ESRI通信 第76号

平成26年12月15日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

情報研究交流部は、経済社会総合研究所が行っている統計や調査・研究結果についての情報発信と内外の各種研究機関との研究の交流についての事務を行っています。

情報発信、情報の提供は、主にインターネットを通じたホームページで行っており、GDP統計をはじめとする国民経済計算(SNA)、景気動向指数(CI)などの各方面の関心の高い統計情報については、公表予定をあらかじめ掲載し、正確な情報を決められた日時に公表することにより、利用しやすい情報提供に努めているところです。

また、研究成果や研究交流の結果等の情報についても、迅速にホームページなどで公表し、研究結果等の利用促進を図っているところです。

なお、電子化されていない過去の研究成果などについては、逐次電子化を進めており、データアーカイブの整備を図っており、ホームページの充実を図っているところです。昨年度までに、300冊余りの報告書を電子化し、掲載しており、今年度も40冊程度の電子化を進めているところです。

内外の各種研究機関との研究交流については、

  • 政策研究機関としての機能強化の一環として、経済政策上の有用なテーマを選び、(1)論点を明確化し、(2)政策形成に資するとともに、(3)広範な議論を喚起することを目指した「ESRI-経済政策フォーラム」

  • 時々の重要な経済政策課題に関し、内外の一流の有識者を集めた「国際コンファレンス」や「シンポジウム」等

上記の他、他の政策研究機関との共同セミナーも開催しており、例えば、平成25年10月には、「日本経済再生に関する3研究所共同公開セミナー」などを開催しています。

また、内閣府内部部局との連携も重視しており、本年10月には、「選択する未来」シンポジウムを約200人の参加を得て開催しました。このシンポジウムの開催案内については、ホームページなどで周知を行いましたが、メールマガジンをご覧になった方の参加申込みが配信の翌日までに100人を超え、メールマガジンの発信力の強さを改めて実感したところです。

更なる情報発信を進めるため、今月のESRI通信第76号から研究担当者による「研究紹介」を掲載することといたしました。これは、現在進展中の研究または最近の研究成果について、問題意識や方法論などを分かりやすく解説する試みで、読者の方々に研究所の研究についてご理解を深めて頂こうとするものです。

今後とも、当研究所の情報発信・提供の充実に努めて参りたいと考えておりますので、ホームページや情報提供に関するご意見・ご要望などがありましたら、ホームページの「御意見・御感想」の欄からお寄せいただけるようお願いいたします。

平成26年12月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    情報研究交流部長 小川 尚良

【研究紹介】

「我が国における高齢・富裕世帯の貯蓄行動:個票データに基づく検証」

少子・高齢化、また経済の自由化・グローバル化は経済社会構造に急速な変化を引き起こしており、その変化が家計行動やマクロ経済に与える影響は、経済を展望し、必要な政策の方向性を考える上での鍵になる。そうした下では、多様なミクロ主体が採る行動の人口構造を反映した加重和という視点が不可欠になるが、日本では、ミクロデータ整備の遅れもあり、個別世帯の行動を包括してマクロに繋げるような分析は進んでいない。

我々のユニットでは、こうした問題意識の下、『家計調査』をはじめとする複数統計やアンケート調査の個票データを収集してミクロのデータベースを構築し、過去四半世紀に生じた世帯構造や所得・資産分布の変化を捉えた上で、それが家計行動や種々の政策の効果に与えた影響を分析している。その成果については、既に学会報告を重ねるとともに、学術誌への投稿等の形で随時発信に努めてきたが 1、本稿では、構築したデータベースを用いた分析事例として、ESRI国際コンファレンス「日本経済の持続的成長のために」(平成26年8月1日開催)2で我々が報告した「富裕世帯の貯蓄」に関する分析結果を紹介したい。

「お金持ちの貯蓄率がそうでない人よりも高いか?」という問の答は、あるべき税制やマクロ政策に大きな含意を持つ。お金持ちの貯蓄率が高ければ、マクロ施策の効果はその規模だけでなく、どの層に重点を置くかにも依存することになるし、消費税は逆進的になり、税率の引き上げには軽減税率等の逆進性緩和措置が必要になるだろう。また昨今の日本では、高齢者世帯の貯蓄の活用が重要な政策課題になっている。お金持ちの貯蓄率が高いことは自明に思えるかもしれないが、主流派の経済学(消費の恒常所得仮説)はそうした見方には否定的である。我々の研究では、この設問に実証的に答えるため、独自に実施した『家族とくらしに関するアンケート』への回答、及び『家計調査』の個票という二つのデータソースを活用し、富裕世帯の貯蓄率が高いか否かの検証を行った。

問題に取り組む際の最大の困難は、世帯の豊かさをどう測るか(富裕世帯をどう識別するか)にある。例えば、巷間多用される「所得」で測ろうとすれば、フロー所得は低いものの多額の資産を持つ引退後の高齢者世帯が富裕世帯から排除されてしまう。我々の研究では、豊かさを生涯利用可能資産(恒常所得)で測ることを理想としつつ、その代理となる操作変数を複数((1)学歴・職業、(2)消費、(3)保有資産等)考案し、それぞれの下での豊かさと貯蓄率の関係を検討した。

