ESRI通信 第54号

平成25年2月15日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

このたび私は経済社会総合研究所長に就任いたしました。就任挨拶は、すでにホームページに掲載いたしました(注1)。本通信では、私の原体験としての研究についてお話しさせていただきたいと思います。

私はかつて経済企画庁経済研究所に在籍しました(1986年~89年)。その間、研究・開発を進めていたEPA世界経済モデルグループの一員を務めました。

世界経済モデルを開発する問題意識は、ある国(例、アメリカ)の政策(例、財政支出の拡大)が他の国(例、日本)に伝播する効果の大きさを定量的に示すことにありました(注2)。経済連携が一層深まっている今日、当時の問題設定は今でも意義深いものです。

この研究は10名を超えるスタッフにより支えられていました。現在は限られた人数で短期マクロモデルの研究を続けていることに比べると、世界経済モデルに対して「選択と集中」がなされていた感があります。マクロ経済のメカニズムを全体の均衡の中で考えることを学んだ当時の経験は、私にとって仕事の糧となりました。

もう一つの体験は、データに即して実証分析を行う重要性に触れたことです。当時はマイクロデータ研究の草分け期でした。私自身は参加しませんでしたが、全国消費実態調査の個票データを用いて、家計資産と貯蓄率の大きさを明らかにする研究が行われていました(注3)。

データを磁気テープで統計局から借り受け、大型コンピュータを用いて加工しデータベースを作成することから作業は始まります。これにより、家計の実物資産(土地、住宅等)の保有額が世帯属性ごとに明らかになりました。日本国全体としての資産や貯蓄率は国民経済計算で示しますが、それらを家計単位の個票から把握するという分析手法は画期的でした。

現在では、家計調査のデータはパソコンで処理できるようになり、当時に比べると大きな技術進歩があります。マイクロデータに依拠した研究は現在にも引き継がれ、消費・貯蓄、雇用等の家計行動が経済理論に照らして実証的に明らかになることが期待されています。

紙幅の関係で二つだけ取り上げましたが、このような研究は、大学を含め民間研究機関では実施できないものであり、政府の研究機関ならではのものと高い評価を得ました。現在、当研究所が取り上げるべき研究課題は当時に比べて多岐にわたり、分析手法も一層進化しています。学界の研究水準を踏まえながら、新しい分野にも挑戦し、経済社会総合研究所の財産をますます増やしていきたいと考えています。皆様からご指導・ご鞭撻を賜りますようによろしくお願い申し上げます。

平成25年2月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    所長 梅溪 健児

 (脚注)
注1:経済社会総合研究所ホームページ
注2:経済分析111号「第3次世界経済モデルによる政策シミュレーションの分析」(1987年9月)
注3:経済分析116号「日本の家計資産と貯蓄率」(1989年9月)


【最新の研究発表】

  • 「経済分析第186号ジャーナル版」を掲載しました。(平成25年1月)

    (論文)

    外資系企業の参入と国内企業の生産性成長:『企業活動基本調査』個票データを利用した実証分析(伊藤 恵子)

    学級規模が学力と学習参加に与える影響(二木 美苗)

    首都直下地震における地方財政への影響:年次別都県別の推計(宮崎 毅)

    維持年金平準化と特許のオプション価値(山田 節夫)

    教養娯楽価格が出産に与える影響(湯川 志保)

    夫の失業前後の妻の就業行動の変化について(佐藤 一磨)

    同族企業における人事・労務管理制度の形成と離職率への影響—中小企業に注目して—(松浦 司、野田 知彦)

    (資料)

    温暖化対策における国境調整措置の動学的応用一般均衡分析(武田 史郎、鈴木 晋、有村 俊秀)

  • 子どもを持つ若年層を対象とした幸福度に関する研究(上田 路子、川原 健太郎)を掲載しました。(平成25年 1月)

