ESRI通信 第90号

平成28年2月19日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【「希望出生率1.8」の実現に向けて】

現在、内閣の最重要課題の一つとして、一億総活躍社会の実現に向けた取組が進められている。一億総活躍社会とは、「若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会」である。その実現のため、新たな第二の矢として、希望出生率1.8という目標に向けて、「夢をつむぐ子育て支援」を強力に進めていくこととされている。

我が国の少子化の進行、人口減少は、深刻さを増している。合計特殊出生率は、平成26年で1.42と、9年ぶりに前年比減となった。我が国の出生率低下の主な要因の一つとして挙げられるのが、未婚化・晩婚化の進行である。未婚率は、30歳前半の男女において、47.3%、34.5%(2010年)であり、この30年で大幅に上昇している。生涯未婚率は、男性20.14%、女性10.61%(同)となっている。他方、いずれ結婚しようと考える18歳から34歳までの未婚者は、男女とも8割を超えている。希望出生率1.8の実現には、希望通りに結婚ができるよう環境の整備をしっかりと進めていくことが不可欠である。

経済社会総合研究所の少子化ユニットでは、今年度、「少子化と未婚女性の生活環境に関する分析」を公表した。結婚できない大きな理由の一つとして「適当な相手にめぐり会わない」が挙げられる中、有識者とともに、「職場における出会いと結婚意欲の関係」、「未婚男女の出会いの阻害要因」などについて分析し、公的な結婚支援の充実や地域の実情にあった対応の必要性等について提言した。この提言も踏まえ、筆者が兼務している内閣府子ども・子育て本部では、地域の実情に応じた適切な出会いの機会の創出等を行う自治体を支援する交付金の抜本的な充実を図ることとした。

もとより、我が国の少子化には様々な要因が影響していると考えられ、未婚化の進行についても、結婚資金の問題や住居のめどなどを結婚できない理由とする若者もいる。また、希望通りの人数の子どもが持てるよう、保育施設の整備や働き方改革など環境を整えていくことも重要な課題である。平成27年の人口動態統計年間推計によると、出生数は100万8000人と5年ぶりに増加の見通しとなっている。今後とも、少子化の要因について多面的な分析を進め、その成果を政策につなげていくこととしたい。みんなが活躍できる社会の実現を目指して。

平成28年2月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 小野田 壮

【研究紹介】

「人生自己決定意識の規定要因」の概要について

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    政策調査員 河野 志穂

私が所属するユニットの研究テーマである社会指標とは、国民の生活の諸側面を包括的かつ体系的に測定する非貨幣的統計を中心とする統計指標1を指す。その発端は1960年代にアメリカでおこった社会指標運動である。当時、アメリカでは、経済成長に伴う都市化の問題に対処する必要があったが、問題状況を把握する統計が未整備であった。そこで社会の状態を把握するとともに、目指す社会の在り方を示すものとして社会指標に期待が寄せられた。このように、社会指標は、当初から経済成長を超えた公共の福祉に資することを目的としており、エビデンスベースの政策形成を志向するものである。

社会指標ユニットでは、人々の生活実態や意識(幸福感や生活満足度など)を測定する「生活の質に関する調査」を平成23年度~25年度に実施している。

現在、私が取り組んでいるのは、平成24年度調査のデータを利用し、「自由に人生を決めることができるか」という意識(以下、人生自己決定意識と略記)の規定要因を探索することである。OECDが2015年に公表した主観的幸福度調査のガイドライン2によれば、人生自己決定意識は、エウダイモニア(eudaimonia)的幸福の一要素である。エウダイモニア的幸福とは、意義深い人生を送るうえで有用な行為者としての潜在能力の保有の程度を意味しており、人生自己決定意識とは、個人の人生選択の可能性に関する意識を問うたものといえる。どのような属性の人たちが自由に生き方を決められていると感じ、逆にどのような人たちがそう感じていないのか、それを明らかにすることは、人生選択の機会(ライフチャンス)に関する人々の意識を明らかにすることである。特に、若者(15~34歳)の人生自己決定意識については、子どもの貧困問題の観点から、彼らの所属する家庭の経済状況等との関連を解明する必要がある。

検討の結果、若者のなかでも学生の人生自己決定意識は極めて高く、家庭の経済状況は彼らの意識に影響を及ぼしていないことが明らかになった。他方、学生以外(正規雇用・非正規雇用・無職)の若者に関しては、家庭の経済状況が正の規定力を有していることがわかった。また、学生以外(正規・非正規・無職)に関して全ての年代を対象に規定要因を探ったところ、年代・性別によって婚姻状態が与える影響が異なることが明らかになった。具体的には、どの年代でも未婚の女性の人生自己決定意識は男性よりも高いが、既婚者については、女性はどの年代でも男性よりも低いことである。

若者のうち学生の人生自己決定意識が家庭の経済状況に左右されない理由としては、本調査のサンプルの場合、学生の家庭が経済的に安定している(具体的には学生では父親の9割以上が正規雇用で働いているのに対し、学生以外では正規雇用の父親は7割弱にとどまる)ことが影響していると考えられる。また、人生自己決定意識を回答する上での判断基準が家庭の経済状況に依存する可能性も考えられる。学生の人生自己決定意識は学生以外(正規・非正規・無職)に比べ高いが、彼らが学校を卒業し次のステージに移る段階において、その意識がどう変化するかを検討する必要があろう。また、学生以外に関しては、既婚女性の人生自己決定意識の低さの要因を明らかにする必要がある。特に育児や介護については、女性にかかる負担の重さがこれまで指摘されてきた。育児や介護の必要があるか否かによって男女の人生自己決定意識がどれくらい異なるかは検討する必要があろう。


