ESRI通信 第23号

平成22年 7月14日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【統計関係の最近の動向】

内閣府経済社会総合研究所では、各種経済統計を作成しています。そこで、最近の動向について簡単にまとめてみました。

景気統計部関係では、6月7日に景気動向指数研究会を開催し、第14循環の景気の谷については、2009年3月と暫定的に設定することとしました。今後、23年度に予定される景気の山谷の確定及び景気動向指数の改訂に向け、採用系列の見直し、外れ値処理などについて検討を進める予定です。機械受注調査においては、4月分から公表資料の業種別分類を平成14年標準産業分類へと移行しております。また、民需については、「携帯電話を除く」系列を参考系列として掲載しております。

国民経済計算部関係では、現在GDP統計の在り方の検討を進めております。このうち、短期的な検討課題として挙げられている民間企業設備投資や民間在庫投資等の推計方法の見直しについては、有識者から理論的・実証的な分析についてご協力をいただき、検討結果について取りまとめたところです。また、平成12年基準から平成17年基準改定への移行の作業も並行して行われております。通常の基準改定作業に加えて、統計委員会の審議等を踏まえて、FISIM(間接的に計測される金融仲介サービス)、自社開発ソフトウェア、育成資産、資本ストックの時価評価、政府機関の部門分類(格付け)など、多岐にわたる課題について検討を進めております。さらに、平成24年2月に予定される「経済センサス-活動調査」を視野に年次推計方法の見直しを進めています。このほか、1993SNAから2008SNAへの移行に関連した課題も山積しております。ここで詳細に触れるわけにはまいりませんが、ホームページや「季刊国民経済計算」をご参照いただければ幸いです。

定期的な統計数字の公表の裏側で、さまざまな見直しや検討作業が同時並行で続いております。これらの見直しに当たっては、統計委員会や研究会をはじめとする有識者や統計ユーザーの皆様からのご意見も参考にさせていただくとともに、適時適切な情報提供に努めてまいりたいと考えております。関係各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。

平成22年7月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    次長 中藤 泉

【最新の研究発表】

  • EITC(給付付き税額控除)と米国低賃金労働市場(ジョン カール ショルツ)(平成22年6月)(本文は英語)

    勤労所得税額控除(EITC)は、米国における現金支給等による反貧困層計画(プログラム)である。ある基準以下の収入しかない場合、納税者は税還付を申し立てることによりEITCの適用を受けることができる。EITCは子供を持つ家計に適用可能な制度であり、納税者は半年以上の期間、子供と同居していないと受給資格がない。本論文では米国におけるEITCと低賃金労働市場について論じてみたい。

    第1章では、低賃金の米国人に適用可能な公的補助制度を概観する。米国におけるセーフティ・ネットは、家計収入に応じた給付がなされ、社会保険制度と組み合わせて提供されている。その結果、同額収入の個人や家計であっても、全く異なる給付を受け取ることになる。子供を持つ家庭、とりわけ、片親の家庭は現金給付や食費補助、健康保険、学校給食、さらに住宅給付も受け取ることができる。身障者は、より多くの現金給付や健康保険給付を受け取ることになる。大多数の老齢者は公的老齢年金、健康保険を給付され、低所得者層は現金給付を受取り、別種の健康保険制度からの給付もある。健常者や(働き盛りで)子供を持たない成人はある一定期間の食費補助がある。以上のような様々な制度や特殊な状況下にある家庭や個人が受取る給付に関して、実際に調査した金額的規模について簡単に述べてみたい。

    第2章ではEITCについて述べる。税額控除のこれまでの発展を述べ、控除の対象と反貧困層への効果に関する研究結果、労働力供給への効果、EITCの制度管理・法令順守、そして幅広いセーフティ・ネットといかにうまく適合するか等の課題についてまとめる。前述のとおり、EITCは米国の反貧困層政策で中心的な役割を担っている。しかしながら税額控除は収入のある人たちだけに適用されるものなので、働けない或いは労働意欲の欠如している人たちには、この制度は何も提供するものではない。

