ESRI通信 第22号

平成22年 6月11日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【より効果的な研修を目指して】

内閣府の発足と同時に、経済社会総合研究所に設置された経済研修所の活動も10年目に入りました。経済・社会活動の調査分析に必要となる知識や技能の習得・向上を図るため、計量経済分析手法、EViewsやStata等の計量分析ソフトの活用法、SNA(GDP統計等の国民経済計算)に関する研修を中心に、平成22年度は16コースの研修を実施する予定です。研修生が実践的な知識・技能を修得できるよう、多くのコースでは実際にパソコンを操作しながら受講する方法を採っています。幸い受講者数は近年増加傾向にあり、21年度は内閣府及び霞が関の他省庁等からの参加者が合計557名に達しました(1年目の13年度は165名)。

当経済研修所は自前の研修施設は所有しておらず、各研修毎に中央合同庁舎第4号館内の会議室を利用し、外部から大学教授等の講師を招聘して行っています。使用するパソコンもその都度レンタルして調達します。多くの研修コースで、内閣府の職員だけでなく、財務省、経済産業省など霞が関の他省庁の職員が受講しているのも特色の一つです。21年度の受講生のうち、半数以上の322名が他省庁等からの参加者でした。計量分析的手法は、経済政策だけでなく多くの分野の政策企画担当者に必須のものとなってきています。各省毎に小規模で研修を行うよりも、内閣府でまとめて実施する方が効率的と考えています。今年度からは、衆議院と参議院の事務局職員も受講しています。また、我が国と関係の深いASEAN諸国の統計実務担当者を対象とするSNA研修や、JICA(国際協力機構)と協力して、発展途上国や市場経済移行国の経済政策担当者や政府関係機関の職員を対象とするマクロ経済政策の研修も行っています。21年度の外国人研修生の受入れは、9件74名でした。

昨年の行政刷新会議の事業仕分けにおいて、国の研修施設が取り上げられるなど、公務研修についても効率的な運用が求められています。当経済研修所においても、パソコンを使用する研修を一定時期に集中して実施するなど、費用対効果の観点から効率的に行う工夫をしていますが、研修本来の目的である人材育成、業務効率化への寄与を常に意識して、より効果的な研修となるよう、内容の改善を図っていきたいと考えています。

計量経済分析入門コースの様子
計量経済分析入門コース(2010年5月)
SNA統計研修の様子
SNA統計研修(2009年2月)

平成22年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    経済研修所総務部長 勝見 博

【最新の研究発表】

  • 地球規模の炭素市場への移行におけるセクター・アプローチのメリット(藤原 範子、アントン・ゲオルギエフ、モニカ・アレシ)(平成22年6月)(本文は英語)

    温室効果ガス削減のためのセクター・アプローチには少なくとも3つの主要なモデルが存在する。第一に、産業界主導による国境横断的な取り組み、第二に、発展途上国のセクター単位のコミットメント、第三に、セクター単位のクリーン開発メカニズム(CDM)あるいはセクター・クレジット方式である。産業界主導の国境横断的な取り組みには、鉄鋼、セメント、アルミニウム等各業界の事例があるが、いずれも境界の設定、データの収集などベンチマーキングに重点を置いている。一方、途上国の主要なセクターにおいて、野心的なコミットメントを求め、それを上回る成果を上げればクレジットを発行するという考え方もある。セクター・クレジット方式からセクター・トレード方式への移行は、広義の柔軟性措置(京都メカニズムなど)が現行のプロジェクト型CDMからプログラム型CDMを経てキャップ・アンド・トレード方式へ発展する過程の中間点に位置づけられる。セクター・アプローチは地球規模の炭素市場に移行する過程の一部として考えられる。

    セクター・ベンチマークは、現在EUにおいては、排出量取引制度(EUETS)とセクター・アプローチとの重要な接点となっている。セクター・ベンチマークには3つの主要な役割がある。第一に排出上限の設定、第二に排出枠の無償割当、第三に炭素市場の連携の媒介である。

    セクター・アプローチをさらに効果的にするには、実績の指標、報告、遵守という3つの側面を強化する必要がある。特に、指標の測定可能性は、セクター・アプローチを具体的に運用する上で不可欠となろう。さらに国境を超えて共通の科学的な測定尺度を必要とする可能性がある。測定と報告については、国連、EU,民間など様々なレベルで、具体的な協力が進んでいる。

    2012年以降の気候変動の国際的枠組みは、おそらく、さらなる「分散化(国連主導から加盟国主導へ)」と「柔軟性措置の活用」に向かうであろう。加盟国主導の枠組みは、各国、特に途上国の独自の取り組みに対する適正な測定、報告、検証に、大きく依存することになる。セクター・アプローチを具体的に運用するには、国連気候変動枠組み条約の下で、複数の合意やメカニズムが必要になる。主に、政府間合意のみ、あるいは政府間合意と国内の政府と産業界との合意の組み合わせという選択肢がある。

