ESRI通信 第55号

平成25年3月14日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

「帰れ、ソレントへ」で有名なイタリアはソレントのある半島の南岸は、アマルフィ海岸。世界遺産となっている。急峻な山がそのまま海に落ちる風光明媚な写真を見たことのある方も多いだろう。このようなところに住めたらとも思う。しかし、実はこの風景、わが国の熱海周辺によく似ている。瀬戸内海の夕暮れ時の光景は、エーゲ海のそれと遜色がない。自然の「風景」で、欧州よりも美しいところが日本には数多くある。

研究開発の世界でも、例えば、核融合装置に不可欠な超伝導コイルの導体の断面は、芸術品。規則正しく整然と撚り線された超伝導線は、核融合反応に必要な強く、整った磁場を作る。フランス・カダラッシュで進められている国際熱核融合実験炉(ITER)計画の実現に、日本の研究開発成果、産業力は不可欠となっている。

かの故スティーブ・ジョブズは、京都の禅寺の「簡素さ」に心を打たれた。

「農産物」。欧州の不揃いで酸っぱい林檎に比べ、日本産の林檎は何と美しいことか。その甘さも素晴らしい。芸術品ですらある。上海では中国産の林檎の10倍から50倍もの価格で売られていると聞く。

「日本ファッション」の人気は、中国のみならず、ロシアでも高まっている。

日本人の潔癖までの「清潔感覚」。日本は、温水式洗浄便座を今日のような多機能製品として世界各国に普及させた。

地下鉄に乗っていると、「今、3分の遅れです。申し訳ありません。」というアナウンスを聞くが、そんなお詫びをする国が他にあるのだろうか。ことほど左様な「時間の正確さ。」

日本には、まだ日本人が十分に気づいていない、世界に通じる価値がたくさんある。

蒔絵は日本人の「繊細さ」を表す代表格だろう。しかし蒔絵師育成は行われても、蒔絵制作に不可欠な蒔絵筆の供給ができなくなりつつあると聞く。

今はやりのイノベーションの議論では、最終的な成果には注目が集まるが、その成果を得るための基盤について十分な配慮がなされているのかどうか・・・多少不安を感じる。頂点を極めるためには、幅が広く、重厚な裾野が必要であり、この裾野構築には長い時間のかかる地道な活動が必要だ。数年間で成果を評価するというような時間スケールでは間尺に合わない世界があり、最先端の世界はこの世界の知恵、技術に助けられていることを直視する必要があるだろう。

わが国の成長戦略では、日本人が気付いていない素晴らしい価値を再発見し、生かすこと。そしてそれを実現するために必要なきわめて広い裾野、基盤を大事にすること。

これらにより、「安全・安心・健康」に関する研究開発で日本人が培ってきた知恵は、わが国を世界で最も重要な、優しい国の一つにするであろう。イノベーション戦略には、このような発想を期待したい。

平成25年3月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 村田 貴司

【最新の研究発表】

  • 未婚男性の結婚と家族形成に関する意識について非正社員に焦点を当てた実証分析~「未婚男性の結婚と仕事に関する意識調査」の個票を用いて~(内野 淳子、飯島 亜希、高橋 智也)を掲載しました。(平成25年2月)

    我が国では、未婚化の進展は少子化の大きな要因となっており、特に男性の未婚率の上昇が著しい。その背景には、非正社員の増大など、経済の長期的低迷に伴う雇用の不安定化や低所得化などがあると考えられる。経済社会総合研究所では、未婚男性、特に非正社員に焦点を当てて、結婚や家族形成に対する意識、仕事に対する意識、生活の状況、就労の状況がどのように関係しているかを客観的なデータに基づいて分析するため、意識調査を実施した。

    本稿の第1部では、この意識調査について概説し、正社員・非正社員では、結婚に対する価値観に大きな違いは見られない一方で、非正社員は、将来に対する雇用状況や所得の不安が結婚に対して消極的にさせていることが伺えたことを紹介する。

