ESRI通信 第40号

平成23年12月13日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

ギリシャ財政の「粉飾」が明らかになったことに端を発した欧州債務危機、有名企業による損失飛ばしとそれに伴う粉飾決算疑惑が当該企業の株価下落を招くのみならず、我が国のコーポレートガバナンス自体にも疑いの目を向けられている等々の報道を最近目にする。意図的な数字の改ざんは論外としても、経済社会において「数字」で実態を正確に認識し、伝えることの重要性を示すものであり、あらためて統計作成担当者の責任の重大性を認識すべきものだと思う。

このことに関連して、数年前にある中小零細企業の経営者の方と話をした時のことを思い出した。いわく「今まで何とかご飯は食べてきていたが、実はうちの会社がどういう状況であるのかよくわかっていなかった。しかしこの前、税理士さんにきちんと分析してもらって、なるほどこういうことで会社が続けてこられたのかと初めて認識した。」

また、これとは別に、消費者が家計簿をつけることによって、自らの家計がどういう状況にあり、どう改善すれば将来にわたって健全な家計であり続けられるかを認識することができるようになる、といったことも耳にすることが多い。

上記のような話を少々強引に統計に結びつけて考えると、集計量としての統計データを作成し世に公表することによって、経済社会の抱える課題を把握し、対策を考え実施することを通じて、景気の回復や生活の改善などに結びつけるという統計本来に期待される役割以外に、もう一つ別の効果を統計は持つのではないか。つまり、統計調査(例えば、先の中小零細企業の例でいえば「個人企業経済調査」であり、家計簿の例でいえば「家計調査」など。)を行うことそれ自体によって、調査対象者たる個々の企業や家計がそれに回答することを通じて自らの課題や問題点を発見し、改善へと動き出すことにつながる、というものである。

もしそうだとしてさらに想像力を逞しくすれば、今度は別の問題が生じることになる。それは、統計調査を行うことによって、世の中が調査前と調査後で(調査期間中だけにとどまらず)変化してしまう、ということである。何やら物理学などにおける「観察者効果」(「観察するという行為が観察される現象に与える変化を指す。例えば、電子を見ようとすると、まず光子がそれと相互作用しなければならず、その相互作用によって電子の軌道が変化する。」以上、Wikipediaより引用。)みたいな話になり、統計調査は何を測っているのかというのは考え過ぎだろうか。

平成23年12月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 道上浩也

【最新の研究発表】

  • 我が国世帯のインフレ期待形成:消費動向調査個票による実証分析(河越 正明、堀 雅博)(平成23年11月)(本文は英語)

    マクロ経済動向の決定において経済主体が形成する「期待」が重要であるという認識は、エコノミストの間に広く共有されている。しかしながら、主流のマクロ経済学者は、期待は「合理的」であると単純に仮定していることが多く、経済主体の実際の期待形成が本当に合理的か否かという本質的な問題を問うことはあまりない。こうした認識の下、本稿では、内閣府の「消費動向調査」から得られるインフレ期待に関する月次の個票データを活用し、わが国の個別世帯におけるインフレ期待の形成について、その特性を実証的に検討する。分析結果によれば、日本の個別世帯によるインフレ期待形成の実態は、合理的とは言えず、少なくとも事後的に見て上方バイアスがあり、また、専門家(プロ)による経済予測等、メディアを通じ容易に入手できるインフレ動向に関する情報を即時に自らの期待に反映するということも十分行っていない。世帯別のインフレ期待形成のパターン(合理的モデルからの逸脱)は、所謂「粘着情報モデル」(sticky information model)によって説明できる部分もあるものの、それでも説明しきれない点が多く残されている。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 国民経済計算における平成17年基準改定について(平成23年11月18日)
  • 「平成22年度国民経済計算確報(平成17年基準改定値)」に係る利用上の注意について(平成23年11月30日)
  • 平成23年7‐9月期四半期別GDP速報(2次速報値)における平成17年基準改定の反映について(平成23年11月30日)
  • 四半期別GDP速報(2011(平成23)年7-9月期・2次速報)(平成23年12月9日)
    1. 平成23年12月9日に公表した23年7-9月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が1.4%(年率5.6%)と、1次速報値の1.5%(年率6.0%)から下方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が下方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、主に民間企業設備、民間最終消費支出が下方改定となったことによる。
  • 平成22年度国民経済計算確報(支出側系列・雇用者報酬)(平成23年12月9日)
  • 「2011(平成23)年7-9月期四半期別GDP速報(2次速報値)」、「平成22年度国民経済計算確報(支出系列等)」統計表の訂正について(平成23年12月9日)

<景気動向指数>10月速報(平成23年12月7日)

  • 10 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:91.5、一致指数:90.3、遅行指数:82.3 となった。
    先行指数は、前月と比較して保合となった。3ヶ月後方移動平均は1.10 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.16 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降となった。
    一致指数は、前月と比較して1.3 ポイント上昇し、4ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.03 ポイント下降し、2ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.57 ポイント上昇し、8ヶ月振りの上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して3.9 ポイント下降し、3ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.40 ポイント下降し、3ヶ月振りの下降、7ヶ月後方移動平均は0.14 ポイント下降し、21 ヶ月振りの下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、下げ止まりを示している。

<機械受注統計調査報告>10月実績(平成23年12月8日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、23年9月前月比3.7%減の後、10月は同3.2%増の1兆9,714億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、23年9月前月比8.2%減の後、10月は同6.9%減の6,874億円となった。このうち、製造業は同5.5%増の3,230億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.3%減の4,139億円となった。

<消費動向調査>11月調査(平成23年12月12日)

  • 平成23年11月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、10月の38.6から0.5ポイント低下して38.1となった。消費者態度指数を構成する4つの意識指標のうち、「耐久消費財の買い時判断」は上昇したものの、「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」は低下した。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は減少して65.0%となった。他方、「低下する」と思うとの回答割合は8.1%、「変わらない」と思うとの回答割合は19.8%となり、ともに増加した。

<法人企業景気予測調査>10‐12月期調査(平成23年12月9日)

  • 23年10-12月期の「貴社の景況判断」BSIを大企業・全産業でみると、2.5となった。今回調査では情報通信機械器具製造業、自動車・同附属品製造業等を中心にマイナスに転じた。中堅企業、中小企業は、引き続きマイナスでの推移となった。先行きについては、大企業はプラスに転化する見通し、中堅企業、中小企業は、マイナスが続く見通しとなっている。
  • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く)は、23年度は前年度比0.7%の増加の見込みとなっている。

【参考】<月例経済報告>11月(平成23年11月24日)

  • 景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直している。
    • 生産は、緩やかに持ち直している。輸出は、横ばいとなっている。
    • 企業収益は、減少している。設備投資は、下げ止まりつつあるものの、このところ弱い動きもみられる。
    • 企業の業況判断は、改善している。ただし、中小企業においては先行きに慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、持ち直しの動きもみられるものの、東日本大震災の影響もあり依然として厳しい。
    • 個人消費は、おおむね横ばいとなっている。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、サプライチェーンの立て直しや各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響に加え、欧州の政府債務危機などを背景とした海外景気の下振れや為替レート・株価の変動、タイの洪水の影響等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
12月7日
(10月分)
12月20日
(10月分)
12月8日
(10月分)
12月12日
(11月分)
12月9日
(10~12月期)
1月11日
(11月分)
1月20日
(11月分)
1月16日
(11月分)
1月16日
(12月分)
2月7日
(12月分)
2月20日
(12月分)
2月9日
(12月分)
2月9日
(1月分)

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