ESRI通信 第97号

平成28年9月21日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【ESRIの「研修」】

経済社会総合研究所の経済研修所では、経済社会活動の調査分析などに必要な知識や技能の習得・向上を図ることを目的に、内閣府及び他省庁の職員を対象とした研修を実施している。

毎年、年間計画を策定し、計画的かつ効率的に実施しており、今年度は全体で15の研修を延べ67日間にわたって行うこととしている。年間計画を策定する際には、これまでの実績や受講ニーズ等を踏まえ、必要な見直しを行うなど効果的な研修内容となるよう腐心している。

研修は主に、経済統計に関する基礎的な知識や分析手法等の習得を目的としたものとなっている。具体的には、計量経済分析の基本的概念や手法等に関する講義に加え、時系列分析を中心にEviewsを使用してシミュレーションごとに学ぶコースや、Stataによる演習を通じパネル分析において遭遇する問題の本質、解決手法等について学ぶコースがある。また、自然的要因や社会的要因による季節変動を除去し統計データに基づく経済の動向を的確に把握するための季節調整法について、その目的・概要の講義やプログラム処理の演習を行う研修、及び国民経済計算体系(93SNA)における各勘定の推計方法等について学ぶ研修を実施している。さらに、経済統計の調査分析や結果の公表等に役立つ表計算ソフトExcelの技能研修も行っている。

これらに加えて、今年度は「アンケート調査実践セミナー」と題し、経済統計以外の分野も含めた研修を開催した。内閣府においては、多くの部局で意識調査や実態調査等のアンケート調査を実施し、その結果を分析・公表するとともに、各種施策の立案等に活用している。そこで当該業務に係る研修の受講ニーズ等を把握する観点から試行的に開催したものである。調査統計の専門家を講師に招いたセミナーは、準備期間が少なかったにも関わらず、講師のご尽力により相当充実したものとなった。質問・選択肢の順序効果や複数選択方式と強制選択方式の関係、レイアウトの違いによる影響等の調査票作成時の留意点に始まり、標本調査の考え方、標本抽出法の分類や標本サイズ、無回答への対処方法等に至るまで、まさに実務に即した内容となっており、実際の調査例における問題点等を具体的に取り上げるなど、業務に直接役立つ研修であった。今回のセミナーの結果を踏まえて、次年度は更に充実した研修となるよう検討を進めている。

それぞれの研修の実施に当たっては、講師との講義内容や配付資料の確認、受講者の募集、講義等の進行管理、事後評価等のルーチン業務を確実に遂行することが求められる。これらの業務を着実にこなしつつ、経済統計の枠にとらわれない広い分野を対象とすることや受講しやすい環境の整備等、よりニーズに合った効果的な研修を目指し、今後とも工夫してまいりたい。

平成28年9月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    情報研究交流部長 石井 照夫

【研究紹介】

日本の高度成長期研究は途上国の経済発展に貢献するか?

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    上席主任研究官 吉岡 真史

高度成長期研究ユニットでは、我が国の1950年代半ばから1970年代初めにかけての高度成長期の研究、中でも、経済政策調整における経済計画の役割を中心に研究を行っている。もちろん、中期的あるいは長期的な視野に立つ経済計画だけでなく、短期の経済見通しや経済白書・月例経済報告などの経済分析による経済政策の企画立案への貢献も含め、経済政策調整を中心に据えつつ幅広く高度成長期の日本経済を対象としている。8月末には “Japan's High-Growth Postwar Period: The Role of Economic Plans” 1 と題するリサーチノートを取りまとめて公表したところである。

日本の経済成長の推移
グラフ:日本の経済成長の推移のイメージ

このリサーチノートでとりわけ経済計画を中心に据えたのは、社会主義的な指令経済下の経済計画ではなく、市場経済における政府のガイドラインとしての経済計画の役割を明らかにするためである。同時に、当時の日本は国としてはまだ先進国の仲間入りを果たしたかどうか微妙なところで、途上国、あるいは、当時そんな表現はなかったが、新興国であったとも考えられることから、高度成長期の日本経済に着目してその歴史的な展開を明らかにすることにより、現在の途上国の経済政策運営に資するという観点からも一定の役割を果たすことを目指して取りまとめたところである。すなわち、毎年の経済見通しや経済白書などによる分析的な視点よりも、経済計画の役割の方が途上国や新興国にはより示唆に富むと考えられる。従って、経済計画だけでなく、関連する政策として全国総合開発計画(全総)に基づく開発政策、産業政策、財政金融政策、人的資本関係の教育政策や社会保障政策なども取り上げているところである。

