ESRI通信 第25号

平成22年 9月16日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【ご挨拶】

8月初めに経済社会総合研究所に異動となりました。どうぞよろしくお願いいたします。それにしても、今年の夏は全国的に記録的な猛暑となり、この原稿を書いている今でも、30度を越える暑さとなっています。

例年7月、8月は役所の異動シーズンですが、来年度予算の概算要求や定員要求の策定の時期でもあります。このため、異動後最初の重要な仕事が予算の関係となってしまいました。昨今の厳しい財政事情を反映して、研究所の予算も他の機関と同様自主的に抑制をしなければなりませんでした。成果が見えにくい業務を削ったり、業務の「選択と集中」を行わなければなりません。決定過程において、従来以上に政治主導で行われました。

この研究所が発足したのが内閣府誕生と同じ平成13年で、今年がちょうど10年目にあたりますので、研究所のあり方を考える上で、節目の年と言えるかもしれません(前身は、経済企画庁の下に置かれていた経済研究所)。その役割は、内閣府のシンクタンクとして理論と政策の橋渡しを行うとともに、GDPなどの国民経済計算や各種統計を作成・公表することとされています。こうした使命の重要さについては大きな変化があるとは感じられませんが、政策ニーズに的確に応えているかどうかや、研究成果のアピールの仕方が十分かどうかなどは、常に考えていく必要のある課題だと思われます。

経済社会情勢の変化は速く、研究を求められるテーマは、急速に変化しますし、拡大もします。リソースの制約もあります。そうした中、政府の機関として政策判断が求められるようなテーマを選択しそこに集中することが大切です。現在研究所が取り組みつつあるテーマの大きな柱が成長戦略に盛り込まれた「新しい成長と幸福度に関する研究」です。OECDなどの国際機関とも連携しながら、来年度の重点として進めていく予定です。

また、GDPなどの統計整備については、迅速さとともに信頼性や質の向上が求められていますが、その割には体制整備が追いついていない現状にあります。国際的な標準をめざして早急に人員等を増やさなければならないでしょう。

今年の研究所の概算要求は概ねそういう姿になっているかと思いますが、今後も皆様の声を反映したよりよい研究所にできればと願っていますので、この通信も活用させてもらいながら交流を深めていきたいと考えています。繰り返しですが、どうぞよろしくお願いします。

平成22年9月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    次長 堀田 繁

【最新の研究発表】

  • アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)のマクロ的、産業別の重要性(川崎 研一)(平成22年8月)(本文は英語)

    本論文では、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)について、そのマクロ経済レベル、また、産業別の相対的な重要性を論ずる。すなわち、FTAAPにおける貿易の自由化及び円滑化措置の効果につき、応用一般均衡(CGE)世界貿易モデルを用いて分析する。その際、最新の世界貿易データベースを用いるとともに、標準的な比較静学モデルに対して資本形成や生産性向上などの動態的な側面を織り込んで分析する。APEC経済の実質GDPは、貿易の自由化により平均して1.9%、円滑化により0.4%、それぞれ増加する。ただし、各経済の貿易構造の相違などのため、マクロ経済的な便益の相対的な大きさは、いくつかの地域的な貿易協定によって大きく異なることが示されている。さらに、農業などの重要な産業に対するネガティブな影響の相対的な大きさも、貿易自由化のいくつかのシナリオによって異なる可能性がある。

  • 子ども手当の所得に与える影響のマイクロシミュレーション(高山 憲之、白石 浩介)(平成22年9月)

    本研究では、子ども手当制度について、世帯所得がどのように変化するのかを厚生労働省『国民生活基礎調査』(2007年)の個票データを利用して分析した。分析では、控除や税負担等の制度も考慮にいれた。その結果、支給額や控除等の条件変更により、その所得や負担の増減や、所得増となる世帯の割合は変化するものの、手当の対象となる高校卒業前の子どもがいる世帯は所得純増となるなど、「子どものいない家計」から「子どものいる家計」へと所得の一部がシフトすることが確認された。

  • 世代間不均衡の研究I~財政の持続可能性と世代間不均衡~(増島 稔、田中 吾朗)(平成22年9月)

