ESRI通信 第39号

平成23年11月15日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【非正規労働者をめぐる問題(ワークとライフをめぐる意識)】

東日本大震災、さらに歴史的な円高などが雇用に及ぼす影響が心配される。特に、有期契約労働者、パートタイム労働者、派遣労働者といった非正規労働者は、急激な事業変動の影響を受けやすい。このような現下の経済情勢も懸念されるところであるが、すでに非正規労働者の全労働者に占める割合が3分の1を超えていることが中長期的に社会経済に及ぼす状況も看過できない。

非正規労働者の占める割合は男女ともに上昇し、男性は、過去10%未満だったものが、2010年には2割近くに上昇し、女性は従前から非正規労働者の占める割合が高かったが、昨今では過半数を超えるまでに上昇した。また、非正規労働者の割合は、すべての年齢層で上昇傾向にあり、特に若年層の上昇が、在学中のものを除いても、著しい。

このように増加している非正規労働者について、企業は活用する上での問題点として、「良質な人材の確保」、「仕事に対する責任感」や「仕事に対する向上意欲」をあげ、雇われる側の資質を問題にしている。これに対して、働いていて不満がある非正規労働者は、「頑張ってもステップアップが見込めないから」、「いつ解雇・雇止めがなされるかわからないから」、「賃金水準が正社員に比べて低いから」といったことに不満をもち、企業の使い方を問題にしている。にわとりが先か、卵が先か、のようにも見えるが、非正規労働者になると、仕事を通じて職業能力を開発していく機会が限定され、より良い雇用へ移動していくことが難しいのが現状だ。

こうした状況がある一方で、長期的な雇用保障があり、将来や責任の面でも、より多く期待されている正社員は、その分、負担は多く、労働時間も高止まり、という状況になっている。安定した仕事やキャリアアップの展望がもてる仕事に就くことのできない非正規労働者が増加する一方で、正社員については、雇用は減り、長時間労働の改善は進まない、という働き方の二極化が進んでいる。

このような二極化は、少子化・高齢化の進展の中で、社会保障の在り方にもかかわってくる。1人の高齢者を2020年には1.9人で支え、2050年には1.2人で支えるという試算がなされているが、非正規労働者のなかには、公的年金に未加入の者も少なからずいる。本人たちの年金の問題とともに、支える側の実質的な数値についても問題になると考えられる。

ESRIでは、ワーク・ライフ・バランス社会の実現をめざして調査研究を進めてきた。長期的な視点からワークやライフをとらえていくことも重要となる。こうしたことから、個々人がワークやライフ(現在の生活だけでなく、今後の人生も含めて)をどのように考えているのか、意識調査をもとに雇用政策だけでなく、経済・社会政策を考えていくうえで基盤とすべき人々の意識についても分析研究を深めていきたいと考えている。

平成23年11月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 内野淳子

【最新の研究発表】

  • IT投資の経済効果に関する産業別実証分析—産業別情報資本ストックの構築に基づく生産関数モデル分析—しのざきあきひこ、久保田 茂裕)(平成23年10月)

    本稿では、IT投資の経済効果を産業別に分析するため、22の産業分類で情報資本ストックを構築し、これを明示的に織り込んだ生産関数モデルを推定した。その結果、情報資本ストックの蓄積が付加価値の成長に寄与していると確認できたのは、22産業のうち精密機械、不動産業、運輸・通信業、サービス業の4産業にとどまり、産業全体への広がりに欠けることが明らかとなった。本稿で構築した情報資本ストックのデータは、ベンチマークとなる産業連関表が現時点としては最新の2005年基準であり、マクロ分析で日本のIT投資が2000年代に停滞したと確認されていること、ミクロ分析による国際比較研究で日本のIT 導入効果が低いと判明していること、などとあわせて解釈すると、日本経済がIT投資による成長加速の波に乗れていないことを産業レベルでも示す結果といえる。

