ESRI通信 第73号

平成26年9月16日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

我が国の国民経済計算は、おおよそ5年ごとに、産業連関表をベンチマークとして取り込んで過去の計数を改定する「基準改定」を実施しており、現行の平成17年基準への基準改定は平成23年に行った。次回の基準改定は平成28年度中を目途に実施することを目指しており、平成24年経済センサスの結果も反映される「平成23年産業連関表」をベンチマークとして取り込むほか、平成22年国勢調査等の大規模な基礎統計も推計に用いて改定を行う予定である。国民経済計算の基準改定の際には、これまでも、推計方法の抜本的見直し等を合わせて行っているが、次回基準改定では、新しい国際基準である2008SNAへの包括的対応等を行う予定である(現在は1993SNAに準拠)。

2008SNAの主な改定内容としては、ESRI通信第58号でも述べたように、(1)生産に貢献する非金融資産の拡充、(2)金融資産の発展を反映した金融資産・負債の範囲の拡大、(3)一般政府部門に係る記録の改善等が挙げられる。具体的な改定項目は、(1)にR&Dや兵器システムの資本としての記録等、(2)に雇用者ストックオプション、企業年金の年金受給権に係る記録の改善等、(3)に一般政府と公的企業の間の例外的支払の記録等が含まれている。また、次回基準改定では、経済活動分類(産業分類)について、可能な限り国際標準産業分類と整合的となるような変更等も行う予定となっている。

こうした課題への対応方針に関しては、内閣府において、平成25年3月から26年7月までの間、10回にわたり有識者による「国民経済計算次回基準改定に関する研究会」を開催し、詳細な検討を行ってきた。また、2008SNA等への対応に伴い、「国民経済計算の作成基準」(国民経済計算の作成に当たっての大枠を定めたもの)を変更する必要があり、それに際して統計委員会の意見を聴くため、本年9月10日、統計委員会への諮問を行ったところである。今後は同委員会において、2008SNA等への対応に関し、統計利用者の利便性の観点も含めて調査審議がなされることになっている。

諸外国の状況をみると、オーストラリア、カナダ(一部)、アメリカ、韓国等で2008SNAへの対応が実施されている。またEUは、本年9月に、2008SNAに対応したEUの新しい国民経済計算体系「ESA2010」を導入することになっている(現行の体系はESA1995)。EU統計局は本年6月、各国の国民経済計算作成部局、政策関係者、学者等を集めた国際会議(The Accounts of Society - National Accounts at the Service of Economic and Monetary Policy Making)を開催した(http://accounts-of-society.eu/別ウィンドウで開きます。)。同会議では、ESA2010/2008SNAの導入や国民経済計算の活用、将来等に関するさまざまなテーマが議論された。その中で、ESA2010を先行導入したオランダ、フランスにおける取組みが報告されているが、ESA2010導入によるGDP等へのインパクトの説明に加え、通常のベンチマーク改定等他の要因によるインパクトとの判別の難しさへの言及、プレス、政策関係者、統計利用者等への段階的な説明の経過、プレスの反応等が詳細に紹介されている点が興味深い。

我が国の2008SNAへの対応等、次回基準改定に関する情報提供としては、上述の研究会の議事概要、資料をHP(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/seibi/kenkyu/setsumei_top.html)、で公開しているほか、統計委員会での調査審議の概要、資料もHPで公開される予定となっている。今後は、2016年度中目途の次回基準改定結果の公表に向け、統計利用者等への説明のタイミング、内容のあり方について、先行導入国の経験も参考にしつつ検討してまいりたいと考えている。

平成26年9月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 丸山 雅章

【経済社会総合研究所からのお知らせ】

季刊「Economic & Social Research (ESR) No.6 2014年(秋号)」平成26年版経済財政白書特集を発刊しました。(平成26年9月5日)


【最新の研究発表】

  • 有配偶女性の生活環境と就労、出産、子育てに関する分析~「少子化と夫婦の就労状況・生活環境に関する意識調査」の個票を用いて~(佐藤 博樹、朝井 友紀子、高村 静、高見 具広、麻田 千穂子、飯島 亜希)を掲載しました。(平成26年9月)

    日本では少子化が進展し、その要因として未婚化・晩婚化と夫婦出生力の低下が指摘されている。このうち夫婦の出生力には、妻の就業形態、子どもに期待する教育水準、妻の負担感、夫の関わり方など、夫婦の経済環境・生活環境が影響していると考えられる。

    経済社会総合研究所では、少子化の動向を検討するための基礎的資料となる夫婦の出生力に関する分析を行うため、25歳から39歳までの有配偶女性で、子ども数0人又は末子が6歳未満の層を対象に、本人の就業形態及び現在子ども数別に、夫婦の就業状況、生活環境、出生意欲等についての意識調査を実施した。本稿の第1部では、この意識調査の趣旨、方法及び主な調査結果について紹介する。第2部では、意識調査の個票を用いて、有配偶女性の出生意欲に関係する要因について異なる角度から分析した結果を報告する。分析テーマと主な結論は次のとおりである。