分析の結果、豊かさと貯蓄率の関係は、操作変数の選択に依存しており、学歴や職業等を操作変数にすると、欧米での先行研究同様、正の関係(お金持ちほど貯蓄率が高いという関係)が得られる一方、消費や資産等を操作変数にした場合、そうした関係は相当程度弱まること、更に、多額の資産を有する高齢世帯では貯蓄の取り崩し行動が見られること、等が確認できた。

我々の結果は、巷間指摘される豊かさと貯蓄率の正の相関を支持する一方、所得と貯蓄率の単純な分析は関係の過大評価につながること、また観察される正の相関の大半は、豊かになると多くを貯蓄するという因果関係ではなく、学歴・職業選択と貯蓄行動の両方に作用する第三の要因(例えば、忍耐力)の存在に由来する可能性が高いこと、等を示唆している。今後は、豊かさを識別する操作変数の改善に努めるとともに、各種施策が世帯貯蓄率に与える影響について分析を深めたい。


1 『経済分析』(第189号、近刊)では、我々が構築した世帯保有資産のデータセットを紹介している。

2 会議の概要はhttp://www.esri.go.jp/jp/workshop/140801/140801main.htmlを参照。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

季刊「Economic & Social Research (ESR) No.7 2014年(冬号)」人口と地域経済を発刊しました。(平成26年12月5日)


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成26年10月速報(平成26年12月5日)

10月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:104.0、一致指数:110.2、遅行指数:118.1 となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.6 ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.50 ポイント下降し、3か月ぶりの下降、7か月後方移動平均は0.44 ポイント下降し、8か月連続の下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.4 ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.10 ポイント上昇し、2か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.63 ポイント下降し、5か月連続の下降となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して1.1 ポイント上昇し、4か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は横ばい、7か月後方移動平均は0.17 ポイント下降し、2か月連続の下降となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、下方への局面変化を示している。

<機械受注統計調査報告>平成26年10月実績(平成26年12月11日)

  • 機械受注総額の動向をみると、26年9月前月比8.0%増の後、10月は同2.9%減の2兆2,563億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、26年9月前月比2.9%増の後、10月は同6.4%減の7,780億円となった。このうち、製造業は同5.5%減の3,438億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.5%減の4,426億円となった。

<消費動向調査>平成26年11月調査(平成26年12月10日)

  • 平成26年11月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は10月の38.9から1.2ポイント低下して37.7となり、4か月連続で前月を下回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標全てが、3か月連続で前月から低下した。
  • 消費者(一般世帯)に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格が1年後どうなると思うか調査したところ、「上昇する」と「低下する」は前月から上昇し、「上昇する」の回答割合は88.8%、「低下する」の回答割合は3.6となった一方、「変わらない」の回答割合は前月から低下し、5.2%となった。

<法人企業景気予測調査>平成26年10-12月期調査(平成26年12月10日)

「貴社の景況判断」BSIの平成26年10-12月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は5.5%ポイントで2期連続のプラス、中堅企業(全産業)は0.8%ポイントで2期連続のプラス、中小企業(全産業)は▲10.1%ポイントで3期連続のマイナス。なお、前回(7-9月期の現状判断:大企業11.1%ポイント、中堅企業5.1%ポイント、中小企業▲10.0%ポイント)と比較していずれも低下。

先行きについてみると、大企業は27年1-3月期以降もプラスで推移する見通し。中堅企業はプラスで推移した後、4-6月期よりマイナスに転化する見通し。中小企業はマイナスで推移する見通し。

「国内の景況判断」BSIの平成26年10-12月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は4.3%ポイントで2期連続のプラス。

「従業員数判断」BSIの平成26年12月末(現状判断)をみると、大企業(全産業)は11.6%ポイントで14期連続の不足気味であり、前回(9月末の現状判断:9.8%ポイント)より拡大。

平成26年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比0.9%の増収見込み。経常利益(全規模・全産業)は同▲1.1%の減益見込み。設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は前年度比4.9%の増加見込み。

【参考】<月例経済報告>平成26年11月(平成26年11月25日)

景気は、個人消費などに弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、持ち直しの動きが続いているものの、このところ足踏みがみられる。
    • 設備投資は、増加傾向にあるものの、このところ弱い動きもみられる。
    • 輸出は、横ばいとなっている。
    • 生産は、このところ減少している。
    • 企業収益は、全体としては改善に足踏みがみられるが、大企業ではこのところ改善の動きもみられる。企業の業況判断は、大企業製造業ではやや改善しているが、全体としては慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、有効求人倍率の上昇には一服感がみられるものの、改善傾向にある。
    • 消費者物価は、このところ横ばいとなっている。

先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、消費者マインドの低下や海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
12月5日
(10月分)
12月19日
(10月分)
12月11日
(10月分)
12月10日
(11月分)
12月10日
(10-12月期)
1月9日
(11月分)
1月21日
(11月分)
1月15日
(11月分)
1月19日
(12月分)

2月6日
(12月分)
2月19日
(12月分)
2月12日
(12月分)
2月9日
(1月分)

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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