発想する町 北海道東川町
北海道東川町
「コメカン」を知っていますか。
東川町は、日本最大の自然公園「大雪山国立公園」の最高峰・旭岳のある町。旭川市に隣接し、旭川空港からも5kmと交通の便もよい。人口7600人でもギャラリーが36軒、洒落た「木工の町」・東川町に出会う。なかでも廃校の小学校を活用した家具工房「北の住まい設計社」は北欧の風景に負けない洗練された美があり、日本もまんざらではないなとうれしくなる。町では自立に向けて、人口増加と経済回復、美しい東川の風景創造を同時に進める政策、賃貸共同住宅建設支援事業や起業化支援事業、リフォーム支援事業、定住情報提供事業等を推進する。中でも秘策はマイホーム建築支援事業で、住宅を新築する場合に、町内業者が製作する木製家具や木製カーポートを、70万円を上限に町がプレゼントする。無垢材を使った自然な仕上がりの家具から町の品格がにじみ出る。申し込み件数が多く予算は増額となった。こうした政策効果から、定住人口は前年比、約80名の増加となった。理想のカントリー・ライフスタイルの提案と人口増加策はこれからの地域社会のあり方を示唆している。
町民すべてが「地下水」で暮らしていると聞いて驚いた。水道普及率は0%。20メートルも掘れば、どこでも大雪山の伏流水が自噴する。なんと贅沢な!良質の水を使って旭川ラーメンの麺はこの町で生産される。日本そばや豆腐も実にうまい。日本各地を歩いているが、どんな山奥も水道が普及してカルキを入れるので自然な味がしない。住民もミネラルウォーターを買って飲んでいるくらいだ。地方の生活の魅力は天然水といきたいものだ。
戻れ、「コメカン」の話。東川のコメのうまさは北海道随一だという。良質の水と、栽培方法にこだわる。町では特別対策室を新設し、産業振興としてコメのPRをすることになった。PRパンフレットではすぐに捨てられてしまう。コメ1袋を持ってPRに歩くのは重過ぎる。名刺代わりに持ち歩ける手軽なもので、ひらめいたのが「コメカン」だ。生米150グラム入りの小さな缶詰「kome-canほしのゆめ」。手に取って振ってみると、ザックザックと缶の中で踊るお米に、米の質感をあらためて発見する。「う~ん。コメの缶詰ね」と不思議に幸せな気持ちになった。笑った瞬間、コミュニケーションは成立する。負けた。ビニール袋に入れて売られている米が哀れに思えた。
コメカンは150円。窒素が充填してあり、新鮮な味が保たれる。納得。茶碗一杯のご飯をいかに美味しく食べるかと考えると、コメカンを開けて、大雪山の天然水でご飯を炊く、・・・贅沢な気分になってきた。コメカンの向こう側にまちの風景がみえる。

【kome-canほしのゆめ】
コメカンは担当者の狙い通り、意外性や遊び心が受けて話題となった。ラベルを張り替えデザインすれば、贈る人の分身となる。名刺代わりやノベルティ商品、町民のお祝い品、贈答用として使われるようになり、愛着も生まれてきた。生産量は予想をはるかに超えて現在2万3千缶、まだまだ記録は伸びる。毎月1回、担当者はコメカンの新企画を打ち出し、動く広告媒体として活躍させる。クリスマス用「サンタ缶」から干支の「お正月缶」、特産品の「発芽玄米缶」、さまざまな「オリジナル缶」。「発芽玄米とトマトジュースのリゾット」は、完熟トマトジュース「北の太陽」2缶と「発芽玄米缶」、「米缶」の4缶をセットにしたもの。思わず買ってしまい、荷物が重くなった。まだ、世間には知られていないコメカンを見せると、みな笑い欲しがる。このコメカンの勢いを活用して我が大学のPRをしてみようかと思うほど、この発想にいつの間にか乗せられてしまった。

【写真甲子園】

【東川賞授賞式】
町を活性化させるヒントは、今、「センスウエア(五感が集積したもの)」にあるようだ。ハードウエアやソフトウエアでは足りない。行政が既成の枠でものごと考えることをリセットし、住民が五感を使った発想力を生かして好きなことを一心に出来る雰囲気を作ることだ。どこの市町村も合併論議や財政難で、コスト削減の話ばかりで、自由に発想する楽しみを失ってしまった。その点、松岡市郎東川町長は、自ら認めるおっちょこちょいな性格と、言ったことには責任を持つ内面拡充型人間。「予算がない、前例がない、他の市町村でやっていないなどのネガティブな考え方ではなく、ポジティブな考え方に立ち仕事をしよう。みな好きなことをどんどんしたらいい。責任は私が持つ」と、人間成長の更新を促す。明るい雰囲気が町民や職員の意欲となり、ひょうたんから駒が出る。
追記すると、この町は「写真の町・東川」としての顔も持つ。写真映りのよい町をめざし、世界で初めて「写真の町」を宣言し、世界で活躍する写真家を顕彰する「東川賞」は制定から20年を迎える。全国の高校生が写真の腕を競う「写真甲子園」は11年目。町のホームページはカメラやフイルム会社がスポンサーとなっている点もユニーク。意外に知られていないようだが、「写真の町・東川」は世界から映像文化という個性を積み重ねている。
住民たちは自由に発想して、好きな人生を生きている人が多い。世界を知っている住民がいる。束縛されない自由な発想は、微かな音や匂い、柔らかな日差しなど、大雪山をはじめ自然のふんわりした身体感覚を楽しむ人生観から生まれるのであろうか。書きたいことはまだまだたくさんあるが、「百聞は一見に如かず」、自分の目で確かめてみてください。
- 東川町のホームページ
http://www.town.higashikawa.hokkaido.jp/jp/index.htm
- 東川フォトフェスタ&サイバーギャラリー
http://www.town.higashikawa.hokkaido.jp/cyber/cyber.html

【大雪山(花の写真)】

【北の住まい設計社(家具)】

【大雪山】

【木製看板の町】

【北の住まい設計社(風景)】













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