ESRI通信 第94号

平成28年6月24日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【所長挨拶】

このたび私は経済社会総合研究所長に就任いたしました。平成25年8月から26年7月まで1年間次長を務めておりましたが、昭和57年に旧経済企画庁に入庁以来、主に経済政策部局か官房(総務、人事等)に勤務しており、直近の2年間も経済財政政策担当の政策統括官として、経済財政諮問会議の運営や骨太方針の策定等に従事しておりました。

私は10代目の所長となりますが、歴代の所長を思い起こすと、研究業務の経験がほとんどない私がその後に連なるのは、まことに恐れ多い限りです。

しかしながら平成13年の中央省庁再編時に内閣府や研究所の設計に当たった関係者の1人として、また経済財政政策の経験が長い者の1人として、以下の2点を中心に所長職の責任を果たしていきたいと思っております。

第1に、エビデンスに基づく政策形成に寄与する研究の推進です。経済財政諮問会議でも、政策のPDCAサイクルを実効的に構築するために、エビデンスに基づく議論をいわゆる経済政策官庁でない省庁に対しても求めてまいりました。大学や民間シンクタンクではなく、内閣府という行政庁に置かれている研究所として「エビデンス(客観的数値等の事実関係)」に基づく「(理論のみではなく)政策形成」に寄与する研究は、そもそもの存立基盤といっても過言ではないことなので、この点を追及して参ります。

第2は、そのエビデンスの基礎となる統計の整備の重要性です。6月2日に閣議決定した今年の「骨太方針2016」でも「経済統計の改善」という項目を立てました。私は統計作成業務の経験はないのですが、統計改革関連業務の経験は、平成16、17年の統計整備推進室や改組された統計委員会の担当審議官を務めてきました。当研究所では、国民経済計算を始め、景気動向指数、機械受注、消費動向調査等、基礎的な統計を作成していますので、これらの統計の精度向上や利用促進のため、関連する一次統計の改善を含めて、努力して参ります。

この2点に加えて、各種研修等内閣府の人材育成への貢献、学界を始め知的交流ネットワークの強化にも努めて参ります。

研究所の活動を一層充実させるため、微力ながら全力を尽くしていく所存ですので、是非ともご支援、ご協力をお願いいたします。

平成28年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    所長 前川 守

【調査研究のテーマ選びにあたって】

世の中の流れはスピードアップしており、調査研究のテーマ選びは非常に難しくなっている。良い調査研究をしようと思うと1年や2年のまとまった時間がかかるため、そのとき話題になっているテーマを選ぶと、成果が出てくる頃には世の中の関心が変わっていて必要とされなくなっている危険性がある。また、テーマ自体は古くなっていない場合でも、既に議論が進んで制度の立案段階に入っていたりすると、せっかく調査研究で良い結果が出ても、それが立案の方向性と異なると議論を混乱させることになり、迷惑がられたりする。

米国では年に一度、大統領が一般教書演説を終え、予算教書が議会に提出された後の2月頃、大統領経済報告が議会に提出される。この大統領経済報告は「大統領経済諮問委員会(CEA: Council of Economic Advisers)年次報告」と一体となっており、日本の経済財政白書と同じように足元の経済情勢の分析が行なわれたり、先行きの予測が示されたりするが、それらに加えて経済政策に関する考え方や分析が示されたりする。少し前になるが、ジョージ・W・ブッシュ大統領が再選された直後に出された2004年の報告では「オーナーシップ社会」という考え方が示され、様々な制度が採り上げられて議論された。

これに限らず、大統領経済報告ではそのときどきの経済政策に関する議論をリードするようなテーマが採り上げられ、考え方が整理されるとともに具体的に議論されることが多い。テーマ選択がどのように行なわれているのか興味をもったので尋ねたことがある。

それによると、「調査研究に時間がかかるところは日本と同じである。制度の立案段階に入っているテーマについて、立案の方向性と異なる分析結果を示すと迷惑がられるところも同じである。ただ、立案する前には、どの機関も法律的な面や経済学的な面など多方面から十分に検討したいと考えており、むしろ検討に資する調査研究を求めているので歓迎される。」とのことであった。「また、それぞれの制度には予め見直しのタイミングが決められていることが多く、その検討は見直しの2年程前に始まる。テーマを選ぶ際にはそうしたスケジュールを念頭において、検討が始まる前に調査研究の成果が提供できるように考慮している。」とのことであった。

