ESRI通信 第84号

平成27年8月20日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【所長挨拶】

この度、経済社会総合研究所長に着任しました。直前の1年は政策研究大学院大学(GRIPS)に勤務いたしました。私の担当授業の中で刺激を受けたのが、留学生に対する日本経済論の講義でした。受講生は各国を背負って立つリーダー予備軍です。経済学専攻ではありませんが、日本経済については自分なりの見方を強めていました。驚いたのは、一部で流布しているステレオタイプの見解を鵜呑みしている場合があることでした。

一例を挙げますと、日本の労働市場と少子化の関係について、「OECD主要国のデータに基づくと、女性の就業率が高まれば出生率は上昇する関係がある。したがって、日本もヨーロッパ、とりわけ北欧社会を見習い、女性が働きやすい環境を整備すると、出生率は高まるに違いない」というものです。

この点については、少なくとも10年以上前から様々な研究者が分析を深めてきていますが、本年7月のESRI国際コンファレンスにおいても討議されました。日本の47都道府県のデータをもとに、出生率と女性の労働市場参加率を図に描くと、時代によっては正の相関関係が描かれるし、それが負の関係となるときもあります。また、両者の変化幅を用いて図を描くと弱い負の関係が得られます。因果関係ではないものの、正の相関関係がある場合には女性の働き手が増えると出生率も高い状況となり、他方、負の関係があると、女性の働き手が増えると出生率は低くなるというトレードオフの状況を示唆します。

コンファレンスでは、(1)都道府県データの結果から参加率と出生率の間に特定の関係を認定するのは困難ではないか、さらに、(2)女性の就業と出生率の間に望ましい関係(双方がプラス)を生み出していくためには、保育施設の拡充と、女性に不利となる日本的な雇用慣行の見直しが重要との議論がありました。

本論点は内外の多くの研究者が取り組んでおり、明確な結論は未だ得られていないにもかかわらず、両変数の関係については先ほど述べたような短絡的理解が存在しています。これは、必ずしも論証できない政策含意が表面的な現象から導出されてしまうリスクが顕在化していることを示しています。

身の回りの経験に即し直観的にもわかりやすい図表を用いて、課題解決の方向を示していくことは、経済社会の総合的な研究にとって極めて大切な姿勢です。しかしながら、政策的な含意を引き出すために、分析手法は正しいのか、結果は頑健性があるのかなど丁寧な検討が求められます。当研究所は、今後とも理論と政策の橋渡しの役割を丁寧に果たしていきたいと考えていますので、どうかご支援くださるようにお願い申し上げます。

平成27年8月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    所長 梅溪 健児

【巻頭言】

人口減少と大都市圏集中が加速する中、「地方消滅」といった表現が現れるに至り、地方創生は喫緊の政策課題となっている。困難な課題は多々あるが、日本社会に求められる転換を、この機会に地方が先導することも期待される。

まず、地方が「消滅」しないようにするということは、言い換えれば、持続可能な地方を作るということになるが、そもそも、現代の大量生産・大量消費文明が持続可能でないことは広く認識されており、我が国の大都市も、地方もその一部を成している。持続可能な文明にするには、地球の環境や資源の容量の範囲内で人類の活動を行う環境共生・循環型社会に転換する必要がある。真に持続可能な地方の創生は、そのような方向性に沿ったものでなければならない。

元々、我が国の地方には、環境共生・循環型社会の一つのモデルと言えるものがあった。農地やその背後の山林等に人が継続的に手を入れてできた里山は、生物多様性の豊かな二次的自然を生み出し、そこから食料やエネルギー源等の恵みを持続的にもたらしてきた。このような里山の意義は、SATOYAMAとして国際的にも評価されている。

近年、耕作放棄地や荒れた山林が増加するなど、里山の機能が失われてきたが、最近、トキやコウノトリを野生に戻す取組みが注目されている。それは単に人工繁殖で個体数を増やして放鳥するということではなく、トキ等が生息できる里山を再生し、そこで環境保全型農業を進める取組みと一体的に進められている。地方における意欲的な取組みと都市の消費者の支持により、地方の伝統を現代的に復活するものであり、環境共生・循環型社会への転換を地方が先導する事例と言えよう。

