ESRI通信 第7号

平成21年 3月16日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【ワーク・ライフ・バランスと生産性】

世界経済は百年に一度という規模の深刻な金融危機に直面し、その実体経済に与える影響としては1930年代の世界大恐慌に匹敵するのではないかという心配も強まっている。今回の金融危機そのものの影響は相対的に小さいと言われている日本でも、2008年10~12月期のGDPは年率で10パーセントを上回るマイナス成長を記録した。

GDPの動向を把握するためにはSNA統計が存在し、日本のSNA統計を作成することは内閣府経済社会総合研究所の基幹業務のひとつとして位置づけられている。

SNA統計はマクロ面から一国の経済活動の動きを総合的に評価するための枠組みであり、特に国際的な比較分析を可能とするという観点から、国際的な標準基準を設定し、各国がそれに準拠したSNA統計システムを構築するという仕組みになっている。この基準の作成には、各国のSNA統計作成担当部局とともに国連などの国際機関、さらには高度な知識を有する専門家グループなど様々な関係主体が重層的に組み合わさる形で参加している。SNA統計の体系は経済の構造変化などに対応する形で一定期間ごとに見直しが行われており、2009年2月には国連統計委員会で新たなSNA統計作成基準の枠組みが正式に了承された。

この会議に先立つ形で2008年11月に国連統計部などの主催で「国民経済計算(SNA)の長期的整備に関するハイレベルフォーラム」がワシントンで開かれ、各国のSNA作成担当責任者を中心に率直な意見を表明する場となった。

この会議ではリーマンショックもまだ整理しきれていないという状況だったこともあり、マクロ経済政策の重要性とともにマクロ経済の基礎情報であるSNA統計の改善に対する強い期待感が目立つ形となった。しかし同時に強い印象を与えたのは、SNA統計を高度化し、生産性分析などへの応用を目指すために様々な推計手法を活用して複雑化していくという方向性に対するSNA統計作成担当責任者達からの懸念の声だった。こうした意見は必ずしも開発途上国に限定されるわけでもなく、高度な手法でSNA統計を作成している先進国からも、統計部門の厳しい資源制約の中で新たなSNA統計体系を整備するためには取り組むべき作業に対する明確な優先順位付けが必要であるという意見が表明され興味深い展開となった。

これまでは深刻な経済危機もなく順調に経済が推移していたために、マクロ経済政策に対する関心が低下し、SNA統計も60年代以降に各国で導入された当時のような高揚感もみられないような状況となっていたかもしれない。今回の経済危機を契機にマクロ経済に対する関心が高まりつつあるが、同時に2月の国連統計委員会の決定を受けてマクロ経済面での基礎的情報を提供するためのSNA統計も見直しの時期と重なることとなった。国際的な基準に配慮しつつ日本経済を取り巻く環境にも配慮したSNA統計の見直しが求められている。

平成21年3月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 井上 裕行

【最新の研究発表】

  • 「平成19年度 非営利サテライト勘定に関する調査研究報告書」(平成21年2月)

    『平成19年度非営利サテライト勘定に関する調査研究報告書』は、日本における非営利サテライト勘定の充実を目的としている。その内容は、海外での非営利サテライト勘定の作成状況の調査を踏まえて、我が国における非営利サテライト勘定のあり方を検討したものである。本調査の成果が、非営利セクターの活動の把握のための基礎資料として広く活用されれば幸いである。

  • 長寿国となった経済価値はどれだけか? 経済成長の成果の一試算(河越 正明)(平成21年2月)

