ESRI通信 第67号

平成26年3月17日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

もう4年が経過してしまったが、ESRI Discussion Paper Seriesの234号で「初職効果」の論文を書いたことがある。厳密な定義はないが、「初職効果」とは、個人の生涯が、その人が新卒時に最初に就いた仕事に受ける影響を指す。その実例というか、私の職業人生も大学を出たての最初の職場が経済企画庁経済研究所(現在の内閣府経済社会総合研究所ESRI)だったことに大きな影響を受けている。

最初の仕事は、当時(1980年代末のバブル期)の研究所の中核プロジェクトであったEPA世界経済モデルのメンテナンス及び改訂作業だった。経済学部出身でもなく、基礎学力には大きな不安を抱えた出発だったが、周囲の先輩にも恵まれ、データやコンピュータと格闘する日々を送ったことが、今も変わり映えのない仕事を続けている私の土台作りとなったことは間違いない。

一つ付け加えるなら、旧経済企画庁は、当時の官庁としては異例と言える程、風通しのよい(言論の自由がある)役所だった。中身のある議論であれば一年生でも局長と差しで話してよいと思って育ってしまった私は、その後某省へ出向した際、幹部(上司)が気軽に口を利いてはいけない程偉い人なのだということを知り、面食らったものだ。

その後、様々な巡り合せがあって、留学、2度の大学出向、国際機関勤務等を間に挟みつつもESRIとの縁は深まった。現在は、正規配属だけカウントしても4回目(在籍年数で9年目)のお勤めで、政府統計の個票データを活用した世帯行動の分析と政策評価に取り組んでいる。大学出向中の客員期間も含めれば、職業人生の半分以上をESRIと共に歩んできた。結果として、ジェネラリストであることが期待される公僕としてはかなり偏った育ち方をしてしまったが、政策論のたたき台になる素材(分析・データ≒公共財)を提供する「数字屋」として、ある程度使って頂けていると自負している。

Evidence-based Policy Makingの重要性が叫ばれる今、ESRIのような政策研究機関が果たすべき、また果たし得る役割は小さくない。ESRIがその重責に適う仕事をできているか否かは私自身を含むスタッフの意識・取組・働きにかかっている。そしてもし、力不足な点が残されているとすれば、ESRIで職業生活の大半を過ごしてきた私の責任も小さくないだろう。

政策立案の中枢に最も近い位置にある研究機関であるESRIの存在意義が誰からも理解され、評価される方向に一歩でも進めるべく、微力ながら、お役に立てればと思っている。

平成26年3月

  • 内閣府経済社会総合研究所
    上席主任研究官  堀 雅博

【経済社会総合研究所からのお知らせ】

季刊「Economic & Social Research (ESR) No.4 2014年(春号)」を発刊しました。(平成26年3月4日)


【最新の研究発表】

  • 「経済分析第188号ジャーナル版」を掲載しました。(平成26年3月)

    (論文)

    海外市場情報と輸出開始:情報提供者としての取引銀行の役割(乾 友彦、伊藤 恵子、宮川 大介、庄司 啓史)

    地方交付税制度が徴収率に与える効果の推定─行革インセンティブ算定の効果と交付税制度に内在する歪みの検証─(石田 三成)

    サポートベクターマシンを用いた世界各国の幸福度の決定要因の実証分析(田辺 和俊、鈴木 孝弘)

    税制と海外子会社の利益送金―本社資金需要からみた「2009年度改正」の分析―(田近 栄治、布袋 正樹、柴田 啓子)

    民営職業紹介、公共職業紹介のマッチングと転職結果(小林 徹、阿部 正浩)

    夫の失業が離婚に及ぼす影響(佐藤 一磨)

    (資料)

    日本経済再生に関する3研究所共同公開セミナー ―内閣府経済社会総合研究所、財務省財務総合政策研究所、独立行政法人経済産業研究所―
    (概要)(編集:経済社会総合研究所)

  • 消費の退職パズルは日本でも見られるか?農業経営統計調査個票に基づく分析 (堀 雅博、村田 啓子)を掲載しました。(平成26年2月)(本文は英語)

    本論文では、農業経営統計調査の世帯個票データを活用し、所謂、「消費の退職パズル」が我が国においても観察されるか、また観察されるとすればそうなる理由は何なのかを検証した。比較的長期間のパネル・データを構築することにより、観測期間中に実際に世帯主の退職を経験した世帯の行動を分析することが可能になった。分析の結果、我が国においても、世帯支出水準は引退前後である程度低下することが確認できた。更に、引退前後で生じる世帯構成の変化は、そうした支出の低下のごく一部しか説明できない。退職後の支出の低下の程度が所得低下の程度と強く関係していることから、退職後に生じる生活スタイルや選好の変化も支出低下の主たる説明要因になるとは考え難い。支出の低下が退職時に保有する金融資産の少ない世帯でより顕著に見られることは、退職時の所得と支出の相関(同時下落)が予想外の所得の落ち込みを一因としている可能性を示唆しているが、一方で、恒常所得仮説の想定とは異なり、将来の所得低下が分かっていても十分な貯蓄をする規律を保てない世帯が存在する可能性も否定できない。

