ESRI通信 第88号

平成27年12月16日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【サービス業の生産性と組織・マネジメント】

企業や産業の生産性を改善しようという時、その方策として情報通信(ICT)投資や高度人材の育成がよく挙げられる。しかし、これらはずっと提言されてきて、それなりに投資・育成が行われてきているにもかかわらず、その成果が挙がっているという実感は薄い。

その理由は、単に量的にICT投資や高度人材を増強しただけでは企業や産業の生産性向上には限界があることであろう。実際、ICT投資を行った時に生産性が上昇するのは組織構造の変革が伴った場合であるという研究や、高度人材を活用すると専門に特化したことによる利益を得ることができるが、専門家同士の調整というマネジメント上の問題が生産性上昇を制約するという研究がある。

ICT投資や高度人材に限らず、従来の経済学では量的な側面しか着目してこなかった嫌いがあるのに対して、最近では組織の経済学に基づいて、組織やマネジメントのあり方が生産性に影響を与えるということが盛んに研究されるようになっている。最も大がかりなのはBloom等の一連の研究1で、ある企業が良いマネジメントを行っているかを、リーン生産方式や継続的改善、目標設定とモニタリング、給与の業績準拠などについて得点を付けて国際的に比較している。業種は製造業だけでなく小売業、医療や教育に及び、国も欧米にとどまらずインド等途上国も含んでいる。

これは画期的な研究だが、疑問なしとはしない。それは、一つの理念型(トヨタ・システム2)を設定して、それにどれだけ近いかでマネジメントの「良さ」を測っていることだ。しかし、サービスの性質や市場の状況、技術環境などによって最適な組織構造やマネジメントは異なるのではないか。実際、Garicano等の研究では、需要の個別性や部門間のシナジー効果の存在、専門特化の利益と協働の利益のトレード・オフ、従業員やマネージャー間の意思疎通のためのICT技術の改善などの外的条件に対応して、最適である組織やマネジメントはどのようなものかについて極めて興味深い分析が展開されている3

我々も、需要の性質・技術環境とマネジメントとの相互作用に基づいて概念枠組みを構築し、実証分析を行っている。この研究から得られる知見から、サービス業のきめ細かな発展戦略を描くことが可能になるであろうし、また、それぞれの特性を活かすマッチングを行い地域展開へつなげることも可能であろう。さらに、そうした発展を可能にする技術基盤や組織基盤を整備する政策につなげることも期待される。なお、先進的な事例は、定義により、検出が難しいものだが、こうした事象の初期の段階から定点観測を続けることにより、企業や産業のダイナミックな発達を分析することができる。アメリカのセンサス局は、Bloom等の研究を踏まえた公的な統計データの収集に着手している。さすがと言うべきか。

平成27年12月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    次長 杉原 茂

1Bloom, Nicholas, and John van Reene. (2007) Measuring and Explaining Management Practices across Firms and Countries. Quarterly Journal of Economicsに始まる。彼らのもともとの問題意識は、同じ産業の中での生産性格差が縮小しないのはマネジメントの差によるのではないかというもの。日本でもMiyagawa, et al. (2014) Is Productivity Growth Correlated with Improvements in Management Quality? がある。

2固有名詞で特定しているわけではないが、”Modern Manufacturing”と総称されているマネジメント様式で、典型はトヨタ的なシステムである。

3透徹した概観として、Garicano, Luis, and Andrea Prat. (2011) Organizational Economics with Cognitive Costsがある。


【研究紹介】

「公民連携研究」の概要

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    行政実務研修員 小菅 浩典

地方自治体においては、財政制約、少子化・高齢化などの人口構造の変化、公共施設老朽化や巨大災害への対応などの課題に直面しており、これらの地域の諸課題の解決に当たっては、公的セクションと民間セクションが連携し、新たな発想と仕組みで取り組む必要が生じている。

経済社会総合研究所では、公民連携をテーマに、地方自治体に向けた研究を実施してきた。ここでは、昨年度までの研究成果と現在進捗している研究の概要について紹介したい。

昨年度は、民間提案の推進について研究を実施した。地方自治体には、独自に民間提案制度1を設けているものの、提案が無く困っている自治体が少なくない。そこで、わたしたちは民間提案を推進することを目的に、地方自治体の民間提案制度について、制度上の課題と提案の受け入れ体制に関する課題を調査し、課題の解決策を研究した。研究の手法としては、まず、民間提案制度を設けている地方自治体と民間提案制度を利用した事業者等に対してヒアリング調査を実施し、課題の調査と整理を行った。そして、その結果をもとに課題の解決策について議論を行った。

ヒアリング調査の結果、公民互いに相手のニーズが把握できていない、提案のインセンティブがない(たとえば提案者が事業の実施者になれるとは限らない)等の課題が挙がった。これらの事例をもとに研究会で議論を行い、前者については、行政と民間事業者、金融機関等が定期的に交流する場を設ける必要があること、後者については、事業者選定の評価の際に当初提案者に対して適当な範囲で加点を与える等のインセンティブ付与が必要であることなどの具体的な課題の解決策を示した。近く、この研究の成果をまとめた研究会報告書を経済社会総合研究所ウェブサイトで公表する予定である。

