ESRI通信 第58号

平成25年6月14日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

国民経済計算(SNA)は世界の多くの国で作成されているが、各国が独自の考え方、方法でSNAを作成していると、国際間の比較が困難となるため、国際的に共通な基準が必要になる。そこで、国連が共通の基準を作成しその採用を加盟国に勧告してきた。この国際基準は1953年に最初に作成されたが(53SNAと呼ばれている)、その後の経済状況等の変化に伴って改定され、68SNA、93SNA、2008SNA(以下、08SNA)が作成されている。

我が国の現行SNAは93SNAに準拠しているが、93SNAへの移行は2000年に行われた。93SNAは68SNAから抜本的に改定されており、概念や勘定体系等について数多くの変更、拡張がなされた。たとえば、最終消費概念の2元化、ソフトウェアの資本化、社会資本減耗の計上、交易利得・GNIといった概念の導入、所得支出勘定、調整勘定の細分化などが挙げられる。筆者は移行当時なかなか68SNAの考え方を払拭できず、93SNAに慣れるのに相当の時間を要した記憶がある。

最新の国際基準である08SNAは、2009年に最終的に国連統計委員会で採択された。93SNAから08SNAへの改定では、前回と異なり、勘定体系等の抜本的な変更は含まれていないが、変更点は63項目と多岐にわたっている。主な変更点を大まかに整理すると、丸数字1知的財産生産物の重要性の高まり等を踏まえた固定資本形成や実物ストックの範囲の拡張、丸数字2金融市場の発展・変化を踏まえた扱いの精緻化、丸数字3国際貿易の精緻な把握等グローバル化への対応、丸数字4一般政府・公的部門等に係る扱いの精緻化、丸数字5その他に分類することができる。

丸数字1の変更点の一つに「研究開発(R&D)の資本化」がある。これは、93SNAまで中間消費とされてきたR&D支出を資本形成として扱うようにする、というものである。これにより、たとえば企業部門では、中間消費が減少する一方、生産面で付加価値が増加、支出面で最終需要(固定資本形成)が増加するほか、分配面で営業余剰及び固定資本減耗が増加する、といった変更がなされ、GDPの押し上げにつながる。暫定的な試算によると、R&Dの資本化により我が国の名目GDPは3%程度押し上げられるとみられる。また、ストック面では、固定資産が追加されることになる。

主要国の08SNAへの対応状況を見ると、オーストラリアは2009年に既に導入しており、カナダも2012年に一部導入している。また、アメリカは本年7月に、EU諸国、韓国は来年導入する予定となっている。我が国では、2016年中を目途とする次回の基準改定と合わせて包括的な対応を図る予定である。次回基準改定までに残された時間は3年半程度しかない。そこで、本年3月以降、有識者による「国民経済計算次回基準改定に関する研究会」を開催し、先行する諸外国の経験も踏まえつつ、08SNAへの具体的な対応方法について順次検討を行っている。この研究会では、推計精度の向上等その他の重要課題についても検討する予定である。次回基準改定に向けて、こうした検討の積み重ねを通じ、我が国のSNAについて国際比較可能性や推計精度の向上を図り、より有用で信頼性の高い統計となるよう努力を続けてまいりたい。

平成25年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    国民経済計算部長 丸山 雅章

【経済社会総合研究所からのお知らせ】

  • 季刊Economic & Social Research (ESR)を新たに発刊しました。(平成25年5月30日)

    ESRは、内閣府経済財政政策担当部局の施策、経済社会総合研究所の研究成果などに関する情報提供を目的に発刊いたします。

    ESRは、経済社会総合研究所ホームページに掲載しておりますので、併せてご覧ください。(URL: http://www.esri.go.jp/jp/esr/esr.html


【最新の研究発表】

  • 予期された所得変化に消費は反応するか?-公的年金の支給開始を事例とする分析-(濱秋 純哉)を掲載しました。(平成25年6月)

    本稿では,公的年金の支給開始による世帯所得の増加に消費が反応しているかを分析する。公的年金の支給開始のタイミングは年金の受給者に正確に予想されていると考えられるため,世帯が恒常所得仮説に従って行動するなら,年金の支給開始による所得変化に消費は反応しないはずである。分析には『農業経営統計調査』の個票を用いるが,年次パネルデータという性質を活かすことで,年金支給開始時点及びその後の消費の動きを分析できる。分析の結果,消費は年金の支給開始時に一時的に増加するが,その後は元の消費水準へと回帰していくことが分かった。消費の一時的な増加は,可処分所得に占める年金給付額の割合が小さい世帯で主に見られる。この結果は,たとえ所得の変化が予期されていても,その変化の影響が小さい世帯では消費を平準化する費用がその便益を上回るために所得の変化分を消費に回すという限定合理性(bounded rationality)の議論と整合的と考えられる。

