ESRI通信 第81号

平成27年5月22日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【巻頭言】

内閣府の経済社会総合研究所に在籍の後、官民人事交流制度により2年間民間シンクタンクにおいて研究に従事する経験を得、そこから再度兼務ではあるが経済社会総合研究所に戻っていることもあり、官民の研究所の違いについて感ずるところを述べてみたい。なお、民間シンクタンクの経験といっても一か所だけであり、経済社会総合研究所での経験も主として過去のものに基づいているため、一定の偏りがあったり、必ずしも現在はそうではなく、あくまでも著者のひとつの見方に過ぎないことはご容赦願いたい。

民間シンクタンクは、研究や提言を行っても、政策の立案責任等はなく、「対岸」にある。政策担当部局との連携を意識する必要はない。研究員は採用・配属時にチームではなく単独で行う研究の資質や志向性などをスクリーニングされるので、時として、上司の了解は予め大まかな方向でだけ取付け、後は研究員の結果責任とすることも可能である。こうしたことから、テーマの選定や研究は、現実の経済の突然の大きな変化に対応して、即座に近い形で研究成果を公表することも可能である。一方、政策の現場が抱える問題から研究すべきテーマが直接浮かび上がってくる、ということでは必ずしもない。また、マスコミ・世間に必ずしも注目されているわけではないため、注意を引くためには、独創性や分かりやすさ、時としてeye-catchingであることが必要である。このため、レポートのタイトルなども工夫が求められる。ただし、一旦注目されれば、マーケットなどを通じて現実を大きく左右することも可能である。結果として、政策当局も民間シンクタンクの動向を注視することにつながる。

一方、政府の政策研究所であるが、政策の立案・調整・実施部局に対し、付属の施設としておかれていることが多く、外部からは常に政策との連携があるという前提で見られる。テーマの選定や研究も、そうした点を念頭におきながら進めることも必要である。一方、政策当局との近さから、研究が政策に直接生かされることも比較的容易である。また、研究に限らず、基礎的データやツールの作成であっても、何らかの形で政策に生かすことを目的に行われる。更に、政策との連動可能性から、マスコミ・世間の注目度も高い。何より、現実の政策の立案過程等の中から、重要な研究テーマが浮かび上がってくることもある。

このように、民間シンクタンクと政府の政策研究所には、それなりの相違がある。しかし、それぞれの違いを生かした研究により、日本経済の発展に貢献することが求められているとも言える。いずれにしても、データに基づき説得力のある研究を行えば、ルートは違っても、最終的には政策に反映されうることは共通かもしれない。

平成27年5月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 市川 正樹

【研究紹介】

「オリンピック・パラリンピックを契機とした地域活性化研究」

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    行政実務研修員 小菅 浩典

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会とする)については、大会開催による効果を東京のみならず全国に波及することで、経済・文化の各面の活性に資することが求められている1

経済社会総合研究所では、地方自治体に向けた研究として「オリンピック・パラリンピックを契機とした地域活性化研究」を平成26年度に実施した。文化・芸術、食、伝統工芸、福祉、教育、スポーツイベントと地域誘客の各分野に造詣が深い専門家を招き、それぞれの視点からテーマに沿った提言をいただき議論を深めた。その内容の一部として文化プログラムによる地域活性化に係る議論を紹介する。

文化プログラムとは、オリンピック憲章2で「OCOG(オリンピック競技大会組織委員会)は、短くともオリンピック村の開村期間、複数の文化イベントのプログラムを計画しなければならない。」と規程されて実施されているものだ。文化プログラムの成功事例とされる2012年のロンドン大会では、2008年から2012年までの4年間を実施期間として、ロンドンのみならず英国全土で約18万件の文化プログラムが行われ、4340万人がこうしたプログラムに参加した。文化プログラムの内容は、大会の機運を盛り上げるもの、英国文化を紹介するもの、環境問題、世界平和、障がい者等をテーマとしたものなど様々であり、そこから多くのレガシー(オリンピック開催を契機として社会に生み出される持続的な効果)が生まれたと言われている。例えば、「UNLIMITED」と題したプログラムでは、障がいのあるアーティストによる公演が行われ、人々の障がい者への意識が変わったと言われている。

東京2020大会の文化プログラムについては、現在検討が重ねられている段階であるが、ロンドンでの取り組みを更に発展させて全国展開することが検討されている。地方自治体においては、東京2020大会の文化プログラムを活用して地域の素晴らしい文化を世界に向けて発信し、産業や観光の振興等による地域活性化に繋げることが考えられると、研究では指摘された。

研究過程での議論による一定の成果については、2015年3月19日に「第52回ESRI-経済政策フォーラム オリンピック・パラリンピックを契機とした地域活性化」を開催して発表した。その内容については経済社会総合研究所のホームページで公開している3ので、参照されたい。また、近々、上記フォーラムの内容を含めた研究の成果を報告書にまとめて発信する予定である。