    結論として、本稿は、セクター・アプローチが、温室効果ガスの排出に最適な上限を設け排出枠を分配する方法、特にベンチマーキングの開発に寄与しうることを明らかにした。

  • 区間データを用いたインフレ期待の計測(村澤 康友)(平成22年6月)(本文は英語)

    期待インフレ率の定性的な調査データを定量化するカールソン=パーキン法は次の3つを仮定する。(1)回答者の期待インフレ率は正規分布に従う。(2)物価が「上がる」「下がる」と回答する期待インフレ率の閾値は上下対称で不変。(3)計測期間を通じて期待インフレ率と実際のインフレ率の平均は等しい。区間データなら3つの仮定は不要になる。2004年4月以降の「消費動向調査」では回答者は期待インフレ率を7つの区間から選択して回答する。したがって閾値を含め最大6つの未知母数を毎月独立に識別できる。正規分布、歪んだ正規分布、歪んだt分布でモデル選択を行ったところ、すべての月で歪んだt分布が選択された。期待インフレ率の分布の推移の研究は期待形成の異質性の理解に役立つ。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 平成19年度県民経済計算(群馬県の計数の訂正、政令指定都市の追加)(平成22年6月8日)
  • 四半期別GDP速報(2010(平成22)年1–3月期・2次速報)(平成22年6月10日)
    1. 平成22年6月10日に公表した22年1–3月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が、1.2%(年率5.0%)と同年5月20日に公表した1次速報(実質GDP成長率1.2%(年率4.9%))からわずかに上方改定となった。
    2. これは、1次速報時点では取り込むことのできなかった情報を取り込んだ結果、民間最終消費支出、公的固定資本形成などの需要項目が上方改定となった一方で、民間企業設備、民間在庫品増加などの需要項目が下方改定となったためである。

<景気動向指数>4月速報(平成22年6月8日)

  • 4月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:101.7、一致指数:101.6、遅行指数:82.6 となった。
    先行指数は、前月と比較して0.2 ポイント下降し、14 ヶ月ぶりの下降となった。3 ヶ月後方移動平均は1.60 ポイント上昇し、13 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は2.16 ポイント上昇し、10 ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して1.1 ポイント上昇し、13 ヶ月連続の上昇となった。3 ヶ月後方移動平均は0.77 ポイント上昇し、12 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は1.47 ポイント上昇し、9 ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して2.2 ポイント下降し、5 ヶ月ぶりの下降となった。3 ヶ月後方移動平均は0.33 ポイント下降し、5 ヶ月ぶりの下降、7 ヶ月後方移動平均は0.20 ポイント上昇し、4 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<景気動向指数研究会>6月7日開催(平成22年6月7日)

<機械受注統計調査報告>4月実績(平成22年6月9日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、22年3月前月比3.6%増の後、4月は同2.2%減の1兆9,534億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、22年3月前月比5.4%増の後、4月は同4.0%増の7,619億円となった。このうち、製造業は同5.5%減の2,963億円、非製造業(除く船舶・電力)は同5.3%増の4,640億円となった。

<消費動向調査>5月調査(平成22年6月10日)

  • 平成22年5月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、4月の42.0から0.8ポイント上昇し42.8となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「低下する」と思うとの回答割合が前月に比べ減少し13.1%となった。一方、「上昇する」と思うとの回答割合は増加し46.0%となり、「変わらない」と思うとの回答割合は減少し32.2%となった。

【参考】<月例経済報告>5月(平成22年5月24日)

  • 景気は、着実に持ち直してきているが、なお自律性は弱く、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある。
    • 輸出は、緩やかに増加している。生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善している。設備投資は、下げ止まりつつある。
    • 企業の業況判断は、改善している。ただし、中小企業では先行きに慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
    • 個人消費は、持ち直している。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、企業収益の改善が続くなかで、海外経済の改善や緊急経済対策を始めとする政策の効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。一方、欧州を中心とした海外景気の下振れ懸念、金融資本市場の変動やデフレの影響など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。また、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
6月8日
(4月分)
6月17日
(4月分)
6月9日
(4月分)
6月10日
(5月分)
6月14日
(4~6月期)
7月6日
(5月分)
7月20日
(5月分)
7月8日
(5月分)
7月13日
(6月分)
8月6日
(6月分)
8月18日
(6月分)
8月11日
(6月分)
8月12日
(7月分)

SNA(QE)統計の公表予定はこちらから


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