ESRI通信 第42号

平成24年2月14日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

新年を迎えて早1か月が過ぎました。昨年は、日本にとって本当に厳しい年となりましたが、今年も明るい話題に乏しい状況でのスタートとなった感があります。税と社会保障の一体改革やTPP交渉への参加問題など、取り組むべき重要課題が山積しています。こうした中で、当研究所も現在取り組んでいるテーマについて成果を出していくとともに、GDPなど信頼できる統計の整備、公表を行っていかなければなりません。

そこで、今回は最近の研究所の近況と今後の予定をいくつかご紹介したいと思います。

まず、何人かの当研究所の職員がこの通信で報告しているように、昨年12月の初め、当研究所とOECDなどの国際機関が共同して、幸福度と社会進歩に関する国際コンファレンスを東京で開催しました。幸い多くのアジア諸国からの参加者を得て、成功裏に終えることが出来ました。この機会に、内閣府で行われていた幸福度に関する研究会の報告書も公表されました。このコンファレンスは地域コンファレンスの一つとして、アジア太平洋諸国を対象とした会合でしたが、今年の秋にはインドで、これまで行われてきた地域コンファレンスの議論を集約する会合がOECDによって行われる予定です。後者の研究会の報告書は生活の質に関するデータの整備を求めていますが、今後アンケート調査などによってデータを収集、整備していきたいと考えています。

次に、昨年の3.11に関し、その経済社会への影響をできるだけ検証していく必要がありますが、一方で未曾有の災害のために被災地域において統計調査が十分にできなくなるといったことも生じました。このため昨年7月にESRI経済政策フォーラムを開催し、統計上の問題も含め熱心にご議論いただきました。こちらも多数の方の参加を得、あらためて震災への関心の強さを感じました。震災から1年が近づいていますが、その後の新たな動きを踏まえ再度議論していただくため、3月8日に「震災1年後の日本―統計から見た復興の課題と経済・社会の行方」と題してフォーラムを開催すべく、現在準備をしているところです。

3点目は、最後になりますが、国民経済計算(GDP統計)の基準改定のご報告です。国民経済計算は概ね5年に一度、経済構造などの変化を適切に反映させるため、基準となる年を新しくしています。またそれを機会に国連などのガイドラインに従い、推計方法の見直しも行っています。このため改定の年は膨大な作業が必要となりますが、ようやくこの1月25日のストック編の公表によって、一区切りをつけることが出来ました。また、民間エコノミストの方々との懇談会も開催し、そこで多くの貴重な意見をいただきました。もとより、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月13日閣議決定)にはまだ多くの課題が残されていることは間違いありませんので、引き続き改善に向けた努力を続けていきたいと考えています。

平成24年2月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    次長 堀田 繁

【最新の研究発表】

  • 社会保障を通じた世代別の受益と負担(鈴木 亘、増島 稔、白石 浩介、森重 彰浩)(平成24年1月)

    年金、医療、介護の3分野に関する社会保障モデルを構築した上で、社会保障の長期推計を行い、さらに生年別の受益と負担の構造を検討した。

    本研究で構築したモデルは、鈴木(2006)を発展させたものであるが、年金モデルでは、厚生労働省が平成21年財政検証に際して公開した計算手法とデータおよび将来の経済前提を取り込み、医療モデル、介護モデルでは現行制度と最新データを反映させた。各モデルとも政府による推計結果(年金は2105 年まで、医療、介護は2025年まで)をほぼ再現している。医療、介護では長期推計を試みており、医療給付費及び介護給付費の対名目GDP比率は、 2010年から2100年にかけて、いずれも2倍近くの規模に拡大する。

    現役期に保険料を負担し引退後にサービスを受益するという構造は、年金、医療、介護の3制度に共通しているが、受益と負担の関係は世代ごとに異なる。社会保障からの純受益が生涯収入に占める割合として定義される生涯純受給率を生年別にみると、1950年生れ1.0%、1960年生れ5.3%、1970 年生れ7.8%、1980年生れ9.8%、1990年生れ11.5%、2000年生れ12.4%、2010年生れ13.0%と生年が下るにつれて支払い超過の傾向にある。このように、社会保障を通じた世代間不均衡は無視できない大きさとなっている。

  • 年金の受益と負担に対するデフレの影響(増島 稔、森重 彰浩)(平成24年1月)

