ESRI通信 第3号

平成20年11月13日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【イノベーションが重要】

冷戦の終結に伴う旧共産主義国の資本主義圏への参入やBRICsの台頭の中で経済はグローバル化し、世界人口の急拡大、地球環境問題など地球の持続可能性を脅かす多くの課題がある中で、従来型の発想に基づく対応ではこの時代は乗り切れない。先進各国は、このような状況下で経済成長を持続するためには、イノベーションを起こしていくしかないことに気づき、それぞれイノベーション戦略を策定している。

イノベーションの鍵になるのが科学技術である。「科学的、技術的知識を経済発展、あるいは社会的問題の解決につなげるためのあらゆるプロセス」を科学技術イノベーションと呼ぶならば、先進各国は、これを効果的に創出するための戦略を定め、実行している。今後日本が一定の経済成長を持続し、現在のような先進国であり続けられるか否かは、科学技術イノベーションを効果的、持続的に創出しうる国にしていくのかどうかにかかっている。

ESRIでは、「イノベーション国際共同研究」の下で6つの研究会を設け、科学技術政策と経済社会政策を結ぶイノベーションに関する政策研究のプラットフォームを構築する研究を実施している。各研究会の活動を簡単にご紹介する。

第一は、イノベーションと経済の基盤的研究である。これは、技術革新の経済効果を評価する手法を開発する「イノベーションの経済分析に関する研究会」と企業の研究開発活動に起因するイノベーションを計測するための指標群を開発する「科学技術応用統計調査研究会」の二つの研究会で実施している。

第二は、科学技術政策研究の方法論の開発研究である。これは、科学技術政策の策定にあたり、知識、情報の利用、意思決定過程などに関する望ましい策定プロセスのモデルを開発する「政策及び政策分析研究会」と科学技術イノベーションの多様な価値を定量的に示し、政策評価手法の発展に資する情報を与える「戦略的価値評価研究会」の二つの研究会で実施している。

第三は、科学技術政策、イノベーション政策に関する重要課題の研究です。これは、科学技術に関する知識の活用状況を踏まえた知識構造の可視化と個々の知識の重要性等に関する指標を開発する「知識社会研究会」とイノベーションの担い手である社会起業家の役割、行動原理、彼らを存立させる条件などについて検証する「社会イノベーション研究会」の二つの研究会で実施している。

今後は、上記研究会の成果なども踏まえ、わが国の持続的な経済成長に不可欠な経済社会の重要課題に、科学技術イノベーションがどのような解決策を提示できるかといった問題意識に立って、それに必要な研究基盤を作るための政策を考えていきたい。今は、オープンイノベーションの時代である。興味をお持ちの方の参加は大歓迎です。

平成20年11月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 川原田 信市

<参考:開催案内>


【最新の研究発表】

  • 「企業改革とIT導入効果に関する国際比較—アンケート調査結果のスコア化による日米独韓企業の特徴—」(篠崎 彰彦、山本 悠介)(平成20年10月)

    本研究は、日本、米国、ドイツ、韓国の企業合計18,500社に対して同時期に同一質問項目で実施したアンケート調査結果を踏まえて、IT導入に伴う企業改革やITの導入効果面で4カ国企業にどのような特徴が観察されるかを国際比較したものである

    4カ国合計1,288社の有効回答をもとに多重検定を行った結果、次の2点が明らかとなった。第1に、企業改革では、韓国企業の積極性が目立つ一方、日本企業は多くの項目で他の3カ国企業に比べて企業改革の実施割合が有意に低く、社外も視野に入れた改革でその傾向が強いこと、第2に、IT導入効果では、米国企業と韓国企業で高い傾向にあり、日本企業は、作業効率の改善など現場レベルのコスト削減効果では他の3カ国企業に肩を並べているものの、上層部の意思決定など経営面の効果や新市場・新規顧客の開拓など社外に広がる価値創造の場面ではかなり見劣りがすることである。これらを総合すると、日本企業は、企業改革への消極姿勢がIT導入効果を削いでいる可能性が示唆される。

