ESRI通信 第69号

平成26年5月20日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【分布の形と平均】

論文を読んでその指摘によって自らの思考の甘さに反省を迫られることはそうあることではありません。しかし、最近、そういう経験をしましたので、自戒の念を込めてここに報告しておきたいと思います。

近年、人々の幸福度について経済学的見地から行う研究が世界的に政策責任者の関心を集めています。経済開発協力機構(OECD)において、暮らしの質(well-being)を測る指標づくりが行われているのもそのひとつです。当研究所において幸福度の研究を進めてきたのもこうした世界の潮流を踏まえてのことです。もちろん、暮らしの質を測ることには困難さが伴いますし、幸福という主観的要素を量的に取り扱うことには十分に慎重でなければならないとしつこいほどに強調されているところです。

さて、件の論文のテーマは、幸福の尺度に関し平均を取るに当たっての統計学的留意点について吟味することです。今年の3月にTimothy N. BondとKevin Langの二人が全米経済調査協会(NBER)のWorking Paper ‘The Sad Truth About Happiness Scales’(「幸福の尺度に関する悲しい真実」)として書いた内容は、方法論的には当たり前のことで何も意外なところはないのですが、その結論は私にとって衝撃的でした。

アンケート調査では、連続的な事象について「あなたの○○の程度を1から5までに位置付けるとするといくつですか?」という選択肢の限られた質問がよく使われます。十分な数のサンプルを得た調査では正規分布を仮定して平均が求められ、サンプルの部分同志や他の調査との比較が行われます。これは幸福度の調査でも同じです。そうして平均された結果に基づいて、「男性よりも女性の方が幸福度は高い傾向にある」ですとか、「所得(一人当たりGDP)と幸福度の間には、所得の水準がある程度までは正の相関があるが所得が高くなるに連れて相関がなくなる」(いわゆるイースタリン逆説)ということが言われてきました。ところが、この論文によると仮定を正規分布から対数正規分布に代えるといった変更によって順位付けが逆転したり、正の相関が現れたりするというのです。

このことは従来の見解を全否定するようなものではありません。しかし、説明する際にこれからは「よく使われる仮定の下では」と留保をつける必要がありますし、場合によっては、違う仮定の下では違う結論になり得ると申し添えることになります。

平成26年5月

  • 内閣府経済社会総合研究所
    総括政策研究官 佐久間 隆

【最新の研究発表】

  • 『ESPフォーキャスト調査』のインフレ率に関する分布予測の個票データを用いた「ケインズの美人投票」の定量化(竹田 陽介)を掲載しました。(平成26年5月)(本文は英語)

    本研究は、ケインズが『一般理論』(1936)で「美人投票」に譬えた高次の期待について、デフレ期における『ESPフォーキャスト調査』のインフレ率に関する分布予測の個票データに相対エントロピー指標を適用することにより、定量化する。同じくインフレ率の点推定の絶対予測誤差との相関係数を推定し、日本においてデフレが深刻化した2009年6月から2010年4月まで、2010年4月から2011年2月までの期間においては、日本の予測専門家の間にケインズの美人投票のメカニズムが拡がっていたことが示された。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<議事録の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成26年3月速報(平成26年5月9日)

3月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:106.5、一致指数:114.0、遅行指数:116.8となった。

  • 先行指数は、前月と比較して2.2ポイント下降し、2か月連続の下降となった。3か月後方移動平均は1.93ポイント下降し、2か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.24 ポイント下降し、15か月ぶりの下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して1.1ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.73ポイント上昇し、16か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.79ポイント上昇し、14か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.2ポイント下降し、5か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.76ポイント上昇し、14か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.62 ポイント上昇し、18か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成26年3月実績および平成26年4~6月見通し(平成26年5月19日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、26年2月前月比3.3%減の後、3月は同4.0%増の2兆3,198億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、26年2月前月比4.6%減の後、3月は同19.1%増の9,367億円となった。このうち、製造業は同23.7%増の3,846億円、非製造業(除く船舶・電力)は同8.5%増の5,151億円となった。
  • 1~3月をみると、受注総額は前期比4.3%増の6兆8,594億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同4.2%増の2兆5,474億円、製造業は同3.9%増の1兆213億円、非製造業(除船舶・電力)は同1.0%減の1兆4,898億円となった。
  • 4~6月見通しをみると、受注総額は前期比21.3%増の8兆3,226億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.4%増の2兆5,586億円、製造業は同3.7%増の1兆589億円、非製造業(除船舶・電力)は同2.4%増の1兆5,260億円の見通しになっている。
  • 平成25年度実績をみると、受注総額は前年度比13.0%増の26兆3,702億円になっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同11.5%増の9兆7,030億円、製造業は同10.2%増の3兆8,904億円、非製造業(除船舶・電力)は同12.1%増の5兆8,441億円になっている。

<消費動向調査>平成26年4月調査(平成26年5月15日)

  • 平成26年4月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は、3月の37.5から0.5ポイント低下して37.0となり、5か月連続で前月を下回った。消費者態度指数を構成する意識指標のうち、「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」は低下した一方、「耐久消費財の買い時判断」は上昇した。
  • 消費者(一般世帯)を対象に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は84.8%、「低下する」と思うとの回答割合は4.0%と、いずれも前月から低下した。一方、「変わらない」と思うとの回答割合は前月から増加し、8.6%となった。

【参考】<月例経済報告>平成26年4月(平成26年4月17日)

景気は、緩やかな回復基調が続いているが、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により、このところ弱い動きもみられる。

    • 個人消費は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により、このところ弱い動きとなっている。
    • 設備投資は、持ち直している。
    • 輸出は、横ばいとなっている。
    • 生産は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動の影響もあって、おおむね横ばいとなっている。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、幅広く改善している。ただし、先行きに慎重な見方となっている。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 消費者物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、当面、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により弱さが残るものの、次第にその影響が薄れ、各種政策の効果が発現するなかで、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
5月9日
(3月分)
5月20日
(3月分)
5月19日
(3月分)
5月15日
(4月分)
 
6月6日
(4月分)
6月19日
(4月分)
6月12日
(4月分)
6月9日
(5月分)
6月11日
(4-6月期)
7月7日
(5月分)
7月22日
(5月分)
7月10日
(5月分)
7月10日
(6月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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