ESRI通信 第34号

平成23年6月14日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【企業会計とGDP】

国民経済計算を担当していると、時たま、答えように困る質問をされることがあります。その一つが「GDPって何ですか?」というものです。もちろん「国内総生産(GDP)とは1年間に国内で行われる経済活動により生み出される付加価値の合計」といった教科書的な回答で済めばいいのですが、そうは簡単にはいきません。質問してくる方は、経済事典などに当たってみたものの、この種の説明になんとなく違和感があるので、確認のために聞いてくるのです。特に、自分の会社がGDPにどのように貢献しているか、ということに興味がある場合が多いのですが、それを説明する参考書はなかなか見かけません。

そこで、私の場合、ざっくりとした理解をしていただければ、と割り切って、会計用語を使って説明することにしています。GDPと企業会計とでは計数としてとらえるところが一致しないので、概念上の問題は少なくないものの、社会人向けには話が早いのです。それで「GDPは、企業の付加価値に相当します。つまり『営業利益』『人件費』『減価償却費』『租税公課』を合計したものです。」といった回答をすることがあります。注意する点としては、営業利益には棚卸資産価格の変動による影響が含まれているが、GDPでは棚卸資産を取得価格ではなく当該期の市場価格で評価することなどにより評価損益を除いていること、特別損失に計上される火災による資産の滅失は、日本全国で考えると毎年ほぼ一定の比率で起きる(だから火災保険が成り立つ)ものなので広い意味の固定資本減耗(「減価償却費」+「除却額」)としてGDPに加算すること、租税公課は税法ベースである(法人税等は含めない)ことなどがあげられます。もっとも、「正確ではない説明は無用の誤解を生む。」として、説明に会計用語を使うことそのものに否定的な人もいます。

企業の財務諸表からGDPが計算できれば、企業などの決算額がそのまま基礎統計として利用できるようになるのではないかという意見があるかもしれません。実は、その方向に少しだけ近づくかもしれないのです。GDP統計の作成基準である「国民経済計算体系(SNA:the System of National Accounts)」は国際連合(UN)、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)などの国際機関が協力して作成しています。このところ15年ごとに改定が行われていますが、そのたびに経済活動の定義・計上方法の大幅な見直しが行われています。会計基準との関連では、2008年版SNAの付録4を見ると、「SNAと国際会計基準審議会(IASB)との関連」という項目が設けられ、将来、国際会計基準に沿ってSNAを修正する可能性について言及しています。これは、国際財務報告基準(IFRS)にもとづく統計データが注目されているためであり、また、企業側の調査票記入負担、統計作成担当者の作業負担をSNA・IFRS間の概念調整により少しでも軽減させようとするためと考えられます。IASB、財務会計基準審議会(FASB)、企業会計審議会などで行われている議論の行方が注目されます。

平成23年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 私市 光生

【最新の研究発表】

  • CO2削減における日本と中国の役割:世界モデルによる分析(伴 金美)(平成23年6月)

    2009 年12 月に開催されたCOP15 におけるコペンハーゲン合意に基づいて、各国は2020年までの削減目標を国連気候変動枠組条約事務局に報告する義務を負った。それに対して日本政府は1990 年比25%削減という目標を示した。しかし、意欲的な目標に対しては懐疑論が強い。特に、日本の産業の国際競争力への悪影響が懸念されている。

    本論文の前半では、コペンハーゲン合意に基づいて各国が示した2020 年までの削減目標を履行したとき、各国の経済に対してどのような影響を与えるかについて、国際多地域動学CGE モデルを用いて分析した。明らかになったのは次の点である。

    (1) 中国を含めた主要排出国が目標を達成すれば、世界全体のCO2 排出量は3.6%減少し、懸念されている炭素リーケージは9.9%にとどまる。しかし、中国が目標を持たない場合、CO2 排出量は3.4%減にとどまり、炭素リーケージは14.5%となる。その意味で、コペンハーゲン合意における中国の役割は大きい。

    (2) コペンハーゲン合意がGDP に与える影響は、BAU と比較し、日本マイナス1.4%、米・EU マイナス0.3%に対して、中国はプラス0.3%となる。

    (3) 日本の鉄鋼業は、BAU と比較し、鉄鋼業生産は11%減で強い影響を受けるが、機械機器・輸送機器生産への影響は軽微であり、輸出も増加する。さらに、排出量収入を資本所得減税に充当すれば、GDP ロスをマイナス0.6%に軽減することができる。

