ESRI通信 第43号

平成24年3月15日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

一昨年の夏に着任して以来、幸福度研究に携わっており、一昨年に閣議決定された新成長戦略に基づき研究所で取り組んでいる幸福度研究の概要について、ご紹介したいと思います。一般に言われる幸福度研究は、主観的幸福感と呼ばれる人々の主観的な生活の評価や幸福感を中心に研究する複合領域の分野で、哲学に始まり、医学、公衆衛生、心理学、社会学、経済学などの分野の研究者が取り組んでいるものです。主観的幸福感を用いた分析により、様々なことが分かってきています。例えば、実証分析結果には、以下のようなものがあります。

いち 所得の上昇が人々の幸福度を改善するには限界がある。

に 失業が個人にもたらす負の影響は、所得の減少以上に、非常に大きい。

さん 正規雇用、非正規雇用の違いがもたらす影響は、国ごとに異なる。賃金を考慮しない場合には、非正規雇用がわが国でも男性、女性別では幸福度を有意に引き下げるわけではない。

よん 年齢別にみると欧米では40代が一番低い。日本では年齢とともに幸福度が低下するとする研究もある。結婚や配偶者の存在は幸福度を引き上げる。

ご 労働者にとって、雇用主による経営への信頼は、生活全般の幸福度に大きく影響する。

ろく 政治体制への信頼感やソーシャル・キャピタルの質が幸福度に大きく影響。

なな 東アジアでは社会的な調和から幸福感を得る一方、欧米では個人的な達成感から幸福感を得る傾向にある。

このような成果もあり、幸福度を正確に測定することが、重要であると考えられるようになりました。内閣府経済社会総合研究所では、政策統括官(経済社会システム担当)とともに幸福度に関する研究会の事務局を務めました。去る12月に研究会は報告書をまとめ、幸福度を測定するための幸福度指標試案を公表しています。この3月には、主観的幸福感を中心に調査する「生活の質に関する調査」を実施しています。幸福感の水準の正確な測定に加え、それを支える様々な要因がクリアにできるよう、今後とも努力していきたいと思っています。

幸福度測定は、日本だけのイニシアティブではなく、主要国で様々なイニシアティブがあり、国際機関のOECDは世界プロジェクトを推進しています。OECDのプロジェクトの中には、主観的幸福度測定のためのガイドラインの作成が含まれており、現在、それについて国際的な意見交換が進んでいます。このガイドラインに、アジア的な視点を盛り込めるように、当研究所からも議論に貢献していきたいと思います。去る12月に開催された幸福度に関するアジア太平洋コンファレンスも世界プロジェクトの一環に位置付けられます。また、国内でも自治体等において多彩な取り組みがあり、来る3月19日には自治体等の有識者を招いた幸福度に関するパネルディスカッションを開催する予定です。

このように、幸福度研究は分野、手法、対象も多岐にわたり、国際的にも国内的にも広がりのあるテーマとなっています。

平成24年3月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    上席主任研究官 桑原 進

【最新の研究発表】

  • 日本における外国人の定住化についての社会階層論による分析‐職業達成と世代間移動に焦点をあてて‐(是川 夕)(平成24年2月)

    日本における外国人人口は1989年の入管法改正以降、急激に増加ペースを速め、2008年末には2,217,426人、総人口比で1.74%と、1989年末の2.2倍へと達した。これは、他の先進諸国と比較すると依然として低い水準であるが、この間に日本が経験した変化は非常に大きい。それに伴い、定住化に伴って、移民が職業などの社会経済的地位の達成をどのように行っていくのかという、社会階層論的な分析の重要性が増してきている。

    こうした変化と関心の高まりは、日本に限ったものではなく、近年、先進各国に共通の課題となりつつあるものである。その一方、欧米と異なり日本では、外国人の定住化に関する研究は、社会階層の制度・構造面に照準することが多かったものの、実際の階層達成が個人レベルでどのように行われているかについては、ほとんど明らかにしてこなかった。

    そこで、本研究は、入管法改正から約10年後の2000年に行われた国勢調査の個票データの内、外国人に関する全数を用いて、個人レベルでの階層達成、及び子の世代の教育達成がどのように行われているかを、人的資本、社会関係資本の蓄積の個人間の差異から明らかにすることとし、日本における外国人の定住化を階層論的に分析した。

    その結果、日本における外国人の定住化における個々人の階層達成の差異は、主に人的資本の違いから説明されることが明らかになった。その一方で、階層達成における機会構造は、主に人的資本の効果を低減させることを通じて、集合レベルで層化/分断されており、その結果、日本人との格差及び国籍間格差がともに大きいことが示された。これは、これまで行われてきた構造主義的アプローチによる研究成果と整合的な結果といえよう。さらに、親世代の階層的差異は、子の教育達成への影響を通じて、世代間における階層間格差を固定する可能性が高いことが示された。

    こうした結果は、これまで構造決定論的に分析されることの多かった外国人の階層達成を、世代間移動も含め、個人レベルの階層達成の視点から明らかにした点で画期的であるといえよう。

<調査へのご協力のお願い>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>

  • 「幸福度に関するパネルディスカッション」 幸福度研究(平成24年3月19日開催)

