ESRI通信 第28号

平成22年12月13日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

今年も残すところ2週余りとなりました。仕事を納めると大掃除、大晦日、除夜の鐘で新年です。核家族化、少子高齢化、情報化の進む中で、年末年始の過ごし方も随分変わってきました。父親のもと、家族うち揃って1年を反省し来る年に決意を述べるという節目の時間から、家族それぞれが移ろい行く内外を確認する時に変わってきている気がします。

大掃除に代る水回りを含めたクリーニング・サービス、1人からのおせち料理といったことは、イノベーションとは言えないとしても、いずれ家がホテルになる兆しかもしれません。サービスでは、顧客とのやりとりから推論をして、求められるときに求められる情報を提供することが、携帯電話や携帯端末の機能として実績をあげてきています。通信手段にとどまらず、進化するさまざまなサービスのプラットフォームとなっています。実際、サービスは経済社会活動の大宗を占め、さらに広がっています。

サービスに関する取組、特に近年のサービス・イノベーション、サービス・サイエンス、サービス・ドミナント・ロジックといった「サービス」を中心に据えた取組は、これまでと何がどれほど違うのでしょうか。まず、サービスを広義にとらえ、例えばモノの提供も含む行為、プロセス、パフォーマンスの総体というふうに一般化しています。さらに具体的な取組では、受手の視点を加え、また参加を得たうえで、科学、経営、工学の諸原理を適用しています。対象の範囲が広がりかつ身近なところで展開される分、直ちに大きな変化を観測できないことが多いとしても、確実に進んでいます。

このようなサービス中心の取組は、モノのあまりない時代を過ごしてきた人にとっては、取っ付きづらいものです。先ずはモノを手に入れたい、できれば性能の良いモノを、という思いのもとでは、サービスは、モノに付随するいわばおまけです。お金をつぎ込んでまで手に入れるべきものなのか疑問に思い、サービスで仕事を発展させようとして必要なモノを作るということにも、なかなか思いが至りません。これが、経済社会が混迷している原因のひとつだという人もいます。大きなビジネスチャンスを逃しているというのです。結果論として正しいのかもしれません。

一方、モノの豊かな世界に生まれた人にとっては、次には何ができるのかが問題です。「楽しい?」といった問いかけが中心課題となります。いろいろな試みが生まれ、うまく根を張れると仕事になります。ほんの少し見方を変えるだけで視界が広がり、大海原に乗り出せることがあります。とはいっても、人の情念は蜻蛉日記の古来からそう変わってもいないでしょうから、身の回りの生活に新しいことを見出すのは至難の業です。生活の深みを見出す丁寧な取組なのかもしれません。

除夜の鐘は、108の煩悩を表していると言われます。この年末年始は、煩悩を意欲に変えるイノベーションを構想できるでしょうか。

平成22年11月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 青山 伸

【最新の研究発表】

  • デフレに対して脆弱な日本の公的年金(法專 充男)(平成22年11月)(本文は英語)

    90年代半ば以降のデフレによって日本経済は多くの点で深刻な悪影響を被ってきた。本論文は公的年金制度のデフレに対する脆弱性に焦点を当てている。デフレによって実質年金額が当初の予定よりも大きく膨らみ、その結果年金財政が大幅に悪化していることを本論文では明らかにする。また、このことは世代間の分配にも重要な含意を有する。なぜなら、現時点における高い年金額のつけは、結局のところより若い世代あるいは将来世代が負担しなくてはならないからである。言うまでもなく、デフレの克服が最重要課題であるが、それと同時に公的年金制度を改善し、デフレによって年金財政が悪化することのないようにすることが肝要である。

  • 遺産相続、学歴及び退職金の決定要因に関する実証分析『家族関係、就労、退職金及び教育・資産の世代間移転に関する世帯アンケート調査』の個票を用いて(堀 雅博、濱秋 純哉、前田 佐恵子、村田 啓子)(平成22年12月)