  • 「自然災害リスクの特殊性とそのリスクマネジメントの困難性:企業の自然災害リスクマネジメントに関するサーベイ」(田中 賢治)(平成20年11月)

    本稿では、自然災害リスクマネジメントに関する先行研究をサーベイすることで、企業が自然災害リスクマネジメントに取り組む際に、障害をもたらす要因について検討した。自然災害の持つ特殊性として、低い発生確率、被害の規模が非常に大きく面的な広がりを持つというカタストロフ性、それらの特殊性が原因で、現状得られる情報集合から導出される自然災害の発生確率や損害の見積もり自体に大きな不確実性が生じてしまう点が指摘できる。以上のような特殊性が、人々のリスク認知にバイアスを生じさせたり、リスク評価やリスクマネジメントの効果を評価する際の障害となったり、自然災害保険の設計を難しくするなどの問題を生じさせ、これらの問題が、企業が自然災害リスクマネジメントに取り組む際の障害になっていると推察される。また、各企業は相互に取引関係を結びながら企業活動を営んでいるため、他社の被害がこれらの相互依存関係を通じて自社にも影響するという負の外部性の問題も障害の一つであると言える。企業の自然災害リスクマネジメントは、株主や取引先企業、消費者など、企業を取り巻く様々なステークホルダーの利益にも関係することを踏まえると、企業統治の問題としても考えることができるが、情報の非対称性がエージェンシー問題を引き起こす可能性もある。

  • 「自然災害リスクマネジメントとサプライチェーン」(田中 賢治、上野山 智也)(平成20年11月)

    本研究では、企業の自然災害リスクマネジメントがサプライチェーンの脆弱性の補完としての機能を持つことに着目し、製造業へのインタビュー調査により、自然災害リスクマネジメントの取り組みの現状を把握するとともに、サプライチェーンの中でみられる自然災害リスクマネジメント促進のためのメカニズムについて理論的な考察を行った。

    自然災害リスクマネジメントが進んでいる企業では、取引先との信頼関係が重視され、製品を安定的に供給するという義務感が強いとともに、自然災害リスクマネジメントを怠ると市場からの信頼を失墜し、市場から閉め出されるという危機感があった。そこには、安定供給が果たされなかった場合には以降は取引をしないという暗黙の要請が長期的な取引関係の背後で機能している可能性がある。サプライチェーンには、ある企業の小さな途絶でさえ連鎖的に他社へ波及するという脆弱性がある一方で、それを補完する対策は、サプライチェーンの中での相互依存関係という性質から自社単独では不可能であるという難しさがある。サプライチェーンの性質に基づくその難しさが他社への自然災害リスクマネジメントの要求につながり、現在のところ、そのことが自然災害リスクマネジメントを促す最も大きな要因であると考えられる。

  • 「短期日本経済マクロ計量モデル(2008年版)の構造と乗数分析」(飛田 史和、田中 賢治、梅井 寿乃、岩本 光一郎、鴫原 啓倫)(平成20年11月)

    内閣府・経済社会総合研究所は、随時の改訂が可能で、公開性及び機動性の高いコンパクトな「短期日本経済マクロ計量モデル」を開発し、1998年に公表した。「短期日本経済マクロ計量モデル」は、四半期ベースの推定パラメータ型計量モデルである。2008年版においては、方程式総数152本、うち推定式 48本の中型のモデルであり、財貨・サービス市場、労働市場、貨幣市場、及び外国為替市場の4市場から構成される。伝統的なIS-LM-BP型のフレーム・ワークであり、いわば「価格調整を伴う開放ケインジアン型」と言える。本稿においては、1990年から直近時点のデータを利用し、経済の情勢を織り込んで改訂を行ったものである。