    第2部では、非正社員に焦点を当てて、就業状況の違いと結婚意欲の関係について、個票を用いた分析結果を報告する。分析の結果、次の3点が明らかになった。

    • 1)20代では、労働時間が短いと結婚意欲や子どもの希望が低い傾向にあるが、長期雇用を前提としない非正社員であってもフルタイムでは、結婚意欲や子どもの希望は正社員と変わらない傾向にあること。
    • 2)30代では、フルタイムであっても長期雇用を前提としていない雇用形態では結婚意欲や子どもの希望は正社員より低い傾向にあること。
    • 3)全年代を通じて、結婚したいと思っている非正社員や雇用不安を感じる者ほど正社員を希望する傾向が見られること。

    これらの結果から、結婚したいと思っていても、正社員への希望がかなうのに時間がかかったり、非正社員でいるために結婚に踏み切れないでいたりすると、結婚するまでに時間を要し、晩婚化したり、結婚に消極的になったりする可能性が示唆されている。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>

<議事次第(配付資料)の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別GDP速報(2012(平成24)年10-12月期・2次速報)(平成25年3月8日)
    1. 平成25年3月8日に公表した24年10-12月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が0.0%(年率0.2%)と、1次速報値の0.1%(年率0.4%)から上方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が上方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、民間企業設備や民間最終消費支出、公的固定資本形成などが上方改定されたためである。

<景気動向指数>平成25年1月速報(平成25年3月7日)

  • 1 月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:96.3、一致指数:92.0、遅行指数:87.5 となった。
    先行指数は、前月と比較して3.1 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は1.34 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.40 ポイント上昇し、7ヶ月振りの上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して0.3 ポイント下降し、2ヶ月振りの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.47 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.33 ポイント下降し、7ヶ月連続の下降となった。
    遅行指数は、前月と比較して0.7 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.34 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.12 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。ただし、CI一致指数の3ヶ月後方移動平均は2ヶ月連続で上昇した。

<機械受注統計調査報告>平成25年1月実績(平成25年3月11日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、24年12月前月比1.6%減の後、25年1月は同3.0%減の1兆7,976億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、24年12月前月比2.8%増の後、25年1月は同13.1%減の6,544億円となった。このうち、製造業は同13.2%減の2,568億円、非製造業(除く船舶・電力)は同6.3%減の4,099億円となった。

<消費動向調査>平成25年2月調査(平成25年3月12日)

  • 平成25年2月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、1月の43.3から1.0ポイント上昇して44.3となり、2か月連続で前月を上回った。これは、消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標が上昇したためである。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は増加して69.5%となった。他方、「低下する」と思うとの回答割合は4.1%、「変わらない」と思うとの回答割合は19.4%.となり、ともに減少した。

<法人企業景気予測調査>平成25年1-3月期調査(平成25年3月12日)

    • 平成25年1-3月期の「貴社の景況判断」BSIは、大企業・全産業では1.0と2期ぶりのプラスとなった(前期5.5)。製造業は「業務用機械器具製造業」「生産用機械器具製造業」などを中心にプラスとなり、非製造業は「金融業、保険業」「建設業」などを中心にプラスとなった。中堅企業は7.5、中小企業は18.0と引き続きマイナスとなった。
      先行き(4-6月期、7-9月期)を全産業でみると、大企業はプラスが続く見通し、中堅企業は4-6月期にプラスに転化し、中小企業はマイナスが続く見通しとなっている。
    • 平成25年1-3月期の「国内の景況判断」BSIは、大企業・全産業では17.9と3期ぶりのプラスとなった。前期(18.7)から36.6ポイント上昇し、平成16年度の調査開始以来3番目の上昇幅となった。
    • 「今年度における利益配分のスタンス」を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「内部留保」の回答社数構成比が最も高かったが、前回同じ質問項目を調査した平成23年10-12月期調査と比べると、大企業では前回63.2%から今回は61.5%となった。
      大企業では「設備投資」の構成比が拡大し、前回57.4%から今回は58.8%となった。中堅企業、中小企業では「従業員への還元」の構成比が拡大し、中堅企業では前回36.0%から今回は39.3%となった(10項目中3項目以内の複数回答による回答社数構成比)。
    • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全産業・全規模)は、平成24年度は前年度比3.3%の増加見込み、平成25年度は同6.5%の減少見通しとなっている。