中でも著名な経済計画として「国民所得倍増計画」が重要な位置を占めているのは衆目の一致するところであろう。約10年間の計画期間における目標水準と実績は別表の通りであるが、当時の日本の成長力が政府の想定を上回っていたことが見て取れる。リサーチノートでも、昭和36年度の「経済白書」から投資が投資を呼ぶメカニズムについて、ごく初歩的な産業連関分析のような図を収録している。また、四半世紀ほども前のバブル経済崩壊から、経済対策や景気対策といえば景気浮揚策としか思い浮かばない世代もあろうが、高度成長期には景気のオーバーヒートにより国際収支が悪化して、ブレトン・ウッズ体制下の固定為替レート1ドル360円を維持するために引締め政策が取られる場合も少なくなかったことから、昭和32年の外貨危機時の公定歩合引き上げなどの景気対策についても収録しているところである。

もちろん、経済計画の策定に関しても途上国などの参考に資するため、リサーチノートでは中期多部門モデルに関する解説や政府部門からの情報発信や民間部門との意見交換、あるいは経済界や学界また労働組合や消費者の代表などとの対話の場としての経済審議会の役割についても取り上げているところである。

国民所得倍増計画実績値
昭和45年度の目標水準年率の伸び昭和45年度の実績水準年率の伸び
総人口 (千人)102,2200.9%103,7201.0%
就業者数 (千人)48,6901.2%50,9401.5%
雇用者数 (千人)32,3504.1%33,0604.3%
国民総生産 (昭和33年度価格、10億円)26,000.07.8%40,581.211.6%
国民所得 (昭和33年度価格、10億円)21,323.26.9%31,767.810.4%
1人当たり国民所得 (昭和33年度価格、円)208,6016.9%317,67810.4%
個人消費 (昭和33年度価格、10億円)15,116.67.6%20,786.310.3%
1人当たり個人消費 (昭和33年度価格、円)147,8836.7%204,0799.4%
1次産業の国民所得構成比10.1%n.a.7.4%n.a.
2次産業の国民所得構成比38.6%n.a.38.5%n.a.
3次産業の国民所得構成比51.3%n.a.54.1%n.a.
鉱工業生産 (昭和33年度=100)431.711.9%539.413.9%
農林水産業生産 (昭和33年度=100)144.12.8%130.32.1%
国内貨物輸送 (10億トンキロ)97.56.9%343.810.2%
国内旅客輸送 (10億人キロ)210.97.6%588.98.3%
総エネルギー需要 (石油換算千トン)302,7607.8%574,09512.0%
輸出額 (通関、10億ドル)9.3210.0%20.2516.8%
輸入額 (通関、10億ドル)9.899.3%19.5315.5%

(出展) 『現代日本経済の展開 経済企画庁30年史』p.137 を基に一部修正


1Japan's High-Growth Postwar Period: The Role of Economic Plans, ESRI Research Note No.27
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_rnote/e_rnote030/e_rnote027.pdf別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.83 MB)


【経済社会総合研究所からのお知らせ】


【最新の研究発表】

  • 相続財産の分割と遺産動機:我が国の世帯調査に基づく実証分析(濱秋 純哉、堀 雅博、村田 啓子)を掲載しました。(平成28年9月)

    相続財産の家族間での配分形態は日米で大きく異なる。すなわち、米国では財産が子供の間で均等分割されるのに対し、日本の場合不均等な分割が選択される場合が少なくない。本論文では、まずなぜその違いが生まれるのかという観点から、米国の均等分割につながっている幾つかの法的、また制度的要因が日本には存在しないことを指摘する。その後、日本における相続財産の(不均等)分割データ(個票)を用いて、親の遺産動機の解明を試みる。特に、最初の親が死んだ際の相続(1次相続)と、もう一人の親が亡くなった際の相続(2次相続)を比較することで、親の遺産動機や相続に影響している日本の伝統的家族観の役割等を検討した。日本で見られる相続財産の不均等分割パターンは、1次相続にせよ、2次相続の場合にせよ、既存研究で提起された種々の遺産動機仮説と概ね整合的だが、取り分け、王朝的動機や戦略的動機は生き残った親が相続分割に関与できる1次相続時においてより顕著に観察できた。一方、利他的動機のモデルから予想されるような、経済的に恵まれない子に多くを遺すというパターンは明瞭には検出できなかった。

  • 結婚の意思決定に関する分析~「結婚の意思決定に関する意識調査」の個票を用いて~(佐藤 博樹、三輪 哲、高見 具広、高村 静、石田 絢子)を掲載しました。(平成28年9月)

