ESRI通信 第8号

平成21年 4月20日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

経済研修所は2001年1月に発足した内閣府の機関であります経済社会総合研究所に置かれました。所長は研究所の次長が兼ねています。

経済研修所では、内閣府及び他省庁の職員を対象に、経済・社会活動の調査分析など職務遂行上必要とされる知識や技能の習得・向上を図ること及び経済の重要課題についての基礎理論や分析能力を養うことを目的に、計量経済研修・経済理論研修を実施しています。

最近、事実証拠に基づく政策evidence-based policyということが言われるようになり、経済済財政政策にはしっかりとした実証分析の裏づけが求められるようになってきており、益々、実証分析を実施する人材養成の場であります計量経済研修や経済理論研修の重要性が高まっております。

また、経済社会総合研究所や経済財政担当部局の職員や研究者に求められる計量経済分析能力やSNAに関する知識等が高度化してきております。このため、研修の講師とも相談しながら、最新の計量経済分析手法やEviews等のソフトに関する研修を進めているところです。経済理論研修においても今年2月に大阪大学の西條教授を講師に招いて「生身の人間を使って実験する経済学」である実験経済学の研修を実施しました。内閣府及び他省庁で100名近くの聴講者が集まり、関心の強さを実感しました。平成21年度においては実験経済学をシリーズ化したいと考えています。

経済社会総合研究所は、このような経済研修を積み重ねることにより政策研究の中枢を担うべき人材を育成するよう努めています。

次に、経済社会総合研究所が国民経済計算(SNA)統計を作成していることから、経済研修所の直轄事業で、我が国と経済関係が深く経済的影響も大きいASEAN主要国を対象に、経済情勢を把握するために最も重要な資料である国民経済計算(SNA)統計のこれらの国での改善や新しいSNAである93SNAの普及を促し、SNA統計作成技術のレベルアップを図るため、また、わが国及びASEAN各国間の情報交換・交流を促進するために、各国のSNA統計作成担当者を対象に講義・討議を行なっています。

また、開発途上国や東欧等の旧社会主義国の経済政策担当者や政府関係機関の職員を対象に、日本の経済発展と現状やマクロ経済政策等についての研修を国際協力機構(JICA)と協力しながら実施しています。20年度の研修受入国は経済発展状況を踏まえ、Aコースはエチオピア、イラク、ラオス等9カ国、Bコースはアルゼンチン、アルメニア、イラン、カザフスタン、スリランカ等8カ国でした。研修員は各国の経済政策、財政政策、金融政策を担当している若手政府職員です。加えて21年度には、イラク政府の強い要請に基づきイラク経済の復興に資するため、イラク経済財政政策担当者のみを対象とした単独の経済政策セミナーを実施する予定です。

その他には、「若手政策研究者育成プログラム(Young Professional Program)制度」を実施しています。この制度は、大学院博士課程等に在籍し、政策研究を専攻している学生を対象に、経済社会総合研究所が取り組んでいる政策研究に参画する機会を与え、実際の政策に則した研究の場で経験を積むことによって、大学での学術的研究と相俟って、政策研究に対する識見に富む有為の人材を育成することを目的として実施しております。

平成21年4月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    経済研修所前総務部長 高根沢寛

【最新の研究発表】

  • 雇用創出・消失と労働流出入の関係について(照山 博司、玄田 有史)(平成21年3月)

    本稿では、厚生労働省「雇用動向調査」の個票データを用いて、1997年から2005年までの個別事業所レベルでの雇用変動と労働移動の関係を考察した。その主な結果は、次の通りである。* 存続事業所への労働者の流入と流出の大部分は,採用と離職という外部労働市場を通じた移動であった。2000年以降,労働流入,流出ともに拡大する傾向を示す。この期間,雇用創出は安定し,雇用消失は縮小していた。したがって,労働流入出の拡大は,労働流入-雇用創出(=労働流出-雇用消失)で示される存続する雇用機会間の労働移動が高まったことが原因であったことがわかる。* 事業所開設による雇用創出の変動は、事業所廃止による雇用消失の変動よりも大きい。また、存続事業所への労働流入(採用)が高まる時期には、事業所開設による労働流入(採用)も同時に高まる傾向がある。存続事業所では、労働流出(離職)と共に労働流入(採用)も同時に高まるが、そのような時期には事業所廃止がもたらす労働流出(離職)は縮小する傾向にある。これらの要因で、事業所の開廃効果まで含めると、労働流入(採用)は労働流出(離職)より大きく変動することになる。* 存続事業所に関する労働流入出を企業規模別に見た場合,大規模企業でも中小規模企業と変わらないほどの労働流入出(採用・離職)が観測される。大規模企業では1990年代末以降に採用・離職が趨勢的に高まり,最近では中小規模企業とほぼ同水準となっている。とくに,大規模企業でみられる2002年以降の労働流入(採用)の増加が、全体でみた場合の労働流入(採用)増の源泉となっている。* 存続事業所に関する労働流入出(採用・離職)を産業別に見た場合,卸売・小売業、サービス業、製造業の貢献が大きく,この3産業で,労働流入・労働流出とも、7割から8割を占める。なかでも,卸売・小売業での労働流入出(採用・離職)がもっとも多く,2000年代にさらに上昇しつつある。* 事業所ごとのデータを分析すると,事業所の雇用創出(消失)の拡大には,主に採用(離職)増で対応し,離職(採用)減が果たす役割は大きくないことが示唆される。また,事業所の雇用創出,消失の程度にかかわらず,採用が多い事業所は離職も多いという関係が見出される。