    第3章では、現在米国の反貧困層政策が直面する3つの問題点と、これらの問題に効率よく取り組めるかというEITCの実行能力を論じている。これらの問題には、まず、貧困限界線以下の収入しかない個人(子供を持たない個人で、米国の国政調査局の用語では “unrelated individuals”と呼んでいる)の数が顕著に増加しているという事象が含まれている。こういった傾向は、(これがすべてではないが)部分的には労働力市場には含まれない少数の低学歴男性が憂慮すべき程に急増していることから引き起こされている。第二に、現在アメリカのセーフティ・ネットは労働に関するものである。このことは、何かしらの理由で仕事につけない、あるいは仕事をしたくない人たちを支援するために、何ができるのかということが問題として提起されているためである。第三に、米国ではセーフティ・ネットの構造は明らかに労働志向であるが、一方で自給が達成できるような賃金増加につながる効果的アプローチであるとの有効な論拠はほとんどない。

    政策的インプリケーションは、最終章で述べている。この章では、EITCのような政策を政策立案者(や国民)が遂行しようと希望する場合、米国以外ならばどんな問題が生じてくるかを論じている。

  • 固定資本マトリクスを基礎とした IT投資の実証分析―2005年産業連関表に基づくデータからの考察―(篠崎 彰彦、久保田 茂裕、山本 悠介)(平成22年7月)

    本論文は、IT導入の経済効果を実証分析する上で欠かすことのできないIT投資や情報資本ストックなどの基礎統計を、2009年3月に公刊された『平成 17年(2005年)産業連関表』の「固定資本マトリクス表」を基に、ハードウェア、ソフトウェア、通信インフラの別に構築した上で、日本のIT投資や情報資本ストックの蓄積が近年どのように推移しているかを明らかにし、企業のIT投資需要による生産や雇用への波及効果が1995年以降どのように変化しているかを分析したものである。分析の結果、日本のIT投資は、1990年代初頭までは順調に拡大したものの、それ以降は増減を繰り返しながら低迷を続け、情報資本ストックの蓄積が鈍化していること、その影響もあってIT投資から生まれる需要面の経済波及効果も低下しており、特に、コンピュータ関連などのハードウェアでその傾向が強いこと、ただし、サービス化や知識集約化が進展する中で、ソフトウェア投資の投資波及効果が高まっていること、などが明らかとなった。

  • 首都直下地震がマクロ経済に及ぼす影響についての分析(佐藤 主光、小黒 一正)(平成22年7月)

    本稿は簡単な(ケインズ型)マクロ経済モデルを用いて、首都直下地震が経済成長率や物価水準、金利、財政収支に及ぼす影響を試算することで、大規模災害がマクロ経済に与えるインパクトを定量的に評価する。結果、震災直後こそ実質GDPは落ち込むものの、その後復興需要に応じて経済は急回復すること、「平均的」にみれば、首都直下地震の効果は限定的なことが示された。その理由には、高齢化に伴い我が国の経済が低迷傾向にある中、大規模災害は大きなマクロの需給ひっ迫要因にならないことが挙げられる。ただし、インパクトの「分布」で評価すれば、金利の急上昇、財政の破たんの確率を総じて高めることも示された。本稿では、巨大災害の影響を抑える事前の対策とその効果についても検証する。事前策として取り上げるのは災害基金(キャプティブ)の積み立て、及び財政再建である。前者は、災害の直接被害を補てんするもので、迅速な復興を促す。他方、後者は復興需要の増加による金利の上昇圧力を緩和する効果を発揮する。

  • ソーシャル・キャピタルと賃金マツ永 佳甫)(平成22年7月)

    賃金が社会的属性や人的資本により決定されることは、すでに多くの先行研究で明らかにされている。一方で先行研究は、社会的属性や人的資本だけでは賃金を十分説明できないことも明らかにしている。本稿の推定結果より、人を信頼し、広いネットワークを構築することができる労働者は、そうでない労働者より所得が高いことが明らかとなった。また、人的資本が賃金に与える影響の程度は男女間で差があり、イコール・フッティングが成り立っていないが、ソーシャル・キャピタルが賃金に与える影響は同程度であり、イコール・フッティングが成り立っていることも明らかとなった。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>

