ESRI通信 第63号

平成25年11月18日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

分析の前提をどう置くかは、悩ましい問題である。当り前であるが、分析が完璧でも前提が間違っていれば、「理路整然と間違う」ことになる。

この点で一番望ましいのは、前提をも分析対象にしてしまうことであろう。しかし、それは、たとえば計量経済モデルの式の数や推定すべきパラメーターが増える等、分析を複雑・困難にする。そもそも、前提を分析対象に取り込み続けていてはきりがなくなる。ただし、前提次第で分析結果の方向が決まってしまうような場合は、むしろ、分析対象を前提のほうに移すべきであろう。

これに対し、経済理論に基づいて前提を導き出すことも考えられる。しかし、理論は必ずしもきちんと実証されているわけではない。むしろ、特にミクロ経済理論について、厳密に理論式通りにはなっていないという実証結果も少なくないように思う。ただし、その場合でも、変化の方向(係数の符号)等で定性的に見れば、理論に沿っていることが多いが、これは、逆に、複雑な理論式どおりでなく線形や対数線形で表しても、不正確とは限らないということになる。

そこで、理論ではなく、先行研究の実証分析結果を用いることが考えられる。しかし、当該前提を実証分析の対象とした先行研究があるとは限らず、あっても、その先行研究の想定する状況(当該前提を分析対象とするさらにその前提)が、自分の行う分析と同じとは限らない。たとえば、賦課方式の年金給付の割引率として、その下での予想利子率を用いることには疑問がある。割引率として利子率を用いるということは、年金保険料を支払う代わりにその分を積み立てて貯蓄した場合と比較することになるが、その場合は貯蓄残高が増加するため、利子率が低下するはずである。したがって、賦課方式の年金の下での予想利子率を割引率として用いると、年金給付の割引現在価値が過小になる(他の貯蓄が減るから総貯蓄残高は変わらないという見解もあるが、その場合は、資本蓄積により生産、所得が増加するという積立て方式のメリットがなくなる)。

こうした事情から利用できる先行研究がない場合には、前提として複数のケースを想定するのが、現実的なところではないかと思う。特に、どのケースでも分析結果が同じ方向にあれば、分析のインプリケーションはより確かなものといえよう。そのような場合は、複数のケースでなく、分析結果の方向に対して不利なケースを前提として置くだけでもよいであろう。

平成25年11月

  • 内閣府経済社会総合研究所
    総括政策研究官 浜田 浩児

【最新の研究発表】

  • 高校の質が学力、賃金に与える影響:日本の双生児データに基づく実証分析(中室 牧子、小塩 隆士、乾 友彦)を掲載しました。(平成25年10月)(本文は英語)

    学校の質とは一般的に、教員や教材、設備などの教育に投入される資源のことを指す。質が高い学校へ行くことが、生徒の学力を高めることにつながるのだろうか。この問いに答えることは容易ではない。なぜなら、教育熱心で優秀な子どもを持つ親が、子どものために質の高い学校を選択しているかもしれず、学校の質と学力の間には、我々が想定する因果関係とは逆の関係がある可能性にも配慮しなければならないからだ。

    本研究は、高校の質が子どもの学力、賃金に与える因果的な効果を計測することを目的としている。具体的には、筆者らが独自に収集した日本在住の20歳から60歳の双生児の大規模データと、文部科学省が収集した「学校基本調査」の学校別データ、大手予備校が公表している偏差値データを合体し、双生児間で共通している家庭環境や遺伝など観察不可能な要因をコントロールした上で、高校の様々な属性(学校規模、生徒・教師比率、就職率など)が大学入学時点の学力や大学卒業後の賃金に影響を与えているかを検証した。その結果、一卵性双生児のみのデータを用いて、もっとも正確に学校の質の効果を推計した結果から、高校の質は学力に影響を与えないものの、大学卒業後の賃金には影響を与えることが明らかになった。

  • 「民間調査機関の景気局面予測はあてになるのか?」(飯塚 信夫)を掲載しました。(平成25年10月)(本文は英語)