現在は、協働推進をテーマに研究に取り組んでいる。公共サービスを提供するのは行政団体だけではない。その担い手となり得るNPO法人、市民ボランティア、地縁団体等と行政の連携について現況を調査し、よりよい公共サービスの提供に向けた課題を整理・議論し、協働推進において行政側が果たすべき役割を明らかにしたいと考えている。


1地方自治体が、事業内容を決定する以前の段階から民間に事業提案を求める制度。目的別に実施要領、要綱などを定め、公正性・透明性・競争性を確保しながら提案を募集し、事業の実施者を決定する。様々な方式があるが、例えば、行政が実施している公共サービスについて民間提案を公募し、提案を採択した場合には、その内容で改めて事業の実施者を公募し、競争的手法で選定するものがある。


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成27年10月速報(平成27年12月7日)

10月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:102.9、一致指数:114.3、遅行指数:114.4となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.3 ポイント上昇し、4 か月ぶりの上昇となった。3 か月後方移動平均は0.70 ポイント下降し、4 か月連続の下降となった。7 か月後方移動平均は0.16 ポイント下降し、4 か月連続の下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して2.0 ポイント上昇し、2 か月連続の上昇となった。3 か月後方移動平均は0.40 ポイント上昇し、2 か月ぶりの上昇となった。7 か月後方移動平均は0.46 ポイント上昇し、3 か月ぶりの上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.3 ポイント下降し、3 か月連続の下降となった。3 か月後方移動平均は0.54 ポイント下降し、4 か月連続の下降となった。7 か月後方移動平均は0.21 ポイント下降し、3 か月連続の下降となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<機械受注統計調査報告>平成27年10月実績(平成27年12月9日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2015(平成27)年9月前月比9.5%増の後、10月は同20.9%増の2兆7,939億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2015(平成27)年9月前月比7.5%増の後、10月は同10.7%増の9,038億円となった。このうち、製造業は同14.5%増の3,765億円、非製造業(除く船舶・電力)は同10.7%増の5,341億円となった。

<消費動向調査>平成27年11月調査(平成27年12月4日)

  • 平成27年11月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は42.6と前月から1.1ポイント上昇し、2か月連続で前月を上回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標(「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」)全ても2か月連続で前月から上昇した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想は、「低下する」が4.6%(前月差 -1.6%)、「変わらない」が10.2%(同 -0.1%)、「上昇する」が82.1%(同 +1.1%)となった。

<法人企業景気予測調査>平成27年10-12月期調査(平成27年12月10日)

「貴社の景況判断」BSIの平成27年10-12月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は4.6%ポイントで2期連続の「上昇」超、中堅企業(全産業)は3.5%ポイントで2期連続の「上昇」超、中小企業(全産業)は▲7.7%ポイントで7期連続の「下降」超。なお、前回(7-9月期の現状判断:大企業9.6%ポイント、中堅企業5.7%ポイント、中小企業▲11.2%ポイント)と比較して、大企業、中堅企業は「上昇」超幅が縮小、中小企業は「下降」超幅が縮小。

先行きについてみると、大企業は28年1-3月期以降「上昇」超で推移する見通し。中堅企業は4-6月期に「下降」超に転化する見通し、中小企業は「下降」超で推移する見通し。

「国内の景況判断」BSIの平成27年10-12月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は5.6%ポイントで6期連続の「上昇」超。前回(7-9月期の現状判断:10.5%ポイント)と比較して、「上昇」超幅が縮小。

「従業員数判断」BSIの平成27年12月末(現状判断)をみると、大企業(全産業)は13.3%ポイントで18期連続の「不足気味」超。前回(9月末の現状判断:11.6%ポイント)より「不足気味」超幅が拡大。

平成27年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比0.2%の増収見込み、経常利益(全規模・全産業)は同4.8%の増益見込み、設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は同7.5%の増加見込み。

【参考】<月例経済報告>平成27年11月(平成27年11月25日)

景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、総じてみれば底堅い動きとなっている。
    • 設備投資は、おおむね横ばいとなっている。
    • 輸出は、弱含んでいる。
    • 生産は、このところ弱含んでいる。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、一部に慎重さがみられるものの、おおむね横ばいとなっている。
    • 雇用情勢は、改善傾向にある。
    • 消費者物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、アメリカの金融政策が正常化に向かうなか、中国を始めとするアジア新興国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成27年 12月7日
(27年 10月分)
平成27年 12月25日
(27年 10月分)
平成27年 12月9日
(27年 10月分)
平成28年 1月12日
(27年 12月分)
平成27年 12月10日
(27年 10-12月期)
平成28年 1月8日
(27年 11月分)
平成28年 1月25日
(27年 11月分)
平成28年 1月14日
(27年 11月分)
2月3日
(28年 1月分)
 
2月5日
(27年 12月分)
2月24日
(27年 12月分)
2月17日
(27年 12月分)
3月8日
(28年 2月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年3月頃に公表予定

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