ESRI通信 第21号

平成22年 5月19日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【「ブラッセル・フォーラム」とギリシャ危機】

3月26日から28日にかけてブラッセルで開催された、第5回「ブラッセル・フォーラム」に初めて参加した。金融経済危機の下での、異例の財政金融政策レジームからの出口戦略はどうあるべきかというパネルの討論者として招待されたためである。このフォーラムは、民間のシンクタンクであるドイツ・マーシャル・ファンドが主催するものであるが、ベルギー政府やEU委員会も全面的にバックアップしている。出席者は300名程度であるが、アメリカやEU議会の議員が多数参加しているほか、政府、国際機関、大学、シンクタンク、メディア関係者が参集して、密度の高い議論を早朝から深夜まで行っている。

一つのパネルは1時間半程度であるが、パネリストが、司会役と会場参加者からの質問に対して応答する形で議論が展開され、事前に準備したスピーチなどを読んではならないというルールになっている。進行の打ち合わせは、会議直前の5分というおおらかさには驚いたが、質疑は時として白熱し、パネル終了時には何か新たな知見を得たような、充実したやりとりが行われる。司会役は新聞の論説委員やテレビ放送の人気ニュースキャスターである。

私が出席したパネルの討論者は、私を含めゼーリック世界銀行総裁、レーン経済・通貨担当欧州委員、コリンズアメリカ財務省次官補の4人であった。司会役はドイツのテレビ放送ニュースキャスターのゴフ氏であった。

このパネルの前日にギリシャの財政危機に関するユーロ圏財務大臣会合が開催され、ギリシャに対する最初の450億ユーロ(300億ユーロはユーロ加盟国、150億ユーロはIMF)の金融支援パッケージが決定された。パネルで出口戦略を語る前に財政危機が発生し、そして、それがユーロ危機、金融危機に飛び火しそうな緊迫した雰囲気があった。

国際通貨としてのユーロの信頼性は将来どうなるのかという司会の質問があったので、私は、ユーロ加盟国が財政規律を維持し、通貨統合から財政の統合まで進化して行けるかどうかにユーロの将来がかかっていると述べた。2月にショユベル独財務大臣が病室から提案し、ドイツ財務省を震撼させた「欧州通貨基金」提案を意識しながら、1997–98年のアジア危機に際しての「アジア通貨基金」構想との比較の話をした。

アジア通貨基金構想は実らなかったが、そこから生まれたチェンマイ・イニシアティブにおいては、融資の8割はIMFのコンディショナリティに服すことになっている。その融資条件が厳しいので融資を受けようとする国がこれまでおらず、アジアにおいて独自のサーベイランスを行なうことになったと述べた。

その後、金融市場の動揺は収まらず、他の南欧諸国への伝播が危惧されるようになり、5月に金融支援額は総額7500億ユーロまで拡大した。このうちユーロ加盟国が拠出する4400億ユーロ(IMFの保証も加えると利用可能な額は7200億ユーロ)で「欧州安定化基金」が設立されることになった。この基金が、財政政策のサーベイランス強化など財政統合に向けてのステップになるのかどうか、また国家債務のリストラクチャリングに活用されるようになるのかが次の焦点になるであろう。

日本においても、ブラッセル・フォーラムに負けない、質の高い政策論議を行なう国際的な場を準備できるだろうかというのが、帰途についた私にのしかかってきた重い課題である。

第5回ブラッセル・フォーラム

写真右から 司会ゴフ氏、レーン経済・通貨担当欧州委員、ゼーリック世界銀行総裁

平成22年5月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    所長 岩田 一政

【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期GDP速報における「公的固定資本形成」及び「国内家計最終消費支出の需要側補助系列」の推計方法の変更等について(平成22年4月27日)
  • 四半期別民間企業資本ストック速報(平成21年10-12月期)(平成22年4月28日)

    1.有形固定資産 全産業(進捗ベース)

    • 21年12月末のストックは1,210.0兆円、前年同期比0.1%減となり、2期連続のマイナスとなった(前期0.2%減)。
    • 21年10~12月の新設投資額は15.2兆円、同14.2%減となり、5期連続のマイナスとなった(前期22.8%減)。

    2.無形固定資産 全産業(取付ベース)

    • 21年12月末のストックは36.3兆円、前年同期比0.4%増となり、前期の伸び(0.6%増)を下回った。
    • 21年10~12月の新設投資額は1.5兆円、同2.4%減となり、5期連続のマイナスとなった(前期8.4%減)。
  • 民間企業資本ストック年報(平成20年度)(平成22年4月28日)
  • SNA(国民経済計算)HPのQ&A更新について(「高等学校授業料サービスの扱い」等)(平成22年5月10日)
  • 平成20年度国民経済計算確報(フロー編:参考試算値(間接的に計測される金融仲介サービス(FISIM)))(平成22年5月12日)