    世代会計モデルを用いて、政府を通じた各世代の受益と負担ならびにそれと整合的な財政の姿を推計したところ、以下の諸点が明らかになった。現在の受益・負担構造と既に決まっている社会保障制度の改革を前提とすると、イ)60歳以下の現存世代間の受益・負担の不均衡は小さい。ロ)その理由は、将来世代に負担が先送りされているためであり、これを将来世代のみが負担すれば、0歳世代と将来世代の間に生涯所得の3割強の不均衡が生じる。一方、ハ) 将来世代が負担しないまま放置すれば、純債務が累積して財政は持続可能でなくなる(基本ケース)。そこで、基礎的財政収支を2015年以降、のGDPの8%弱改善すると、イ)純債務残高対GDP比は安定化し財政の持続可能性が確保される。また、ロ)将来世代と0歳世代の不均衡は大幅に縮小するが、ハ)増税を行うと若い世代ほど負担が高まり現存世代間の不均衡は拡大する(債務安定化ケース)。基礎的財政収支の改善に向けた取り組みが2035年まで遅れると、イ)現存世代間の不均衡はさらに拡大する。また、ロ)債務を安定化するために必要な基礎的財政収支改善幅はGDPの12%弱まで大きくなり、ハ)安定化したときの純債務残高も高い水準(対GDP比260%)にとどまる(健全化遅延ケース)。生産性上昇率が高いほど、金利が低いほど、また出生率が高いほど将来世代の負担は小さくなり、財政健全化も容易になる。

  • 世代間不均衡の研究II~将来世代の生年別の受益・負担構造の違い~(増島 稔、田中 吾朗)(平成22年9月)

    マクロ経済と財政に一定の想定を置いて、これから生まれてくる将来世代の生年別の受益と負担、それと整合的な財政の姿を推計した。高齢化のピークの2070年以降、社会保障の財政負担は徐々に軽くなる。しかし、追加的に基礎的財政収支の改善努力を行わなければ、 2070年にかけて基礎的財政収支の赤字が拡大し、その後も大幅な赤字が継続する。現在の債務や今後の財政赤字が大きいため、債務を安定化させ2200年までに解消するためには、2015年以降、基礎的財政収支をGDPの8%弱改善する必要がある。こうした長期的な視野に立った経済財政運営ができれば、0歳世代と将来世代あるいは将来世代の間の受益・負担の不均衡は小さなものにとどまる(2200年債務解消ケース)。2200年までに政府債務を解消するという予算制約を満たしていても、基礎的財政収支改善への取り組み方次第で将来世代の生年別の純負担(負担–受益)には大きな差が生じうる。早い時期に基礎的財政収支を改善すれば、将来世代の純負担を大幅に軽減できる(2100年債務解消ケース)。逆に、財政健全化を先送りすると、債務を安定化し削減していくために必要な基礎的財政収支の改善幅は大きくなり、将来世代に大きな負担を強いる。また、債務が長期間にわたって高止まりし、債務管理上の問題も大きい(健全化遅延ケース)。実際には不確実性が大きいため、近い将来の基礎的財政収支や債務残高対GDP比を中間目標として財政運営をせざるを得ない。その場合でも、政策運営に当たって、将来世代の間の受益・負担の不均衡への配慮が求められよう。

  • 世代間不均衡の研究III~現存世代内の受益・負担構造の違い~(増島 稔、島澤 諭、田中 吾朗、杉下 昌弘、山本 紘史、高中 誠)(平成22年9月)

    政府を通じた個人の生涯にわたる受益と負担が、世代間のみならず、世代内の所得あるいは居住地の違いによってどの程度異なるのかを推計した。現状を前提とすると、所得の高い階層や地域ほど生涯純負担の額やその所得比が高い傾向がある。0歳世代の生涯純負担を比較すると、所得階層間では額で 5600万円弱、所得比で25%弱の差がある。また、地域間でも額で4400万円程度、所得比で18%程度の違いが見られる。財政の持続可能性を確保し世代間不均衡を解消するよう、2015年以降、増税によって一般政府の基礎的財政収支をGDPの8%程度改善するケースを考えた。所得税増税は累進的な傾向が見られる。消費税増税について考える際には、毎年のフローの所得に対する負担の割合だけでなく、ライフサイクルを通じた所得に対する負担の割合も考慮に入れる必要があることが示唆される。高齢化の水準やスピードには都道府県ごとに大きな違いが見られる。仮に、都道府県別の医療・介護給付総額の一定割合を都道府県内の保険料でまかなうようにすると、都市部に比べて高齢化比率(65歳以上人口/20~64歳人口)が高くその上昇幅も大きい地方の県ほど負担が上昇する傾向がある。社会資本からの受益は、所得の高い都市部に比べ所得の低い地方の県ほど大きい傾向が見られ、一定の所得再分配機能を持っている。しかし、その大きさは、税・社会保障による所得再分配機能に比べれば小さい。

