ESRI通信 第74号

平成26年10月15日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

「あのころ」

私が初めて研究所に配属されたのは1998年だからもうふた昔近く前だ。研究テーマ自体は天下り的に金融と決められてしまったが、医療についても余った時間でやっても良いと言われ、前の部署で計画していた医療価格設定の適切性と医療供給の効率性についての調査を引き続き担当した。

調査内容は、診療行為の原価を計測し診療報酬点数と比較すること、医療サービス供給のコストが効率的な水準からどれだけかい離しているかを計測することである。データの利用可能性と詳細さに応じて、分析を3つのレベルに分けた。第一は病院団体の既存統計の個別病院の財務データから病院の効率性を分析した。病院数は多いが、患者の重症度や医療の質を考慮できない。第二は別の病院団体の協力を得て39病院から財務データだけでなく疾病ごとの患者数なども収集し、大雑把な重症度の調整をした。第三は医師の職業団体の協力も得て10病院からさらに患者ごとの診療行為や重症度、転帰の情報を把握して、重症度や医療の質も考慮した医療原価や効率性の分析を行った。特に個別患者のデータは国際疾病分類に基づいた情報を必要としたので当時の医療情報管理の状況からはかなり無理なお願いであったが、今となっては、関係団体や個別病院へ協力を依頼するために各地を回ったのが懐かしい。

病院側としては、突然わけのわからない調査が始まったととまどっただろう。調査の実施には病院長の了解を得ることが必須だが、いくつかの病院では、職員の方々を対象として調査の趣旨を説明する集会も開催した。ただ、私の説明は紋切型の経済効率や公的価格の歪みといったところで、とても人々の琴線に触れるものではなかっただろう。

医療従事者から現場の話を聞く機会も作っていただいた。だが、どこまで実態に迫った調査ができたかはまた別である。ある病院で、渋る事務局長を説き伏せてようやく病院長に話を聞いてもらえることになったが、最初は割と機嫌良く話を聞いていたのが、途中から顔つきが険しくなり、最後には怒りだして追い返された。医療原価の計測は個別の診療行為ごとに行うことにしていたが、原価把握の単位が分断されすぎて診療プロセスの実態とかけ離れていると言うのだ。原価計算の方法論は既存研究に基づいたものではあったが、医療提供者の感覚とはずれがあったかもしれない。

また、心に突き刺さる言葉をいただいたこともある。病院団体幹部の方に調査票の最終確認をした時に、この調査から医療の現場で何が起きているか分かると良いですねと言われた。ふとした言葉だったが、我々の集める数字には、患者や医療従事者の切実な想いと行動が投影されているのだということを、恥ずかしながら、改めて教えられた。

心に響く問題意識を持ち、実態を熟知し、そして、生き生きとした人間の姿を浮かびあがらせること、当たり前のことではあるが難しい。あれから、急性心筋梗塞、救命救急センター、DPCデータ等の調査・分析に携わらせていただいたが、どこまで進歩したか・・・。今後の戒めとする次第である。

平成26年10月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    次長 杉原 茂

【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別民間企業資本ストック速報(平成26年4-6月期)(平成26年9月26日)
    1. 有形固定資産 全産業(進捗ベース)
      • 26年6月末のストックは1,289.6兆円、前年同期比1.7%増となった(前期は1.5%増)。
      • 26年4~6月の新設投資額は13.9兆円、前年同期比4.6%増となり、3期連続でプラスとなった(前期は14.2%増)。
    2. 無形固定資産 全産業(取付ベース)
      • 26年6月末のストックは42.6兆円、前年同期比0.7%増となり、2期連続のプラスとなった(前期は0.6%増)。
      • 26年4~6月の新設投資額は1.9兆円、前年同期比1.4%増となり、5期連続のプラスとなった(前期は5.7%増)。
  • 平成25年度民間企業投資・除却調査結果(平成24年度計数)(平成26年9月30日)

<景気動向指数>平成26年8月速報(平成26年10月7日)

8月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:104.0、一致指数:108.5、遅行指数:118.0となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.4 ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.03 ポイント下降し、7か月連続の下降、7か月後方移動平均は1.26 ポイント下降し、6か月連続の下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して1.4 ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.84 ポイント下降し、5か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.87 ポイント下降し、3か月連続の下降となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.4 ポイント下降し、4か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は横ばい、7か月後方移動平均は0.24 ポイント上昇し、52 か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、下方への局面変化を示している。

<機械受注統計調査報告>平成26年8月実績(平成26年10月9日)

  • 機械受注総額の動向をみると、26年7月前月比13.5%減の後、8月は同2.2%減の2兆1,527億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、26年7月前月比3.5%増の後、8月は同4.7%増の8,078億円となった。このうち、製造業は同10.8%減の3,246億円、非製造業(除く船舶・電力)は同10.7%増の4,704億円となった。

<消費動向調査>平成26年9月調査(平成26年10月10日)

  • 平成26年9月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は8月の41.2から1.3ポイント低下して39.9となり、2か月連続で前月を下回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標全てが前月と比べて低下した。
  • 消費者(一般世帯)に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格について1年後の見通しを調査したところ、「上昇する」と思うとの回答割合は87.0%、「低下する」と思うとの回答割合も4.0%と前月から上昇した一方、「変わらない」と思うとの回答割合は前月から低下し7.0%となった。

【参考】<月例経済報告>平成26年9月(平成26年9月19日)

景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、持ち直しの動きが続いているものの、このところ足踏みがみられる。
    • 設備投資は、増加傾向にあるものの、このところ弱い動きもみられる。
    • 輸出は、横ばいとなっている。
    • 生産は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動の影響もあって、弱含んでいる。
    • 企業収益は、改善に足踏みがみられる。企業の業況判断は、慎重となっているものの、改善の兆しもみられる。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 消費者物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、当面、一部に弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、駆け込み需要の反動の長期化や海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査
10月7日
(8月分)
10月20日
(8月分)
10月9日
(8月分)
10月10日
(9月分)
 
11月6日
(9月分)
11月19日
(9月分)
11月13日
(9月分)
11月11日
(10月分)
 
12月5日
(10月分)
12月19日
(10月分)
12月11日
(10月分)
12月10日
(11月分)
12月10日
(10-12月期)

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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