<企業行動に関するアンケート調査>平成24年度(平成25年3月1日)

  • 調査対象企業の「次年度」(平成25年度)の我が国の実質経済成長率見通し(全産業・実数値平均)は1.2%と前年度調査(1.6%)を下回ったが、4年連続のプラスとなった。「今後3年間」(平成25~27年度平均)、「今後5年間」(平成25~29年度平均)は、それぞれ1.1%、1.2%と、いずれも前年度調査(それぞれ1.5%、1.5%)の水準を下回り、「次年度」とほぼ同じ水準となった。

    名目経済成長率見通し(全産業・実数値平均)は、「次年度」は0.8%、「今後3年間」は1.0%、「今後5年間」は1.1%となった。実質経済成長率と比べると、「次年度」「今後3年間」「今後5年間」の見通しは、いずれも名目経済成長率が実質経済成長率を下回り(「次年度」0.4%ポイント、「今後3年間」0.1%ポイント、「今後5年間」0.1%ポイント)、先行きも物価下落が見込まれているが、名目経済成長率と実質経済成長率のかい離幅(名目経済成長率-実質経済成長率)は、前年度調査から縮小している。

    「次年度」の業界需要の実質成長率見通し(全産業・実数値平均)は1.0%と前年度調査(1.4%)を下回ったが、3年連続のプラスとなった。

    前年度調査と比べると、製造業、非製造業ともに低下し、中でも、製造業の低下幅が大きく、「輸送用機器」(2.3%ポイント低下)「非鉄金属」(1.6%ポイント低下)「電気機器」(0.9%ポイント低下)などの低下幅が大きくなっている。一方、「金属製品」(0.3%ポイント上昇)「建設業」(0.1%ポイント上昇)「小売業」(0.1%ポイント上昇)など上昇した業種もみられる。

    1年後(平成26年1月ごろ)の予想円レート(全産業・階級値平均)は88.4円/ドルと、前年度調査(80.3円/ドル)から8.1円の円安予想で、6年ぶりに円安方向に転じた。輸出を行っている企業の採算円レート(全産業・実数値平均)は、83.9円/ドルと前年度調査(82.0円/ドル)から1.9円の円安(前年度比2.3%)で、6年ぶりに円安方向に転じた。

    「今後3年間」の設備投資増減率見通し(全産業・階級値平均)は3.5%と、前年度調査(4.1%)に比べて増加幅は縮小したものの、4年連続のプラスとなった。

    「今後3年間」の雇用者数増減率見通し(全産業・階級値平均)は1.0%と、前年度調査(1.0%)と同水準となった。

    海外現地生産比率(製造業のみ回答・実数値平均)は、「平成23年度実績」は17.2%と、前年度実績(17.9%)に比べて低下したが、「平成24年度実績見込み」(17.7%)、「平成29年度見通し」(21.3%)は上昇傾向が続く見通しとなっている。

【参考】<月例経済報告>平成25年2月(平成25年2月27日)

  • 景気は、一部に弱さが残るものの、下げ止まっている。
    • 輸出は、このところ緩やかに減少している。生産は、下げ止まっている。
    • 企業収益は、大企業を中心に下げ止まりの兆しがみられる。設備投資は、弱い動きとなっている。
    • 企業の業況判断は、改善の動きがみられる。
    • 雇用情勢は、依然として厳しさが残るなかで、このところ改善の動きに足踏みがみられる。
    • 個人消費は、底堅く推移している。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。
  • 先行きについては、当面、一部に弱さが残るものの、輸出環境の改善や経済対策、金融政策の効果などを背景に、マインドの改善にも支えられ、次第に景気回復へ向かうことが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、雇用・所得環境の先行き等にも注意が必要である。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
3月7日
(1月分)
3月19日
(1月分)
3月11日
(1月分)
3月12日
(2月分)
3月12日
(1-3月期)
4月5日
(2月分)
4月19日
(2月分)
4月11日
(2月分)
4月17日
(3月分)
 
5月9日
(3月分)
5月20日
(3月分)
5月17日
(3月分)
5月15日
(4月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

SNA(QE)統計の公表予定はこちらから


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