ESRI通信 第51号

平成24年11月14日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

ここ10年余りの個人消費のパフォーマンスをみてみよう。比較のため2000暦年と2011暦年の数値を用いる。実質GDPはこの間33兆円の増加(名目42兆円の減少)、うち個人消費が26兆円の増加(名目5兆円の減少)となった。形態別にみると耐久財が24兆円の増加、サービスが11兆円の増加、非耐久財は5兆円の減少、半耐久財は2兆円の減少、帰属家賃を除くサービスは2兆円の増加(注:実質値の開差・四捨五入の関係で合計は一致しない)となった。GDP増加分の約8割が個人消費によるものであり、耐久財消費が増加分の約7割を占めている。耐久財のデフレーターが大幅に低下し、実質値を押し上げている形である。

小売販売額を「商業動態統計調査」(名目値)でみると、2002,3年を除きおおむね134-5兆円前後で推移している。小売業の代表的形態(百貨店・スーパー・コンビニ)の合計は28-29兆円程度で推移している。百貨店が減少、スーパーが横ばい、コンビニが増加と内訳は変化しているが合計額はあまり変化していない。現象的にみれば3業態間では、いわば「パイの奪い合い」の様相を呈している。もちろん、これら3業態は完全な代替関係にあるのではなく、またディスカウントストアや専門量販店、通信販売など様々な要因が関係するのであり、見かけ上の事象ととらえた方がよいかもしれない。あるいは、これら3業態は経営において様々な創意工夫を行っているわけであり、そうした中にあっても合計額があまり変化しないことは、国内の小売市場において成長の機会が乏しくなっている一つの証左ともみられる。

個人消費の先行きについては、団塊世代を中心に高齢層の消費増加、健康・医療・介護などのサービス支出の増加が見込まれる一方、人口減少社会の影響、賃金の下落等所得環境の悪化など消費をめぐる状況には厳しさがみられる。個人消費が総体としてどのように推移するかについては、予断を許さないが、国内市場にとどまっていては、早晩成長の機会は限られたものになるのではないか。こうした状況下、コンビニをはじめとした小売業の海外市場への進出が加速している。これまでは、ともすれば製造業を中心とした海外進出に目が向けられがちであったが、今後は、内需型産業といわれる小売業、さらにはサービス業についても海外市場を視野に入れた企業戦略、すなわち「国内の枠を超えて需要があるところに進出(提供)する」というシンプルな企業行動が求められる所以である。

平成24年11月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 中藤 泉

【最新の研究発表】

  • データリッチ型動学的一般均衡(DSGE)モデルを用いた金融政策の効果の測定法(飯星 博邦)(平成24年10月)(本文は英語)

    金融政策当局者や民間シンクタンクが分析に利用している数十~数百系列におよぶマクロ経済時系列のパネルデータという豊穣な環境(データリッチ)から有用な情報を抽出する統計モデルとしてダイナミックファクターモデル(DFM)が最近注目されている。本稿はDFMに動学一般均衡(DSGE)モデルを接合することにより、大量のマクロ経済時系列データに対して金融政策の効果を測定する新しい手法を提案する。本稿の新手法の利点は、バーナンキ他(2005)が提案したFAVARアプローチによる測定法の利点を享受した上に、彼らの手法の2つの問題点も解決することができる点にある。さらに、本手法はパネルデータに対してDSGEによる経済学的観点を導入することで、各観測変数をモデル変数(共通成分)と観測誤差(独自成分)に分離できるようになり、また金融政策ショックを含む構造ショックの推定が可能になった。この構造ショックの推定値を使うことで、本文に示すように大量のマクロ時系列データに対する寄与度分解が可能になった。この分解は政策立案者や経済調査担当者の欠かせない道具になろう。本稿では1981年から1995年までの期間の55系列のマクロ経済系列に対して、スメッツ=バウター(2003,2007)型の中規模のニューケインジアンモデルを使い、本手法の検証を行う。


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>9月速報(平成24年11月6日)

  • 9月のCI(速報値・平成 17 年=100)は、先行指数:91.7、一致指数:91.2、遅行指数:86.7 となった。
    先行指数は、前月と比較して1.5 ポイント下降し、2ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.80 ポイント下降し、5ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.66 ポイント下降し、3ヶ月連続の下降となった。
    一致指数は、前月と比較して2.3 ポイント下降し、6ヶ月連続の下降となった。3ヶ月後方移動平均は1.24 ポイント下降し、4ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.66 ポイント下降し、3ヶ月連続の下降となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.6 ポイント下降し、2ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.03 ポイント下降し、14 ヶ月振りの下降、7ヶ月後方移動平均は0.12 ポイント上昇し、29 ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、下方への局面変化を示している。

<機械受注統計調査報告>9月実績および10~12月見通し(平成24年11月8日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、24年8月前月比12.6%減の後、9月は同9.6%増の1兆8,160億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、24年8月前月比3.3%減の後、9月は同4.3%減の6,862億円となった。このうち、製造業は同2.8%増の2,868億円、非製造業(除く船舶・電力)は同1.3%増の4,357億円となった。
  • 7~9月をみると、受注総額は前期比8.7%減の5兆3,704億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同1.1%減の2兆1,456億円、製造業は同3.2%減の8,942億円、非製造業(除船舶・電力)は同0.1%増の1兆2,808億円となった。
  • 10~12月見通しをみると、受注総額は前期比4.7%増の5兆6,248億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同5.0%増の2兆2,525億円、製造業は同6.9%減の8,327億円、非製造業(除船舶・電力)は同14.3%増の1兆4,639億円の見通しになっている。

<消費動向調査>10月調査(平成24年11月9日)

  • 平成24年10月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、9月の40.1から0.4ポイント低下して39.7となり、2か月連続で前月を下回った。これは、消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標が低下したためである。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は64.7%、「低下する」と思うとの回答割合は6.7%となり、ともに増加した。他方、「変わらない」と思うとの回答割合は減少して20.9%となった。

【参考】<月例経済報告>10月(平成24年10月12日)

  • 景気は、引き続き底堅さもみられるが、世界景気の減速等を背景として、このところ弱めの動きとなっている。
    • 生産は、減少している。輸出は、弱含んでいる。
    • 企業収益は、持ち直しているが、頭打ち感がみられる。設備投資は、一部に弱い動きもみられるものの、緩やかに持ち直している。
    • 企業の業況判断は、製造業を中心に慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、依然として厳しさが残るものの、改善の動きがみられる。
    • 個人消費は、おおむね横ばいとなっているが、足下で弱い動きがみられる。
    • 物価の動向を総合してみると、下落テンポが緩和しているものの、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面は弱めの動きが続くと見込まれる。その後は、復興需要が引き続き発現するなかで、海外経済の状況が改善するにつれ、再び景気回復へ向かうことが期待されるが、欧州や中国等、対外経済環境を巡る不確実性は高い。こうしたなかで、世界景気のさらなる下振れや金融資本市場の変動等が、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、収益や所得の動向、デフレの影響等にも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
11月6日
(9月分)
11月19日
(9月分)
11月8日
(9月分)
11月9日
(10月分)
 
12月7日
(10月分)
12月19日
(10月分)
12月12日
(10月分)
12月10日
(11月分)
12月10日
(10–12月期)
1月10日
(11月分)
1月22日
(11月分)
1月16日
(11月分)
1月16日
(12月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

SNA(QE)統計の公表予定はこちらから


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