    デフレが年金の世代間の受益・負担に与える影響について定量的に分析した。

    現行のマクロ経済スライド制度はデフレ時には発効しないので、デフレが生じると受給水準が抑制されず、世代間の受益と負担の格差は拡大する。平成21年財政検証では、2038年度のマクロ経済スライド終了後に受給開始となる1973年生まれ以降の世代の最終的な所得代替率は50.1%と推計されている。しかし、2018年度までデフレが継続すると、マクロ経済スライドが2064年度まで延長され、1980年生まれ以降の世代の所得代替率は50.0%を切り、1999年生まれ以降の世代の最終的な所得代替率は45.1%まで低下するとみられる。

    ただし、マクロ経済スライドの適用基準を変更して、デフレ下であっても、マクロ経済スライド調整が行われるように設定すれば、世代間の格差を縮小することができる。その場合には、マクロ経済スライドの適用は2028年度で終了するため、1963年生まれ以降の世代の最終的な所得代替率は51.9%となる。

    年金制度における世代間の受益と負担の格差を拡大させないためには、いち現時点の受給世代の年金水準を早期に抑制し、に年金財政の収支を早めに改善させることによりマクロ経済スライド調整期間を短くする必要がある。デフレとの関係では、さんデフレから早期に脱却すること、が最も重要であるが、デフレの長期化に備えて、よんデフレが生じてもマクロ経済スライドが発動するように制度を変更すること、も必要となろう。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>

  • 「震災1年後の日本–統計から見た復興の課題と経済・社会の行方」 第48回 ESRI–経済政策フォーラム(平成24年3月8日開催)

【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>12月速報(平成24年2月7日)

  • 12 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:94.3、一致指数:93.2、遅行指数:82.7 となった。
    先行指数は、前月と比較して0.6 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.50 ポイント上昇し、4ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.33 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して2.9 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は1.03 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.68 ポイント上昇し、3ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.3 ポイント下降し、2ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は1.00 ポイント下降し、3ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.20 ポイント下降し、3ヶ月連続の下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、上方への局面変化を示している。

<機械受注統計調査報告>12月実績および平成24年1~3月見通し(平成24年2月9日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、23年11月前月比14.7%増の後、12月は同7.2%減の2兆979億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、23年11月前月比14.8%増の後、12月は同7.1%減の7,332億円となった。このうち、製造業は同7.1%減の3,142億円、非製造業(除く船舶・電力)は同6.0%減の4,131億円となった。
  • 10~12月をみると、受注総額は前期比10.0%増の6兆3,301億円となった。「船舶・電力を除く民需」は同2.6%減の2兆2,095億円、製造業は同2.8%減の9,753億円、非製造業(除船舶・電力)は同2.3%減の1兆2,666億円となった。
  • 24年1~3月見通しをみると、受注総額は前期比9.9%増の6兆9,569億円の見通しになっている。「船舶・電力を除く民需」は同2.3%増の2兆2,593億円、製造業は同2.7%増の1兆15億円、非製造業(除船舶・電力)は同0.8%増の1兆2,772億円の見通しになっている。
  • 平成23年実績をみると、受注総額は前年比6.8%増の24兆7,874億円になっている。「船舶・電力を除く民需」は同7.8%増の8兆8,961億円、製造業は同10.4%増の3兆9,337億円、非製造業(除船舶・電力)は同5.8%増の4兆9,866億円になっている。

<消費動向調査>1月調査(平成24年2月9日)

  • 平成24年1月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、12月の38.9から1.1ポイント上昇して40.0となり、2か月連続で上昇した。これは、消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標が上昇したためである。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は63.1%、「低下する」と思うとの回答割合は8.1%となり、ともに増加した。他方、「変わらない」と思うとの回答割合は、減少して21.8%となった。

【参考】<月例経済報告>1月(平成24年1月17日)

  • 景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直している。
    • 生産は、緩やかに持ち直している。輸出は、このところ弱含んでいる。
    • 企業収益は、減少している。設備投資は、下げ止まりつつあるものの、このところ弱い動きもみられる。
    • 企業の業況判断は、大企業製造業で低下しており、全体としても小幅改善となっている。先行きについても、全体として慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、持ち直しの動きもみられるものの、東日本大震災の影響もあり依然として厳しい。
    • 個人消費は、おおむね横ばいとなっている。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、各種の政策効果などを背景に、景気の緩やかな持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、欧州の政府債務危機が、金融システムに対する懸念につながっていることや金融資本市場に影響を及ぼしていること等により、海外景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクが存在する。また、電力供給の制約や原子力災害の影響、さらには、デフレの影響、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
2月7日
(12月分)
2月20日
(12月分)
2月9日
(12月分)
2月9日
(1月分)
3月7日
(1月分)
3月16日
(1月分)
3月12日
(1月分)
3月12日
(2月分)
3月14日
(1~3月期)
4月6日
(2月分)
4月23日
(2月分)
4月11日
(2月分)
4月17日
(3月分)

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