  • 安全・安心な社会の構築に向けたイノベーティブ基盤の構築に関する研究 (村田 貴司、北岡 美智代、野島 久美恵)を掲載しました。(平成26年2月)

    今後のわが国社会を俯瞰すると、世界史に類例を見ない社会の高齢化の一方で、「個人による編集権の獲得」という言葉で表現されるような、個人を軸とする新しい社会の潮流が芽生えている。

    この潮流と、好むと好まざるとにかかわらず、社会にさまざまな形で常在する放射線と向き合わなければならない社会状況を踏まえつつ、国民が安全と安心をより実感できるようにしていくためは、個人が自らの情報を主体的に利活用することを可能とする情報コミュニケーション技術や、高齢社会において不可欠な低侵襲・非侵襲医療の重要な柱となる放射線医学・核医学を支える技術の活用等による、イノベーティブな基盤を整備する必要がある。

    本研究では、安全で安心な社会を構築する上で、さまざまな領域の研究開発等の成果を収斂させることの重要性を、放射線関連の領域を事例に、明らかにした。


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<議事次第(配付資料)の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別GDP速報(2013(平成25)年10-12月期・2次速報)(平成26年3月10日)
    1. 平成26年3月10日に公表した25年10-12月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が0.2%(年率0.7%)と、1次速報値の0.3%(年率1.0%)から下方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が下方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、民間企業設備や民間最終消費支出などが改定されたためである。
    3. 2013 年の実質GDP成長率は、2013 年10-12 月期の改定に伴い、前年比1.5%と1 次速報値(1.6%)から下方改定された。名目GDP成長率及びGDPデフレーターについては、それぞれ前年比1.0%、前年比0.6%といずれも1 次速報値と同じ変化率となった。
  • 「平成24年度国民経済計算確報」の一部計数の訂正について (平成26年2月27日)

<景気動向指数>平成26年1月速報(平成26年3月7日)

1月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:112.2、一致指数:114.8、遅行指数:115.6 となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.5 ポイント上昇し、5か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.73 ポイント上昇し、5か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.67 ポイント上昇し、13 か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して2.5 ポイント上昇し、7か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は1.27 ポイント上昇し、14 か月連続の上昇、7か月後方移動平均は1.08 ポイント上昇し、12 か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して1.1 ポイント上昇し、3か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は1.00 ポイント上昇し、3か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.52 ポイント上昇し、12 か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成26年1月実績(平成26年3月13日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、25年12月前月比3.1%減の後、26年1月は同12.6%増の2兆3,543億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、25年12月前月比15.7%減の後、26年1月は同13.4%増の8,435億円となった。このうち、製造業は同13.4%増の3,318億円、非製造業(除く船舶・電力)は同12.1%増の5,110億円となった。

<消費動向調査>平成26年2月調査(平成26年3月12日)

  • 平成26年2月の一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、1月の40.5から2.2ポイント低下して38.3となり、3か月連続で前月を下回った。消費者態度指数を構成する4項目全ての意識指標が低下した。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は89.3%と前月から減少した一方、「低下する」と思うとの回答割合は4.1%と前月から増加した。また、「変わらない」と思うとの回答割合は4.7%と横ばいとなった。

<法人企業景気予測調査>平成26年1-3月期調査(平成26年3月12日)

平成26年1-3月期の「貴社の景況判断」BSIを見ると、大企業(全産業)は調査開始(平成16年4-6月期)以降最高となる12.7%ポイントで、5期連続のプラスとなっている(前期8.3%ポイント)。業種別にみると、製造業は「生産用機械器具製造業」「自動車・同附属品製造業」など、非製造業は「情報通信業」「小売業」などを中心にプラス寄与となっている。中堅企業(全産業)は8.5%ポイントで、4期連続プラス(前期6.3%ポイント)、中小企業(全産業)は0.1%ポイントで調査開始以降初めてのプラスとなっている(前期0.1%ポイント)。

先行きをみると、4-6月期は、大企業、中堅企業、中小企業ともにマイナスに転じるが、7-9月期には、大企業、中堅企業では再びプラスに転じ、中小企業も、マイナスではあるものの、4-6月期と比較して大きく改善する見通しとなっている。

