ESRI通信 第78号

平成27年2月18日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

経済社会総合研究所景気統計部で作成・公表している統計調査の中で、今回は「企業行動に関するアンケート調査(注1)」について紹介したい。

本調査では、東京、名古屋の第一部・第二部上場全企業(注2)を対象に、毎年1月時点で(注3)、景気・需要、為替レート、価格、設備投資、雇用者数、海外生産比率と逆輸入比率の見通し等について尋ねている。

近年の主な調査結果を振り返れば、まず、輸出を行っている企業に尋ねた採算円レートについては、2011年度調査で82.0円/ドルとなった後(注4)、2012年度調査において6年ぶりに円安方向に転じ、83.9円/ドルとなった。2013年度調査では、更に円安方向に変化し92.2円/ドルとなった。

また、製造業の海外現地生産比率は、2012年度調査では、当該年度の実績見込みの17.7%から5年後には21.3%にまで上昇する見通しであったところ、2013年度調査では、同年度の実績見込みが21.6%と、前年度調査の5年後見通しを既に超え、更に5年後には25.5%にまで上昇する見通しとなった(注5)

さらに、2013年度には、2003年度(注6)以降初めて、名目経済成長率見通しが実質経済成長率見通しを上回った。

2014年度調査は現在集計中であり、結果については公表を待っていただきたいが、新しい試みとして、今回から、従来の郵送調査に加えてオンライン調査を併用導入した(注7注8)。こうした中で、今回は回答率が前回調査比で上昇する見通しである(注9)。回答率の上昇は、もちろんのこと、調査対象企業の皆様のご理解・ご協力故であるが、オンライン調査の導入の効果もあったのではないかと考えている。

今回の調査を通じた経験を踏まえ、調査の更なる改善を図っていく所存である。末筆ながら、調査対象企業の皆様に改めて厚く御礼申し上げたい。

平成27年2月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    景気統計部長  中垣 陽子
  • (注1) 1961年度開始。
    「企業行動に関するアンケート調査」HP:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/ank/menu_ank.html
  • (注2) 2014年度調査では2,445社。
  • (注3) 公表は例年2月下旬から3月上旬頃。
  • (注4) 2011年度調査の採算円レート(82.0円/ドル)は、これについて全産業ベースで調査・集計を始めた1986年度以降で最も円高水準。
  • (注5) 海外現地生産比率を0.0%と回答した企業も含めた単純平均値。
  • (注6) 名目成長率見通しを尋ねているのは2003年度以降。
  • (注7) 2014年3月に閣議決定された第2期の「公的統計の整備に関する基本的な計画」においては「正確かつ効率的な統計の作成や、報告者の負担軽減・利便性の向上を図るためには、ICTの急速な発展に伴う高度情報化社会の到来を踏まえ、統計調査の調査方法にオンライン調査を導入するとともに、導入後のオンライン回答の促進などに取り組むことが有効である。」とされている。
  • (注8) 「企業行動に関するアンケート調査」におけるオンライン調査の導入の詳細については、瀧瀬篤史(2014)「『企業行動に関するアンケート調査』の調査手法の改善について」ESR No.7, pp25-26参照。http://www.esri.go.jp/jp/esr/data/esr_007.pdf別ウィンドウで開きます。(PDF形式 2.3 MB)
  • (注9) 回答率:2009年度:42.0%、2010年度:36.1%、2011年度:37.4%、2012年度34.3%、2013年度:36.2%

【研究紹介】

短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)の紹介

内閣府経済社会総合研究所の計量モデルユニットでは、本年1月に「短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)」を公表した1 。1998年の第一回公表後8回目の改定にあたる本モデルは、152本の方程式体系から構成される伝統的なマクロ計量モデルであり、財政政策・金融政策・外部環境の変化に関して合計11通りのシミュレーション結果を公開している。