    1)正規雇用に比較して有期雇用の妻は第一子の出生意欲が低い理由と両者の規定要因:
    正規雇用の妻と有期雇用の妻の、(1)経済環境の差、(2)勤務先の両立支援の差、(3)保育利用可能性の差のうち、夫の低収入割合の差及び勤務先の両立支援の差は両者の第一子出生意欲の差をもたらしているが、家計の経済状況全般の差及び保育利用可能性の差は正規有期の第一子出生意欲の差には影響がなかった。正規雇用妻の第一子出生意欲には両立支援と保育は明確な正の効果がある一方で、有期雇用妻の第一子出生意欲には両立支援は弱い正の効果があり、保育は効果がみられなかった。
    2)正規雇用としての就業継続と、学卒時の就業継続意欲や初期キャリア:
    学卒時の就業継続意欲が高い者ほど、正規雇用として就業継続しており、また企業は、より人的資本からの収益率の高い者や、今後長く働くことが予測される者(就業意欲が高い者)に対してOJTの機会を提供している。入職時におけるOJT体験が正規就業確率を高める効果は確認されなかったが、OJT経験は、その後の賃金向上には一定程度貢献していた。
    3)子どもに期待する教育水準と出生意欲:
    第1に、理想子ども数と教育アスピレーションには、正規雇用の場合にマイナスの関係がみられる。第2に、教育アスピレーションは妻の学歴が高い場合に強い傾向があり、さらに妻の収入が高かったり、充実した仕事経験を持つ場合にも高い。第3に、子育ての経済的負担感は教育アスピレーションが高い場合に強いとの傾向はみられなかった。第4に、教育アスピレーションが予定子ども数とマイナスとなるのは有期雇用と無職の場合であった。第5に、予定子ども数が経済的負担感によってマイナスであるのは無職の場合であった。
    4)育児期における妻の負担感及び配偶者との関係と出生意欲:
    育児中の女性は、子育てを肯定的に捉える者が主だが、子どものない妻に比べ日常生活で「イライラしている」割合が高く、何らかの負担を感じている人が少なくない。子ども数1人の女性において、「イライラ」があると子育てを「楽しい」と感じられない場合があり、それが追加出生意欲を低下させている可能性がうかがえた。育児期の女性の負担感には、子どもの数や年齢、教育熱心であることに加え、配偶者のかかわり方が影響している。まず、配偶者の家事育児分担は、正規雇用女性にとって重要なサポートとなる。ただ、配偶者の仕事が忙しすぎる場合、妻へのサポートを行う以前に、家庭にいても配偶者の心理状態が仕事から解放されないことが、妻にも心理的負担をもたらしていた。

【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>

  • 参加者募集:「選択する未来」シンポジウム 日本の未来像-人口急減・超高齢社会を乗り越える-(平成26年10月8日開催)を掲載しました。(平成26年9月)

【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成26年7月速報(平成26年9月5日)

7月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:106.5、一致指数:109.9、遅行指数:117.5 となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.6 ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は横ばい、7か月後方移動平均は0.79 ポイント下降し、5か月連続の下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.2 ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.40 ポイント下降し、4か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.28 ポイント下降し、2か月連続の下降となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.8 ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.10 ポイント下降し、2か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.42 ポイント上昇し、51か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<機械受注統計調査報告>平成26年7月実績(平成26年9月10日)

  • 機械受注総額の動向をみると、26年6月前月比17.1%増の後、7月は同13.5%減の2兆2,013億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、26年6月前月比8.8%増の後、7月は同3.5%増の7,717億円となった。このうち、製造業は同20.3%増の3,639億円、非製造業(除く船舶・電力)は同4.3%減の4,250億円となった。

<消費動向調査>平成26年8月調査(平成26年9月9日)

  • 平成26年8月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は7月の41.5から0.3ポイント低下して41.2となり、4か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標のうち、「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」は前月と比べて低下した一方、「暮らし向き」は上昇した。
  • 消費者(一般世帯)に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は前月から上昇し86.1%、「低下する」と思うとの回答割合は前月と同じ3.4%、「変わらない」と思うとの回答割合は前月から低下し8.3%となった。

<法人企業景気予測調査>平成26年7-9月期調査(平成26年9月11日)

平成26年7-9月期の「貴社の景況判断」BSIは、大企業(全産業)は11.1%ポイントと2期振りのプラス。業種別にみると、製造業、非製造業ともに、ほぼすべての業種がプラス寄与。中堅企業(全産業)は5.1%ポイントと2期振りのプラス、中小企業(全産業)は10.0%ポイントと2期連続のマイナス。

先行きについては、10-12月期、平成27年1-3月期は、大企業及び中堅企業ではプラスで推移する見通し。中小企業ではマイナスで推移する見通し。

平成26年7-9月期の「国内の景況判断」BSIについては、大企業(全産業)は15.8%ポイントで2期振りのプラス。

平成26年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比1.1%の増収見込み、経常利益(全規模・全産業)は同1.9%の減益見込み。

設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)については、平成26年度は前年度比5.7%の増加見込みで、業種別にみると、製造業では「情報通信機械器具製造業」「生産用機械器具製造業」、非製造業では「不動産業」「情報通信業」などを中心にプラス寄与。

【参考】<月例経済報告>平成26年8月(平成26年8月26日)

景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動も和らぎつつある。

    • 個人消費は、一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる。
    • 設備投資は、増加傾向にあるものの、このところ弱い動きもみられる。
    • 輸出は、横ばいとなっている。
    • 生産は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動の影響もあって、弱含んでいる。
    • 企業収益は、改善に足踏みがみられる。企業の業況判断は、慎重となっているものの、改善の兆しもみられる。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 消費者物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、当面、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により一部に弱さが残るものの、次第にその影響が薄れ、各種政策の効果が発現するなかで、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、駆け込み需要の反動の長期化や海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
9月5日
(7月分)
9月19日
(7月分)
9月10日
(7月分)
9月9日
(8月分)
9月11日
(7-9月期)
10月7日
(8月分)
10月20日
(8月分)
10月9日
(8月分)
10月10日
(9月分)
 
11月6日
(9月分)
11月19日
(9月分)
11月13日
(9月分)
11月11日
(10月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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