モクズガニ養殖で環境保全と村おこし

「NPO法人 北上川流域河川生態系保全協会」

ゆでたモクズガニ
写真
【カニ牧場】
写真
【稚ガニ】
カニスープ

北上川に砂鉄川と千厩川が合流する地点に、岩手県で最も小さな村、川崎村がある。この村には「カニばっと」という川ガニで出しを取ったスープで野菜やスイトンを煮込んだ郷土料理がある。その原料として地域の人達が親しんできたモクズガニが年々採れなくなってきた。

平成8年、何とかできないかと村が働きかけ村内のモクズガニ好きの有志が集まり、モクズガニ研究会を作った。モクズカニはおいしいだけでなく、付着藻類や魚等の死骸を主食とするので、河川環境の健全化に大いに寄与する生物である。幸いにも貝やカニに詳しい国土交通省東北地方整備局の鈴木さんが一緒に研究をやろうと言ってくれたことで、生物好きが触発されてカニ養殖に取り組むことになった。早速、新潟県村上水産試験場や青森県小川原湖漁協などに出かけて、カニの飼育や孵化技術の勉強を重ね、平成10年から本格的にモクズガニの養殖に取り組んだ。

苦心の末に開発したのが、世界で初といわれるモクズガニの孵化・中間飼育・カニ牧場の一貫飼育技術であり、特にユニークなのはビオトープを用いたタナゴ、貝、タニシ、ドジョウなどとの共同飼育のカニ牧場である。

(カニの飼育工程)

  1. 抱卵した親ガニの採取(河口の汽水地域)
  2. 孵化(ゾエア期、メガロパ期、稚ガニ飼育)・・・孵化施設
  3. 若カニ飼育・・・・・・中間飼育施設
  4. 親カニ飼育・・・・・・カニ牧場

海水で孵化したカニの幼生は約1カ月で稚ガニになる。少しずつ淡水に慣らすように育てられ、孵化から約2カ月で甲幅5mmになった6万匹が中間飼育施設に移される。ここで、半年~1年間育てられた約5万匹(共食いで減)の若ガニの半数は、地元をはじめ近隣市町村の子供達の手で河川に放流される。残りの約8割は全国各地へ販売され、最後に3千匹がカニ牧場に移されて親ガニに飼育される。カニ牧場は休耕田を利用した施設で、自然の川に近い状態(ビオトープ)がつくられている。

ここで成長した親ガニはカニスープやクッキー等に加工し、地元の道の駅で販売、若ガニの販売収益と合わせて、自立的な会の活動を支えている。

自然の学習会
【自然の学習会】
子供達とカニの放流
【子供達とカニの放流】

平成11年には河川の環境保全と自然資源を活用した村おこしを目的とするNPOを設立、村長以下14人が名を連ねるが、実動部隊は民間人のメンバー3人と総務課の菅原さんと建設課の小野寺さんの5人である。全員全くのボランティア活動で行っている。国・県・村の補助金があって、ここまで研究が進んだが、年々補助金は減り、これからは自立の道に切り替えていく必要がある。

会の活動は、5人で役割分担して行っている。各飼育施設の日常管理、海水運搬など養殖関連の業務ほかに、スープなど販売品の在庫管理や値段付け、協会の庶務・経理、小中学校の総合的な学習への協力、国からの委託を受けての河川環境に関する学習会(子供、一般)がある。さらに、最近では、数少ないモクズカニ養殖の成功例ということもあって、問合せや見学対応にも追われており、仕事の合間や休日のボランティアとしては、かなり厳しい状況にきている。

ここまでやれて来れたのは、生物好きの仲間の団結力といえるが、民間人の3人は会社経営者であり活動面の融通が利いたこと、5人できちんと役割分担をしてやってきたことが大きい。生物相手なので、一般のサラリーマンだけではここまでに至らなかったと思われる。

写真
【菅原さん】

「モクズガニの養殖や放流は、子供達の自然教育に役立つとともに、自然を守るという地域住民の環境意識の向上をもたらした」と菅原さんはいう。また、副産物としてカニスープという村の名産品や「カニ料理鉄人コンテスト」などのイベントを生み出し、村おこしにも貢献している。

当然、若ガニの放流は水循環系の健全化に寄与している。ただし、第一の目的であるカニ生息数の回復については、放流で減少を何とか食い止めているのが現状だという。中流域の川崎村で放流しても、流域全体での乱獲が自粛されない限り、資源の回復は難しいようである。本協会で開発した養殖技術は、福島県いわき市など全国各地に伝授されたが、まだ定着していない。北上川流域をはじめ、養殖・放流の活動を全国に広げていくのが今後の課題である。


  • 連絡先:〒029-0202 岩手県東磐井郡川崎村薄衣字諏訪前137
  • 川崎村 総務課 菅原正志
  • 電話 0191-43-2111(代)

戻る
次へ
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)