  • 日本におけるマクロ経済政策効果の動学的特徴 1990年代におけるその変化(飯田 泰之、松前 龍宜)(平成21年3月)(本文は英語)

    本研究では現代の日本経済におけるマクロ経済政策の効果と動学的な波及経路について実証的分析を行う.そのため我々は複数のデトレンド手法を比較検討することを用いることで,データ処理に依存しないロバストな傾向を抽出することを試みた.経済政策の効果について,データの選択と処理への依存の小さい共通の特徴としては3つのものがあげられる.第一に財政政策の消費・投資への影響は90年代以降縮小している.第二に短期利子率の実体経済への影響力に大きな変化はない.第三に90年代後半については貨幣供給量と実体経済のリンクが弱まっている.これに加えて,各推計において「プライスパズル」の存在が散見されることから経済政策研究の基本モデルは今後修正を迫られる可能性もあるだろう.

  • 日本の医療サービスの生産性:病院の全要素生産性とDEA分析(元橋 一之)(平成21年3月)

    本稿においては2005年と2008年の「病院年鑑」(株式会社アールアンドディ)のデータを用いて、日本の病院に関する全要素生産性とDEA(Data Envelope Analysis)による効率性に関する分析を行った。約9000の全国のほとんどの病院をカバーするデータで開設者別の生産性に関する分析を行ったところ、国や都道府県が行う公立病院の生産性は医療法人と比べて高いことがわかった。また、DEAによる効率性について都道府県別の平均を見たところ、人口密度が高い都心部において必ずしも効率性が高いとは言えないことが分かった。

  • 各国中央銀行のマクロ計量モデルサーベイ~FPSとJEMの比較を中心として(佐藤 綾野)(平成21年3月)

    近年,各国の中央銀行によるマクロ計量モデルの開発において,動学的確率一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium,以下DSGEと呼ぶ)のフレームワークによるモデル構築が一般的になってきている.これらのマクロ計量モデルの利用目的は一般に,先行きの経済,政策分析や代替シナリオのシミュレーションなどであり,今後もこのようなモデルの活用は,ますます増加するものと考えられる. そこで本稿では,FRB,カナダ銀行,およびイングランド銀行の保有するマクロ計量モデルを概観し,さらに日本銀行によって開発されたJEMとニュージーランド準備銀行によって開発されたFPSについての紹介,および両モデルの比較と特徴の整理を行い,今後のマクロ計量モデル開発の方向性を示す.

  • 中国の各地域において、経済発展の度合いの違いが環境汚染にどのような影響を与えているのか(田口 博之、室伏 陽貴)(平成21年3月)(本文は英語)

    本研究では、中国の後発地域が国レベルの環境保護の取組みによる効果を享受している(「後発性利益」を得ている)のか、もしくは環境保護の取組みから取り残されているのか、さらには汚染産業移転による環境悪化が生じている(「後発性不利益」を被っている)のか、を環境クズネッツ曲線の分析手法を用いてパネルデータ分析を行った。 その結果、(1)産業からの環境汚染物については環境クズネッツ曲線が成立、(2)汚水では地域レベルの後発性利益が存在し、排気ガス・廃棄物では地域レベルの後発性不利益が発生している、(3)汚水、二酸化硫黄、煤では国レベルでの後発性利益が確認された。 地域レベルでの後発性利益・不利益において、水質と大気・廃棄物で対照的な結果となったのは政策効果の相違が考えられる。成熟し、効果的に設定された水質汚染の規制により国レベルの取組みの効果が後発地域にも及んでいる。一方、未成熟かつ非効率の大気・廃棄物の規制は後発地域への汚染物移転をもたらしてきた可能性がある。また、汚水、二酸化硫黄、煤で国レベルでの後発性利益が確認されたことは、中国が発展途上国として先進国から進んだ技術の移転を受けていることをあらわしている。

  • 都市・自治体経営におけるマネジメント・スタイル エンパワーメント型モデルの可能性を考える(大住 莊四郎)(平成21年3月)