次に、地方に限らず、地域の多様な問題を解決するには、地方自治体の積極的な役割が期待されるが、同時に、住民等の地域の当事者の役割が重要である。近年の厳しい財政状況や合併による自治体の広域化等に伴い、各地域のニーズに自治体が対応できることに限界があるという実態もあるが、本質的な問題は、個々の地域のニーズに効果的に対応するには、当事者である住民等が主体的に関わることが不可欠だということである。

従来からある自治組織等の再活性化とともに、NPOや、企業の形態によるコミュニティビジネス等の多様な主体の参画により、新たな主体的地域社会を作っていく必要がある。都会に比べて地域の絆が残っている地方から、そのような変革が進むことが望まれる。

平成27年8月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 岩瀬 公一

【研究紹介】

「少子化と未婚女性の生活環境に関する分析」の概要

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    行政実務研修員 石田 絢子

日本における1970年代半ば以降の出生率低下のほとんどは未婚によってもたらされている。出生率回復のためには未婚化の背景要因を把握した上で、少子化対策の拡充等により未婚化の流れを止めることが不可欠である。

内閣府経済社会総合研究所の少子化ユニットでは、平成26年度は少子化と未婚女性の生活環境に関する分析をおこなった。ここでは、分析に用いたデータ及び主な分析結果について紹介する。

本研究に用いたデータは2010年実施の「第14回出生動向基本調査(独身者調査)」(国立社会保障・人口問題研究所)及び、独自に実施した「未婚男女の結婚と仕事に関する意識調査」である。後者の調査は25歳~40歳の未婚男女10,200人を対象にインターネットを通じて実施したものである。出生動向基本調査と同様の問いを設けて結果を比較するとともに、未婚者の生活環境の実態を尋ね、出生動向基本調査の内容を詳細に検討する分析を行った。なお、本研究の成果はDiscussion Paperとして近く公表されるほか、9月に開催される日本社会学会において報告する予定である。

分析のテーマと主な分析結果は次のとおりである。

1)職場における出会いと結婚意欲の関係

正規雇用者よりも非正規雇用者の結婚意欲が低いことを、結婚市場のミスマッチ仮説を背景とする「出会い仮説」によって説明できるか否かを検証したところ、この仮説は概ね支持された。

非正規雇用者の結婚意欲が低いことの要因の一部は、非正規雇用者には交際相手がいることが少ないことにある。さらに未婚者の「職場独身異性ネットワーク」を測定したところ、関東以外の地域に住む者、小規模企業に勤める者および非正規雇用者は、周囲に独身異性の数が少なく、また非正規雇用者の周囲には正規雇用者の割合も低いことが、結婚意欲を低くしていた。

若い世代には配偶者探しの場が必要であり、また雇用の非正規化が進むなかで、安定雇用を促進する必要がある。

2)未婚男女の出会いの阻害要因

結婚意欲のある未婚男女が潜在的な結婚相手に出会えていない要因について、地域の特性を考慮した上で、個人の属性や結婚相手に求める条件などから分析した。まず、本人の年齢が上がるほど出会いは難しくなる。女性の場合、長時間労働は出会いを阻害し、自分の親と同居していることは結婚のメリットを感じにくくすることで、子どもが自分や家庭生活にプラスの要素をもたらす存在であると考えることは男性に求める条件を厳しくすることで、それぞれ出会いの阻害要因となっていることがわかった。また、固定的な性別役割分業意識をもつ大規模都市に住む男性と中小規模都市に住む女性は出会いにくさを感じていた。一方で、親の暮らし向きが良いことは出会いの機会にプラスであった。市区町村単位での居住地の人口構成、雇用状況などの地域特性は出会いの阻害要因ではなかった。

地域の実情にあった政策の立案、男女ともに仕事と家庭を両立できる支援、環境整備が必要である。また、資源の世代間移動や貧困の世代間連鎖が少子化にも影響していると考えられ、子育ての社会化や子どもの貧困対策が不可欠である。