    1970年から2005年までの35年間に日本人の健康状態は大きく改善し、世界有数の長寿国となった。本稿はその価値を、Murphy and Topel(2003, 2006)に倣って、同期間の死亡率の低下に対する支払意思額(WTP, willingness-to-pay)を試算することで定量化した。試算結果によれば、その価値は2005年時点で年間165兆円程度、GDP比約3割に達する。また、割引率や効用関数のパラメータを変化させた場合にWTPがとり得る値を求めた。さらに人口要因がWTPに与える影響を分析し、1970年時点から人口が増加したこと、少子高齢化が進んだことが、年率換算でWTPをそれぞれ30兆円、20兆円程度増加させることを示した。2040年までを展望すると、生存率の改善の頭打ちと人口減少から、60兆円程度まで減少すると考えられる。また、死亡率の低下に要した医療費はWTPの10分の1以下であり、これまでの医療費の増加は費用便益分析上、合理的な支出増であったことが示唆される。

  • アジア諸国における外国人労働者受入政策の現状と課題別ウィンドウで開きます。(PDF形式 125 KB)(山本 栄二、藤川 久昭、堀 正樹)(平成21年3月)

    これまでアジア諸国は、外国人送り出し国としてのみ認識されていた。しかし、アジア諸国間での労働力移動が進展する中で、受け入れの色彩を強めている国、地域も出現している。具体的には、韓国、台湾、シンガポール、タイ、インドネシア、中国等である(順不同)。これらの国は、特に、短期での受け入れを中心に、外国人労働者を受け入れている。

    本研究では、このような状況に鑑み、これまで十分に研究・解明されてこなかった点について焦点をあてることにより、日本における外国人労働者政策への示唆を求めるものである。

    本稿は、調査対象を韓国、台湾、シンガポールに絞り、2007年度に各国へ出張して関係機関にヒアリングを行った内容をまとめたものである。


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>1月速報(平成21年3月10日)

  • 1 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:77.1、一致指数:89.6、遅行指数:92.1 となった。
    先行指数は、前月と比較して2.3 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は2.70 ポイント下降し、19 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は1.98 ポイント下降し、31 ヶ月連続の下降となった。
    一致指数は、前月と比較して2.6 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は2.63 ポイント下降し、6 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は1.80 ポイント下降し、11 ヶ月連続の下降となった。
    遅行指数は、前月と比較して1.2 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は1.83 ポイント下降し、13 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は1.26 ポイント下降し、21 ヶ月連続の下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。

<機械受注統計調査報告>1月実績(平成21年3月11日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、20年12月前月比10.4%増の後、21年1月は同18.5%減の1兆5,710億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、20年12月前月比1.7%減の後、21年1月は同3.2%減の7,183億円となった。このうち、製造業は同27.4%減の2,202億円、非製造業(除く船舶・電力)は同13.5%増の5,052億円となった。

<消費動向調査>2月調査(平成21年3月13日)

  • 平成21年2月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、1月の26.4から0.3ポイント上昇し26.7となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について、一年後の見通しを調査したところ、前月に比べ「上昇する」と思うとの回答割合が減少する一方で、「変わらない」と思うとの回答割合が増加し、「低下する」と思うとの回答割合は、前月に次ぐ13.2%となった。

【参考】<月例経済報告>2月(平成21年2月19日)

  • 景気は、急速な悪化が続いており、厳しい状況にある。
    • 輸出、生産は、極めて大幅に減少している。
    • 企業収益は、大幅に減少している。設備投資は、減少している。
    • 雇用情勢は、急速に悪化しつつある。
    • 個人消費は、緩やかに減少している。
  • 先行きについては、当面、悪化が続くとみられ、急速な減産の動きなどが雇用の大幅な調整につながることが懸念される。加えて、世界的な金融危機の深刻化や世界景気の一層の下振れ懸念、株式・為替市場の変動の影響など、景気をさらに下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
3月10日
(1月分)
3月18日
(1月分)
3月11日
(1月分)
3月13日
(2月分)
3月23日
(1~3月期)
4月6日
(2月分)
4月20日
(2月分)
4月9日
(2月分)
4月17日
(3月分)
 
5月12日
(3月分)
5月22日
(3月分)
5月15日
(3月分)
5月18日
(4月分)
 

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