  • 「ギリシャ財政危機と今後の世界経済」 第43回 ESRI-経済政策フォーラム(平成22年7月20日開催)

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 平成22年版国民経済計算年報 参考資料等(平成22年6月23日)
  • 四半期別民間企業資本ストック速報(平成22年1-3月期)(平成22年7月1日)

    1.有形固定資産 全産業(進捗ベース)

    • 22年3月末のストックは1,212.0兆円、前年同期比0.8%増となり、3期ぶりのプラスとなった(前期0.1%減)。
    • 22年1~3月の新設投資額は19.6兆円、同0.4%減となり、6期連続のマイナスとなった(前期14.7%減)。

    2.無形固定資産 全産業(取付ベース)

    • 22年3月末のストックは36.0兆円、前年同期比0.0%減となり、平成9年6月末(0.2%減)以来のマイナスとなった。
    • 22年1~3月の新設投資額は2.2兆円、同7.0%減となり、6期連続のマイナスとなった(前期1.7%減)。
  • GDP統計の在り方の検討結果について(平成22年7月14日)

<景気動向指数>5月速報(平成22年7月6日)

  • 5月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:98.7、一致指数:101.2、遅行指数:83.6 となった。
    先行指数は、前月と比較して3.0 ポイント下降し、2 ヶ月連続の下降となった。3 ヶ月後方移動平均は0.20 ポイント上昇し、14 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は1.40 ポイント上昇し、11 ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して0.1 ポイント下降し、14 ヶ月振りの下降となった。3 ヶ月後方移動平均は0.60 ポイント上昇し、13 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は1.20 ポイント上昇し、10 ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.7 ポイント上昇し、2 ヶ月振りの上昇となった。3 ヶ月後方移動平均は0.13 ポイント下降し、2 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は0.32 ポイント上昇し、5 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>5月実績(平成22年7月8日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、22年4月前月比2.2%減の後、5月は同10.8%減の1兆7,428億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、22年4月前月比4.0%増の後、5月は同9.1%減の6,929億円となった。このうち、製造業は同13.5%減の2,562億円、非製造業(除く船舶・電力)は同6.0%減の4,360億円となった。

<消費動向調査>6月調査(平成22年7月13日)

  • 平成22年6月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、5月の42.8から0.7ポイント上昇し43.5となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「低下する」と思うとの回答割合が前月に比べ減少し11.8%となった。一方、「上昇する」と思うとの回答割合も減少し43.5%となり、「変わらない」と思うとの回答割合は増加し34.9%となった。

<法人企業景気予測調査>4~6月期調査(平成22年6月14日)

  • 22年4-6月期の「貴社の景況判断」BSIを全産業で見ると、大企業はこのところやや足踏みがみられた製造業がプラス(「上昇」超)幅を拡大し、非製造業も11期ぶりにプラスに転じたことにより、全産業では3期ぶりにプラスに転じた。
    先行きを全産業で見ると、大企業は引き続きプラス、中堅企業は7-9月期にプラスに転じ、中小企業は引き続きマイナスで推移する見通し。
  • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く)は、22年度計画9.2%の増加見通し。

【参考】<月例経済報告>6月(平成22年6月18日)

  • 景気は、着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつあるが、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。
    • 輸出は、緩やかに増加している。生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善している。設備投資は、下げ止まっている。
    • 企業の業況判断は、改善している。ただし、中小企業では先行きに慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
    • 個人消費は、持ち直している。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、海外経済の改善や緊急経済対策を始めとする政策の効果などを背景に、企業収益の改善が続くなかで、景気が自律的な回復へ向かうことが期待される。一方、欧州を中心とした海外景気の下振れ懸念、金融資本市場の変動やデフレの影響など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。また、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
7月6日
(5月分)
7月20日
(5月分)
7月8日
(5月分)
7月13日
(6月分)
8月6日
(6月分)
8月18日
(6月分)
8月11日
(6月分)
8月12日
(7月分)
9月7日
(7月分)
9月21日
(7月分)
9月8日
(7月分)
9月10日
(8月分)
9月9日
(7~9月期)

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