    日本で進行する少子・高齢化は、1990 年代以降に生じた成長見込みの低下と相俟って、税や社会保障をはじめとする経済・社会制度の効率性・公平性・持続可能性に大きな影響を与えている。また、急激な構造変化の下で、近年世帯間の経済力格差が拡大しているとの議論も聞かれる。こうした問題に適切に対処するためには、客観的な材料に基づいて現在進行形の経済・社会の構造変化の実態を把握するとともに、その方向性を予測する等の分析が欠かせない。

    経済社会総合研究所ではこの問題意識に立ち、個別世帯を対象とする『家族関係,就労,退職金及び教育・資産の世代間移転に関する世帯アンケート調査』を実施した。調査項目は、家族関係、教育、遺産相続等多岐にわたるが、特に、既存のデータでは十分な情報が得られない個別世帯の保有資産、及びその世代間移転の状況を把握するための設問を多く含んでいる点に特徴がある。本稿の第一部では、このアンケート調査の内容、調査方法、及び簡易集計結果を紹介する。

    第二部では、アンケートの個票を用いた分析事例を紹介する。具体的には、1. 贈与・相続による世代間移転、2. 教育による世代間移転、及び3. 退職一時金の実態と決定要因の分析結果を報告する。

    まず、贈与・相続に関する分析からは、世帯主が高学歴である場合や長男である場合に贈与・相続の受取確率と受取額が高まること、また、これらの受取の大部分は親の死亡時に生じていること等が明らかになった。さらに、贈与・相続と所得・資産額の関係を分析すると、所得・資産額が大きい世帯ほど贈与・相続の受取が大きくなることが分かった。

    つぎに、教育水準に関する分析では、両親の学歴が子供の教育水準の決定に与える効果が大きく、親の経済状況はそれに比べれば効果が小さいことが判明した。また、教育階層に分離・固定化が生じている可能性を検証したところ、社会全体の高学歴化が進んでおり、個別世帯の教育階層の固定化は生じていないことが分かった。

    最後に、退職一時金の分析からは、勤続年数、企業規模、定年退職といった要素が、月収の倍率で測った退職金額(単位は月数)に影響する一方で、高卒と大卒の学歴間の差はほとんどないことが明らかとなった。また、退職金の期待はその実績値とある程度近いことも分かった。

  • 子育て支援と世代間効用–人口内生OLGモデルの視点から–(小黒 一正、島澤 諭、高畑 純一郎)(平成22年12月)

    本稿では、多世代の人口内生OLGモデルを構築し、子育て支援の拡充や年金給付の削減等が、現役世代および将来世代の効用に及ぼす影響を分析している。その結果、明らかになったことは、以下のとおりである。

    まず、子育て支援拡充については、財政の持続可能性を考慮しない場合、将来世代の効用を最も改善するのは、公債を財源とする子育て支援拡充である。他方で、財政の持続可能性を考慮する場合、資本課税による子育て支援拡充が最も望ましく、次いで、消費税、賃金税の順となる。

    また、財政再建が既定路線のケースでは、財政再建のみを行うよりも、子育て支援拡充とセットで財政再建を行う方が、将来世代の効用を改善させる。

    なお、年金改革としては、年金給付の削減よりも、年金保険料の一部を消費税で賄う方式に転換する方が、将来世代の効用を改善させる。

  • 公務員人件費のシミュレーション分析(増島 稔)(平成22年12月)

    務員の採用行動と給与プロファイルに一定の仮定を置き、2008年度を基準年(※)として公務員人件費(実質値)の推移を試算した。その結果、初期時点の職員の年齢構成が今後の公務員人件費の推移に大きな影響を与えることが明らかになった。

    職員数が一定でも、職員の年齢構成が高齢化している地方公務員の給与総額は、年齢構成が若返ることによって今後10年間で7%程度減少する。特に、都道府県の技能労務職や市区町村の教育職の減少率が大きく、逆に警察職の減少率は小さい。国家公務員の給与総額には大きな変化がない。

    最近の厳しい職員削減傾向が続く場合、給与総額の減少率は大幅なものとなる。ただし、国よりは地方の方が、また地方の中では市区町村の方が減少率は大きい。職種別にはその他一般職、都道府県の技能労務職の減少率が大きく、警察職は逆に増加する。