    本論文の後半では、日本の国内での削減を15%にとどめ、残りの10%を日本と中国の二国間クレジットで削減し、両国が排出量収入の一部を資本所得減税に充当すれば、日本のGDP ロスはさらに小さくなり、また中国のGDP はさらに増加する。その意味において、日中間の環境分野での協力関係の強化は、両国にとって望ましい結果をもたらすと言える。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 2011(平成23)年1–3月期四半期別GDP速報(2次速報値)における推計方法の変更について(平成23年6月1日)
  • 四半期別GDP速報(2011年(平成23)年1–3月期・2次速報)(平成23年6月9日)
    1. 平成23年6月9日に公表した23年1–3月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が0.9%(年率3.5%)と、同年5月19日に公表した1次速報(実質GDP成長率0.9%(年率3.7%))からほとんど変わらなかった。
    2. これは、需要項目別の前期比寄与度でみて、主に民間在庫品増加が上方改定となった一方で、主に民間企業設備が下方改定となったためである。

<景気動向指数>4月速報(平成23年6月7日)

  • 4月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:96.4、一致指数:103.8、遅行指数:90.7 となった。
    先行指数は、前月と比較して3.7 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降となった。3ヶ月後方移動平均は1.66 ポイント下降し、6ヶ月ぶりの下降、7ヶ月後方移動平均は0.25 ポイント下降し、5ヶ月振りの下降となった。
    一致指数は、前月と比較して0.3 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.57 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.27 ポイント上昇し、21 ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して1.8 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.80 ポイント上昇し、3ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.33 ポイント上昇し、16 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。ただし、東日本大震災の影響により、CI一致指数の3ヶ月後方移動平均の前月差が2ヶ月連続でマイナスとなっている。

<機械受注統計調査報告>4月実績(平成23年6月13日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、23年3月前月比20.4%減の後、4月は同3.1%増の2兆354億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、23年3月前月比1.0%増の後、4月は同3.3%減の7,119億円となった。このうち、製造業は同2.7%減の3,194億円、非製造業(除く船舶・電力)は同2.9%増の4,058億円となった。

<消費動向調査>5月調査(平成23年6月9日)

  • 平成23年5月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、4月の33.1から1.1ポイント上昇し34.2となった。
  • また、消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「低下する」と思うとの回答割合が増加し5.9%となり、「変わらない」と思うとの回答割合も増加し16.2%となった。一方、「上昇する」と思うとの回答割合は減少し70.8%となった。

<法人企業景気予測調査>4‐6月期調査(平成23年6月14日)

  • 23年4–6月期の貴社の景況判断BSIを大企業・全産業でみると、22.0となった。東日本大震災の影響によるサプライチェーンの寸断により、売上の減少が見込まれることなどから、自動車・同附属品製造業でマイナス幅が大きい。
    先行きについては、大企業は7–9月期、中堅企業は10–12月期にプラスに転じる見通しである。他方、中小企業は、マイナスが続く見通しとなっている。
  • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く)は、23年度は前年度比4.9%の増加の見通しとなっている。

【参考】<月例経済報告>5月(平成23年5月24日)

  • 景気は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。
    • 生産は、東日本大震災の影響により、このところ生産活動が低下している。輸出は、東日本大震災の影響により、このところ減少している。
    • 企業収益は、東日本大震災の影響により、下押しされている。設備投資は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。
    • 企業の業況判断は、慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。ただし、東日本大震災の影響により、一部に弱い動きもみられる。
    • 個人消費は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面は東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれる。その後、生産活動が回復していくのに伴い、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待されるが、電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅れ、原子力災害及び原油価格上昇の影響等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
6月7日
(4月分)
6月20日
(4月分)
6月13日
(4月分)
6月9日
(5月分)
6月14日
(4~6月期)
7月6日
(5月分)
7月20日
(5月分)
7月7日
(5月分)
7月11日
(6月分)
8月5日
(6月分)
8月18日
(6月分)
8月11日
(6月分)
8月9日
(7月分)

SNA(QE)統計の公表予定はこちらから


ご意見・ご感想はこちらから

新着情報メール配信の登録内容の変更・停止等はこちらから

  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)