平成26年1-3月期の「国内の景況判断」BSIを見ると、大企業(全産業)は29.2%ポイントで、5期連続のプラスとなっている(前期24.6%ポイント)。

平成25年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比4.0%の増収見込み、経常利益(全規模・全産業)は同23.8%の増益見込みとなっている。

設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は、平成25年度は前年度比9.9%の増加見込みで、業種別にみると、製造業では「自動車・同附属品製造業」「業務用機械器具製造業」、非製造業では「建設業」「サービス業」などを中心にプラス寄与となっている。

<企業行動に関するアンケート調査>平成25年度(平成26年2月28日)

  • 調査対象企業の「次年度」(平成26年度)の我が国の実質経済成長率見通し(全産業・実数値平均)は1.3%と前年度調査(1.2%)を上回り、5年連続のプラスとなった。中期的な見通しについては、「今後3年間」(平成26~28年度平均)、「今後5年間」(平成26~30年度平均)は、それぞれ1.4%、1.5%と、いずれも前年度調査(それぞれ1.1%、1.2%)を上回った。

    名目経済成長率見通し(全産業・実数値平均)は、「次年度」は1.7%、「今後3年間」は1.7%、「今後5年間」は1.8%となり、いずれも平成18年度調査以来の高い見通しとなった。実質経済成長率と比べると、「次年度」、「今後3年間」、「今後5年間」の見通しは、いずれも名目経済成長率が実質経済成長率を上回り(「次年度」0.5%ポイント、「今後3年間」0.3%ポイント、「今後5年間」0.3%ポイント)、企業が先行きの物価上昇を見込んでいることが示唆される。その結果、名目と実質のかい離幅(名目経済成長率-実質経済成長率)は、名目経済成長率の調査開始(平成15年度)以来、初めてプラスに転じた。

    「次年度」の業界需要の実質成長率見通し(全産業・実数値平均)は1.0%となり、前年度調査(1.0%)と同水準の成長率見通しで、4年連続のプラスとなった。

    前年度調査と比べると、製造業では1.2%と前年度調査(1.0%)から上昇した一方、非製造業では0.8%と前年度調査(1.0%)から低下した。製造業では、「電気機器」(1.2%ポイント上昇)の上昇幅が大きく、非製造業では「建設業」(2.3%ポイント低下)の低下幅が大きかった。

    1年後(平成27年1月ごろ)の予想円レート(全産業・階級値平均)は105.7円/ドルと、前年度調査(88.4円/ドル)から17.4円の円安予想で、2年連続で円安方向となった。輸出を行っている企業の採算円レート(全産業・実数値平均)は、92.2円/ドルと前年度調査(83.9円/ドル)から8.4円の円安の水準で、2年連続の円安方向となった。

    「今後3年間」の設備投資増減率見通し(全産業・階級値平均)は4.2%増加となり、前年度調査(3.5%)に比べて増加幅が拡大して、5年連続のプラスとなった。

    「今後3年間」の雇用者数増減率見通し(全産業・階級値平均)は1.7%増加となり、前年度調査(1.0%)から増加幅が拡大する見通しとなった。

    海外現地生産を行う企業(製造業)の割合は、「平成24年度実績」69.8%と、前年度実績(67.7%)に比べ増加し、「平成25年度実績見込み」(70.7%)、「平成30年度見通し」(73.4%)も増加の見通しとなった。

    海外現地生産比率(製造業・実数値平均)は、「平成24年度実績」は20.6%と、前年度実績(17.2%)に比べて上昇し、「平成25年度実績見込み」(21.6%)、「平成30年度見通し」(25.5%)も更に上昇する見通しとなった。

【参考】<月例経済報告>平成26年2月(平成26年2月19日)

景気は、緩やかに回復している。

    • 個人消費は、一部に消費税率引上げに伴う駆け込み需要もみられ、増加している。
    • 設備投資は、持ち直している。
    • 輸出は、横ばいとなっている。
    • 生産は、緩やかに増加している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、幅広く改善している。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、輸出が持ち直しに向かい、各種政策の効果が下支えするなかで、家計所得や投資が増加し、景気の回復基調が続くことが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、消費税率引上げに伴う駆け込み需要及びその反動が見込まれる。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
3月7日
(1月分)
3月19日
(1月分)
3月13日
(1月分)
3月12日
(2月分)
3月12日
(1-3月期)
4月7日
(2月分)
4月22日
(2月分)
4月10日
(2月分)
4月17日
(3月分)
 
5月9日
(3月分)
5月20日
(3月分)
5月19日
(3月分)
5月15日
(4月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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