経済学では、人間の経済行動を数式で表す理論モデルを構築する。その理論モデルに回帰分析等を通じて現実のデータを当てはめたものが実証モデルである。例えば家計の消費行動を表したものは消費関数、企業の投資行動を表したものは投資関数と呼ばれる。これらの経済の部分ごとのモデルを、マクロ経済全体を表せるように統合し、いわばミニチュアの経済を作ったものが、マクロ計量モデルである。マクロ計量モデル(仮想の経済)を構築すれば、政策や経済環境にショックを与えるシミュレーションにより現実には実施できない経済実験を行うことができるため、政策当局やシンクタンク等で広く活用されている。

短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)はそのようなモデルの一つであり、標準的なマクロ経済学の理論に基づき、現実のデータを用いて統計的に推定した実証モデルである。今回のモデルでシミュレーションした結果をいくつか紹介すると、公共投資の拡大(実質GDP1%相当)が一年目の実質GDPに与える影響は1.14%(いわゆる公共投資乗数)となっている。同様に、短期金利の1%引上げはマイナス0.32%、為替レートの減価(10%円安)は0.08%、原油価格の20%上昇はマイナス0.12%、それぞれ一年目の実質GDPを変化させる。

公共投資が景気刺激効果をもつことや、金利上昇が経済を縮小させることなどは、計量モデルなどを持ち出さなくとも自明の話と感じられる部分があるかもしれない。しかしながら、ショックがもたらす経済の変化の方向性(定性的な影響)は自明でも、どの程度かという定量的な効果については、専門家の間でも意見の一致を見ることは少ない。こうした中で、マクロ計量モデルは様々な定量的な効果をベンチマークとして提供することができる。更には、経済の一部分の反応にとどまらず、金利・為替・物価などの変動を通じて投資や輸出入などが調整された結果まで定量的に示すことができるのは、マクロ計量モデルの利点の一つである。

なお、伝統的なマクロ計量モデルは、パラメータが安定的で、ショックの前後で変化しないことを暗黙の前提としている。しかし現実には政策変更やショックがあればパラメータもそれに応じて変化するという問題点が指摘された(1976年のいわゆる「ルーカス批判」)。以降近年のアカデミアの世界では、経済行動がショックに応じて最適に変更される(いわゆる「ミクロ的基礎付け」のある)DSGEモデルを構築することが主流になっている。とは言え、先端的なDSGEモデルにも課題(その前提となるミクロ経済理論の妥当性に関する合意が確立してないこと、現実のデータへのフィットが劣っている点等)がある中で、伝統的なマクロ計量モデルは経済の詳細を表現しやすく実用性が高いことから、今日においても広く活用され利用者の認識形成や意思決定に役立てられている。

本モデルの意図は、政策効果等に関する「唯一の正解」を示すことにはなく、標準的な理論と国民経済計算体系に基づいて、過去における経済の平均的な反応パターンを議論の素材として具体的に示すことで、政策効果に関する議論を喚起してコンセンサス形成に資することにある。本モデルは、その合意形成を目指す努力の場(開かれた場での議論)に「叩き台」を提供する役割を担っているといえる。


1ESRI Discussion Paper No.314については、http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis314/e_dis314.htmlを参照されたい。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

「ソーシャル・キャピタルに関する意識調査」の実施についてを掲載しました。(平成27年2月)

社会指標のデータ収集に必要なアンケート調査の実施手法について(講演会概要)を掲載しました。(平成27年1月)


【最新の研究発表】

  • 定住外国人の子どもの学習時間の決定要因(中室 牧子、石田 賢示、竹中 歩、乾 友彦)を掲載しました。(平成27年2月)

    これまでの外国籍児童に関する分析は、いずれも一部外国人集住地域の調査客体を対象とした定性的な調査に基づいており、日本人と比べて、外国籍児童の教育達成が相対的に見て低いことの理由として、文化・慣習の違いなど、彼らが「外国人である」ことを理由として見出すものがおおかった。また、こうした分析は、比較的滞日年数が少ない外国人の子らを対象にしているが、近年、定住外国人が増加する中で、定住志向の強い外国人の子らが教育面でどのような問題を抱えているかを把握することも重要である。本研究では、文化や慣習の違いの代理変数である親の国籍以外にも、親の社会階層やネットワークなどが、日本人と日本で生まれ育った定住外国人の子どもらの小学校時点における学習資本形成に与える影響を明らかにするため、21世紀出生児縦断調査の個票データを用いた実証分析を行った。その結果、最小二乗法推計では、親の国籍をコントロールしてもなお、親のかかわりかたや社会ネットワークが子どもの学習資本形成に影響していることが明らかになったが、時間を通じて一定の観察不可能な要因をコントロールするため、固定効果推計を行うと、親のかかわりかたや社会ネットワークは統計的には有意でなくなり、学校外教育など家庭の外での教育資源へのアクセスが子どもの学習資本形成に影響していることが明らかになった。