    今後は人口が減少することから、職員数を人口比で一定に保った場合、職員数は今後10年間で2.5%減少し、給与総額も職員数一定の場合に比べてさらに2%程度減少する。

    地方公務員の退職金は、団塊世代の退職がピークを越えたため、今後は大幅に減少していく。ただし、職種間や都道府県間のばらつきは大きい。

    都道府県間では、初期時点の職員の高齢化の度合いが異なるため、今後10年間の給与総額の減少率に大きな差が生じる。これに加えて、都道府県間の採用抑制努力や人口動態の違いが、給与総額の増減率のばらつきを拡大する。また、都道府県ごとの退職金総額の増減率にも初期時点の職員の年齢構成の違いが大きな影響を与える。

    賃金カーブのフラット化は、初期時点の職員の年齢構成が高齢化している場合や今後高齢化が進む場合に大きな人件費削減効果を持つ。

    公務員人件費改革に当たっては、個別の地域や分野の行政需要、公務員の職員構成や給与プロファイルの現状などを十分に考慮しつつ、定量的な分析に基づいて改革を進めていく必要がある。

    ※本試算は、2008年までの退職行動を前提とした機械的な試算であり、例えば国家公務員の再就職規制の導入や今後の定年延長の可能性の影響などは反映していない。また、平成23年度の国家公務員の新規採用抑制はこれまでの採用抑制を上回る内容となっている。


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<報告書の掲載>

<議事次第(配付資料)の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>10月速報(平成22年12月7日)

  • 10 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:97.2、一致指数:100.7、遅行指数:89.2 となった。
    先行指数は、前月と比較して1.4 ポイント下降し、4ヶ月連続の下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.94 ポイント下降し、5ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.68 ポイント下降し、16 ヶ月振りの下降となった。
    一致指数は、前月と比較して1.4 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.77 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は保合いとなった。
    遅行指数は、前月と比較して0.9 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.57 ポイント上昇し、4ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.59 ポイント上昇し、10 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<機械受注統計調査報告>10月実績(平成22年12月8日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、22年9月前月比9.2%減の後、10月は同6.6%増の2兆1,364億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、22年9月前月比10.3%減の後、10月は同1.4%減の7,457億円となった。このうち、製造業は同1.4%増の2,803億円、非製造業(除く船舶・電力)は同8.7%減の4,616億円となった。

<消費動向調査>11月調査(平成22年12月10日)

  • 平成22年11月の一般世帯の消費者態度指数(原数値)は、10月の40.9から0.5ポイント低下し40.4となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「低下する」と思うとの回答割合が増加し13.5%となり、「変わらない」と思うとの回答割合も増加し35.8%となった。一方、「上昇する」と思うとの回答割合は減少し41.8%となった。

<法人企業景気予測調査>10~12月期調査(平成22年12月10日)

  • 22年10-12月期の「貴社の景況判断」BSIを大企業・全産業でみると、政策の終了や円高要因で5.0と3期ぶりにマイナスとなった。中堅企業もマイナス幅が拡大した。
    先行きは23年1-3月期0.9、4-6月期0.8と持ち直す見通し。
  • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く)は、22年度9.5%の増加見込み。

【参考】<月例経済報告>10月(平成22年10月19日)

  • 景気は、このところ足踏み状態となっている。また、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある。
    • 輸出は、このところ弱含んでいる。生産は、このところ減少している。
    • 企業収益は、改善している。設備投資は、持ち直している。
    • 企業の業況判断は、改善している。ただし、先行きについては慎重な見方が広がっている。
    • 雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
    • 個人消費は、持ち直しているものの、一部に弱い動きもみられる。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面は弱めの動きがみられるものの、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待される。一方、海外景気の下振れ懸念や為替レート・株価の変動などにより、景気がさらに下押しされるリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
12月7日
(10月分)
12月20日
(10月分)
12月8日
(10月分)
12月10日
(11月分)
12月10日
(10~12月期)
1月11日
(11月分)
1月20日
(11月分)
1月13日
(11月分)
1月17日
(12月分)
2月7日
(12月分)
2月17日
(12月分)
2月10日
(12月分)
2月9日
(1月分)

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