1「経済財政運営と改革の基本方針2014~デフレから好循環拡大へ~」(平成26年6月24日閣議決定)では、「日本全体の祭典であるとともに、世界に日本を発信する最高のチャンスとして、我が国が活力を取り戻す弾みとなるもの」であるとし、また、「参加国との人的・経済的・文化的な相互交流を図るとともに、スポーツ立国、グローバル化の推進、地域の活性化、観光振興、環境技術とイノベーションの発信等に資することを重視して取り組む」としている。

2オリンピック憲章(2011年版)より引用。

3経済社会総合研究所「ESRI-経済政策フォーラム」http://www.esri.go.jp/jp/workshop/forum/menu.html(平成27年5月12日確認)


【最新の研究発表】

  • ミンサー型賃金関数の推計とBlinder-Oaxaca分解による賃金格差の分析(吉岡 真史)を掲載しました。(平成27年5月)

    本稿では、「賃金構造基本統計調査」の個票を用いて、Mincer (1974) によって示された、いわゆるミンサー型の賃金関数を、川口 (2011) が指摘する留意点にも注意を払いつつ推計している。さらに、賃金格差にも着目し、カーネル密度関数を推計するとともに、男女の性別格差に加えて、従来は十分な注意を払われていなかった各種の賃金格差、すなわち、産業間格差、地域間格差、企業規模別の格差について個票データに基づき、Oaxaca (1973)、Blinder (1973)、Oaxaca and Ransom (1994) などにより示された、いわゆるBlinder-Oaxaca分解を用いて属性格差と非属性格差への分解を試みている。格差のうちに占める属性格差は決して大きな割合ではなく、ミンサー型の賃金関数に基づくBlinder-Oaxaca分解では需要要因を含まないことがその原因である可能性が示唆されている。


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<議事録の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成27年3月速報(平成27年5月12日)

3月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:105.5、一致指数:109.5、遅行指数:120.3 となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.8 ポイント上昇し、3か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.13 ポイント上昇し、3か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.12 ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して1.2 ポイント下降し、2か月連続の下降となった。3か月後方移動平均は0.60 ポイント下降し、7か月ぶりの下降、7か月後方移動平均は0.02 ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して1.2 ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.16 ポイント下降し、9か月ぶりの下降、7か月後方移動平均は0.03 ポイント上昇し、59 か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

平成27年3月改訂(平成27年5月20日)

  • 3月のCI(改定値・平成22年=100)は、先行指数:106.0、一致指数:109.2、遅行指数:118.9となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成27年3月実績および平成27年4~6月見通し(平成27年5月18日)

  • 機械受注総額の動向をみると、27年2月前月比0.0%減の後、3月は同1.8%増の2兆4,820億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、27年2月前月比1.4%減の後、3月は同2.9%増の8,694億円となった。このうち、製造業は同0.3%増の3,638億円、非製造業(除く船舶・電力)は同4.7%増の4,978億円となった。
  • 1~3月をみると、受注総額は前期比12.0%増の7兆3,570億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同6.3%増の2兆5,713億円、製造業は同2.3%増の1兆911億円、非製造業(除船舶・電力)は同8.5%増の1兆4,733億円となった。
  • 4~6月見通しをみると、受注総額は前期比1.4%減の7兆2,524億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同7.4%減の2兆3,810億円、製造業は同9.4%減の9,886億円、非製造業(除船舶・電力)は同4.8%減の1兆4,022億円の見通しになっている。
  • 平成26年度実績をみると、受注総額は前年度比8.4%増の28兆5,756億円になっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.8%増の9兆7,805億円、製造業は同7.0%増の4兆1,620億円、非製造業(除船舶・電力)は同3.3%減の5兆6,510億円になっている。

<消費動向調査>平成27年4月調査(平成27年5月15日)

  • 平成27年4月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は41.5と前月から0.2ポイント低下し、5か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標のうち、「雇用環境」を除く3つが前月から低下した。
  • 世帯として「日頃よく購入する品物」の価格が1年後どうなると思うか消費者(一般世帯)に調査したところ、「変わらない」の回答割合は5.6%、「低下する」は2.9%と、いずれも前月から減少した一方、「上昇する」は89.2%と前月から増加した。

【参考】<月例経済報告>平成27年4月(平成27年4月20日)

景気は、企業部門に改善がみられるなど、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、総じてみれば底堅い動きとなっている。
    • 設備投資は、おおむね横ばいとなっている。
    • 輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる。
    • 生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善の動きがみられる。企業の業況判断は、おおむね横ばいとなっているが、一部に改善の兆しもみられる。
    • 雇用情勢は、改善傾向にある。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、原油価格下落の影響や各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
5月12日
(3月分)
5月20日
(3月分)
5月18日
(3月分)
5月15日
(4月分)
6月5日
(4月分)
6月19日
(4月分)
6月10日
(4月分)
6月9日
(5月分)
6月11日
(4-6月期)
7月6日
(5月分)
7月21日
(5月分)
7月9日
(5月分)
7月10日
(6月分)

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


ご意見・ご感想はこちらから

新着情報メール配信の登録内容の変更・停止等はこちらから

  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)