  • 「経済分析第185号(ジャーナル版)」(平成23年10月)
    (論文)
    輸入競争と集積が雇用・工場閉鎖に及ぼす影響について(乾 友彦、枝村 一磨、松浦 寿幸)
    総合学科設置(コンプリヘンシブ・カリキュラム)が高等学校生徒の中退行動に与えた影響の計量分析(荒木 宏子)
    相対所得が出産に与える影響(松浦 司)
    (研究ノート)
    外国人研修生・技能実習生受入企業の賃金と生産性に関する一考察(橋本 由紀)
    情報化とサービス化の産業連関分析(塚原 康博)
    (資料)
    バブル/デフレ期の日本経済と経済政策研究–オーラル・ヒストリーに見る時代認識–(石川 知宏)
  • 移行経済における生産性と企業所有権、生産者集中度:ベトナムの製造業の例(エリック・D・ラムステッター、ファン・ミン・ノック)(平成23年11月)(本文は英語)

    2000~2006年のベトナム製造業のデータを用いて分析を行い,多国籍企業(100%外資と合弁企業を含む)や国営企業は,地場民間企業と比べて労働生産性は高く,資本生産性は低いという結果が得られた。企業毎の要素集約度や企業規模の違い,産業毎の生産者集中度の違いを考慮した上で分析を行うと,2001~06年のデータを用いた場合でも2001~03年と2004~06年とに分析期間を分けた場合でも,さらに全製造業種をまとめて分析を行った場合でも業種毎に分析を行った場合でも,多くのケースにおいて合弁外資系企業や国営企業の全要素生産性(TFP)は,地場民間企業と比べて高く,その差は統計的に有意であった。100%外資系企業のTFPについては,地場民間企業との差は多くのケースにおいて統計的に有意でない,または地場系企業よりも低いという結果であった。しかし,推定時における同時性の問題を考慮してラグ付きモデルを推定した場合には,地場系企業と比べてTFPは統計的に有意に高いという結果を示すケースがより多く見られた。多国籍企業や国営企業から民間地場企業へもたらされる生産性スピルオーバー効果や,生産者集中度の違いが生産性にもたらす効果については,統計的に有意な結果は得られなかった。生産性スピルオーバー効果について,生産者集中度の違いをもとに分析対象の企業を2 つのサンプルに分けて分析を行っても同様の結果であった。これらの結果は,ベトナムの多くの企業は比較的に簡素な技術を用いる組立生産に従事しており,民間地場企業は競争相手である多国籍企業の技術を速やかに模倣しやすい場合が多いとする見解と整合的である。一方で,本分析では産業毎あるいは分析期間毎に異なる結果が得られるケースが多く見られたが,このことは,業種が多様であり変化が急速であるベトナム製造業の分析において,異質な業種や分析期間を1つのサンプルにまとめて分析を行うことの危険性を示唆している。

  • わが国における子育て関連支出の推計(堀 雅博)(平成23年11月)(本文は英語)

    本稿では、「家計調査」の個票データから得られる世帯支出及び世帯構造に関する情報を用い、わが国世帯における平均的な子育て関連支出額を推定した。その結果、第一子にかかる子育て関連支出の総額(誕生から18歳に至るまでの期間の累計額)は、2004年から2008年のデータで評価して、1650万円程度となった。一方、同様の平均支出額(累計値)を子供二人の世帯について計算したところ、一人当たり1100万円程度に収まることがわかった。こうした結果は、子育てに相当程度の規模の経済性が働くこと、ないしは、子供の数が多くなると一人に割ける資源の量が減少してしまうことを示唆するものと言える。世帯の消費支出全体に占める子育て関連支出のシェアは1980年代半ば以降一貫して上昇しており、こうした子育て負担の増大がわが国の少子化傾向に拍車をかけている可能性も考えられる。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 平成23年度民間企業投資・除却調査 ご協力のお願い(平成23年10月13日)
  • 消費者物価指数(CPI) 平成22年基準の国民経済計算(SNA)への反映について(平成23年10月24日)
  • 新規設立組織に関する国民経済計算における制度部門別分類について(平成23年10月26日)
  • 2011(平成23)年7-9月期四半期別GDP速報(1次速報値)における推計方法の変更について(平成23年10月26日)
  • 四半期別GDP速報(2011(平成23)年7-9月期・1次速報)(平成23年11月14日)
    1. 平成23年11月14日に公表した23年7–9月期四半期別GDP速報(1次速報)では実質GDP成長率が1.5%(年率6.0%)と、4四半期ぶりに成長率がプラスとなった。
    2. これは、輸出、民間最終消費支出などの需要項目がプラスに寄与した結果である。

