議論を概観した上で、経済学の観点から分析・評価する。災害政策群を(1)地震保険・住宅の耐震化など事前政策と被災者生活再建支援金等、事後政策との「時間軸」、(2)一般に自立が困難とされる低所得者・高齢者と自立可能な中高所得層といった被災者の「属性」(所得・年齢)、(3)公営住宅など現物給付と被災者生活再建支援金を典型とする現金給付のような「支援形態」、(4)国・地方自治体、及び民間(地震保険制度など)と支援の「担い手」による分類を行い、その特徴と課題を明らかにする。「被災者支援の経済分析」としては、(1)被災者支援に関わる二種類のエラー、(2)現行の被災者支援体系には機能の重複・混在、(3)被災者支援政策の実行可能性、及び、(4)被災者支援という災害(非常)時のシステムと平時のセイフティーネット・システムとの断絶を取り上げる。その上で、我が国の災害政策体系の再構築について考えていく。個別制度ではなく、保険機能、再分配(福祉)機能、地域経済の安定化・活性化機能と「機能」に即して論じる。

第2章 自治体の減災努力促進に向けた災害支援制度改革のあり方

  • (株)野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 上級コンサルタント
  • 浅野憲周

東南海・南海地震や首都直下地震発生の切迫性が高まる中、地域全体の災害対策を牽引する上で、自治体に対して非常に重要な役割が期待されている。しかし、わが国の防災法制度には総合的な減災対策を支援するしくみが不足しているとともに、災害前の減災努力の程度に関わらず被災した地域の自治体に対する復旧財政支援が適用されるしくみになっており、このことが災害前の減災努力に対するインセンティブを低下させる一因ともなっている。また、自治体の防災力については、十分な評価と情報公開が実施されていないため、行政と住民間で大きな情報格差が生じており、防災行政に対する適切なガバナンスが機能していない。以上を踏まえると、来るべき巨大災害に備え、自治体による減災努力を促進するしくみとして、災害前からの減災努力を要件とした災害後の財政支援制度への転換を図るとともに、自治体の減災努力を監視・評価・改善するガバナンス改革が望まれる。

第3章 防災政策による災害被害の軽減効果:都道府県データを用いたパネル分析

  • 名古屋市立大学
  • 外谷英樹

本稿の目的は、都道府県のパネルデータを用いて自然災害による人的・物的被害と防災政策の関係を検証することである。自然災害による被害の指標として、「死者数」、「負傷者数」、「罹災者数」および「一人あたり物的被害額」を用いた。また防災政策の指標として、災害を事前に防ぐ目的の「事前政策変数」と災害が発生した際に被害を軽減させる目的の「事後政策変数」を考えた。47都道府県の3期間パネルデータを用いて、固定効果推計を行った結果、自然災害の被害に有意にマイナスの効果を与えている政策は事前政策変数であり、その中でも「一人あたり災害復旧投資額」が、災害による人的・物的被害を軽減する役割があることが判明した。また、サンプルを地震による被害と台風による被害に分けて推計したところ、「一人あたり災害復旧投資額」は両ケースにおいてマイナスの効果があるが、その効果は対地震に関する方が大きいものである結果となった。

第4章 防災政策が個人の自助努力に与える影響

  • 一橋大学政策大学院・経済学研究科
  • 佐藤主光

本章では、地震保険への加入と住宅の耐震化を中心に高齢者世帯を含めた個人の事前の自助努力に着目、それを促す仕組みについて議論する。(事前・事後の)災害政策の枠内で「自己完結」させるのではなく、他の政策・制度、具体的には住宅市場の活性化との関係に着目していく。住宅に資産としての価値を持たせ、耐震化投資が当該住宅の資産価値の増加に結び付く条件を整備することで、耐震化への誘因付けを図る。また、地震保険の加入促進のためには低所得者を対象とした保険料補助金制度を新たに提言する。地震保険の保険料には(立地や住宅の耐震性に関わる)地震リスクを反映されることで保険原理を徹底させつつ、低所得者の地震保険加入を促進する(災害時の生活資金を確保する)という二つの(一見相反する)目的を追求する手段となりうる。

第5章 地震保険の実務的な課題

  • 株式会社損害保険ジャパン 個人商品業務部 個人火災グループ
  • 吉田彰

地震保険制度は、1966年の「地震保険に関する法律」の制定を受けて、政府と民間の損害保険会社が共同で運営する制度として発足した。

地震保険制度は、「地震等による被災者の生活の安定に寄与すること」を目的としており、また、地震保険の保険料率は「収支の償う範囲においてできる限り低いものでなければならない」とされるなど、他の損害保険に比べ公共性の高い保険といえる。

地震保険制度の発足以来、数々の改定が行われているが、地震保険制度の歴史を改めて整理するとともに、今日の地震保険制度の特徴および課題を整理する。

また、各方面における地震保険制度の改善に関する議論を整理し、地震保険引受の実務面を中心に、災害政策体系における最適な地震保険制度のあり方に関する議論の再整理を図る。

第6章 災害関連施策における財源措置と地方の役割

  • 明海大学経済学部講師
  • 宮崎毅

本稿の主目的は、災害時における災害応急対策、災害復旧・復興の体系を、国と地方の役割分担と財政負担の視点から整理することである。特に、災害救助法、被災者衣生活再建支援法、負担法・暫定法・激甚法、復興基金の設立を分析の対象とする。分析の結果、災害に関連する施策には、次のような特徴があることが明らかとなった。第1に、災害関連の施策には、財源の国庫補助、地方負担分に対する地方債に対しての普通交付税措置などの国による手厚い財政措置がある。第2に、災害関連施策の実施において地方団体の裁量はほとんどない。第3に、交付団体と不交付団体で財政措置に大きな格差がある。被災地域に対して国の財源保障が十分に大きく、災害事業に対する地方団体の裁量が小さければ、地方団体は事前における被害最小化への努力を小さくする可能性がある。したがって、災害関連施策の実施において、今後国と地方の役割分担の明確化が必要だろう。

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