ESRI通信 第33号

平成23年5月17日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【東日本大震災 –特に、原子力災害– について】

平成23年3月11日、三陸沖でマグニチュード9.0という我が国の観測史上最大の巨大地震(平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震)が発生した。地震とこれに伴う大津波、余震などにより、東北地方の太平洋沿岸を中心に、未曽有の被害がもたらされた。5月10日現在、死者・行方不明者は、およそ1.5万人、1万人を数え、建物については全壊・半壊が、8.3万棟、3.1万棟確認されている。戦後最大の災害、東日本大震災である。

発災後2か月を経ても避難者は12万人に近く、被災地域では、生活基盤の確保をはじめとした取組が急務である。被災地域における社会資本・住宅・民間企業設備といったストックの毀損額は、約16~25兆円と試算され、まさに国を挙げての復興が求められている。また、直接の被害の少なかった首都圏の地域でも、突然の電力不足と計画停電、交通機関の運転縮小、燃料、飲料などの不足により、数千万人にのぼる人々の経済社会活動が影響を受けた。ライフラインのなかでも、特に、電力供給については、改めて考える必要が生じた。

東京電力福島第一原子力発電所(原子炉6基、電気出力470万kW)では、環境に放射性物質を放出する原子力災害が発生し、未だ収束を見ていない。4月5日までに大気中に放出された放射性物質の総量は、ヨウ素131で百京(エクサ:10の18乗)ベクレル未満、セシウム137でその一桁少ない規模と推定され、チェルノブイリの1割程度と見られている。発電所では燃料の冷却と放射線の管理に向けた作業が続けられ、これが順調に進行すれば総量の桁が上がることはない。しかしながら発電所の損傷は大きく、作業が難渋していることから、これには半年以上を要する模様である。また、海水への放出については、確認された経路は封止されているが、事故の対応中に一時汚染水を放出したこともあり、引き続き監視が必要な状態である。放射線については、最近ようやく積算線量や地表面への放射性物質の蓄積状況を地図上で理解するデータが公開されてきた。住民にとって環境を把握する最も重要な情報であり、推移について定期的な更新が不可欠だ。

今回の事故では、死亡や障害に至る被ばくはない。しかしながら、発電所から半径20km以内の地域が避難を指示され、避難対象者が17万人を超えているほか、年間の被ばく線量が20ミリシーベルトに達する恐れのある地域の住民は5月末までに計画的に避難することが求められている。さらにその周辺の広範な地域においても農水産物の出荷や学校生活など多岐にわたって制限や確認が行われているところ、多くの人々が、放射線という見えない脅威に、終期の見えない中でさらされ続けている。一刻も早く生活を復旧させるため、土壌からの放射線の低減をはじめとする環境回復のための取組について、周到な計画の立案と着実な実施が必要だ。

平成23年5月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 青山 伸

【最新の研究発表】

  • 非関税障壁・関税障壁自由化に関する欧州の見方(ジョセフ・フランコイス、ミリアム・マンチン、ハンナ・ノールバーグ)(平成23年4月)(本文は英語)

    EU加盟国は、張りめぐらされたPTA(特恵貿易協定)のもと貿易を行っており、PTAの中核をなしているのはEU自身である。より最近では、EU は遥か遠くの中米、東南アジア、東アジア、北米の国々とも交渉を進めつつある。最近の一連の特恵協定に関して言えば、その目的や対象は関税だけにとどまっていない。EUが言明した目標は、投資アクセスの改善、関税の引き下げ、規制に関する貿易コストの縮小、政策に関する不確実性の削減である。言い換えれば、関税はパッケージの一部であり、EUの関心事としては、(サービスの市場アクセスに影響を与える)投資規制、貿易の規制障壁、そしてEU内の企業に影響を及ぼすことから、政策動向の確実性(政策安定性)へのコミットメントなどもあげられる。

    これらの協定の在り方、とりわけEUがより多くの協定について交渉するために多面的な努力を惜しまないのは、これらの協定が締結された際に及ぼすインパクトがEU全体にとって共有の関心ごとであるということを意味している。

    特に、G20メンバーのなかでも中所得および高所得のさまざまな国々との最近の協定や今後あり得る協定を組合わせた場合、これらの協定が一括して実施されたときの効果は、これら協定が個別に実施された場合とは異なってくるであろう。