我が国でも時限立法は多く、その際には制度の見直しが行なわれる。見直しにあたってはどの機関も多方面から情報と資料を集めて検討にあたっている。そうした場に貢献できるような調査研究を提供していきたいと考えている。

平成28年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 坪内 浩

【研究紹介】

「結婚の意思決定に関する研究」の概要

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    行政実務研修員 石田 絢子

日本の出生率の低下をもたらしている1970年代以降の婚姻率の低下は、量的な変化のみならず、質的な変化(初婚タイプの変化)も伴っていると言われている。初婚タイプのうち、減少しているとみられるのは、お見合い結婚や職縁結婚などの「戦後日本的家族モデル」を特徴づけていた結婚である。また、「年齢や学歴等が夫婦で釣り合う、あるいは夫が上位となる」結婚、性別による役割分業意識に基づく結婚、「長男である夫が、夫の実家を継ぐことを前提とした」結婚も減少している。一方で、増加している初婚タイプは、同棲を経ている結婚や、夫あるいは妻が非正規雇用の結婚、夫あるいは妻が専門職の結婚、夫が長男であっても妻の実家で同居する結婚であると指摘されている。1

この結婚の内容の変化から、男女の結婚の意思決定は、従来とは異なる要因が影響している可能性があると推測される。これらの要因を明らかにし、ひいては個人が希望するタイミングでの結婚を実現することが、未婚化の流れを止め、少子化の状況を緩和するために必要である。

内閣府経済社会総合研究所の少子化研究のユニットでは、そうした問題意識から、結婚の意思決定に関する研究を進めており、そのために実施した調査の概要と主な分析の方向性について紹介する。

研究のために実施した調査は『結婚の意思決定に関する意識調査』(有効回答数13,321 人)である。これは全国の25歳~34歳の男女を対象にインターネットを通じて研究所が独自に実施したものである。本調査の特徴としては、先行研究を踏まえ、異性と出会い交際に至る要因と結婚の意思決定に至る要因が異なるとの前提に立ち、後者に焦点をあてた調査を行うため、調査対象を「3年前に恋人として交際していた異性がいた者」とする点が挙げられる。この調査対象者について、現在の交際状況を「恋人として交際している異性がいない」、「恋人として交際している異性がいる」、「結婚している(結婚が決まっている)」に分け、それぞれ3年前の状況と現在もしくは結婚を決めた時の本人の置かれている状況について尋ねた。具体的には、結婚に対する意識や本人の属性の他、仕事のやりがい、生活満足、充実感を覚える事柄、社会関係資本に対する信頼感や日々の過ごし方など、生活全般に関わる意識について尋ねており、一部の項目については交際(結婚)相手の状況についても調査している。

その結果、結婚意欲の高まりや結婚の意思決定に影響を与える要因は男女で異なっている可能性があることが明らかになった。例えば、交際相手と近いうちに結婚しようと思う理由は、男女ともに「家族になりたい相手だったから」が多かった。しかし、それ以外の理由としては、男性では「結婚相手に求める条件を満たしているから」が多く挙げられており、女性では子どもを持ちたいという希望や自分の年齢、婚期などのタイミングが多く挙げられる傾向が見られた。このような結果を踏まえ、男女それぞれの結婚の意思決定に影響を与える要因についてより詳細に分析し、結婚を希望しているが結婚に踏み切れない場合に、どのような環境整備を行う必要があるか等について考察を進めているところである。

具体的には、交際中の男女の結婚への移行や未婚男女の結婚意欲の高まり方、社会関係資本等が交際から結婚への移行に及ぼす影響などをテーマに分析を行っている。

なお、本研究の成果はDiscussion Paperとして近く公表する予定である。


1岩澤美帆(2013)「失われた結婚,増大する結婚:初婚タイプ別初婚表を用いた1970年代以降の未婚化と初婚構造の分析」人口問題研究69-2 pp.1-34


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

季刊「Economic & Social Research (ESR) No.13 2016年(夏号)」包摂的成長に向けてを発刊しました。(平成28年6月)