1『第5次国民生活審議会 調査部会中間報告』
http://www.caa.go.jp/seikatsu/shingikai2/kako/spc05/houkoku_b/spc05-houkoku_b-I_3.html別ウィンドウで開きます。

2 経済協力開発機構(OECD)編著、桑原進監訳・高橋しのぶ訳(2015)『主観的幸福を測る-OECDガイドライン』明石書店。


【最新の研究発表】

  • 異質な経済主体を含む経済における格差拡大に対する生産性上昇率の役割について(近藤 豊将)を掲載しました。(平成28年2月)(本文は英語)

    本論文では、異質な経済主体を含むシンプルな動学的一般均衡モデルにおける均衡経路の動学的特性を研究する。異質性は、将来効用の割引因子に加えて、生産性上昇率により特徴付けられる。性急な消費者の消費水準は、彼(女)らの割引因子が十分に小さく、かつ、生産性上昇率がさほど高くない場合は、時間とともにゼロに収束する。この結果は、格差拡大と解釈できる。この結果を生み出す十分条件は、性急な経済主体の割引因子が市場の割引因子、すなわち、粗実質利子率の逆数1/(1+r)より小さいことと言い換えることができる。

  • 経済分析第190号ジャーナル版を掲載しました。(平成28年1月)

    (論文)

    大学4年生の正社員内定要因に関する実証分析(荒木 宏子、安田 宏樹)

    危険回避的な人ほど早く結婚するのか、それとも遅く結婚するのか(佐藤 一磨)

    定住外国人の子どもの学習時間についての実証分析(中室 牧子、石田 賢示、竹中 歩、乾 友彦)

    (資料)

    「短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)」の構造と乗数分析
    (浜田 浩児、堀 雅博、花垣 貴司、横山 瑠璃子、亀田 泰佑、岩本 光一郎)

    「短期日本経済マクロ計量モデル」の位置づけと役割
    (岩本 光一郎、花垣 貴司、堀 雅博)

    『家計調査』個票をベースとした世帯年間消費支出額の推計 —推計手順と例示的図表によるデータ紹介—
    (岩本 光一郎、菅 史彦、新関 剛史、濱秋 純哉、堀 雅博、村田 啓子)


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成27年12月速報(平成28年2月5日)

12月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:102.0、一致指数:111.2、遅行指数:115.6となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.2 ポイント下降し、2 か月連続の下降となった。3 か月後方移動平均は0.10 ポイント下降し、6 か月連続の下降となった。7 か月後方移動平均は0.61 ポイント下降し、2 か月連続の下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.7 ポイント下降し、2 か月連続の下降となった。3 か月後方移動平均は0.20 ポイント下降し、3 か月ぶりの下降となった。7 か月後方移動平均は0.11 ポイント下降し、2 か月連続の下降となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して横ばいとなった。3 か月後方移動平均は0.03 ポイント下降し、6 か月連続の下降となった。7 か月後方移動平均は0.03 ポイント下降し、3 か月連続の下降となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<機械受注統計調査報告>平成27年12月実績および平成28年1~3月見通し(平成28年2月17日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2015(平成27)年11月前月比23.2%減の後、12月は同3.6%増の2兆2,225億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2015(平成27)年11月前月比14.4%減の後、12月は同4.2%増の8,066億円となった。このうち、製造業は同3.4%減の3,269億円、非製造業(除く船舶・電力)は同8.5%増の4,753億円となった。
  • 10~12月をみると、受注総額は前期比3.9%増の7兆1,620億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同4.3%増の2兆4,842億円、製造業は同0.5%増の1兆417億円、非製造業(除く船舶・電力)は同6.9%増の1兆4,473億円となった。
  • 2016(平成28)年1~3月見通しをみると、受注総額は前期比0.8%増の7兆2,184億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同8.6%増の2兆6,974億円、製造業は同12.0%増の1兆1,666億円、非製造業(除く船舶・電力)は同5.5%増の1兆5,275億円の見通しになっている。
  • 2015(平成27)年実績をみると、受注総額は前年比2.6%増の28兆6,066億円になっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同4.1%増の10兆891億円、製造業は同6.5%増の 4兆3,698億円、非製造業(除く船舶・電力)は同2.1%増の5兆7,483億円になっている。

<消費動向調査>平成28年1月調査(平成28年2月3日)

  • 平成28年1月の一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は42.5と前月から0.2ポイント低下し、4か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標のうち、「耐久消費財の買い時判断」は前月と比べて上昇した一方、「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」は低下した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想は、「低下する」が6.2%(前月差 +1.2%)、「変わらない」が11.9%(同 +0.8%)、「上昇する」が79.3%(同 -1.8%)となった。

【参考】<月例経済報告>平成28年1月(平成28年1月20日)

景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、総じてみれば底堅い動きとなっている。
    • 設備投資は、おおむね横ばいとなっている。
    • 輸出は、弱含んでいる。
    • 生産は、このところ横ばいとなっている。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、一部に慎重さがみられるものの、おおむね横ばいとなっている。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、緩やかに上昇している。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、アメリカの金融政策の正常化が進むなか、中国を始めとするアジア新興国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある。こうしたなかで、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成28年 2月5日
(27年 12月分)
平成28年 2月24日
(27年 12月分)
平成28年 2月17日
(27年 12月分)
平成28年 2月3日
(28年 1月分)
 
3月7日
(28年 1月分)
3月25日
(28年 1月分)
3月14日
(28年 1月分)
3月8日
(28年 2月分)
平成28年 3月11日
(28年 1-3月期)
4月6日
(28年 2月分)
4月下旬
(28年 2月分)
4月11日
(28年 2月分)
4月8日
(28年 3月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は毎年3月頃に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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