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 民間企業資本ストック速報(平成20年4~6月期)(平成20年10月24日)
    • 1.有形固定資産 全産業(進捗ベース)
      • 20年6月末のストックは1,198.4兆円、前年同期比2.4%増となり、前期の伸び(2.7%増)を下回った。
      • 20年4~6月の新設投資額は18.7兆円、同1.4%増となり、23期連続のプラスとなった。
    • 2.無形固定資産 全産業(取付ベース)
      • 20年6月末のストックは35.9兆円、前年同期比2.2%増となり、前期の伸び(1.9%増)を上回った。
      • 20年4~6月の新設投資額は1.5兆円、同7.4%増となった(前期 0.2%減)。
  • 平成20年4-6月期「民間企業資本ストック速報」における除却額の推計方法の変更について(平成20年10月22日)
  • 平成20年度 民間企業投資・除却調査 ご協力のお願い(平成20年11月5日)
  • 四半期別GDP速報における輸出入の推計方法の変更について(平成20年11月7日)
  • 平成20年7-9月期1次QEにおける小売マージンの推計方法の変更について(平成20年11月10日)

<景気動向指数>9月速報(平成20年11月6日)

  • 9 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:89.2、一致指数:100.8、遅行指数:99.5 となった。
    先行指数は、前月と比較して0.2 ポイント上昇した。3 ヶ月後方移動平均は0.60 ポイント下降し、3 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は0.56 ポイント下降し、25 ヶ月連続の下降となった。
    一致指数は、前月と比較して0.1 ポイント上昇した。3 ヶ月後方移動平均は0.53 ポイント下降し、2 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は0.58 ポイント下降し、7 ヶ月連続の下降となった。
    遅行指数は、前月と比較して1.0 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は0.40 ポイント下降し、6 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は0.70 ポイント下降し、6 ヶ月連続の下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    「景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。」という基調判断を変更する状況にはない。

<機械受注統計調査報告>9月実績および10~12月見通し(平成20年11月10日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、20年8月前月比1.2%減の後、9月は同3.0%減の2兆3,666億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、20年8月前月比14.5%減の後、9月は同5.5%増の9,407億円となった。このうち、製造業は同9.7%増の4,337億円、非製造業(除く船舶・電力)は同1.3%減の4,943億円となった。
  • 7~9月をみると、受注総額は前期比10.1%減の7兆2,771億円となった。 「船舶・電力を除く民需」は同10.4%減の2兆8,752億円、製造業は同10.9%減の1兆2,882億円、非製造業(除船舶・電力)は同12.0%減の1兆5,836億円となった。
  • 10~12月見通しをみると、受注総額は前期比3.1%減の7兆499億円の見通しになっている。 「船舶・電力を除く民需」は同1.2%増の2兆9,103億円、製造業は同2.5%増の1兆3,210億円、非製造業(除船舶・電力)は同3.6%増の1兆6,410億円の見通しになっている。

<消費動向調査>10月調査(平成20年11月12日)

  • 平成20年10月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、9月の31.4から2.0ポイント低下し29.4となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について、一年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は84.4%となり、前月差は2.3ポイント減少して、3ヶ月連続の減少となった。

【参考】<月例経済報告>10月(平成20年10月20日)

  • 景気は、弱まっている。
    • 輸出は、緩やかに減少している。生産は、減少している。
    • 企業収益は、減少している。設備投資は、弱含んでいる。
    • 雇用情勢は、悪化しつつある。
    • 個人消費は、おおむね横ばいとなっているが、足下で弱い動きもみられる。
  • 先行きについては、当面、世界経済が減速するなかで、下向きの動きが続くとみられる。加えて、アメリカ・欧州における金融危機の深刻化や景気の一層の下振れ懸念、株式・為替市場の大幅な変動などから、景気の状況がさらに厳しいものとなるリスクが存在することに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
11月6日
(9月分)
11月18日
(9月分)
11月10日
(9月分)
11月12日
(10月分)
12月9日
(10月分)
12月17日
(10月分)
12月10日
(10月分)
12月12日
(11月分)
12月24日
(10~12月期)
1月9日
(11月分)
1月21日
(11月分)
1月15日
(11月分)
1月20日
(12月分)

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