ESRI通信 第70号

平成26年6月16日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

先月5日に、OECDがBetter Life Index (より良い生活指標)という国別の生活状況を比較した評価指標を公表した。2011年以降毎年公表されていて、原指標の数値だけでなく、11の分野別には加盟国等36か国中の順位も出しているもので、各分野の評点を単純平均すると日本は今回20位(昨年21位)になると報じられた。

生活領域の評価では、例えば、日本は、安全や所得の状態は上位にある一方、ワーク・ライフ・バランスなどでは30位以下と低く、我が国の働きすぎが指摘される状況からすれば、なるほどそうかも知れないと思える結果になっている。豊かで便利な生活を送っているようにみえても広範な領域を見渡すと改善の余地は少なからずあるということに気付くきっかけになると思う。

また、この指標は、閲覧者が独自にウェイトを設定して分野毎の指標を総合化し他の人のものと比較できるようにデザインされている。個人による価値観の違いをしっかり反映させようというものである。一方、採用された24の原指標の中には、一人当たり部屋数、長時間労働者比率、投票率など短期間で大きく改善させることが容易でない指標も多く、数年おきの調査で得られる原指標値の更新によって分野値が大きく変動するという特徴もみられる。例えば、先月公表された指標では期待教育年数の原指標の更新により日本の教育は7位(前年2位)となった。

このように、採用された原指標の更新に伴う特異な動きは時折みられるものの、生活の領域を客観指標群で体系的に把握しようとする試みは多くの専門家が有用であると指摘している。今後、中期的な人口減少が予測される中、我が国においても、経済分野だけでなく、生活実感・実態が向上しているかをより体系的に把握したいというニーズが、政策担当者に限らず高まっていくのではないだろうか。そのようなニーズに応えられるような指標を考えると、この指標に限られる話ではないが、認知のラグを大きくしないよう、評価の実施公表時点に近いタイミングで基になっている原指標の値が把握できる工夫も必要になると思われる。自分はこの作業の一端に関わっている立場であるが、このような意義も時折考えながら作業を行っている。

平成26年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    上席主任研究官 渡部 良一

(備考)OECDのBetter Life Indexの詳細については、以下のHPをご覧ください。

http://www.oecdbetterlifeindex.org/別ウィンドウで開きます。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

季刊「Economic & Social Research (ESR) No.5 2014年(夏号)」を発刊しました。(平成26年6月5日)


【最新の研究発表】

  • 大学院卒の賃金プレミアム―マイクロデータによる年齢-賃金プロファイルの分析―(柿澤 寿信・平尾 智隆・松繁 寿和・山﨑 泉・乾 友彦)を掲載しました。(平成26年6月)

    本研究の目的は、大学院卒という学歴を手に入れるための教育投資に関する内部収益率を計算し、大学院卒の持つ学部卒に対する金銭的優位性を検証することにある。特に、教育機関を卒業してそのまま企業に勤め続けた雇用者の年齢-賃金プロファイルを観察することで、企業が処遇制度においてどの程度大学院卒を優遇しようとしているかを描き出す。

    まず、学部卒と大学院卒の賃金プロファイルを比較した結果、男性においても女性においても、大学院卒の生涯賃金収入は学部卒のそれよりも高いことが分かった。大学院卒の賃金は高年齢層になっても年齢とともに上昇し、それが学部卒の生涯賃金収入との差を広げる大きな要因であることも明らかになった。また、大学院進学に関する内部収益率を計算した結果、博士前期課程(修士)に進学した場合、男性は11.4%、女性は10.1%、博士後期課程(博士)まで勉学を続けた場合、男性は5.9%、女性は5.7%となることが示された。日本では大学院に進学することの経済的価値に疑問が投げかけることも多かったが、大学院卒が収入面でのプレミアムを持つことが分かった。


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別GDP速報(2014(平成26)年1-3月期・2次速報)(平成26年6月9日)
    1. 平成26年6月9日に公表した26年1-3月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が1.6%(年率6.7%)と、1次速報値の1.5%(年率5.9%)から上方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が上方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、民間企業設備や民間最終消費支出が改定されたためである。