    少子化問題を抱える現代社会において、一人でも多くの親が幸福を感じながら子育てをしていけるようにすることは大切である。特に次代を担う若年層が子育てに対して不安を感じ、子どもを持つことを躊躇することにならないよう、その現状を明らかにし解決策を探ることによって、子どもを持つことで未来への希望を持てるようにすることが求められる。本研究は平成23年度に内閣府によって実施された「生活の質に関する調査」を用い、20代・30代の子育て世代の幸福度が、子どもの存在によってどのように影響を受けているかを分析するものである。特に、子育ての負担は女性に多くかかっていると考えられることから、男女別の分析を様々な角度から試みた。
     分析の結果、子どものいる若年層の女性は、子どもがいない同年代の女性に比べて、現在の幸福感、生活満足度、5年後の幸福度のいずれもが低い傾向にあることが明らかになった。男性の場合、子どもがいる男性と子どもがいない男性に間に幸福度の差は存在しない。さらに、世帯収入の高い女性は収入レベルが低い女性に比べて全般的に幸福度が高いものの、子どもがいる女性とそうでない女性の幸福度の差はかえって大きく、この結果は収入の高さは子育てに関する負担感を補うわけではないことを示唆している。また、常用雇用され、かつ子どもがいる女性は、現在の幸福感も生活満足度も低いという統計的に有意な結果が得られた。つまり、子どもを持つ女性の幸福度が子どもを持たない女性に比べて低いのは、共働きをしている女性が子育ての負担を多く感じていることによると思われる。さらに子育て支援サービスに満足している女性の幸福度と、子どもがいない女性の幸福度の間に統計的に有意な差は存在しない一方、満足していない女性の場合は、子どもがいない女性にくらべて幸福度が低い。この結果は子育て支援サービスの充実の重要性を示唆している。
     本研究の分析モデルでは、回答者が結婚している年数を入れることができなかったため、本研究の結果では有配偶で子どものいない若年層の多くが新婚である可能性が高く、その後子どもを持つ時には幸福度が下がってしまう恐れがあることに注意が必要である。
     また、本研究はあくまでも子育ての入り口に直面している若年層に限った分析であり、必ずしも子どもを持つことそのものが幸福感を下げることを示すものではない。子育て初心者で悩みに直面する若年層が子どもを持つことの負担感がなくなるよう、より一層の支援の充実が重要であると思われる。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成24年12月速報(平成25年2月7日)

  • 12 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:93.4、一致指数:92.7、遅行指数:86.3 となった。
    先行指数は、前月と比較して1.4 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.53 ポイント上昇し、8ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.29 ポイント下降し、6ヶ月連続の下降となった。
    一致指数は、前月と比較して2.5 ポイント上昇し、9ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.47 ポイント上昇し、7ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.50 ポイント下降し、6ヶ月連続の下降となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.1 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.10 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.05 ポイント下降し、32 ヶ月振りの下降となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。ただし、CI一致指数の前月差は9ヶ月振りにプラスに転じた。

<機械受注統計調査報告>平成24年12月実績および平成25年1~3月見通し(平成25年2月7日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、24年11月前月比5.3%増の後、12月は同1.6%減の1兆8,530億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、24年11月前月比3.9%増の後、12月は同2.8%増の7,529億円となった。このうち、製造業は同3.0%増の2,957億円、非製造業(除く船舶・電力)は同8.0%減の4,376億円となった。
  • 10~12月をみると、受注総額は前期比2.8%増の5兆5,231億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同2.0%増の2兆1,894億円、製造業は同3.9%減の8,590億円、非製造業(除船舶・電力)は同6.3%増の1兆3,612億円となった。
  • 平成25年1~3月見通しをみると、受注総額は前期比10.5%増の6兆1,026億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.8%増の2兆2,077億円、製造業は同0.1%減の8,584億円、非製造業(除船舶・電力)は同0.4%増の1兆3,662億円の見通しになっている。
  • 平成24年実績をみると、受注総額は前年比4.3%減の23兆7,337億円になっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.9%減の8兆8,134億円、製造業は同7.0%減の3兆6,592億円、非製造業(除船舶・電力)は同3.7%増の5兆1,735億円になっている。

<消費動向調査>平成25年1月調査(平成25年2月12日)

  • 平成25年1月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、12月の39.2から4.1ポイント上昇して43.3となり、5か月ぶりに前月を上回った。これは、消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標が上昇したためである。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は増加して65.3%となった。他方、「低下する」と思うとの回答割合は5.5%、「変わらない」と思うとの回答割合は22.1%.となり、ともに減少した。

【参考】<月例経済報告>平成25年1月(平成25年1月23日)

  • 景気は、弱い動きとなっているが、一部に下げ止まりの兆しもみられる。
    • 輸出は、このところ緩やかに減少している。生産は、下げ止まりの兆しがみられる。
    • 企業収益は、製造業を中心に弱含んでいる。設備投資は、弱い動きとなっている。
    • 企業の業況判断は、慎重さがみられるものの、一部に改善の兆しもみられる。
    • 雇用情勢は、依然として厳しさが残るなかで、このところ改善の動きに足踏みがみられる。
    • 個人消費は、このところ底堅い動きとなっている。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面は弱さが残るものの、輸出環境の改善や経済対策の効果などを背景に、再び景気回復へ向かうことが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、雇用・所得環境の先行き、デフレの影響等にも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
2月7日
(12月分)
2月19日
(12月分)
2月7日
(12月分)
2月12日
(1月分)
 
3月7日
(1月分)
3月19日
(1月分)
3月11日
(1月分)
3月12日
(2月分)
3月12日
(1–3月期)
4月5日
(2月分)
4月19日
(2月分)
4月11日
(2月分)
4月17日
(3月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

SNA(QE)統計の公表予定はこちらから


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