    自治体マネジメントをどう創るか-という視点から、2008年2月に内閣府経済社会総合研究所において実施した「自治体マネジメントに関するアンケート調査」をもとに、先導・管理型とエンパワーメント型の二つのマネジメント・スタイルの形成の可能性を考えた。同アンケート調査からは、つぎのような推論が得られた。 (1) 日本の自治体の多くは、先導管理型のマネジメント・スタイルを志向していると思われるが、具体的な手法の適用にとどまっている例が多い。 (2) 日本ではエンパワーメント型マネジメント・スタイルは一般的でなく、認知度は低い。 (3) 具体的なケースからは、都市ビジョンとマネジメント・スタイルとの関連性は、明確にならなかった。 21世紀の環境変化により適応できるのは「エンパワーメント型マネジメント・スタイル」である。エンパワーメント型マネジメント・スタイルの設計には、ポジティブ・アプローチによる組織開発が有効とされている。

  • 我々は日本の経済予測専門家のサーベイ調査から何を学んだか ESPフォーキャスト調査の4年間を振り返る(小峰 隆夫、伴 金美、河越 正明、吉田 博)(平成21年3月)(本文は英語)

    本稿はESPフォーキャスト調査の4年間を振り返り総括することを目的とする。コンセンサス予測のパフォーマンスを評価すると、個々の予測に比べてよい成績を残している。これは例えば米国では知られた事実であったが、ESPフォーキャスト調査を用いることによっておそらく初めて日本で確認された。また、コンセンサス予測は、少なくともごく短期間の予測期間においては、Pesaran and Weale (2006)がいうところの平均的な形での合理的期待となっている。残された課題としては、リアル・タイム・データを用いた予測の更新の分析、予測値の予測者の主観的な分布についての分析、非専門家の予測の分析、リーマン・ショック後の予測の変化に関する分析などが上げられる。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<景気動向指数>2月速報(平成21年4月6日)

  • 2 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:75.2、一致指数:86.8、遅行指数:90.5 となった。
    先行指数は、前月と比較して2.0 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は2.13 ポイント下降し、 20 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は2.24 ポイント下降し、32 ヶ月連続の下降となった。
    一致指数は、前月と比較して2.7 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は2.60 ポイント下降し、 7 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は2.27 ポイント下降し、12 ヶ月連続の下降となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.8 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は1.44 ポイント下降し、 14 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は1.21 ポイント下降し、22 ヶ月連続の下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。

2月改訂(平成21年4月20日)

  • 2 月のCI(改訂値・平成17 年=100)は、先行指数:75.0、一致指数:86.0、遅行指数:90.6 となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。

<機械受注統計調査報告>2月実績(平成21年4月9日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、21年1月前月比18.5%減の後、2月は同7.1%減の1兆4,593億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、21年1月前月比3.2%減の後、2月は同1.4%増の7,281億円となった。このうち、製造業は同8.1%減の2,025億円、非製造業(除く船舶・電力)は同3.3%増の5,218億円となった。

<消費動向調査>3月調査(平成21年4月17日)

  • 平成21年3月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、2月の26.7から2.2ポイント上昇し28.9となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について、一年後の見通しを調査したところ、前月に比べ、「上昇する」と思うとの回答割合が減少する一方で、「低下する」と思うとの回答割合は増加し15.9%となった。「変わらない」と思うとの回答割合も増加し20.3%となった。

<法人企業景気予測調査>1~3月期調査(平成21年3月23日)

  • 21年1~3月期の「貴社の景況判断」BSIを全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「下降」超となっている。
    先行きを全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「下降」超で推移する見通しとなっている。
  • 21年1~3月期の「国内の景況判断」BSIを全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「下降」超となっている。
    先行きを全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「下降」超で推移する見通しとなっている。

【参考】<月例経済報告>4月(平成21年4月17日)

  • 景気は、急速な悪化が続いており、厳しい状況にある。
    • 輸出は、大幅に減少している。生産は、極めて大幅に減少している。
    • 企業収益は、極めて大幅に減少している。設備投資は、減少している。
    • 雇用情勢は、急速に悪化しつつある。
    • 個人消費は、緩やかに減少している。
  • 先行きについては、当面、悪化が続くとみられるものの、在庫調整が進展するにつれ、悪化のテンポが緩やかになっていくことが期待される。ただし、生産活動が極めて低い水準にあることなどから、雇用の大幅な調整が引き続き懸念される。加えて、世界的な金融危機の深刻化や世界景気の一層の下振れ懸念など、景気をさらに下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
4月6日
(2月分)
4月20日
(2月分)
4月9日
(2月分)
4月17日
(3月分)
5月12日
(3月分)
5月22日
(3月分)
5月15日
(3月分)
5月18日
(4月分)
6月9日
(4月分)
6月23日
(4月分)
6月10日
(4月分)
6月12日
(5月分)
6月22日
(4~6月期)

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