  • GDP速報の推定法の改善について(国友 直人、佐藤 整尚)(平成22年9月)

    内閣府が定期的に公表しているGDP速報の推定法における改善可能性について議論する。特にGDP公表の1次速報・2次速報において用いられている設備投資系列、在庫投資系列および季節調整を巡る扱いについて考察し、統計学的立場より若干の改善方法を提案する。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>

  • 「世界金融・経済危機:原因と政策対応」 第44回 ESRI–経済政策フォーラム(平成22年9月27日開催)

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別GDP速報(2012(平成24)年4–6月期・2次速報)(平成22年9月10日)
    1. 平成22年9月10日に公表した22年4-6月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が、0.4%(年率1.5%)と同年8月16日に公表した1次速報(実質GDP成長率0.1%(年率0.4%))から上方改定となった。
    2. これは、1次速報時点では取り込むことのできなかった情報を取り込んだ結果、民間企業設備、民間在庫品増加、公的固定資本形成などの需要項目が上方改定となったためである。

<景気動向指数>7月速報(平成22年9月7日)

  • 7月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:98.2、一致指数:101.8、遅行指数:85.7 となった。
    先行指数は、前月と比較して0.8 ポイント下降し、2 ヶ月振りの下降となった。3 ヶ月後方移動平均は1.17 ポイント下降し、2 ヶ月連続の下降、7 ヶ月後方移動平均は0.57 ポイント上昇し、13 ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して0.5 ポイント上昇し、2 ヶ月連続の上昇となった。3 ヶ月後方移動平均は0.16 ポイント上昇し、15 ヶ月連続の上昇、7 ヶ月後方移動平均は0.76 ポイント上昇し、12 ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して2.2 ポイント上昇し、2 ヶ月振りの上昇となった。3 ヶ月後方移動平均は0.93 ポイント上昇し、4 ヶ月振りの上昇、7 ヶ月後方移動平均は0.60 ポイント上昇し、7 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>7月実績(平成22年9月8日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、22年6月前月比9.2%増の後、7月は同5.7%増の2兆104億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、22年6月前月比1.6%増の後、7月は同8.8%増の7,663億円となった。このうち、製造業は同10.1%増の3,101億円、非製造業(除く船舶・電力)は同8.1%増の4,532億円となった。

<消費動向調査>8月調査(平成22年9月9日)

  • 平成22年8月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、7月の43.3から0.9ポイント低下し42.4となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「低下する」と思うとの回答割合が前月に比べ増加し12.7%となり、「上昇する」と思うとの回答割合は減少し44.5%となった。一方、「変わらない」と思うとの回答割合も減少し34.0%となった。

<法人企業景気予測調査>7~9月期調査(平成22年9月9日)

  • 22年7~9月期の「貴社の景況判断」BSIを大企業・全産業でみると、2期連続のプラスとなった。ただし、非製造業を中心に前期の見通しを下回った。
    先行きは10–12月期には製造業で政策効果の剥落により下方修正され、非製造業でも小売業の反動でやや足踏みするが、23年1–3月期はともに改善する見通し。
  • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く)は、22年度計画8.7%の増加見通し。

【参考】<月例経済報告>9月(平成22年9月10日)

  • 景気は、引き続き持ち直してきており、自律的回復に向けた動きもみられるが、このところ環境の厳しさは増している。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。
    • 輸出は、このところ増勢が鈍化している。生産は、緩やかに持ち直している。
    • 企業収益は、改善している。設備投資は、持ち直している。
    • 企業の業況判断は、改善している。ただし、中小企業を中心に先行きに慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
    • 個人消費は、持ち直している。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、企業収益の改善が続くなかで、景気が自律的な回復へ向かうことが期待される。一方、海外景気の下振れ懸念や為替レート・株価の変動などにより、景気が下押しされるリスクが強まっている。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
9月7日
(7月分)
9月21日
(7月分)
9月8日
(7月分)
9月9日
(8月分)
9月9日
(7~9月期)
10月7日
(8月分)
10月20日
(8月分)
10月13日
(8月分)
10月12日
(9月分)
11月8日
(9月分)
11月17日
(9月分)
11月11日
(9月分)
11月10日
(10月分)

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

SNA(QE)統計の公表予定はこちらから


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