ESRI通信 第36号

平成23年8月16日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【震災復興と統計】

8月も半ば、甲子園では今年も球児たちが熱き戦いを繰り広げております。この夏も猛暑が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。小職、7月に経済社会総合研究所総務部に異動となりました。どうぞよろしくお願いします。

当研究所は、内閣府のシンクタンクとして、経済・社会活動についての理論と政策の橋渡しを行う役割を担うとともに、国民経済計算や景気動向指数などの統計の作成を行っています。このESRI通信は、毎月、それまでに発表した統計や研究成果、ESRI経済フォーラムなどの開催のお知らせを皆様にお伝えしております。

さて、3月11日に発生しました東日本大震災は、地震や津波により各地に甚大な被害を与え、原子力発電所事故に伴い周辺地域に深刻な影響をもたらし、今なお、多数の方々が避難を余儀なくされています。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

今回の震災では、地震・津波による直接の損失だけでなく、放射能による農林水産物の出荷制限や、各種製品や観光における風評被害など、様々な産業にも大きな影響が及んでおり、復興に全力をあげて取り組まなければなりません。

こうした中で、復興計画の策定には、正確な統計データが不可欠ですが、被災地では、震災で調査員や回答者自身が被災されたり、自治体の業務が被災者の復旧支援にあたらなければならなかったり、被災者の住民感情を配慮する必要があったりと、統計調査環境を取り巻く状況には厳しいものがあります。当研究所では、被災地で尽力されている統計調査員の方々への激励の意味を込めて「震災復興と統計-統計の果たすべき役割とは?」と題し、去る7月21日に統計委員会と共催でESRI経済フォーラムを開催しました。200人収容の会場に一杯の方々が集まり、今後の復興対策において公的統計がどのような役割を果たし得るのか、など様々な論点で活発な議論がなされました。一人ひとりの努力によって作られた統計が復興に役立つこと、そして、東北人の一人として、何よりも、被災地が一日でも早く復興することを願っています。 I love TOHOKU !

平成23年8月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総務部長 小野 稔

【最新の研究発表】

  • 天津市の環境保全シミュレーション(1)–天津多地域間産業連関表の推計とCO2・SO2 排出量の計測–(中野 諭、鬼頭 浩文、酒井 裕司)(平成23年7月)

    本研究は、中国天津市を対象に、地域における適切な環境政策を模索することを目的とし、天津市多地域間産業連関表の推計および同市に環境保全型技術が導入された際の環境・経済影響の評価を行ったものである。石炭の有効利用という観点から熱供給システムおよび脱硫技術の導入を検討し、その際のCO2およびSO2排出量、ならびに付加価値誘発額を計測している。シミュレーションの結果によれば、CO2排出量を抑制しながらSO2排出量を大幅に削減するには、熱供給および家計部門におけるバイオマスの活用と工業部門の中小工場における簡易排煙脱硫装置の設置を同時に促進することが有効であることが示されている。技術導入の建設コストは、2007年における天津市の付加価値の約2%程度であり、SO2排出量の約71%削減が期待されることを考えれば相対的に軽微であると考えられる。

  • 天津市の環境保全シミュレーション(2)–中小煙源に対する脱硫対策の健康被害抑制効果–(鬼頭 浩文、中野 諭、酒井 裕司)(平成23年7月)

    中国では石炭燃焼によって発生するSO2による大気汚染が深刻な環境問題となっている。この研究は、天津市における脱硫アクティビティについて、大気汚染の抑制と健康被害の減少効果を検証し、必要とされる環境政策について提案するものである。ここでは、天津市全体を1km×1km メッシュに分割し、各メッシュのSO2濃度と健康被害を予測するモデルを使っている。注目したのは、暖房用の熱供給、中小規模の工場、そして家庭で燃焼される石炭である。本研究では、SO2削減対策技術であるバイオマス利用技術と簡易脱硫装置について、健康被害の抑制効果を計算する。

  • 天津市の環境保全シミュレーション(3)–都市と農村地域に適した環境・エネルギー技術の導入–(酒井 裕司、中野 諭、鬼頭 浩文)(平成23年7月)

    本研究では、中国の都市と農村地域に適した環境・エネルギー技術について紹介し、それらの技術導入による環境改善効果を検討する。都市と農村地域が共存する地域として天津市を、また対策技術としては、簡易湿式脱硫法、石炭バイオブリケット、ヒートポンプ式の熱供給システム、バイオガスを選択する。そして、導入のインセンティブになる副産物利用による塩類土壌改良効果、植林、バイオガス導入によるCO2 削減効果を評価する。その結果、脱硫法から得られた副産物による塩類土壌改良では、天津市の塩類土壌の約1/3を改良でき、農産物の増加をもたらす。また、土壌改良地域に植林を行った場合と農村地域にバイオガスを導入した場合におけるCO2 削減量は約1.7 %と算出され、CO2 削減に効果的であることが示されている。また、バイオガス残渣の肥料としての利用も農家における農産物の増加と肥料コストの削減に寄与する。

  • 弱まる日本の長期雇用制度(川口 大司、上野 有子)(平成23年8月)(本文は英語)