    本稿では、ESPフォーキャスト調査が2004年の調査開始から蓄積してきた総合景気判断DIのコンセンサス予測値と個票を用いて、その有用性の評価を行った。総合景気判断DIは、先行きの景気動向指数の一致DIについて、民間調査機関のエコノミストに50を上回るか否かを尋ねている。この回答を集計したコンセンサス予測値が50を上回れば先行きの景気拡大、下回れば後退を予測していると考えられ、これは景気転換点予測に相当する。予測評価の手法として、予測の方向性が実績値と合致しているかに注目したDirectional Analysisを用いた。Fisherの正確性検定、Pesaran and Timmermann(1992)、そして最新のPesaran and Timmermann(2009)の3つの検定を実施したところ、実績値公表の4ヵ月前までの総合景気判断DIが有用であるということがわかった。これは、リアルタイムデータでもヒストリカルデータを用いても結果に違いはなかった。一方、景気先行指数を用いて同様の検定を行ったところ、実績値公表の2ヵ月前までなら有用という結果となった。これは、Chua et al(2011)が米国のデータについて行ったように、民間調査機関の景気判断を織り込むことで景気先行指数の有用性を高める余地があることを示唆している。

<報告書の掲載>


最新のシンポジウム・フォーラム】

<議事次第(配付資料)の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成25年9月速報(平成25年11月7日)

9月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:109.5、一致指数:108.2、遅行指数:115.1 となった。

  • 先行指数は、前月と比較して2.7 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.74 ポイント上昇し、3ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.55 ポイント上昇し、9ヶ月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.6 ポイント上昇し、2ヶ月振りの上昇となった。3ヶ月後方移動平均は0.53 ポイント上昇し、10ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は0.60 ポイント上昇し、8ヶ月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.7 ポイント上昇し、7ヶ月連続の上昇となった。3ヶ月後方移動平均は1.03 ポイント上昇し、8ヶ月連続の上昇、7ヶ月後方移動平均は1.00 ポイント上昇し、12ヶ月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成25年9月実績および平成25年10~12月見通し(平成25年11月13日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、25年8月前月比4.5%増の後、9月は同13.2%増の2兆3,999億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、25年8月前月比5.4%増の後、9月は同2.1%減の8,021億円となった。このうち、製造業は同4.1%増の3,345億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.0%減の4,567億円となった。
  • 7~9月をみると、受注総額は前期比4.9%増の6兆5,493億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同4.3%増の2兆3,986億円、製造業は同9.8%増の9,745億円、非製造業(除船舶・電力)は同4.1%減の1兆4,102億円となった。
  • 10~12月見通しをみると、受注総額は前期比2.5%減の6兆3,878億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同2.1%減の2兆3,481億円、製造業は同0.6%増の9,804億円、非製造業(除船舶・電力)は同3.5%減の1兆3,610億円の見通しになっている。

<消費動向調査>平成25年10月調査(平成25年11月12日)

  • 平成25年10月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、9月の45.4から4.2ポイント低下して41.2となり、2か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標が低下した。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は89.5%と前月から増加した。一方、「低下する」と思うとの回答割合は3.5%、「変わらない」と思うとの回答割合は5.1%となり、ともに前月から減少した。

【参考】<月例経済報告>平成25年10月(平成25年10月24日)

  • 景気は、緩やかに回復しつつある。
    • 輸出は、おおむね横ばいとなっている。生産は、緩やかに増加している。
    • 企業収益は、大企業を中心に改善している。設備投資は、非製造業を中心に持ち直しの動きがみられる。
    • 企業の業況判断は、さらに改善している。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 個人消費は、持ち直し傾向にある。
    • 物価の動向を総合してみると、デフレ状況ではなくなりつつある。
  • 先行きについては、輸出が持ち直し、各種政策の効果が発現するなかで、家計所得や投資の増加傾向が続き、景気回復の動きが確かなものとなることが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
11月7日
(9月分)
11月19日
(9月分)
11月13日
(9月分)
11月12日
(10月分)
 
12月6日
(10月分)
12月19日
(10月分)
12月11日
(10月分)
12月10日
(11月分)
12月10日
(10-12月期)
1月10日
(11月分)
1月22日
(11月分)
1月16日
(11月分)
1月17日
(12月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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