<景気動向指数>9月速報(平成23年11月7日)

  • 9月のCI(速報値・平成 17 年=100)は、先行指数:91.6、一致指数:88.9、遅行指数:85.9 となった。
    先行指数は、前月と比較して2.2 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.53 ポイント下降し、4ヶ月振りの下降、7ヶ月後方移動平均は0.57 ポイント下降し、5ヶ月振りの下降となった。
    一致指数は、前月と比較して1.4 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.50 ポイント下降し、4ヶ月振りの下降、7ヶ月後方移動平均は0.77 ポイント下降し、7ヶ月連続の下降となった。
    遅行指数は、前月と比較して1.7 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.57 ポイント上昇し、3ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.03 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、下げ止まりを示している。

<景気動向指数研究会>10月19日開催(平成23年10月19日)

  • 景気動向指数研究会の議論を踏まえ、景気動向指数の改定を行い、第14循環の景気の山を2008(平成20)年2月に、谷を2009(平成21)年3月に確定した。

<機械受注統計調査報告>9月実績および10~12月見通し(平成23年11月10日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、23年8月前月比6.5%増の後、9月は同3.7%減の1兆9,094億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、23年8月前月比11.0%増の後、9月は同8.2%減の7,386億円となった。このうち、製造業は同17.5%減の3,061億円、非製造業(除く船舶・電力)は同8.5%増の4,466億円となった。
  • 7~9月をみると、受注総額は前期比6.0%減の5兆7,557億円となった。「船舶・電力を除く民需」は同1.5%増の2兆2,687億円、製造業は同2.5%増の1兆32億円、非製造業(除船舶・電力)は同5.0%増の1兆2,965億円となった。
  • 10~12月見通しをみると、受注総額は前期比4.8%増の6兆316億円の見通しになっている。「船舶・電力を除く民需」は同3.8%減の2兆1,827億円、製造業は同4.2%減の9,608億円、非製造業(除船舶・電力)は同3.1%減の1兆2,560億円の見通しになっている。

<消費動向調査>10月調査(平成23年11月10日)

  • 平成23年10月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、9月と比べて横ばいの38.6となった。消費者態度指数を構成する4つの意識指標のうち、「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」はともに2か月連続の上昇となったものの、「暮らし向き」「収入の増え方」はともに6か月ぶりの低下となった。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は69.6%、「低下する」と思うとの回答割合は6.9%となり、ともに増加した。他方、「変わらない」と思うとの回答割合は減少して17.2%となった。

【参考】<月例経済報告>10月(平成23年10月17日)

  • 景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、引き続き持ち直しているものの、そのテンポは緩やかになっている。
    • 生産は、持ち直しているものの、そのテンポは緩やかになっている。輸出は、横ばいとなっている。
    • 企業収益は、減少している。設備投資は、下げ止まりつつある。
    • 企業の業況判断は、改善している。ただし、中小企業においては先行きに慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、持ち直しの動きもみられるものの、東日本大震災の影響もあり依然として厳しい。
    • 個人消費は、おおむね横ばいとなっている。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、サプライチェーンの立て直しや各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響に加え、回復力の弱まっている海外景気が下振れた場合や為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
11月7日
(9月分)
11月21日
(9月分)
11月10日
(9月分)
11月10日
(10月分)
12月7日
(10月分)
12月20日
(10月分)
12月8日
(10月分)
12月12日
(11月分)
12月9日
(10~12月期)
1月11日
(11月分)
1月20日
(11月分)
1月16日
(11月分)
1月16日
(12月分)

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