ESRI通信 第46号

平成24年6月14日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

経済政策を行うに当たっては、予め政策効果を正確に評価しておいて、実体経済に合わせた望ましい政策インパクトを行うのが前提となる。その際に、経済モデルが大変有用であることには異論はないであろう。また、「反実仮想」という政策実験をモデルの中で行うことができる。

理論的検証だけでは、その理論がどの程度現実をトレースしているのかわからないし、方向性しかわからないので、望ましい政策インパクトやありうべきも得られず、経済政策立案には十分とは言えない。

定量的な分析でも、方程式を一本推計することでかなりのことはわかるものの、それだけでは十分ではない。経済全体のメカニズムの中で一部分しか説明しておらず、他のメカニズムを考慮していないため、ミスリーディングな結果となることもある。従って、主要なメカニズムを網羅した連立方程式体系の経済モデルで政策ショックを検証することが望ましい。

主要なマクロ経済政策の分析には、伝統的な短期マクロ計量モデルは、現実の経済政策に応用されているところであるが、これに加え、新しい古典派のミクロ経済学を基礎とし、時点間や各経済主体の最適化を図った新世代のモデル(動学的確率一般均衡モデル等)が登場しており、短期的な経済の動学をトレースしつつ、理論的な精緻化が図られている。ただ、それだけでは十分とは言えない。

これらのモデルの弱点は、ほとんどの場合、財・サービスの種類が1種類に限られていることにより、各産業部門での生産水準や雇用水準などの情報が得にくいことに加え、貿易自由化や環境税導入等の構造改革等の中長期的な政策評価がしにくいことがある。

もちろん、個別の財ごとに分析することは部分均衡モデルでも可能であるし、より細かい財のレベルで分析できるが、部分均衡モデルの結果を集めても全体の効果がわからない。これは部分均衡モデルでは、生産要素市場や市場間の波及効果を捨象しているからである。

この点で、産業部門ごとの情報を利用し、各経済主体の最適化を図った計算可能な一般均衡モデルは、いわゆる「ルーカス批判」に耐えることができ、有用な政策評価を行うことができる。全ての市場が均衡するので、失業やGDPギャップなどの短期的なslackを捨象し、短期的な景気循環はトレースできないが、中長期の経済の姿をトレースするのに適している。さらに、直近の1時点のデータセットさえあればパラメータを測定できるので、マクロ計量モデルで悩まされている経済の構造変化に対処することができるし、ベンチマーク均衡さえつくれば、全く新たな部門をモデルに構築することができる。また、産業部門ごとの情報が得られることで、例えば環境税導入によりどの部門が最も影響を被るのかも明らかにでき、利害調整の観点から具体的な政策に資することができる。元来は2時点間の比較静学であった計算可能な一般均衡モデルは、動学的な要素を取り込み、異時点間の最適化まで取り扱えるようになった。また、従前は国全体の労働が外生扱いであったが、予労働を内生化できるようになってきている。このように進化している計算可能な一般均衡モデルだが、批判はなくはない。このモデルで用いられており、重要な役割を果たすパラメータは、必ずしも統計的に推計されていないため、どの程度そのパラメータが確からしいかは言いにくい側面もあったが、パラメータが変化したときのシミュレーション結果の変化を示す感応度分析で、こうした批判に対処してきた。しかし、これも、最近ではそのパラメータも産業別のデータから計量経済学的に推計されるようになった。このように、計算可能な一般均衡モデルの進化は著しく、これからもますます政策面での応用がなされていく分野である。

いずれにせよ、各種の経済モデルに関する研究を深めることは、当研究所の大きなミッションの1つであり、一層適切な経済政策の立案に資して参りたい。

平成24年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    上席主任研究官 鈴木 晋

【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別GDP速報(2012(平成24)年1-3月期・2次速報)(平成24年6月8日)
    1. 平成24年6月8日に公表した24年1-3月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が1.2%(年率4.7%)と、1次速報値の1.0%(年率4.1%)から上方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が上方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、主に民間企業設備や民間最終消費支出が上方改定となったことによる。

<景気動向指数>4月速報(平成24年6月7日)

  • 4 月のCI(速報値・平成 17 年=100)は、先行指数:95.1、一致指数:96.5、遅行指数:86.5 となった。
    先行指数は、前月と比較して1.3 ポイント下降し、7ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は 0.17 ポイント上昇し、5ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.26 ポイント上昇し、7ヶ月連続の上 昇となった。
    一致指数は、前月と比較して0.2 ポイント下降し、3ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は 0.76 ポイント上昇し、5ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.59 ポイント上昇し、7ヶ月連続の上 昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.2 ポイント下降し、3ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は 0.97 ポイント上昇し、9ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.31 ポイント上昇し、24 ヶ月連続の上 昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>4月実績(平成24年6月13日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、24年3月前月比4.1%増の後、4月は同4.0%減の2兆1,201億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、24年3月前月比2.8%減の後、4月は同5.7%増の7,886億円となった。このうち、製造業は同3.4%増の3,282億円、非製造業(除く船舶・電力)は同5.7%増の4,418億円となった。

<消費動向調査>5月調査(平成24年6月11日)

  • 平成24年5月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、4月の40.0から0.7ポイント上昇して40.7となり、2か月ぶりに前月を上回った。これは、消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標が上昇したためである。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は減少して65.5%となった。他方、「低下する」と思うとの回答割合は6.7%、「変わらない」と思うとの回答割合は20.8%となり、ともに増加した。

<法人企業景気予測調査>4‐6月期調査(平成24年6月11日)

  • 平成24年4-6月期の「貴社の景況判断」BSIを大企業・全産業でみると、3.1となった。製造業は、自動車・同附属品製造業、電気機械器具製造業などを中心にマイナスとなり、非製造業は、建設業、情報通信業などを中心にマイナスとなった。中堅企業、中小企業もともにマイナスとなった。
  • 先行きについては、大企業、中堅企業は平成24年7-9月期にプラスに転化する見通し。中小企業は、マイナスで推移する見通しとなっている。
  • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く)は、平成24年度は前年度比8.4%増の見込みとなっている。

【参考】<月例経済報告>5月(平成24年5月18日)

  • 景気は、依然として厳しい状況にあるものの、復興需要等を背景として、緩やかに回復しつつある。
    • 生産は、緩やかに持ち直している。輸出は、持ち直しの動きがみられる。
    • 企業収益は、減少してきたものの、下げ止まりの兆しもみられる。設備投資は、このところ持ち直しの動きがみられる。
    • 企業の業況判断は、大企業製造業で下げ止まっており、全体としては小幅改善となっている。
    • 雇用情勢は、持ち直しているものの、東日本大震災の影響もあり依然として厳しい。
    • 個人消費は、緩やかに増加している。
    • 物価の動向を総合してみると、下落テンポが緩和しているものの、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、復興需要等を背景に、景気回復の動きが確かなものとなることが期待される。ただし、欧州政府債務危機を巡る不確実性が再び高まっており、これらを背景とした金融資本市場の変動や海外景気の下振れ等によって、我が国の景気が下押しされるリスクが存在する。また、電力供給の制約や原油高の影響、さらには、デフレの影響等にも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
6月7日
(4月分)
6月19日
(4月分)
6月13日
(4月分)
6月11日
(5月分)
6月11日
(4-6月期)
7月6日
(5月分)
7月19日
(5月分)
7月9日
(5月分)
7月10日
(6月分)
8月6日
(6月分)
8月20日
(6月分)
8月9日
(6月分)
8月9日
(7月分)
 

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