<景気動向指数> 3月速報(平成22年5月12日)

  • 3月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:102.8、一致指数:101.1、遅行指数:85.4 となった。
    先行指数は、前月と比較して4.4 ポイント上昇し、13 ヶ月連続の上昇となった。3 ヶ月後方移動平均は2.84 ポイント上昇し、12 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は2.77 ポイント上昇し、9 ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して1.1 ポイント上昇し、12 ヶ月連続の上昇となった。3 ヶ月後方移動平均は1.53 ポイント上昇し、11 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は1.62 ポイント上昇し、8 ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して1.2 ポイント上昇し、4 ヶ月連続の上昇となった。3 ヶ月後方移動平均は1.34 ポイント上昇し、4 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は0.57 ポイント上昇し、3 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>3月実績(平成22年5月17日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、22年2月前月比1.6%増の後、3月は同3.6%増の1兆9,978億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、22年2月前月比3.8%減の後、3月は同5.4%増の7,329億円となった。このうち、製造業は同3.1%増の3,165億円、非製造業(除く船舶・電力)は同12.6%増の4,431億円となった。
  • 1~3月をみると、受注総額は前期比9.0%増の5兆8,247億円となった。「船舶・電力を除く民需」は同2.9%増の2兆1,514億円、製造業は同13.6%増の9,176億円、非製造業(除船舶・電力)は同3.4%減の1兆2,454億円となった。
  • 4~6月見通しをみると、受注総額は前期比4.7%減の5兆5,480億円の見通しになっている。「船舶・電力を除く民需」は同1.6%増の2兆1,858億円、製造業は同16.0%減の7,709億円、非製造業(除船舶・電力)は同14.4%増の1兆4,248億円の見通しになっている。
  • 平成21年度実績をみると、受注総額は前年度比18.8%減の20兆7,973億円になっている。「船舶・電力を除く民需」は同20.6%減の8兆4,337億円、製造業は同27.8%減の3兆1,736億円、非製造業(除船舶・電力)は同15.8%減の5兆2,908億円になっている。

<消費動向調査>4月調査(平成22年5月18日)

  • 平成22年4月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、3月の40.9から1.1ポイント上昇し42.0となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「低下する」と思うとの回答割合が前月に比べ減少し16.3%となった。一方、「上昇する」と思うとの回答割合は増加し39.2%となり、「変わらない」と思うとの回答割合は減少し35.9%となった。

<企業行動に関するアンケート調査>平成21年度(第1次集計 平成22年2月19日、第2次集計 平成22年5月11日)

  • 予想実質経済成長率は、22年度0.4%、今後3年間(22~24年度)0.1%、今後5年間(22~26年度)1.3%となった。
  • 予想名目経済成長率は、22年度は0.1%、今後3年間では0.6%、今後5年間では1.0%となり、名実逆転が続き、デフレが長期化する予想となっている。
  • 1年後の予想円レートは95.9円/ドルと、昭和61年度調査の開始以来最も円高の予想となっている。
  • 輸出企業の採算円レートは、92.9円/ドル(前年度差4.4円)と、昭和60年度の調査開始以来最も円高水準となった。
  • 今後3年間の設備投資の見通しは1.4%とプラスに転化、目的は生産能力の拡大が大幅に減少、維持更新が増加している。
  • 企業は今後の戦略として、新商品の開発や内需、外需の取り込みを強化していく姿勢で、海外現地生産比率は現地需要の拡大などを理由に、平成26年度見通し20.1%と過去最高の見通しとなっている。

【参考】<月例経済報告>4月(平成22年4月16日)

  • 景気は、着実に持ち直してきているが、なお自律性は弱く、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある。
    • 輸出は、緩やかに増加している。生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善している。設備投資は、下げ止まりつつある。
    • 企業の業況判断は、改善している。ただし、中小企業では先行きに慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
    • 個人消費は、持ち直している。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、企業収益の改善が続くなかで、海外経済の改善や緊急経済対策を始めとする政策の効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。一方、海外景気の下振れ懸念、デフレの影響など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。また、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
5月12日
(3月分)
5月21日
(3月分)
5月17日
(3月分)
5月18日
(4月分)
6月8日
(4月分)
6月17日
(4月分)
6月9日
(4月分)
6月10日
(5月分)
6月14日
(4~6月期)
7月6日
(5月分)
7月20日
(5月分)
7月8日
(5月分)
7月13日
(6月分)

ご意見・ご感想はこちらから

新着情報メール配信の登録内容の変更・停止等はこちらから

  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)