    未婚状態から結婚状態への移行を検討する際、交際へ移行する過程と交際から結婚へ移行する過程では意思決定に影響を及ぼす要因が異なることが明らかになりつつある。

    経済社会総合研究所では、交際から結婚への移行に焦点を当て、若年層の結婚への意思決定についての考え方の詳細とその変化を検討するための基礎的資料となる調査を行うため、全国に居住する25歳~34歳のうち、3年前に未婚でありかつ恋人として交際していた異性がいた男女を対象に意識調査(「結婚の意思決定に関する意識調査」)を実施した。調査では主に出会いや交際、生活や暮らし、働き方、価値観、社会関係性、結婚などについて3年前と現在または結婚を決めた当時の2時点について調査した。可能な範囲で交際相手の意識に関する情報も収集した。

    また平成27年8月~平成28年5月に執筆メンバー等で会し、計5回の議論を行った。

    本稿の第1部では、独自に実施した意識調査の趣旨、方法及び主な調査結果について報告する。第2部では意識調査の個票を用いて、未婚者の結婚に対する意思決定について異なる角度から分析した結果を報告する。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成28年7月速報(平成28年9月7日)

7月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:100.0、一致指数:112 .8、遅行指数:112.9となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.7ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は横ばいとなった。7か月後方移動平均は0.05ポイント下降し、12か月連続の下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.7ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は横ばいとなった。7か月後方移動平均は0.18ポイント上昇し、3か月ぶりの上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して1.0ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.60ポイント下降し、3か月連続の下降 となった。7か月後方移動平均は0.30ポイント下降し、3か月連続の下降となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<機械受注統計調査報告>平成28年7月実績(平成28年9月12日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2016(平成28)年6月前月比10.1%増の後、7月は同2.8%減の2兆1,489億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2016(平成28)年6月前月比8.3%増の後、7月は同4.9%増の8,919億円となった。このうち、製造業は同0.3%増の3,677億円、非製造業(除く船舶・電力)は同8.6%増の5,251億円となった。

<消費動向調査>平成28年8月調査(平成28年9月2日)

  • 平成28年8月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は42.0と前月から0.7ポイント上昇し、2か月ぶりに前月を上回った。消費者態度指数を構成する4つの意識指標全てが前月と比べて上昇した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が6.0%(前月差 -0.3%)、「変わらない」が20.6%(同 +2.4%)、「上昇する」が70.5%(同 -1.7%)となった。

<法人企業景気予測調査>平成28年7-9月期調査(平成28年9月13日)

「貴社の景況判断」BSIの平成28年7-9月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は1.9%ポイントで3期ぶりの「上昇」超、中堅企業(全産業)は0.9%ポイントで3期ぶりの「上昇」超、中小企業(全産業)は▲15.0%ポイントで10期連続の「下降」超。なお、前回(4-6月期の現状判断:大企業▲7.9%ポイント、中堅企業▲7.0%ポイント、中小企業▲16.9%ポイント)と比較して、大企業、中堅企業は「上昇」超に転化、中小企業は「下降」超幅が縮小。

先行きについてみると、大企業、中堅企業は10-12月期、平成29年1-3月期とも「上昇」超の見通し。中小企業は10-12月期以降も「下降」超で推移する見通し。

「国内の景況判断」BSIの平成28年7-9月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は▲0.9%ポイントで、3期連続で「下降」超、前回(4-6月期の現状判断:▲9.5%ポイント)と比較して、「下降」超幅が縮小。

「従業員数判断」BSIの平成28年9月末(現状判断)をみると、大企業(全産業)は12.6%ポイントで21期連続の「不足気味」超で、前回(6月末の現状判断:11.6%ポイント)と比較して、「不足気味」超幅が拡大。

平成28年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比▲0.8%の減収見込み、経常利益(全規模・全産業)は同▲6.8%の減益見込み、設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は同4.9%の増加見込み。

【参考】<月例経済報告>平成28年9月(平成28年9月16日)

景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、総じてみれば底堅い動きとなっている。
    • 設備投資は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
    • 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
    • 生産は、横ばいとなっている。
    • 企業収益は、高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる。企業の業況判断は、慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済で弱さがみられており、中国を始めとするアジア新興国や資源国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある。また、英国のEU離脱問題など、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成28年 10月7日
(8月分)
平成28年 9月26日
(7月分)
平成28年 10月12日
(8月分)
平成28年 10月4日
(9月分)
平成28年 12月9日
(10-12月期)
11月8日
(9月分)
10月24日
(8月分)
11月10日
(9月分)
11月2日
(10月分)
平成29年 3月10日
(1-3月期)
12月7日
(10月分)
11月24日
(9月分)
12月12日
(10月分)
12月5日
(11月分)
6月13日
(4-6月期)

※ 消費動向調査の上に掲載した調査以降の公表予定については、こちらのページに掲載しています。

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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