ESRI通信 第10号

平成21年 6月15日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【中国とどう向き合うか】

20世紀末及び21世紀初頭の国際関係において、中国の経済的台頭は、もっとも注目すべき現象の一つと言えよう。文明の衝突論に立つサミュエル・ハンチントンによれば、中国、日本、アメリカ三国の関係こそ東アジアの政治の核心であるが、その中でもっとも弱い日本と中国の関係を強化することは文化の違いと相互不信のため難しいという。21世紀初頭において日本は中国とどう向き合うべきだろうか。筆者は、数年前に、21世紀の日本の戦略としては、地域で孤立せず、台頭する中国と良好な関係を維持していくうえで、アジア太平洋地域主義とともに東アジア地域主義は共に有力な選択肢である旨論じた。( http://www2.jiia.or.jp/pdf/newsletter/shiten/0208_omura.pdf別ウィンドウで開きます。別ウィンドウで開きます。 )

アジア太平洋においても、東アジアにおいてもこれまで様々な国際的枠組みが発展してきており、日本は大事な役割を果たしてきている。世界経済危機の状況の下においても、危機脱出のためにこうした枠組みを活用することが可能である。アジア太平洋地域主義の代表的な枠組みとしてはAPECがあげられる。東アジア地域主義を考える上では、日本と中国を除外することはできない。日中関係は、それ自体世界で最も重要な二国間関係のひとつといえようが、それに加え、東アジア地域主義を進展させる上でも重要である。ESRIでは、過去数次にわたって、中国経済をテーマとする研究会を組織してきている。1997年、2003年に引き続き、2007年度より「中国経済発展と日中経済協力に関する研究会」(座長 堺屋太一・元経済企画庁長官)を実施中である。今年も、3月、北京において同研究会日本側メンバーと中国側有識者との間でワークショップを開催した。

今回のワークショップは、「世界金融危機下の日中・アジア協力」をテーマとし、世界的な経常収支の不均衡(グローバル・インバランス)と日中・アジア各国通貨協力、中国経済の構造改革、三農問題、地球環境問題などの問題を取り上げた。グローバル・インバランスは、米国の経常収支赤字と日中、産油国等の経常収支黒字からなっている。この赤字と黒字のどちらが原因でどちらが結果かについては論争がある。米国については、金融危機前の過剰消費が指摘される。危機後、米国では貯蓄率が上昇している。日中については外需依存の高さが指摘される。冒頭言及した、中国の急速な経済的台頭は、グローバル・インバランスの一因となっている。日中国交回復以来、日本は中国経済の近代化に力を貸してきている。民間の貿易投資の役割が大きいが、ODAをとってみても、3兆6000億円近くを供与してきている。しかし、中国経済近代化の真の原動力は、中国自身が、1970年代末から改革開放政策に転じたことである。その結果、膨大かつ安価な中国の労働力が徐々に世界経済に統合されてきている。これは、世界経済における分業のあり方に大きな影響を与えた。2001年の中国のWTO加盟は、世界経済への統合を加速化した。こうしたことが、世界規模での経常収支不均衡の背景の一つとしてあげられる。ワークショップにおいては、中国側参加者より、世界経済危機の根源は米国経済の諸問題であり経常収支インバランスではないとの指摘もあった。ESRIでは、同じく2007年度より、日本経済の主要な対外リスクに関する研究も実施しており、グローバル・インバランスの問題も取り上げられている。上記北京におけるワークショップにおいては、中国側が内需の盛り上げ、構造問題の改革に真剣に取り組もうとしていることが伺われた。日本側としても、こうした中国の改革努力に如何に効果的に協力するかが問われている。

平成21年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    上席主任研究官 大村 昌弘

【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>4月速報(平成21年6月9日)

  • 4 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:76.5 、一致指数:85.8、遅行指数:86.1 となった。
    先行指数は、前月と比較して1.0 ポイント上昇した。3 ヶ月後方移動平均は0.10 ポイント上昇 し、22 ヶ月振りの上昇、7 ヶ月後方移動平均は1.78 ポイント下降し、34 ヶ月連続の下降となった。
    一致指数は、前月と比較して1.0 ポイント上昇した。3 ヶ月後方移動平均は0.73 ポイント下降し、 14 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は1.80 ポイント下降し、14 ヶ月連続の下降となった。
    遅行指数は、前月と比較して1.4 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は1.50 ポイント下降し、 16 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は1.48 ポイント下降し、24 ヶ月連続の下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。
    ただし、CI一致指数の前月差が11 ヶ月振りにプラスに転じるなど、下げ止まりの動きも見られる。

<機械受注統計調査報告>4月実績(平成21年6月10日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、21年3月前月比13.2%増の後、4月は同12.7%減の1兆4,858億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、21年3月前月比1.3%減の後、4月は同5.4%減の6,888億円となった。このうち、製造業は同9.4%減の2,326億円、非製造業(除く船舶・電力)は同8.8%減の4,527億円となった。

<消費動向調査>5月調査(平成21年6月12日)

  • 平成21年5月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、4月の32.4から3.3ポイント上昇し35.7となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について、1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合が前月に比べ減少し40.1%となった一方で、「低下する」と思うとの回答割合は増加し22.3%となった。「変わらない」と思うとの回答割合も増加し28.2%となった。

【参考】<月例経済報告>5月(平成21年5月25日)

  • 景気は、厳しい状況にあるものの、このところ悪化のテンポが緩やかになっている。
    • 輸出、生産は、下げ止まりつつある。
    • 企業収益は、極めて大幅に減少している。設備投資は、減少している。
    • 雇用情勢は、急速に悪化しており、厳しい状況にある。
    • 個人消費は、緩やかに減少している。
  • 先行きについては、当面、雇用情勢が悪化するなかで、厳しい状況が続くとみられるものの、対外経済環境における改善の動きや在庫調整圧力の低下、経済対策の効果が景気を下支えすることが期待される。一方、生産活動が極めて低い水準にあることなどから、雇用情勢の一層の悪化が懸念される。加えて、世界的な金融危機の影響や世界景気の下振れ懸念など、景気をさらに下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
6月9日
(4月分)
6月23日
(4月分)
6月10日
(4月分)
6月12日
(5月分)
6月22日
(4~6月期)
7月6日
(5月分)
7月17日
(5月分)
7月8日
(5月分)
7月13日
(6月分)
8月6日
(6月分)
8月18日
(6月分)
8月10日
(6月分)
8月11日
(7月分)

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