    本論文では、我が国の勤続年数の長期的な減少傾向について、2つの代表的な政府統計である、世帯ベースの就業構造基本調査(ESS)と事業所ベースの賃金構造基本統計調査(BSWS)のマイクロデータを用いて検証した。1970年生まれの労働者は、1945年生まれの労働者と比べておよそ20%勤続年数が短いという結果がESSデータを用いた分析の結果得られた。長期雇用関係の弱まりは、企業規模間、産業間で一様に観察された。転職者については、自発的転職者もしくは賃金上昇を伴う転職者の比率は一定であった。

  • 消費者政策と資源管理問題(行本 雅、村上 佳世、丸山 達也)(平成23年8月)

    本論文では、共有資源管理において生産者間の協調が失敗しており、政府の生産者に対する直接規制も機能していないような場合に、消費者に対して働きかける政策の有効性について検討する。このために、水産エコラベルを取り上げ、実験的な手法を取り入れたweb調査を用いてコンジョイント分析を行う。

    主要な結論は、消費者に情報を伝えるときに、論理的な構造を理解できるようにすることで、ある程度長期的に消費者の選択行動に影響を与えることが可能である。すなわち、約1 ヶ月後に再度情報を伝えた上で選択行動を行うと、資源の枯渇に配慮してマグロの購入に当たって慎重になるとともにMSC ラベルに対して高い評価をするようになった。

    したがって、資源問題において消費者に理解できるように情報を伝えると、単に自己の利得のみを追求するのではなく、ある程度将来世代などの他者に対して配慮した行動をするようになる。こうした人たちが十分に多ければ、MSC ラベルのような資源に配慮した生産者に対する認証制度によって、生産者に対して資源管理に配慮して協調するインセンティブを与えることが可能である。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<議事次第(配付資料)の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 2011(平成23)年4–6月期四半期別GDP速報(1次速報値)における推計方法の変更について(平成23年7月27日)
  • 四半期別GDP速報(2011年(平成23)年4–6月期・1次速報)(平成23年8月15日)
    1. 平成23年8月15日に公表した23年4-6月期四半期別GDP速報(1次速報)では実質GDP成長率が0.3%(年率1.3%)と、3四半期連続で成長率がマイナスとなった。
    2. これは、輸出、民間住宅などの需要項目がマイナスに寄与した結果である。

<景気動向指数>6月速報(平成23年8月5日)

  • 6月のCI(速報値・平成 17 年=100)は、先行指数:103.2、一致指数:108.6、遅行指数:90.1 となった。
    先行指数は、前月と比較して3.8 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は1.26 ポイント上昇し、4ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.53 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して2.5 ポイント上昇し、3ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は1.77 ポイント上昇し、4ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.80 ポイント上昇し、23 ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.3 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.40 ポイント上昇し、5ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.26 ポイント上昇し、18 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>6月実績および7~9月見通し(平成23年8月11日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、23年5月前月比2.3%減の後、6月は同5.6%増の2兆1,005億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、23年5月前月比3.0%増の後、6月は同7.7%増の7,897億円となった。このうち、製造業は同9.3%増の3,440億円、非製造業(除く船舶・電力)は同15.7%増の4,445億円となった。
  • 4~6月をみると、受注総額は前期比9.6%減の6兆1,253億円となった。「船舶・電力を除く民需」は同2.5%増の2兆2,351億円、製造業は同0.2%減の9,783億円、非製造業(除船舶・電力)は同5.0%増の1兆2,344億円となった。
  • 7~9月見通しをみると、受注総額は前期比0.9%減の6兆716億円の見通しになっている。「船舶・電力を除く民需」は同0.9%増の2兆2,542億円、製造業は同0.6%減の9,721億円、非製造業(除船舶・電力)は同3.3%増の1兆2,756億円の見通しになっている。

<消費動向調査>7月調査(平成23年8月9日)

  • 平成23年7月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、6月の35.3から1.7ポイント上昇して37.0となり、3か月連続で上昇した。消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標も、3か月連続で上昇した。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合が減少して70.9%となり、「低下する」と思うとの回答割合は増加して6.1%となった。また、「変わらない」と思うとの回答割合は増加して16.3%となった。

【参考】<月例経済報告>8月(平成23年8月10日)

  • 景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、持ち直している。
    • 生産は、サプライチェーンの立て直しにより、持ち直している。輸出は、持ち直しの動きがみられる。
    • 企業収益は、増勢が鈍化している。設備投資は、下げ止まりつつある。
    • 企業の業況判断は、東日本大震災の影響による厳しさが残るなど、慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい。
    • 個人消費は、持ち直しの動きがみられる。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、サプライチェーンの立て直し、海外経済の緩やかな回復や各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響、海外景気の下振れ懸念に加え、為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
8月5日
(6月分)
8月18日
(6月分)
8月11日
(6月分)
8月9日
(7月分)
9月7日
(7月分)
9月20日
(7月分)
9月8日
(7月分)
9月9日
(8月分)
9月12日
(7~9月期)
10月7日
(8月分)
10月20日
(8月分)
10月12日
(8月分)
10月11日
(9月分)

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