ESRI通信 第82号

平成27年6月18日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【ESRI国際コンファレンス】

経済社会総合研究所では、内外の学識経験者を招いて各種の国際コンファレンスを開催しています1。このうち、最も力を入れているのが、NBER(全米経済研究所)の協力を得て、毎年夏頃に開催しているコンファレンスです。このコンファレンスは、平成13年10月に、米国のグレン・ハバード大統領経済諮問委員会委員長(当時。以下同様。)と、浜田宏一当研究所所長の主導の下で、プリンストン大学のベン・バーナンキ教授はじめ内外の専門家を集め、不良債権問題をテーマに開催したコンファレンスに始まります。その後も、税制改革、デフレ脱却、経済成長、世界金融危機などその時々の重要な政策課題をテーマに、アカデミアの方々をお招きして開催してきました。昨年は、日本経済の持続的成長をテーマに、現在はコロンビア大学ビジネススクール校長であるハバード教授にも参加いただき、8月1日に開催しました。

このコンファレンス自体は、学識経験者による議論の場であり、政策決定に直接結びつくものではありません。しかし、その時々の日本の経済政策上重要な課題を明らかにし、政策対応のあり方を議論いただくことにより、今後の日本の経済政策に関する議論に貢献するだけではなく、米国はじめとする海外の学識経験者にこれらの議論について理解を深めていただくよい機会となっていると考えています。実際、これまでの会合では、経済財政諮問会議議員など各国の政府・中央銀行の要職を経験された方を含め、経済学の各分野の内外の専門家の方に多数参加いただき、政策の現実を踏まえた議論が行われてきたと思います。

当研究所は、政策と学術研究の橋渡しを重要な課題としており、こうした場を定期的に設けていくことが重要と考えております。

本年も開催に向け準備中です。ぜひ、実り多い会合にしていきたいと思います。

平成27年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官・総務部長 籠宮 信雄

1これまでの国際コンファレンス等の議事、概要等については、当研究所HPに掲載しています。http://www.esri.go.jp/jp/workshop/international_forum.html

【研究紹介】

付加価値貿易指標改善に関する研究

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    政策企画調査官 萩野 覚

本研究では、OECDにより開発された付加価値貿易指標(Trade in Value Addedの頭文字を取ってTiVAとも呼ばれる)について、その精度を改善する方法論を検討している。

付加価値貿易指標は、国際貿易について、財貨の輸出入という目に見える形に止まらず、各国の貢献を付加価値という視点から表章しようとするものである。その意義については、以下の三点が指摘されることが多い。第一に、グローバルバリューチェーン(GVC)の実態を示すことである。すなわち、従来の貿易統計では、GVCの拡大につれ中間財の輸出入が膨らんでいき、また、GVCの最後に位置する国(下図のB国)の輸出増加に焦点が当たることとなるが、付加価値貿易指標では、中間財を輸出した国(下図のA国)も含め、各々の国が生み出した付加価値のみが計上されることから、そうした問題が解消される。

(図)従来の貿易統計及び付加価値貿易指標

第二に、輸出財を生産するために海外から中間財を輸入するというGVCの特徴的な動きを、国外付加価値という概念を導入して定量化し、輸出に占める比率やその経年変化により各国のGVCにおける立ち位置を明らかにする。第三に、輸出財生産において、国内外のサービスがどの程度投入されたのかを明らかにする。

ただ、付加価値貿易指標は、国際産業連関表を基に推計されることから、産業連関表に特有の技術仮定の問題を抱えている。具体的には、輸出財生産への輸入中間財の投入比率を産業毎に決定するが、実際には、同一産業の企業の間にも異質性があり、例えば、輸出企業と非輸出企業、外資企業と本邦企業との間で輸入中間財の投入比率は大きく異なるとみられている。この点、欧米では、ミクロデータを用いて企業の異質性を把握する試みが、近年盛んに行われており、OECDでも、企業特性別貿易統計(Trade by Enterprise Characteristicsの頭文字を取ってTECとも呼ばれる)という新たな統計の整備を進めている。

残念ながら、我が国は企業特性別貿易統計を作成していない。そこで本研究では、企業の異質性について、経済産業省・企業活動基本調査のミクロデータを用いて検証してみた。この結果、我が国の輸出において、欧米同様大企業が中心であり、輸入中間財投入比率については、輸出企業が非輸出企業をほぼ10%上回ることを確認できた。他方、企業の所有形態に着目すると、輸出における外資企業の重要度は欧米と異なり限定的ながら、輸入中間財比率は、外資企業が本邦企業を15%超上回り、さらに輸出・非輸出と、外資・本邦をクロスで分類・集計してみると、トップの外資・輸出企業とボトムの本邦・非輸出企業の間には、20%以上の乖離があることが判明した。

今年3月に開催された、OECDの「国際財貨サービス貿易統計に関する作業部会」では、企業特性別貿易統計も含め、付加価値貿易指標の改善に向けた統計整備が主要なテーマとなった。筆者は、我が国企業の異質性に関する上記の結果を発表したところ、OECD事務局から「曲がり角の先にあるものを具体的に示してくれた。」と評価され、企業特性別貿易統計の整備面での遅れを取り戻した感もあった。

今後は、こうした輸入中間財の投入比率を、OECDが付加価値貿易指標作成にあたり用いている我が国の産業連関表のフレームワークの中にどのようにして組み入れるかを、OECDと共同で検討して行きたい。また、我が国の企業特性別貿易統計がOECDに提供されるよう、統計調査により蓄積されて行く企業のプロファイルと税関で得られる貿易に関する情報のリンケージを行う方策も探って行く方針である。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