    本稿では、一連の新たなPTAの効果に関して、個別実施のケースと一括実施のケースとを比較検討している。分析では、世界経済の応用一般均衡モデルを用いている。一括実施の効果は、個別実施での効果すべてを合わせたものよりも、はるかに大きなものとなる。このことは、誘発された投資の効果から導き出される。投資による効果は、第3国にとっての実質的な利益へとつながっていく。

    NTM(非関税措置)と関税を比較することにより、貿易に対する規制や行政的障壁がいかに潜在的に重要であるかかが浮かび上がってくる。概して言えば、非関税措置(NTM)を削減することによる影響は、関税の引き下げよりもはるかに大きいと推定される。このことから、最近の協定では『関税』から『より深い統合形態』へと重点が移されていることの説明がつく。そのようにすれば、ヨーロッパ各国の輸出業者に対する非関税措置の効果への対応がなされる可能性が高いからである。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 2011(平成23)年1–3月期四半期別GDP速報(1次推計値)における推計方法の変更について(平成23年4月27日)
  • 2011(平成23)年1–3月期1次QEにおける民間在庫品増加(原材料在庫及び仕掛品在庫)の実質季節調整済前期差について(平成23年4月28日)

<景気動向指数>3月速報(平成23年5月11日)

  • 3月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:99.5、一致指数:103.6、遅行指数:88.8 となった。
    先行指数は、前月と比較して4.5 ポイント下降し、5ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.20 ポイント下降し、5ヶ月振りの下降、7ヶ月後方移動平均は0.09 ポイント上昇し、4ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して3.2 ポイント下降し、5ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.07 ポイント下降し、5ヶ月振りの下降、7ヶ月後方移動平均は0.13 ポイント上昇し、20 ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して1.7 ポイント下降し、2ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は保合いとなり、7ヶ月後方移動平均は0.16 ポイント上昇し、15 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。ただし、東日本大震災の影響により、CI一致指数の単月及び3ヶ月後方移動平均の前月差がマイナスに転じている

<機械受注統計調査報告>3月実績および4~6月見通し(平成23年5月16日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、23年2月前月比2.3%増の後、3月は同15.8%減の2兆849億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、23年2月前月比1.9%減の後、3月は同2.9%増の7,776億円となった。このうち、製造業は同0.4%減の3,571億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.1%増の4,423億円となった。
  • 1~3月をみると、受注総額は前期比11.5%増の6兆9,850億円となった。「船舶・電力を除く民需」は同3.5%増の2兆3,035億円、製造業は同16.0%増の1兆469億円、非製造業(除船舶・電力)は同3.1%減の1兆2,840億円となった。
  • 4~6月見通しをみると、受注総額は前期比0.3%減の6兆9,650億円の見通しになっている。「船舶・電力を除く民需」は同10.0%増の2兆5,331億円、製造業は同7.9%増の1兆1,299億円、非製造業(除船舶・電力)は同10.3%増の1兆4,166億円の見通しになっている。
  • 平成22年度実績をみると、受注総額は前年度比20.0%増の24兆9,649億円になっている。「船舶・電力を除く民需」は同7.0%増の9兆251億円、製造業は同18.4%増の3兆7,145億円、非製造業(除船舶・電力)は同0.1%増の5兆3,314億円になっている。

<消費動向調査>4月調査(平成23年5月16日)

  • 平成23年4月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、3月の38.6から5.5ポイント低下し33.1となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「低下する」と思うとの回答割合が減少し5.7%となり、「変わらない」と思うとの回答割合も減少し13.9%となった。一方、「上昇する」と思うとの回答割合は増加し73.2%となった。

【参考】<月例経済報告>4月(平成23年4月13日)

  • 景気は、持ち直していたが、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。
    • 輸出は、持ち直しの動きがみられたものの、東日本大震災の影響による減少が懸念される。生産は、持ち直していたものの、東日本大震災の影響により、このところ生産活動が低下している。
    • 企業収益は、改善しているが、東日本大震災の影響が懸念される。設備投資は、持ち直している。
    • 企業の業況判断は、慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。ただし、東日本大震災の影響が懸念される。
    • 個人消費は、持ち直しの動きがみられたものの、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きもみられる。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面は東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれる。その後、生産活動が回復していくのに伴い、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待されるが、電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅れ、原油価格上昇の影響等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
5月11日
(3月分)
5月23日
(3月分)
5月16日
(3月分)
5月16日
(4月分)
6月7日
(4月分)
6月20日
(4月分)
6月13日
(4月分)
6月9日
(5月分)
6月14日
(4~6月期)
7月6日
(5月分)
7月20日
(5月分)
7月7日
(5月分)
7月11日
(6月分)

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