【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成26年12月速報(平成27年2月6日)

12 月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:105.2、一致指数:110.7、遅行指数:118.3 となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.5 ポイント上昇し、3か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.37 ポイント下降し、3か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.10 ポイント上昇し、11 か月ぶりの上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して1.5 ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.46 ポイント上昇し、3か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.04 ポイント下降し、7か月連続の下降となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して2.3 ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.03 ポイント上昇し、3か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.04 ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。ただし、基調判断に用いている3か月後方移動平均のこのところの変化幅は、大きいものではない。

<機械受注統計調査報告>平成26年12月実績および平成27年1~3月見通し(平成27年2月12日)

  • 機械受注総額(季節調整値)の動向をみると、26年11月前月比10.4%減の後、12月は同8.6%増の2兆1,960億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、26年11月前月比1.3%増の後、12月は同8.3%増の8,536億円となった。このうち、製造業は同24.1%増の3,969億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.2%増の4,770億円となった。
  • 10~12月をみると、受注総額は前期比3.1%減の6兆4,745億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.4%増の2兆4,196億円、製造業は同0.8%増の1兆605億円、非製造業(除船舶・電力)は同0.7%減の1兆3,645億円となった。
  • 平成27年1~3月見通しをみると、受注総額は前期比2.5%減の6兆3,127億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同1.5%増の2兆4,552億円、製造業は同2.1%減の1兆378億円、非製造業(除船舶・電力)は同4.9%増の1兆4,310億円の見通しになっている。
  • 平成26年実績をみると、受注総額は前年比8.9%増の27兆8,919億円になっている。 また、「船舶・電力を除く民需」は同4.0%増の9兆6,920億円、製造業は同11.3%増の 4兆1,036億円、非製造業(除船舶・電力)は同0.8%減の5兆6,284億円になっている。

<消費動向調査>平成27年1月調査(平成27年2月9日)

  • 平成27年1月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は12月の38.8から0.3ポイント上昇して39.1となり、2か月連続で前月を上回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標のうち、「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」は上昇した一方、「暮らし向き」「収入の増え方」は低下した。
  • 消費者(一般世帯)に、世帯として「日頃よく購入する品物」の価格が1年後どうなると思うか調査したところ、「上昇する」の回答割合は前月から増加し、87.4%となった一方、「低下する」と「変わらない」は前月から減少し、「低下する」の回答割合は3.5%、「変わらない」の回答割合は6.4%となった。

【参考】<月例経済報告>平成27年1月(平成27年1月23日)

景気は、個人消費などに弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、消費者マインドに弱さがみられるなかで、底堅い動きとなっている。
    • 設備投資は、おおむね横ばいとなっている。
    • 輸出は、横ばいとなっている。
    • 生産は、持ち直しの動きがみられる。
    • 企業収益は、全体としてはおおむね横ばいとなっているが、大企業製造業では改善の動きもみられる。企業の業況判断は、おおむね横ばいとなっている。
    • 雇用情勢は、有効求人倍率の上昇には一服感がみられるものの、改善傾向にある。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、原油価格下落の影響や各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、消費者マインドの弱さや海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
2月6日
(12月分)
2月19日
(12月分)
2月12日
(12月分)
2月9日
(1月分)
 
3月6日
(1月分)
3月17日
(1月分)
3月11日
(1月分)
3月12日
(2月分)
3月12日
(1-3月期)
4月6日
(2月分)
4月22日
(2月分)
4月13日
(2月分)
4月17日
(3月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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