3)未婚者の結婚・出生意欲を規定する諸要因について

未婚者の結婚意欲と出生意欲の関連を分析した結果、両者には高い同時性が見られた。両者を規定する要因を分析すると、年収が増加する見通しを持つ事が結婚・出生の両者の意欲に対して影響を与えていた。また、両親との関係が良好であることや仕事での挑戦の機会があること、地域の保育サービスの利用可能性が高いことが結婚・出生意欲の両方に、職場の女性が結婚後も就業継続していることは、結婚意欲にプラスであり、家族や職場、社会における社会関係資本が結婚・出生意欲を高めていた。

未婚者の結婚意欲を高めるには、個々人の社会関係資本の充実を図ることに加え、出生までを見越した社会環境の整備が必要である。


【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<議事次第(配付資料)の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成27年6月速報(平成27年8月6日)

6月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:107.2、一致指数:112.0、遅行指数:115.1となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.2ポイント上昇し、4か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は1.10ポイント上昇し、3か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.51ポイント上昇し、4か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.7ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.37ポイント上昇し、4か月ぶりの上昇、7か月後方移動平均は0.03ポイント上昇し、4か月ぶりの上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.2ポイント下降し、2か月連続の下降となった。3か月後方移動平均は0.07ポイント上昇し、4か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.08ポイント上昇し、4か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<景気動向指数研究会>7月24日開催(平成27年7月24日)

  • 景気動向指数研究会の議論を踏まえ、景気動向指数の改定(採用系列の見直し)を行い、第15循環の景気の山を平成24(2012)年3月、景気の谷を平成24(2012)年11月に確定いたしました。

<機械受注統計調査報告>平成27年6月実績および平成27年7~9月見通し(平成27年8月13日)

  • 機械受注総額の動向をみると、27年5月前月比6.2%減の後、6月は同5.0%増の2兆4,171億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、27年5月前月比0.6%増の後、6月は同7.9%減の8,359億円となった。このうち、製造業は同14.0%減の3,797億円、非製造業(除く船舶・電力)は同0.6%増の4,779億円となった。
  • 4~6月をみると、受注総額は前期比2.5%減の7兆1,758億円となった。 また、「船舶・電力を除く民需」は同2.9%増の2兆6,460億円、製造業は同12.1%増の1兆2,234億円、非製造業(除船舶・電力)は同1.7%減の1兆4,478億円となった
  • 7~9月見通しをみると、受注総額は前期比2.0%増の7兆3,170億円の見通しになっている。 また、「船舶・電力を除く民需」は同0.3%増の2兆6,541億円、製造業は同3.6%減の1兆1,791億円、非製造業(除船舶・電力)は同1.7%増の1兆4,726億円の見通しになっている。

<消費動向調査>平成27年7月調査(平成27年8月10日)

  • 平成27年7月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は40.3と前月から1.4ポイント低下し、2か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標(「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」)全てが前月から低下した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想は、「低下する」が3.3%(前月差+0.1%)、「変わらない」が6.7%(同 -0.7%)、「上昇する」が87.7%(同 0.4%)となった。

【参考】<月例経済報告>平成27年7月(平成27年7月21日)

景気は、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、持ち直しの兆しがみられる。
    • 設備投資は、このところ持ち直しの動きがみられる。
    • 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
    • 生産は、このところ横ばいとなっている。
    • 企業収益は、総じて改善傾向にある。企業の業況判断は、おおむね横ばいとなっているが、一部に改善の兆しもみられる。
    • 雇用情勢は、改善傾向にある。
    • 消費者物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、中国経済をはじめとした海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
8月6日
(6月分)
8月24日
(6月分)
8月13日
(6月分)
8月10日
(7月分)
 
9月7日
(7月分)
9月28日
(7月分)
9月10日
(7月分)
9月9日
(8月分)
9月11日
(7-9月期)
10月7日
(8月分)
10月23日
(8月分)
10月8日
(8月分)
10月上旬
(9月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年2月下旬~3月上旬に公表予定

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