季刊「Economic & Social Research (ESR) No.9 2015年(夏号)」ミクロデータを活用した政策研究の推進を発刊しました。(平成27年6月)


【最新の研究発表】

  • 我が国世帯における世帯内資源配分の実証分析(堀 雅博、光山 奈保子、清水谷 諭)を掲載しました。(平成27年5月)(本文は英語)

    本研究では、我が国世帯の家族関係及び資源配分の男女差の有無について知見を導くべく、世帯支出の構成に反映された世帯内資源配分の実証分析を行った。分析では、世帯の構成及び品目別の家計支出額について詳細な情報が得られる「家計調査」の個票データに、子供の有無、またその男子女子の別、が同じ世帯内の大人の支出に与える影響を、(子供の存在がもたらす)負の所得効果の推計を通じて検証するエンゲル曲線アプローチを適用した。分析結果から、子供の存在によって同世帯内の大人財への支出は有意に減少すること、またそうして計測される(大人財に対する)負の所得効果については男子女子で差は見られないことが分かった。一方、子供の存在に対する大人財の反応は、個別の財では異なる場合があり、特に大人の衣料品(紳士服や婦人服)については、学齢期以上の女子がいる世帯では紳士服が、また逆に学齢期の男子がいる世帯では婦人服が、それぞれ減少するというパターンが確認できた。さらに子供向け消費では、女子の方が衣料品支出が大きいこと、高校以上の教育費では近年男女差の逆転が生じ、女子の支出の方が大きくなっていることが見出された。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別GDP速報(2015(平成27)年1-3月期・2次速報)(平成27年6月8日)
    1. 平成27年6月8日に公表した27年1-3月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が1.0%(年率3.9%)と、1次速報値の0.6%(年率2.4%)から上方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が上方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、民間企業設備や民間在庫品増加が改定されたためである。
  • 平成24年度県民経済計算(平成27年6月3日)

<景気動向指数>平成27年4月速報(平成27年6月5日)

4月のCI(速報値・平成22 年=100)は、先行指数:107.2、一致指数:111.1、遅行指数:121.4 となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.2 ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.54 ポイント上昇し、4か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.11 ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して1.9 ポイント上昇し、3か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.74 ポイント下降し、2か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.07 ポイント上昇し、3か月ぶりの上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して2.6 ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.13 ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇、7か月後方移動平均は0.20 ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成27年4月実績(平成27年6月10日)

  • 機械受注総額の動向をみると、27年3月前月比1.8%増の後、4月は同1.1%減の2兆4,559億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、27年3月前月比2.9%増の後、4月は同3.8%増の9,025億円となった。このうち、製造業は同10.5%増の4,020億円、非製造業(除く船舶・電力)は同0.6%減の4,949億円となった。

<消費動向調査>平成27年5月調査(平成27年6月9日)

  • 平成27年5月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は41.4と前月から0.1ポイント低下し、2か月連続で前月を下回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標のうち、「暮らし向き」と「収入の増え方」は前月から上昇したものの、「雇用環境」と「耐久消費財の買い時判断」は前月から低下した。
  • 世帯として「日頃よく購入する品物」の価格が1年後どうなると思うか消費者(一般世帯)に調査したところ、「低下する」は2.9%と前月から横ばい、「変わらない」の回答割合は7.1%と前月から増加、「上昇する」は87.4%と前月から減少した。

<法人企業景気予測調査>平成27年4-6月期調査(平成27年6月11日)

「貴社の景況判断」BSIの平成27年4-6月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は▲1.2%ポイントで4期ぶりの「下降」超、中堅企業(全産業)は▲2.2%ポイントで2期連続の「下降」超、中小企業(全産業)は▲13.6%ポイントで5期連続の「下降」超。なお、前回(1-3月期の現状判断:大企業1.9%ポイント、中堅企業▲2.2%ポイント、中小企業▲14.8%ポイント)と比較して、大企業は「下降」超に転化、中堅企業が横ばい、中小企業は「下降」超幅が縮小。

先行きについてみると、大企業と中堅企業は27年7-9月期以降「上昇」超で推移する見通し。中小企業は10-12月期にかけて「上昇」超に転化する見通し。

「国内の景況判断」BSIの平成27年4-6月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は9.8%ポイントで4期連続の「上昇」超であり、前回(1-3月期の現状判断:8.7%ポイント)より「上昇」超幅が拡大。

「従業員数判断」BSIの平成27年6月末(現状判断)をみると、大企業(全産業)は10.6%ポイントで16期連続の「不足気味」超であるが、前回(3月末の現状判断:13.5%ポイント)より「不足気味」超幅は縮小。

平成27年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比0.2%の増収見通し、経常利益(全規模・全産業)は同1.9%の増益見込み、設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は同5.9%の増加見込み。

【参考】<月例経済報告>平成27年6月(平成27年6月15日)

景気は、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、持ち直しの兆しがみられる。
    • 設備投資は、このところ持ち直しの動きがみられる。
    • 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
    • 生産は、このところ一部に弱さがみられるものの、持ち直している。
    • 企業収益は、総じて改善傾向にある。企業の業況判断は、おおむね横ばいとなっているが、一部に改善の兆しもみられる。
    • 雇用情勢は、改善傾向にある。
    • 消費者物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、原油価格下落の影響や各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
6月5日
(4月分)
6月19日
(4月分)
6月10日
(4月分)
6月9日
(5月分)
6月11日
(4-6月期)
7月6日
(5月分)
7月21日
(5月分)
7月9日
(5月分)
7月10日
(6月分)
 
8月6日
(6月分)
8月19日
(6月分)
8月13日
(6月分)
8月10日
(7月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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