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別GDP速報(2016(平成28)年1-3月期・2次速報)(平成28年6月8日)
    1. 平成28年6月8日に公表した28年1-3月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が0.5%(年率1.9%)と、1次速報値の0.4%(年率1.7%)から上方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が上方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、民間企業設備や民間最終消費支出などが改定されたためである。
  • 平成25年度県民経済計算(平成28年6月1日)

<景気動向指数>平成28年4月速報(平成28年6月7日)

4月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:100.5、一致指数:112.2、遅行指数:115.1となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.4ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.06ポイント上昇し、10か月ぶりの上昇となった。7か月後方移動平均は0.15ポイント下降し、9か月連続の下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して2.0ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.13ポイント上昇し、6か月ぶりの上昇となった。7か月後方移動平均は0.11ポイント上昇し、6か月ぶりの上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.7ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.17ポイント上昇し、4か月ぶりの上昇となった。7か月後方移動平均は0.03ポイント上昇し、4か月ぶりの上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

平成28年4月改訂(平成28年6月23日)

  • 4月のCI(改定値・平成22年=100)は、先行指数:100.0、一致指数:112.0、遅行指数:115.3となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<機械受注統計調査報告>平成28年4月実績(平成28年6月9日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2016(平成28)年3月前月比15.8%増の後、4月は同12.8%減の2兆2,672億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2016(平成28)年3月前月比5.5%増の後、4月は同11.0%減の7,963億円となった。このうち、製造業は同13.3%減の3,329億円、非製造業(除く船舶・電力)は同3.9%減の4,750億円となった。

<消費動向調査>平成28年5月調査(平成28年6月2日)

  • 平成28年5月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は40.9と前月から0.1ポイント上昇し、2か月ぶりに前月を上回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標のうち、「収入の増え方」を除く3項目が前月と比べて上昇した。(「収入の増え方」は横ばい。)
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が4.9%(前月差 +0.8%)、「変わらない」が13.5%(同 +2.5%)、「上昇する」が78.9%(同 -3.4%)となった。

<法人企業景気予測調査>平成28年4-6月期調査(平成28年6月13日)

「貴社の景況判断」BSIの平成28年4-6月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は▲7.9%ポイントで2期連続の「下降」超、中堅企業(全産業)は▲7.0%ポイントで2期連続の「下降」超、中小企業(全産業)は▲16.9%ポイントで9期連続の「下降」超。なお、前回(1-3月期の現状判断:大企業▲3.2%ポイント、中堅企業▲2.8%ポイント、中小企業▲16.6%ポイント)と比較して、いずれも「下降」超幅が拡大。

先行きについてみると、大企業、中堅企業は7-9月期「上昇」超に転化の後、10-12月期も「上昇」超の見通し。中小企業は7-9月期以降も「下降」超で推移する見通し。

「国内の景況判断」BSIの平成28年4-6月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は▲9.5%ポイントで、2期連続で「下降」超、前回(1-3月期の現状判断:▲9.8%ポイント)と比較して、「下降」超幅が縮小。

「従業員数判断」BSIの平成28年6月末(現状判断)をみると、大企業(全産業)は11.6%ポイントで20期連続の「不足気味」超であるが、前回(3月末の現状判断:14.3%ポイント)と比較して、「不足気味」超幅が縮小。

平成28年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比0.0%の増収見込み、経常利益(全規模・全産業)は同▲4.6%の減益見込み、設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は同3.8%の増加見込み。

【参考】<月例経済報告>平成28年6月(平成28年6月17日)

景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、消費者マインドに足踏みがみられるなか、おおむね横ばいとなっている。
    • 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
    • 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
    • 生産は、横ばいとなっている。
    • 企業収益は、高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる。企業の業況判断は、慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済で弱さがみられており、中国を始めとするアジア新興国や資源国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある。こうしたなかで、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。また、平成28年(2016年)熊本地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成28年 7月7日
(5月分)
平成28年 6月23日
(4月分)
平成28年 7月11日
(5月分)
平成28年 7月1日
(6月分)
平成28年 9月13日
(7-9月期)
8月5日
(6月分)
7月25日
(5月分)
8月10日
(6月分)
8月2日
(7月分)
12月9日
(10-12月期)
9月7日
(7月分)
8月24日
(6月分)
9月12日
(7月分)
9月2日
(8月分)
平成29年 3月10日
(1-3月期)

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表予定

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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