<景気動向指数>平成26年4月速報(平成26年6月6日)

4月のCI(速報値・平成22年=100)は、先行指数:106.6、一致指数:111.1、遅行指数:116.0 となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.5ポイント下降し、3か月連続の下降となった。3か月後方移動平均は2.10ポイント下降し、3か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.51ポイント下降し、2か月連続の下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して3.4ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は1.24ポイント下降し、17か月ぶりの下降、7か月後方移動平均は0.24ポイント上昇し、15か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して2.5ポイント下降し、6か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.03ポイント下降し、15か月ぶりの下降、7か月後方移動平均は0.46ポイント上昇し、19か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<景気動向指数研究会>5月30日開催(平成26年5月30日)

  • 景気動向指数研究会での議論を踏まえ、第15循環の景気の谷を平成24年(2012年)11月に暫定設定した。

<機械受注統計調査報告>平成26年4月実績(平成26年6月12日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、26年3月前月比4.0%増の後、4月は同34.8%増の3兆1,260億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、26年3月前月比19.1%増の後、4月は同9.1%減の8,513億円となった。このうち、製造業は同9.4%減の3,484億円、非製造業(除く船舶・電力)は同0.9%増の5,195億円となった。

<消費動向調査>平成26年5月調査(平成26年6月9日)

  • 平成26年5月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は、4月の37.0から2.3ポイント上昇して39.3となり、6か月ぶりに前月を上回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標(「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」)全てが上昇した。
  • 消費者(一般世帯)に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は83.3%、「低下する」と思うとの回答割合は3.8%と、いずれも前月から低下した。一方、「変わらない」と思うとの回答割合は前月から増加し、10.1%となった。

<法人企業景気予測調査>平成26年4-6月期調査(平成26年6月11日)

平成26年4-6月期の「貴社の景況判断」BSIは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動により、大企業(全産業)は▲14.6%ポイントと6期振りのマイナス。業種別にみると、製造業は「自動車・同附属品製造業」「その他製造業」など、非製造業は「卸売業」「小売業」などを中心に多くの業種がマイナス寄与。中堅企業(全産業)は19.5%ポイントと5期振りのマイナス、中小企業(全産業)は21.5%ポイントと2期振りのマイナス。

先行きについては、7-9月期は、大企業及び中堅企業ではプラスに転じ、中小企業でもマイナス幅が縮小することにより、大幅な改善がみられ、10-12月期は中小企業がプラスに転じて、全ての規模でプラスとなる見通し。

平成26年4-6月期の「国内の景況判断」BSIについては、大企業(全産業)は22.4%ポイントで6期振りのマイナス。

平成26年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比1.0%の増収見込み、経常利益(全規模・全産業)は同2.3%の減益見込み。

設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)については、平成26年度は前年度比4.5%の増加見込みで、業種別にみると、製造業では「情報通信機械器具製造業」「自動車・同附属品製造業」、非製造業では「不動産業」「運輸業・郵便業」などを中心にプラス寄与。

【参考】<月例経済報告>平成26年5月(平成26年5月23日)

景気は、緩やかな回復基調が続いているが、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により、このところ弱い動きもみられる。

    • 個人消費は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により、このところ弱い動きとなっている。
    • 設備投資は、増加している。
    • 輸出は、横ばいとなっている。
    • 生産は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動の影響もあって、このところ弱含んでいる。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、このところ慎重となっているが、先行きは改善がみられる。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 消費者物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、当面、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により弱さが残るものの、次第にその影響が薄れ、各種政策の効果が発現するなかで、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
6月6日
(4月分)
6月19日
(4月分)
6月12日
(4月分)
6月9日
(5月分)
6月11日
(4-6月期)
7月7日
(5月分)
7月22日
(5月分)
7月10日
(5月分)
7月10日
(6月分)
 
8月6日
(6月分)
8月19日
(6月分)
8月14日
(6月分)
8月11日
(7月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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