ESRI通信 第17号

平成22年 1月20日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【統計作成者としての責務】

経済社会総合研究所の業務の重要な柱として統計作成業務がある。なかでも、国民経済計算は適切な経済運営を実施するために欠くことのできない重要な指標を提供するものであり、それだけにQE(四半期別GDP速報)公表時には大きな注目を集めることになる。

当たり前のことではあるが、統計は統計自身のために存在するのではない。国民が適切な行動を採ったり、政府が適切な政策を発動したりする際の合理的な意思決定ツールとしての機能は統計に求められる最も重要な機能であろう。

国民経済計算は、基礎統計などを用いて推計する加工統計として位置付けられる。だから、基礎統計の改善によって加工統計である国民経済計算が改善する面があることは確かである。しかし、基礎統計の改善のみに依存し国民経済計算を担当する部局自体の対応がおろそかになれば、結局のところ国民経済計算の改善は図られない。

国民経済計算の改善には大きく言って二つの観点がある。一つは迅速性(公表の早期化)。もう一つは正確性(推計精度の向上)である。国民経済計算、なかでもその速報値であるQEには迅速性が求められる。適切なタイミングで経済政策を発動するためには、現実の経済の動きと政策発動との間のズレを可能な限り縮小することが必要だからだ。一方、国民経済計算は、QE、確報、確々報、基準改定と経るにしたがい、公表値が大幅に改定される場合がある。我が国の国民経済計算の改定幅は諸外国のそれに比べて相対的に大きいので問題であるとの指摘もある。

一般に、迅速性を追いかけるとどうしても正確性がおろそかになる。国民経済計算を担当する部局として、この迅速性と正確性とのトレードオフの関係は最も悩まされる事象の一つである。しかし、迅速性や正確性の両方を求めるニーズがある限り、我々統計作成者は両方を追いかける責務があるのだと思っている。

今後、平成17年基準改定作業が本格化していく。今回の基準改定では、経済活動を適切に捉えるなどの観点から多くの新たな概念や推計方法を導入することとされている。このため、これまでの基準改定作業よりも相当程度大掛かりな対応が求められることになる。新年を迎え、統計作成者に課せられた責務を改めて認識し、その上で山積する課題に取り組んでいくこととしたい。

平成22年1月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    国民経済計算部長 豊田 欣吾

【最新の研究発表】

  • 「人口大国」の経済成長と世界経済に与えた影響(松谷 萬太郎)(平成21年12月)

    最近の20年は、グローバル化の機運が一気に高まり、インドや中国のように10億人を越える人口を持つ「人口大国※」が工業化し、世界経済に影響を与えるようになった。 本論文では、過去の中国等「人口大国」の経済成長により生じた主要な議論、第1は、そもそも「人口大国」が主にどのような要因で高い経済成長を実現したのか、第2は、「人口大国」がグローバルなインパクトを与えた結果、既存の先進国の経済にいかなる影響を与えたか、を分析課題とする。ここでは、この2点に経済学的な側面から焦点をあて、グローバルな問題として数量的に分析する。 第1章では、本論文の分析の視点を整理し、第2章では、その分析の枠組み、第3章以下では、中国を中心とした「人口大国」の発展要因や先進国への影響を数量的に検討する。 本論文の主な分析の結果では、これまでの「人口大国」の経済発展の要因としては、技術進歩の寄与が特に大きいこと、また先進国経済にプラスの影響を生産、消費両面から与えたが、分析の対象とした1990年代では、数量的にみれば大きくないことが明らかになる。更に政策的含意としては、各国経済が柔軟な対応能力を持ち続けることが極めて重要であることを指摘する。例えば、賃金等が硬直的であれば、先進国は「人口大国」の経済成長から得ていた利益を失うことになる試算を示す。
    (※「人口大国」は、厳密には本文のp3で定義が行われるが、経済学的な観点から言えば、例えば、「人口大国とは、大規模な労働力があたかも無限に供給されることで、実質賃金が四半世紀にもわたる高度成長にも拘らず不変に止まる国」と定義できる。)


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>11月速報(平成22年1月8日)

  • 11 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:91.2、一致指数:95.9、遅行指数:82.8 となった。
    先行指数は、前月と比較して1.8 ポイント上昇した。3 ヶ月後方移動平均は2.40 ポイント上昇し、8 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は2.09 ポイント上昇し、5 ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して1.6 ポイント上昇した。3 ヶ月後方移動平均は1.44 ポイント上昇し、7 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は1.38 ポイント上昇し、4 ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.9 ポイント下降した。3 ヶ月後方移動平均は0.14 ポイント下降し、2 ヶ月ぶりの下降、7 ヶ月後方移動平均は0.49 ポイント下降し、31 ヶ月連続の下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>11月実績(平成22年1月14日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、21年10月前月比3.2%増の後、11月は同8.0%減の1兆6,356億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、21年10月前月比4.5%減の後、11月は同11.3%減の6,253億円となった。このうち、製造業は同18.2%減の2,403億円、非製造業(除く船舶・電力)は同10.6%減の3,807億円となった。

<消費動向調査>12月調査(平成22年1月19日)

  • 平成21年12月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、11月の39.5から1.9ポイント低下し37.6となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「低下する」と思うとの回答割合が前月に比べ増加し31.9%となった。一方、「上昇する」と思うとの回答割合は減少し29.2%となり、「変わらない」と思うとの回答割合も減少し29.1%となった。

<法人企業景気予測調査>10~12月期調査(平成21年12月24日)

  • 21年10~12月期の「貴社の景況判断」BSIを全産業で見ると、大企業は2期ぶりに「下降」超となった。中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超となっている
    先行きを全産業で見ると、大企業は22年1~3月期に「下降」超幅が拡大した後、4~6月期にはわずかに「上昇」超に転じる見通し、中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超で推移する見通しとなっている。
  • 21年12月末時点の「従業員数判断」BSIを全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「過剰気味」超幅は縮小している。

【参考】<月例経済報告>12月(平成21年12月22日)

  • 景気は、持ち直してきているが、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。
    • 輸出は、アジア向けを中心に、増加している。生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、大幅な減少が続いているが、そのテンポは緩やかになっている。設備投資は、下げ止まりつつあるものの、このところ弱い動きもみられる。
    • 企業の業況判断は、依然として厳しい状況にあるものの、全体として持ち直しの動きが続いている。ただし、中小企業では先行きに慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、依然として厳しい。
    • 個人消費は、持ち直しの動きが続いている。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面、厳しい雇用情勢が続くとみられるものの、海外経済の改善や緊急経済対策の効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。一方、雇用情勢の一層の悪化や海外景気の下振れ懸念、デフレや金融資本市場の変動の影響など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
1月8日
(11月分)
1月21日
(11月分)
1月14日
(11月分)
1月19日
(12月分)
2月5日
(12月分)
2月18日
(12月分)
2月10日
(12月分)
2月12日
(1月分)
3月9日
(1月分)
3月18日
(1月分)
3月10日
(1月分)
3月15日
(2月分)
3月18日
(1~3月期)

SNA(QE)統計の公表予定はこちらから


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