  • 社会の高齢化が進展する東南アジア地域へのわが国発の最先端医療技術による貢献について(村田 貴司、篠原 千枝)を掲載しました。(平成25年6月)

    健康は、人の幸福の度合いを左右する重要な要素である。高齢社会では、がんによる死亡率が高まる傾向にある。高齢化が急速に進展する東南アジア社会の健康増進に対する日本の国際貢献を考えるとき、わが国発で、低侵襲の重粒子線がん治療の国際展開は、科学技術力を有する国家にふさわしい国際貢献の一形態である。それはまた、国際的な産業競争力強化にもつながる。重粒子線がん治療の国際展開に必要な諸施策を、統合的に発動することが求められている。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<議事次第(配付資料)の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 平成22年度県民経済計算(平成25年5月29日)
  • 四半期別GDP速報(2013(平成25)年1-3月期・2次速報) (平成25年6月10日)
    1. 平成25年6月10日に公表した25年1-3月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が1.0%(年率4.1%)と、1次速報値の0.9%(年率3.5%)から上方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が上方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、民間在庫品増加や民間企業設備が上方改定されたためである。

<景気動向指数>平成25年4月速報(平成25年6月7日)

  • 4月のCI(速報値・平成 17 年=100)は、先行指数:99.3、一致指数:94.8、遅行指数:86.8 となった。
    先行指数は、前月と比較して1.3 ポイント上昇し、5ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は1.40 ポイント上昇し、5ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は1.04 ポイント上昇し、4ヶ月連続の上昇となった。
    一致指数は、前月と比較して1.0 ポイント上昇し、3ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は1.07 ポイント上昇し、5ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.54 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。
    遅行指数は、前月と比較して1.0 ポイント下降し、2ヶ月ぶりの下降となった。3ヶ月後方移動平均は0.17 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.14 ポイント上昇し、2ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数の基調判断
    景気動向指数(CI一致指数)は、下げ止まりを示している。

<機械受注統計調査報告>平成25年4月実績(平成25年6月12日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、25年3月前月比27.8%増の後、4月は同14.2%減の2兆267億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、25年3月前月比14.2%増の後、4月は同8.8%減の7,233億円となった。このうち、製造業は同7.3%減の2,862億円、非製造業(除く船舶・電力)は同6.0%減の4,472億円となった。

<消費動向調査>平成25年5月調査(平成25年6月10日)

  • 平成25年5月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、4月の44.5から1.2ポイント上昇して45.7となり、5か月連続で前月を上回った。消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標が上昇した。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は83.1%、「低下する」と思うとの回答割合は3.9%となり、ともに前月から増加した。他方、「変わらない」と思うとの回答割合は前月から減少して9.4%となった。

<法人企業景気予測調査>平成25年4-6月期調査(平成25年6月11日)

  • 平成25年4-6月期の「貴社の景況判断」BSIは、大企業・全産業では5.9と2期連続のプラスとなった(前期1.0)。業種別にみると、製造業は「化学工業」「情報通信機械器具製造業」などを中心にプラスとなり、非製造業は「サービス業」「金融業、保険業」などを中心にプラスとなった。中堅企業は1.0とプラスに転化し、中小企業は11.3と引き続きマイナスとなった。
    先行き(7-9月期、10-12月期)を全産業でみると、大企業、中堅企業はプラスで推移する見通し、中小企業は7-9月期でプラスに転化し、10-12月期もプラスで推移する見通しとなった。
  • 平成25年4-6月期の「国内の景況判断」BSIは、大企業・全産業では33.0と2期連続のプラスとなった(前期17.9)。
  • 平成25年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比2.6%の増収見通し、経常利益(全規模・全産業)は前年度比9.1%の増益見通しとなった。
  • 設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は、平成25年度は前年度比7.2%の増加見通しとなった。業種別にみると、製造業、非製造業ともに増加見通しとなった。製造業では「食料品製造業」「自動車・同附属品製造業」、非製造業では「金融業、保険業」「小売」などの寄与度が高い。

【参考】<月例経済報告>平成25年6月(平成25年6月13日)

  • 景気は、着実に持ち直している。
    • 輸出は、持ち直しの動きがみられる。生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、製造業を中心に改善している。設備投資は、下げ止まりつつある。
    • 企業の業況判断は、改善の動きがみられる。
    • 雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している。
    • 個人消費は、持ち直している。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にあるものの、このところ一部に変化の兆しもみられる。
  • 先行きについては、輸出が持ち直し、各種政策の効果が発現するなかで、企業収益の改善が家計所得や投資の増加につながり、景気回復へ向かうことが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
6月7日
(4月分)
6月20日
(4月分)
6月12日
(4月分)
6月10日
(5月分)
6月11日
(4-6月期)
7月5日
(5月分)
7月19日
(5月分)
7月11日
(5月分)
7月10日
(6月分)
 
8月6日
(6月分)
8月19日
(6月分)
8月13日
(6月分)
8月9日
(7月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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