【最新の統計】

<SNA統計>

  • 平成21年度県民経済計算(平成24年2月29日)
  • 四半期別GDP速報(2011(平成23)年10–12月期・2次速報)(平成24年3月8日)
    1. 平成24年3月8日に公表した23年10–12月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が0.2%(年率0.7%)と、1次速報値の0.6%(年率2.3%)から上方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が上方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、主に民間企業設備や民間最終消費支出が上方改定となったことによる。

<景気動向指数>1月速報(平成24年3月7日)

  • 1 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:94.9、一致指数:93.1、遅行指数:81.1 となった。
    先行指数は、前月と比較して1.1 ポイント上昇し、3ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.83 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.18 ポイント上昇し、3ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して0.5 ポイント下降し、2ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.53 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.33 ポイント上昇し、4ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して2.8 ポイント下降し、3ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.67 ポイント下降し、4ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.40 ポイント下降し、2ヶ月振りの下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、上方への局面変化を示している。

<機械受注統計調査報告>1月実績(平成24年3月12日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、23年12月前月比7.2%減の後、24年1月は同21.6%増の2兆5,519億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、23年12月前月比7.1%減の後、24年1月は同3.4%増の7,578億円となった。このうち、製造業は同1.8%減の3,085億円、非製造業(除く船舶・電力)は同2.3%増の4,227億円となった。

<消費動向調査>2月調査(平成24年3月12日)

  • 平成24年2月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、1月の40.0から0.5ポイント低下して39.5となり、3か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する4項目の意識指標のうち、「耐久消費財の買い時判断」は前月と比べて横ばいとなったものの、「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」は低下した。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は増加して63.4%となった。他方、「低下する」と思うとの回答割合は7.3%、「変わらない」と思うとの回答割合は21.6%となり、ともに減少した。

<法人企業景気予測調査>1‐3月期調査(平成24年3月14日)

  • 平成24年1–3月期の「貴社の景況判断」BSIを大企業・全産業でみると、2.7となった。製造業は、食料品製造業、化学工業等を中心にマイナスとなり、非製造業は、サービス業、卸売業などを中心にマイナスとなった。中堅企業、中小企業はマイナス幅が拡大した。
  • 先行きについては、大企業は平成24年4–6月期、中堅企業は平成24年7–9月期にプラスに転化する見通し。中小企業は、マイナスが続く見通しとなっている。
  • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く)は、平成23年度は前年度比0.4%の減少の見込みとなっている。

<企業行動に関するアンケート調査>平成23年度(平成24年2月28日)

  • 調査対象企業における、「次年度」(平成24年度)の我が国の実質経済成長率見通しは1.6%と前年度調査(0.9%)を上回り、直近では平成19年度調査(1.9%)に次ぐ水準となった。「今後3年間」(平成24~26年度平均)は1.5%、「今後5年間」(平成24~28年度平均)は1.5%となった。
  • 名目経済成長率見通しは、「次年度」1.1%、「今後3年間」1.1%、「今後5年間」1.1%と、いずれも実質経済成長率見通しを下回っており、物価下落が見込まれている。
  • 1年後(平成25年1月ごろ)の予想円レートは80.3円/ドルと、昭和61年度調査開始以来最も円高の予想となった。輸出を行っている企業の採算円レートは82.0円/ドルと、昭和61年度調査開始以来最も円高水準となった。
  • 「今後3年間」(平成24~26年度平均)の設備投資の増減率見通しは4.1%と、前年度調査(3.4%)に比べて増加幅が拡大した。
  • 「今後3年間」(平成24~26年度平均)の雇用者数の増減率見通しは1.0%と、前年度調査(1.0%)と同程度の増加幅となった。
  • 海外現地生産比率(製造業のみ回答)は、「平成22年度実績」は17.9%と、昭和62年度調査開始以来最も高い水準となり、「平成28年度見通し」は22.4%と上昇が見込まれている。

【参考】<月例経済報告>2月(平成24年2月16日)

  • 景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直している。
    • 生産は、緩やかに持ち直している。輸出は、このところ弱含んでいる。
    • 企業収益は、減少している。設備投資は、下げ止まりつつあるものの、このところ弱い動きもみられる。
    • 企業の業況判断は、大企業製造業で低下しており、全体としても小幅改善となっている。先行きについても、全体として慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、持ち直しの動きもみられるものの、東日本大震災の影響もあり依然として厳しい。
    • 個人消費は、このところ底堅い動きとなっている。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、各種の政策効果などを背景に、景気の緩やかな持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、欧州の政府債務危機が、金融システムに対する懸念につながっていることや金融資本市場に影響を及ぼしていること等により、海外景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクが存在する。また、電力供給の制約や原子力災害の影響、さらには、デフレの影響、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
3月7日
(1月分)
3月16日
(1月分)
3月12日
(1月分)
3月12日
(2月分)
3月14日
(1~3月期)
4月6日
(2月分)
4月23日
(2月分)
4月11日
(2月分)
4月17日
(3月分)
5月9日
(3月分)
5月21日
(3月分)
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(3月分)
5月15日
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